鈍感な恋愛10のお題
◆ 01:気が付きたくないこと。
(マギ:『CRYSTAL GATE』より:シンドバッド)
いつからだろう…
この事に、気付いていしまったのは……
「エリス」
不意に名を呼ばれ、エリスティアが振りかえるとシンドバッドが手を振りながらやって来た
「シン……」
シンドバッドの姿を見て、ほっとした様にエリスティアが顔を綻ばせる
すると、隣にいたヤムライハがエリスティアにそっと耳打ちしてきた
「ねぇ、エリス…聞いたけど本当なの?」
「え? 何が?」
ヤムライハの質問の意図が掴めずエリスティアが首を傾げると、ヤムライハは少しだけじれったそうに
「だから、前々から彼と一緒に夜は寝てたって……」
そこまで言われて 「ああ…」 とエリスティアは納得した様に苦笑いを浮かべた
「えっと…うん、そうなのだけれど……」
「駄目よ!!」
その時、突然ヤムライハの声が響いた
見ると、ヤムライハは少し怒った様にエリスティアの肩をがしいっと掴むと
「エリスは女の子なのよ!? それなのに、男の人と一緒に寝るなんて―――――」
そこまで言われて、ヤムライハが何を心配しているのかようやく分かった
ヤムライハは、エリスティアの貞操を危惧しているのだ
確かに、その点は一理ある
だが……
「えっとね、ヤム……その――――シンといつも一緒に寝てたのは、宿代を浮かすのにも丁度良かったし…ほら、最初は二人だったし……それに、女一人は危険だってシンが――――」
「今は私がいるじゃない!!
そうなのだ
マグノシュタットの事件の後、ヤムライハはシンドバッド達と同行するようになった
当然の結果といえばそうなのだが……
エリスティア的には、女の子の同行者はやはり嬉しかった
勿論、シンドバッドや他の仲間との旅も楽しかったが
女の子はまた別格である
そのヤムライハが加入した事で、夜寝る時は女子は女子部屋で――――
というのが、通例なのだが……
エリスティア的にも、ヤムライハと一緒なら楽しいだろうと思う
着替える時、気を使わなくて済むし、何よりもベットを一人で使える
だが、今までシンドバッドと共にしていた手前、今更一人が良いですとは言えないのもあるし
正直、一人で寝るのは不安だ……
そもそも、シンドバッドが一緒に寝てくれる様になったのは、エリスティアが毎夜怯えた様に震えていたからであって、シンドバッドなりの気遣いから始まったものだ
今では、シンドバッドの側で寝るのが当たり前になっていたし、それが一番安心出来るのだ
「えっと……」
エリスティアが困った様にヤムライハとシンドバッドを見比べる
すると、不意にシンドバッドがエリスティアの肩を抱いて引き寄せた
「悪いな、ヤムライハ。たとえ女同士でもこいつだけは譲れないんだ」
「あ……」
そう言うなり、シンドバッドはエリスティアの髪に口付けを落とすとそのままぐいっと抱き寄せた
「ああ!!」
ヤムライハが、抗議の声を上げる
だが、シンドバッドは余裕の笑みを浮かべると、そのままエリスティアを引き連れて自身に割り当てられた部屋に入ってしまった
「ちょっとぉ!!」
尚もヤムライハが抗議の声を上げるが、それを見ていたヒナホホが苦笑いを浮かべながら
「あの二人は俺の村に来た時からああなんだ。だから、諦めた方がいいよ」
「そういう問題じゃありません!!」
尚も抗議するが、もう部屋に引きこもってしまった二人をどうする事も出来なかったのだった
部屋に入るなり、シンドバッドは羽織っていた表着を脱ぎ捨てた
それを見たエリスティアが小さく溜息をもらしながら、その表着を広いハンガーに掛ける
「もう、シン。ヤムは事情知らないのだから……」
エリスティアが小さく息を吐きながらそういうと、シンドバッドはベットに腰かけて
「じゃぁ、事情話したら納得するのか?」
「う……」
シンドバッドの言う事は正しい
事情を話したところで、納得はしないだろう
むしろ、もう一人じゃないから!と、言いかねない勢いだった
「それに――――」
不意にシンドバッドの手が伸びてきたかと思うと、そのままエリスティアを捕まえた
不意に、引き寄せられエリスティアがシンドバッドの腕の中に倒れ込む
「ちょっとシン――――」
抗議する間もなく、シンドバッドの唇がエリスティアのそれに重なった
「俺は、エリスと一緒に寝たいんだがな? エリスはどうだ?」
そう言ってにっこりと微笑む
シンドバッドの言葉に、思わずエリスティアが 「う…」 と言葉を詰まらせる
そして、もごもごと口籠りながら
「わ…私だって、シンと一緒が…その……」
「ん? 一緒が何だ?」
「~~~~~~だから…っ」
言うのが恥ずかしい
頬が俄かに熱くなるのを感じる
だが、それをシンドバッドが許す筈もなく
にこりと微笑んで、エリスティアの言葉を待っていった
「………一緒が……いいもの…」
観念した様にエリスティアがそう呟くと、シンドバッドが嬉しそうに微笑んだ
だが、エリスティアが一緒に寝るのはそれだけじゃなかった
どうしても、譲れないものがあったのだ
それは―――――
「シン、今日はちゃんと服着て寝てよ?」
「ん? 服は着て寝てるだろう?」
「起きた時も!!」
「それは、分からないな」
あははははと、笑いながらそう言うシンドバッドに、エリスティアは はぁ~~と重い溜息を付いた
そうなのだ
この男、寝ている間に服を脱ぐ癖がある
正直、最初はかなり驚いた
ついでに言うなれば、その現場(起きがけ)をヒナホホに見られて、一生懸命弁明したのは記憶に新しい
こんな癖、気付きたくなかった……
それだけ、心を許してくれているのかもしれないが…
女として、いきなり裸の男が隣に寝ていたら驚きを通り越して、失神しかねない
その点で言うと、女心が全く分かっていない
鈍感にも程がある
エリスティアは小さく溜息を洩らしながら
ヤムライハが部屋を部屋に訪ねて来る前にシンドバッドに服を着せなければ…
と、思うのであった
まだ、旅をしていた頃の話です
ヤムライハ加入直後ぐらいに思って下さいww
2014/02/15