目を閉じて貴方を想った
◆ 04：想いの名前を口にして。
（ワンピ：『MARIKA』より：エース）
ザザーン
風が吹く
海の音がする
エースは一人夜の甲板に出て海を眺めていた
この白ひげ海賊団に入ってから大分たつ
最初は、白ひげとよばれるエドワード・ニューゲートに勝負を挑んでいた
でも、気が付けばいつしか白ひげがエースの大事な「オヤジ」になっていた
本当の「オヤジ」には会った事はない
会った事はないが、よく知っている
それこそエースの抱える秘密であり、墓場まで持っていかなければならないものだった
もう、本当の「オヤジ」の存在に振り回されるのはごめんだった
「おれのオヤジは白ひげだけだ……」
ぐっと、拳を握りしめそう自分に言い聞かせる様に呟く
その時、はらりとエースの持つ蒼いリボンがはためいた
村を出る時、彼女に贈ったリボンと対となるリボンだ
仲間に見つかった時は、それはもうひやかされた
レウリア
エースが今、一番大切に想う女の名前だった
彼女が居たから
彼女が居てくれたからこそ、エースは変わる事が出来た
彼女と居る時だけは「鬼の子」ではなくなっていた
最初は、ガープに紹介された時煩わしいとさえ思った
だが、同時に、興味も惹かれた
無表情で、無感情なその彼女に目を奪われた
だが、次第に表情も明るくなり、感情も露わになる頃にはエースは彼女に惹かれていた
しかし、「鬼の子」である自分が彼女には相応しいとは思えなかった
彼女はエースを「鬼の子」ではなく「エース」として見てくれた
喧嘩もした 言い合いもした
彼女と居る時だけ、エースは「エース」になれた
それが嬉しかった
だから、心に決めた
「名声」を手に入れて、立派な海賊になれた時
そして、彼女との「約束」の「蒼い花」を見つけた時
彼女に――――レウリアに告白しようと
「リア……」
愛しい 愛しい彼女の名を呼ぶ
もう、何年も会ってない
一目だけでもと一度だけ会いに行った事がある
彼女は、それはもう美しく成長していた
あの流れる様な銀糸の髪も、美しいアイスブルーの瞳も変わっていなかった
一つ変わっていた事は、彼女が海兵になっていた事
何故、海軍なのか
不思議とその疑問は浮かばなかった
ガープの孫のルフィ
エースにとっては義弟とも呼べる存在
そのルフィの海軍入りが出来なかったので、その矛先が義娘のレウリアに向いたのだとすぐに理解した
でも、一つだけ変わらない事があった
彼女の左手首に巻かれた蒼いリボン
それは、今エースの手の中にある蒼いリボンと対になる存在だった
彼女は「約束」を覚えていてくれているのだ
エースが「蒼い花」を持ってくるのを待っていてくれているのだ
それがたまらなく嬉しかった
「リア……会いてェなぁ……」
彼女に会いたい
また、一目だけでもその姿を見たい
目を閉じるだけでも、彼女の姿が思い出される
と、その時だった
「また “それ” 持ち出してんのかよい」
不意に後ろから声を掛けられる
振り返ると、マルコが片手を上げながら近づいて来た
「うるせーほっとけ」
エースが悪態付く様にそう言うと、マルコはくつくつと笑いながらエースの頭をぽんぽんっと叩いた
「会えるといいな、リア嬢」
「いいなじゃねェよ…会ってみせるさ」
絶対に、「蒼い花」を探し出して彼女に会うのだ
エースのその言葉に、マルコがくっくっくとまた笑った
「お前がそこまで入れ込む女ってのに、おれも会ってみてぇよ」
「……惚れるなよ」
念を押す様にそう言うエースに、マルコがバシッと頭を叩く
「バーカ！ 弟の女に惚れるかよ！」
「そんなのわかんねェだろ！？ リアはすげェ美人なんだからな！」
「あーはいはい」
その話は何度も聞いたという風にマルコがまた頭を叩いてくる
しかし、ここまでエースが美人だという彼女
一度、目の保養に拝んでおきたいぐらいだ
ザザーンとまた波が飛沫を上げる
「リア……」
絶対に会ってみせる
彼女に「蒼い花」を贈るのだ
そして、この気持ちを伝える
傍にいて欲しい―――――と
ぎゅっと、蒼いリボンを握り締めた
エースがレウリアと再会を果たすまで、まだあと少し―――――
なんか、本編で語れないからこっちでいっぱいエース出してますｗｗ
そして、相変わらずマルコが分からんｗｗ
2014/02/15