参ノ題 切な甘い10のお題
◆ 04:今だけの誘惑。
(刀剣乱舞:『華ノ嘔戀』より:鶴丸国永)
「えっと・・・・・・」
沙紀は、目の前で手を広げてにこにこと笑っている鶴丸に困惑していた
まるで、そこへ来い!とも言わんばかりに広げられた手が沙紀を誘惑している
「どうしたんだ? 沙紀」
「あ、いえ、その・・・・・・」
これはどうしたらいいのか・・・・・・
沙紀が困惑した様に、苦笑いを浮かべる
―――――事の発端は数時間前に遡る
沙紀はその日、“審神者”の定例会議で政府機関を訪れていた
その日の護衛は本当は山姥切国広だった筈だが・・・・・・
来たのは何故か鶴丸だった
「りんさん?」
予定とは違う、鶴丸の登場に沙紀が首を傾げた
だが、鶴丸は特にこれと言って気にした様子もなく
「ほら、遅刻したらどうするんだ? いくぞ」
そう言って、沙紀の手を引いた
「あ、あの・・・・・・」
何が何だかよくわからないまま、沙紀は転移装置で政府内に行き、こうして定例会議に出席していた
後ろには鶴丸がいる
「・・・・・・・・・?」
だが、いつもと違うその様子に 沙紀は首を傾げた
なんとなく、違和感を覚えつつも会議が終わった後、沙紀は受け取ったデータと書類を片していた
一通り帰り支度が終わり、鶴丸と戻ろうとしたのだが――――・・・・・・
「・・・・・・りんさん?」
何故か、後ろの鶴丸が居なかったのだ
時間としてはほんの数分だろうか・・・・・・
少しした後に、鶴丸が直ぐに姿を現した
「沙紀、帰るのか?」
「は、はい・・・・・・」
何か用事でもあるのだろうか?
そう思って、少し考えた後
「あの・・・・・・なにか、ご用事でもあるようでしたら、戻るのはひとりでも――――・・・・・・」
そう切り出したのだが
鶴丸は何でもない事の様に笑って
「大丈夫だ。 もう、用は済んだから――――帰ろう、俺達の“本丸”に」
そう言って手を伸ばしてきた
なんだか、少し釈然としなかったが・・・・・・
沙紀はその手を取り、こうして“本丸”に戻って来たのだが――――・・・・・・
戻ってきた後、着替えて部屋を出ようとしたら、何故か鶴丸が外で待っていた
両手を広げて
そして、今に至る
「あの・・・・・・りんさん?」
彼は一体何がしたいのだろうか?
鶴丸の意図がくみ取れず困惑する沙紀とは裏腹に鶴丸は上機嫌だった
何故そんなに機嫌がいいのか
そして、この行動の意図は
どんなに考えてもさっぱりわからない
と、その時だった
突然、鶴丸が
「沙紀は、最近頑張り過ぎて疲れてるだろう?」
「え・・・・・・?」
不意にかけられた言葉に、沙紀が首を傾げる
確かに、ここの所 “審神者”の仕事と、石上神宮の神事も重なりばたばたしていたが――――・・・・・・
もしかして、どこかで心配をかける様な事をしてしまったのだろうかと、不安になる
だが、鶴丸の口から出た言葉はそれとは違うものだった
「人というのは、疲れた時は甘やかされたら疲れが吹き飛ぶそうだ! だから、ほら、俺に甘えていいんだぞ?」
「・・・・・・・・・・」
一瞬、沙紀がその躑躅色の瞳を瞬かせた
そういえば、先日テレビという映像を映し出す道具で何か似たようなシーンを見た気がした
あれは、恋人同士の男と女が外で抱き合っていた
まさか、あれ・・・・・・の事を指しているのだろうか・・・・・・?
「あ、えっと・・・・・・」
沙紀が困惑した様に、顔を引き攣らせるが
やはり、鶴丸は満面の笑みで
「仕方ない、じゃぁ俺から行くから―――――」
「え・・・・り、んさ――――・・・・・・」
その後は言葉にならなかった
いきなり、鶴丸からぎゅっと抱きしめられたからだ
「――――・・・・・・っ」
かああっと、一気に体温が上昇するのが分かった
でも――――・・・・・・
こうして抱きしめられていると、なんだか少しほっとする様な・・・・・・
それに・・・・・・
あたたかい
そのぬくもりが、まるで疲れを癒やしてくれるかの様に――――・・・・・・
「沙紀――――」
甘く名を囁かれ、沙紀がゆっくりと顔を上げる
そのままゆっくりと口付けが降ってくる――――・・・・・・
ああ・・・・・・
このひとに逢わせてくれた神に感謝を――――・・・・・・
そう
願わずにはいられなかった
このひと時が、永遠に続きますように―――――と
なんか、ぐだぐだになりましたけど!!
とりあえず、甘やかせて癒しを!!
ってだけですwww
2022.12.14