水月華-二十四節気-

 

 01:立春・梅の花「新年の祝賀」

 (マギ 『CRYSTAL GATE』より:シンドバッド)

 

 

年の瀬――――

 

シンドリア王国では、王国上げての祭典が開かれていた

星の綺麗な夜の空に色とりどりの明かりが灯され、王城へと続く道を照らしている

街道にはいくつもの店が立ち並び、賑わいを見せていた

 

謝肉祭マハラカーン海宴祭シーヴァーハとは、はまた違った景色を見せていた

 

皆が皆、シンドリア王国の新たな年を祝おうと、祭典に足を運ぶ

 

そんな、様子をドラコーンが部下を連れて歩いている

祭典の警備隊長であるドラコーンが率先して見回りをすることで、部下たちにも一層気合が入っている様だった

 

子供たちも、嬉しそうにはしゃいでいた

つと、ドラコーンの足に何かが当たった

 

「うわっ・・・・・・」

 

と、同時に子供の声が響く

見ると、はしゃいでいた少年がドラコーンの足にぶつかった様だった

向こうの方から、母親らしき人物が慌てて駆け寄ってくる

 

「将軍、申し訳ございません! うちの子が――――」

 

母親が慌ててそう口を開くが、ドラコーンは微かに笑みを浮かべ

 

「うむ、子供は元気が一番だ」

 

そう言って、ぶつかってきた少年の頭を撫でた

すると、少年が嬉しそうに笑う

 

「あ、あの! オレ、いつか将軍みたいになります!!」

 

少年が目をキラキラさせながらそう言う

すると、ドラコーンは優し気に目を細め

 

「そうか、頑張るんだぞ」

 

「・・・・・・はい!」

 

母親が何度も頭を下げながら、少年を連れて王城の方へと向かう

その様子をドラコーンが微笑ましそうに見ていた時だった

 

「なんだ? お前もついに子供が欲しくなったのか?」

 

そう言いながら、やってくる大柄の男がいた

ヒナホホだ

 

ヒナホホはドラコーンの肩にがしっと腕を回すと

 

「子供はいいぞ~~!! 早く、子を作れ」

 

そう言って、笑っていた

すると、ドラコーンが少し呆れた様に

 

「そういう事は、王とエリスに言うといい」

 

「確かにな!」

 

ドラコーンの言葉に、ヒナホホが一本取られという風に笑った

 

「流石に、シンドバッドとの子をエリスも授かれば、王妃の件をうやむやにはできないだろうからなぁ~」

 

そう言って笑う

 

「うむ」

 

ドラコーンもそれに激しく同意する様に頷いた

まさに、これこそ「既成事実」である

 

 

 

 

一方、その頃の王城―——・・・・・・

 

そんな会話がされているとも、露とも思わず王城にいたエリスティアは慌てていた

それもそのはず、主役であり、シンドリア王国の主であるシンドバッドが未だ用意を済ませていなかったからだ

 

もう少ししたら、祭典の挨拶をする時間になる

それなのにシンドバッドときたら、祭典用の真っ白いドレスに身を包んだエリスティアを見るなり、手を伸ばしてきたかと思うと、事もあろうことか――――エリスティアに触れてきたのだ

 

そして、なし崩しのまま抱かれてしまったのである

 

せっかく、セットした髪も衣装もめちゃくちゃだ

時と場合を考えて欲しい

 

そして今に至る

 

エリスティアは、急いで自分の身支度整えると、シンドバッドの身支度に取りかかっていた

本音を言えば、湯あみをしたい

が、そんな時間はない

 

急がなければ、祭典の挨拶に間に合わなくなる

 

その時だった

 

「エリス―――――」

 

不意に、伸びてきた手がエリスティアの腰を引き寄せた

ぎょっとしたのは他ならぬエリスティアだ

 

「ちょ、ちょっと、シン・・・・・・っ。 待っ―――――」

 

「待って」という前に、その唇塞がれる

 

「んっ・・・・・・」

 

突然重ねられた唇が、酷く熱を帯びる

こんな事、している場合ではないのに・・・・・・

 

「・・・ぁ・・・・・・っ」

 

知らず、身体の力が抜ける

抵抗しなければ――――――

そう思うも、身体が言う事を利かない

 

「シ、ン・・・・・・っ」

 

「エリス・・・・・・可愛い」

 

シンドバッドからのその言葉に、エリスティアがかぁっと顔を朱に染める

何度も重ねられる口づけが、次第にエリスティアの思考を麻痺させていく

 

そのまま、シンドバッドの唇が次第に下に下がっていくと、エリスティアのふくよかな胸元に顔を寄せた

 

「あ・・・・・・っ」

 

ぴくんっとエリスティアが肩を震わせた

 

「エリス、我慢するな」

 

「が、我慢な、んて・・・・・・」

 

強がってそう言うも、もう限界に近かった

瞬間、がくっと力が抜けた様にエリスティアが膝を折る

 

だが、それは伸びてきたシンドバッドの手の寄って抱き寄せられた

 

「シン・・・・・・、あ、い、さつ、が―――――・・・・・・」

 

「ああ、そうだな」

 

悪戯が成功し少年の様にシンドバッドが笑う

そんな風に嬉しそうに笑われたら、怒るに怒れない

 

「でも、お前が悪いんだぞ? エリス」

 

「え・・・・・・?」

 

何を言っているのだろうか・・・・・・?

そう思った時だった、すっとシンドバッドがエリスティアの耳元で囁く様に――――

 

「決まってるだろう―――――? そんな魅力的な格好で俺の前に現れたお前が悪い」

 

そう言って、再び唇を重ねてくる

もう、エリスティアには抵抗する力が残っていなかった

そのまま、彼に―――――愛するシンドバッドに身を任せるしか出来なかったのだった―――――・・・・・・

 

 

 

 

 

 

***   ***

 

 

 

 

 

 

今、まさにシンドバッドからの新年の祝辞が述べられようとしていた

だが、その隣にはエリスティアの姿はなかった

 

 

 

「皆、今年一年、無事にシンドリアの為に、尽力してくれて感謝する!! 皆は俺の誇りであり、皆の為のシンドリア王国だ!!  新しい年も、これから一緒に歩んで行こう!!!」

 

 

 

 

 

わあああああああああああ!!!!!

 

 

 

 

集まったシンドリアの民達から、歓声の声が上がる

 

 

 

「我らがシンドリア王国と、その“ルシ”、そして八人将に―――――――乾杯!!!!!」

 

 

 

 

「シンドバッド王!!! エリスティア様!!!! 万歳!!!!」

 

 

 

 

民からの声に応える様に、シンドバッドが手を振る

 

一方――――その後ろでは

 

「おい、エリスはどうしたんだ?」

 

「ええ?! 確かに祭典用のドレスに着替えた筈だけど――――――」

 

シャルルカンからの問いに、ヤムライハが首を傾げる

間違いなく、エリスティアをちゃんと送り出したはずだ

準備を手伝ったヤムライハが言うのだから間違いない

 

「でも、いねーじゃねぇか」

 

「知らないわよ――――」

 

どんどん、喧嘩腰になり始めた二人の間にピスティが慌てて割って入る

 

「はいはい、そこまで――――! 新年のおめでたい席で喧嘩しない」

 

 

 

「してません!!!!」

「してねぇよ!!!」

 

 

 

二人の声がハモッた

 

それを見たピスティが「仲良いね~」とにやにやしたのは言うまでもない

 

その様子を見ていたマスルールとスパルトスが「はぁ・・・・・・」と溜息を付いていた

ちなみに、その横にいたジャーファルは、現れないエリスティアにはらはらしていた

エリスティアの性格からしてサボる様な事はない筈だ

現に、ジャーファルもエリスティアがシンドバッドの準備の為に部屋に向かたのを見ている

 

ということは・・・・・・

 

「シン、まさか・・・・・・」

 

なんとなく、嫌な予感を察した様にジャーファルがシンドバッドを見る

すると、シンドバッドは何でもない事の様に

 

「大丈夫だ、ジャーファル。 エリスは少し疲れてそうだった・・・・・・・・から、部屋で休ませてるだけだ」

 

いや、その「疲れた」原因はアンタだろ!!?

 

と、皆が思ったのは言うまでもない

 

「はっはっは! まったく、シンドバッド、お前らさっさと結婚しちまえ。 そして、早く子供作れ! 子供はいいぞ―――!」

 

「うむ」

 

と、全てを察した様にヒナホホがそう言うと、ドラコーンも深く頷いたのだった

 

 

 

こうして、シンドリア王国の新たな年が幕を開けようとしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

余談

 

その後、シンドバッドがジャーファルにこっぴどく叱られたのは言うまでもない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらは、本館連載中のマギの正月小話になります

新しい、新年の幕開け―――――

シンドリア王国の祭典の話です

 

とりあえず、八人将・・・・・・全部出したよな・・・・・・?????

また、誰か忘れてないか心配 笑

 

※元々、ぷらいべったーに掲載していたものです

 

べったー掲載:2022.01.03

本館掲載:2022.11.10