目を閉じて貴方を想った

 

 09:指を握りこむ誘惑。 

(刀剣乱舞:『華ノ嘔戀』より:鶴丸国永)

 

 

『江戸の街を案内してやるよ!』

 

それは、鶴丸のその一言から始まった

 

最初、沙紀には何故 鶴丸が江戸の街を選んだのか分からなかった

でも、鶴丸曰はく「過去の時代の中でここが一番面白い」のだという

 

言われるがままに時空を開くと、沙紀と鶴丸は江戸の街に降り立った

 

「…………っ!」

 

最初に江戸の街に来て驚いたのは、人の多さだった

何処を見てもひしめき合う人の波

現代に比べれば確かに少ないのかもしれない

しかし、現代の世で石上神宮より殆ど出た事のない沙紀にとっては、現代以上に見えた

 

それに比例する様に沢山の店や品物

全てが全て、沙紀にとっては新鮮に見えた

 

「凄い…ですね」

 

あまりの圧巻さに沙紀がそう洩らすと、鶴丸は ははっと笑みを浮かべ

 

「沙紀はここに来るのは初めてだったな」

 

「はい…江戸の市街には出陣した折に何度か……ですが、街は初めてです」

 

まじまじと興味深そうに店先を見る沙紀を、鶴丸は嬉しそうに見ながら

 

「そんなに目に穴が開く程見なくても、俺がこれから何度でも連れて来てやるよ」

 

「え……?」

 

不意に投げかけられた言葉に、沙紀がその躑躅色の瞳を瞬かせる

 

「りんさんが……?」

 

沙紀がそう尋ねると、鶴丸はにやりと笑みを浮かべたかと思うと

 

「なんだよ、俺じゃ不満か?」

 

鶴丸のその言葉に、沙紀が慌てて首を横に振ると口早に

 

「そ、そんな事ありませんっ! その…わ、私も…りんさんと来られたら――――……」

 

かぁーと顔を真っ赤にしながら沙紀が口籠る

その様子に、鶴丸がにやにやと笑みを浮かべながら

 

「ん? 俺と来れたら何だ?」

 

「……………っ」

 

まさかの追い打ちに沙紀が益々顔を赤くさせる

 

「そ、その……」

 

恥ずかしくて言い出し辛いのか

沙紀は、顔を真っ赤にさせたまま 手を絡ませながら俯いた

 

すると、鶴丸が不意に悪戯っ子の様に覗き込んできた

 

「沙紀――――? 言わなきゃ分からないぞ?」

 

「~~~~~~~っ、り、りんさんの意地悪…っ」

 

分かっているくせに

こうして鶴丸はすぐ言わせようとする

 

「沙紀」

 

甘くそう名を呼ばれたかと思うと、突然鶴丸の手が沙紀の手に重なった

そのまま指を絡められる

 

「り、りんさん……っ」

 

突然の行為に、沙紀が真っ赤な顔をして抗議する

しかし、鶴丸は更に指を絡めるとそのままその手を自身の口に近づけた

 

「俺は沙紀とまたこうして出掛けたい。 沙紀にもっともっと色々な事を知って欲しい。 沙紀は? 沙紀は俺と出掛けるのは嫌か?」

 

「…………っ、言わなくても分かっていらっしゃるくせに……っ」

 

沙紀がそう不満を漏らすが、鶴丸は許してはくれなかった

 

「ああ、分かってる。 でも、沙紀の言葉で聴きたいんだ」

 

「……………っ」

 

ねだる様にそう言われると、沙紀はどうしようもなく弱くなる

真っ赤な顔で鶴丸を見ると、おずおずと口を開いた

 

「わ、私も……りんさんと、出掛け…たい、で…す」

 

今までにない位顔を真っ赤にさせてそう言う沙紀に、鶴丸は嬉しそうに微笑んだ

その笑顔を見ると、何もかも許してしまいたくなる

沙紀は、鶴丸のこの笑顔にどうしようもない位 弱かった

 

「もう…りんさんはやっぱり意地悪です…っ」

 

沙紀のその言葉に、鶴丸は ははっと笑いながら

 

「仕方ないさ、男だからな。 好きな女は苛めたくなるんだ」

 

「え……」

 

今、何と……?

 

自分に都合の良い幻聴を聴いてしまったのだろうか

だが、一度そう聴こえてしまうとその言葉が頭の中をぐるぐると回る

 

だが、鶴丸は気にした様子もなく、沙紀の手を引いて歩き始めた

 

「あ……」

 

ぐいっと引っ張られ、沙紀もその後に続く

だが、握られた手が酷く熱っぽく感じたのは気のせいだろうか

 

りんさん……

 

鶴丸の背中を見る

 

雪が似合う、綺麗な大人の男の人――――……

そんな人がもし自分を想ってくれたら―――……

 

そう思うのは、痴がましい事かもしれない

でも………

 

ううん

 

沙紀は小さくかぶりを振った

多くは望んではいけない

 

少なくとも、“今”は傍にいてくれる

それで十分―――――………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鶴丸と、江戸の街デート開始編

え?続くのwwww???

とか、突っ込んじゃ駄目っすよー(笑)

 

本当は別ネタだったんですが……

なんか、そこまで入らなかったんだよぉ!!

 

まて、次回www

※続くかは未定~~~

 

2015/08/05