君に忘れないで欲しい10のお題
◆ 10:「次は忘れないで」
(CZ:『End of the World』より:放浪者)
End of the World
-Endless Snow-
【-Episode 6-】
カチ カチ カチ カチ・・・・・・
時計の針が刻む音が響く
それは大きな銀色の時計塔――――――
針が動くたびに、外の景色が変わっていく
梓は窓辺に座ったままぼんやりと、外を見ていた
自分が目を覚ましてどのくらいに経っただろうか・・・・・・?
ふと、時計塔の大きな針を見る
長針が“Ⅶ”という、数字を指していた
それはつまり―――――・・・・・・
「後、少し・・・・・・」
もう少ししたら、私は・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・」
そこまで考えて、梓は小さくかぶりを振った
今更、何を後悔する事があるだろうか
これは、初めから決められていた事だ
それなのに、世界を犠牲にして私は生きている――――――・・・・・・
カチン・・・・・・
時計塔の針が動く
あの針が、“0”を指した時―――――ワタシ、は――――・・・・・・
**** ****
青年は夢を見ていた
懐かしい、“夢”―――――・・・・・・
小学6年の時、クラスに転校生がきた
名前は、海棠鷹斗
あの海棠グループの御曹司であり、研究者でもあった
彼は、明るく人懐っこい笑顔で、あっという間にクラスの人気者になった
そんな彼を、自分の幼馴染である撫子と一緒に遠巻きに見ていた
そう、していた筈だったのに――――
気がつけば、撫子と鷹斗は仲良くなっていた
別に、彼女が誰と仲良くしようと関係ない――――そう、思い込もうとしていた
では、このもやもやする感じはなんだろうか?
心の中が、気持ちの悪いもので支配されてくような感覚
そして、中学に上がった時、“事件”は起きた
幼馴染であり、ずっと見てきた彼女―——九楼撫子が交通事故に合い昏睡状態になったのだ
医者が方々に手を回してやっとの思いで、撫子の状態を“昏睡状態”までもっていけたのだ
本当ならば、即死だと言われていた
それからというもの、自分の中で唯一の光だった撫子が消えた
真っ暗な、空っぽの“心”になってしまった
鷹斗は博士号も持っていて、撫子を助けようと研究に没頭し始めていた
では、オレは・・・・・・?
オレに出来る事はあっただろうか・・・・・・?
鷹斗の様に博士号があるわけでもなく、撫子の父・九楼嘉昭の様に、力があるわけでもない
単なる、父親が外務大臣というだけで、オレ自身には何も力はなかった
そんな時、鷹斗の紹介で“彼女”に出逢った
黒く長い漆黒の髪に、菫色の神秘的な瞳――――
年は、自分達より5つ上だと言っていた
「初めまして。 私は架院梓というの。 お名前―――――聞いてもいいかしら?」
そう問われて、一瞬息が止まった
瞳の色こそ違うが、撫子に――――彼女に面影が似ていたからだ
「オレの名は――――」
声が震えた
「加納 理一郎・・・・・・」
そう答えるだけで、精一杯だった
すると梓と名乗った彼女はにっこりと微笑んだ
「理一郎さんね、宜しく」
そう言って、彼女が手を差し出してきた
でも、オレはその手を取る事は出来なかった
その後は、どうしただろうか・・・・・・
彼女―——梓はどうやら、鷹斗の研究員スタッフとして応援で来たらしい
海外のハイスクール卒業後、大学・大学院をスキップで卒業して、今はアメリカの研究室で働いているのだと言っていた
つまり、彼女も鷹斗と同じ人種という事だ
オレとは違う世界の――――ひと だった
結局のところ、オレが出来るのは撫子の病室に見舞いに行く事だけだった
もどかしかった
自分の無力さが、辛く、苦しかった
それから、数年後 高校に上がる頃だろうか・・・・・・梓に呼び出された
なんでも、鷹斗が最終実験をするので、挨拶に来たのだという
なぜ、オレに? と、思ったが
彼女の誘いを断れる理由が無かった為、仕方なく会った
彼女は――――梓は、前に会った時よりもずっと綺麗になっていた
一緒にいるのが、自分でいいのか? と、尋ねると、彼女は笑ってこう答えた
「最後になるだろうから―――――」 と
「最後」
その言葉が何を現すのか、その時のオレには分からなかった
そして、彼女はこう言った
「次は、忘れないで―――――――」
その言葉を最後に―――――世界は量子エネルギーの爆発によって
“壊れた”のだった―――――・・・・・・
とりま、リク消化中www
今回は、理一郎視点の過去の話でした~~~
(0に旭視点があります)
2022.04.14