目を閉じて貴方を想った

 

 01:瞼の裏の虚像。 

(CZ:『End of the World』より:放浪者)

 

 

End of the World

      -Endless Snow-

 

 

 

【-Episode 5-】

 

「もー理一郎はいつもそうね。 そんなんだから、皆逃げて行っちゃうのよ?」

 

……オレには関係ない

 

「またそんな事言って……もう、仕方ないなぁ…」

 

……ふん

お前だって似たようなものだろう…? 撫子、お前は――――……

 

 

キキキキキ―――――――

 

 

撫子!!

 

「え………?」

 

キキキ――――

 

 

―――――どんっ!!!!

 

 

 

 

撫子ぉ――――――――――!!!!!

 

 

 

 

 

 

「―――――っ!!」

 

一瞬にして覚醒する

何度も何度も“見てきた”光景――――……

 

「………ゆ、め…か……」

 

額から嫌な汗が流れ落ちる

嫌な夢だ

夢にまで見るなんて…時間を跳躍し過ぎたせいか……

何度も何度もあの“光景”を目のあたりにして、頭がどうにかなってしまったのかもしれない…

 

青年は額の汗を拭うと、小さく息を吐いた

 

オレは…何度あの“光景”を見れば、撫子を……

彼女を“助けること”が出来るのだろうか――――………

 

もう、何度も繰り返した時間跳躍のせいか…

それとも、あの光景を見させられたせいか……

 

肉体も精神もボロボロだった

 

それでも、オレは……

 

ふと、枕元の懐中時計を見る

時計の針が“4”を示していた

 

時間だ……

 

青年はそのままベッドから起き上がると、その胸に懐中時計を仕舞う

そして、身なりを簡単に整えると、そのまま部屋を出た

 

 

 

 

 

 

 

 

向かった先は、寂しげな神社だった

もう、ずっと手入のされていない様なその神社に足を踏み入れる

じゃり…と砂を踏む音が響く

 

まだ、夜明け前ということで辺りは暗かった

 

青年は、小さく息を吐くと

 

「おい、いるんだろう? さっさと出てこい」

 

そう声を“誰か”に向かって叫んだ

すると、後ろの灯篭の横から、ガラの悪そうな赤銅色の髪の男が姿を現した

 

「おっせーよ! 何時間待ったと思ってるんだ!?」

 

男は頭をかきながら青年のそばにやってきた

その様子に、青年が怪訝そうに顔を顰める

 

「遅い…? オレは時間通りだ」

 

そう言って、懐中時計を見る

針はきっかり待ち合わせ時間を指しており、遅刻などしていない

 

すると、男はどうでもよさ気に

 

「オレはもっと早く来て待ってたんだぜ?」

 

というが、青年は呆れたように小さく溜息を洩らし

 

「……知るか」

 

と、答えた

いつも通りの素っ気ない態度に男は気にした様子もなく

 

「ま、いいけどな。 っていうか、お前“プラチナ”の専属ナイトに選ばれたんだってな! やったじゃねぇか!! これで政府の中枢に入りやすくなったんじゃねぇのか?」

 

そう言って男がにやりと笑みを浮かべ、青年の肩に手を乗せる

だが青年はうざったそうに顔を顰めると

 

「そんな簡単な問題じゃない。 “プラチナ”の傍には常に“キング”がいるんだぞ? 逆にやり辛くなったぐらいだ」

 

「そうか? オレはそうは思わないな。 “キング”の近くにいけるなら、それこそ“目的のもの”にたどり着けるかもしれないだろう? 要は発想の転換だな」

 

「……だから、そんな簡単な問題では…」

 

青年がそう言おうとするが、男はにかっと笑ってぽんぽんっと青年の肩を叩いた

 

「ま、お手並み拝見してるぜ? じゃぁな!」

 

「お、おい…」

 

それだけ言うと、男は手をひらひらとしながら去って行った

残された青年は、はぁ…と溜息を洩らし

 

「勝手なことばかり……」

 

そう言って、先ほど男が自分の手の中にどさくさまぎれに置いて行った小瓶を見た

きらきらと、青い液体が揺れている

 

これを使えと…いうのか……

彼女に――――……

 

プラチナブロンドの髪の美しい少女が脳裏をよぎる

 

「……………っ」

 

青年は、邪念を払うように首を振った

 

オレは……

撫子を救うためにここまでしてきたんだ

今更、それを迷うなんて―――――あってはならないっ

 

 

そう―――それがたとえ彼女を―――梓を貶めることになったとしても―――……

 

 

オレは…迷ったりなんてしない……っ

 

 

青年は小瓶を胸元に仕舞うと、その場を立ち去ったのだった―――……

 

 

 

 

 

 

 

 

****

 

 

 

 

 

 

 

政府の宿舎に戻ると、何やら騒がしかった

なんだ? と、思い近くを通った同僚の一人を捕まえる

 

「何の騒ぎだ?」

 

「あ! お前、どこ行ってたんだよ!!」

 

「……?」

 

突然、そう責められて青年が首を傾げる

すると、同僚は焦ったように

 

「侵入者だ!! ナイトは招集が掛かってる、お前もすぐ―――あ、おい!!」

 

同僚が言い終わるよりも早く青年は駆け出していた

後ろの方で「どこ行くんだよぉ!!」という同僚の声が聞こえるが、それに構っている余裕はなかった

 

まさか……っ

 

嫌な予感が脳裏をよぎる

 

目の前で助けられなかった撫子

その光景が頭から離れない

 

まさか、同じように彼女に何かあったら――――

オレは……

 

その時だった

 

「きゃっ……」

 

ガシャン という音とともに、ドアの向こうから音がした

ぎくりと青年の顔がこわばる

 

嫌な予感が頭から離れない

 

その時、ガシャ――――ン! と、ひときわ大きな音が部屋の中から響いた

 

 

「――――おい!!」

 

 

青年は、乱暴にドアを開けるなりそう叫んだ

瞬間、目の前に広がる光景に大きくその瞳を見開く

 

見知らぬ男が、プラチナに刃物を向けていた

 

「…………っ」

 

青年が剣を抜くのと、男がこちらに向かって刃物を振りかざしてくるのは同時だった

 

ギィィン!!!

 

刃と刃がぶつかり合う

だが、その男は一瞬の隙を見て青年を思いっきり突き飛ばした

 

「…………っ」

 

突然のことに青年がよろける

 

「蒼さん!!!」

 

梓の声が響いた

はっとして青年がなんとか体制を整える

その間に、男は部屋を飛び出していった

 

慌てて青年はドアの方に駆ける

廊下を見ると、他のナイト達が男を取り押さえているようだった

男が何か叫んでいるが…もはや、そんな事どうでもよかった

 

 

思わず、ほっとして持っていた剣を仕舞う

 

「あ、蒼さん……」

 

そう声を掛けられて、はっとして青年は彼女の方を見た

見ると、彼女は微かに震えていた

 

無理もない、先ほどまであの不埒者に襲われていたのだから

ライラックの美しい瞳が酷く揺れていた

 

青年は、もう一度辺りを見回して他に侵入者がいない事を確認すると、梓に近づいた

 

「怪我は…」

 

「だ、だい、じょう…ぶ、です」

 

弱弱しくそう言う彼女が、酷く怯えている様に見えた

ふと、彼女の白いドレスを見ると、赤い血がぽつぽつと染みになって落ちていた

 

「血が……」

 

「あ…それは……」

 

彼女がそこまで言いかけた時だった

 

 

「梓!!!」

 

 

バンッ! と扉があいてキングが入ってきた

キングを見るなり、梓が泣きそうな顔になり「旭……っ」と叫ぶなり、キングに抱き付いた

 

「ごめん、君を危険な目に合わすなんて……本当に、ごめん」

 

そう言って、ぎゅっと梓を抱きしめた

キングのその言葉に、梓が首を振る

 

「だいじょう…だ、から……」

 

なんとか、そう言葉を振り絞るのが痛々しい

 

なんだ……?

 

なぜだろう……

二人のその様子を見ていると、なんだか胸の奥がチクリと痛んだ

 

だが、青年がその痛みの“理由”に気づくにはまだずっと先の事になるとは…

その時は思いもよらなかったのだった―――――………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

字数が分からなくて、どこまで書いていいのか迷いましたwww

いつもの夢はわかるんだけどねー(;・∀・)w

 

2017/10/14