壱ノ題 君に花を贈る10のお題

 

◆05:るいせんからあふれ。 

 (MAGI:『CRYSTAL GATE』より:シンドバッド)

 

 

 

―――――シンドリア王国・中庭

 

その日、エリスティアは宮殿内の中央庭園で花の手入れをしていた

中央庭園には、色とりどりの花が咲いていた

 

どの花も、ヤムライハやピスティと相談してエリスティアが植えたものだ

勿論、専門の庭師はいるが

それでも、空いた時間は極力自分で手入れする様にしていた

 

今日の執務も終わった午後――――・・・・・・

エリスティアがいつもの様に、庭園の手入れをしていた時だった

ふと、視界にある花が入った

 

「あ・・・・・・」

 

それは、綺麗な蒼い薔薇だった

基本、花の「蒼」はないと言われている

しかし、エリスティアはある事がきっかけでこの「蒼い薔薇」の種と出会った

 

そして、そのままにしておくのも可哀想だったので、こうして庭園に植えたのだ

今はまだ本数は少ないが、いつかこの蒼い薔薇が沢山咲いたら綺麗だろうと、思った

 

「1本ならいいかしら・・・・・・」

 

エリスティアは少し考えた後、棘に気を付けながらそっと1本だけその蒼い薔薇をはさみで切った

そして、日の光に当ててみる

 

蒼い薔薇はきらきらとしていて、とても綺麗だった

 

「ふふ」

 

なんだか、嬉しくなって思わず笑みが浮かんでしまう

その時だった

 

きらっと、何かが薔薇の中で光った

 

「・・・・・・?」

 

気のせいだろうか

そう思って、エリスティアがそっとその蒼い薔薇を見る

瞬間、また きらっと何かが光った

 

「え・・・・・・?」

 

なに?

 

何か入っているのだろうか・・・・・・?

そう思って、そっと薔薇を手のひらに乗せてみる

 

その時だった

 

「エリス」

 

不意に名を呼ばれて、そちらを向くと

シンドバッドがこちらに向かって来ていた

 

「シン・・・・・・?」

 

シンドバッドはエリスティアの傍まで来ると、彼女の手の中のそれに気づいた

 

「その薔薇は・・・・・・」

 

「あ、覚えている? あの時の薔薇なの」

 

そう―――

それは少し前、この城の七不思議のひとつと噂のある“開かずの間”で出会ったのだ

この薔薇に――――・・・・・・

 

そう言うと、シンドバッドは懐かしそうに眼を細め

 

「あの時のエリスの怖がり様は、可愛かったな」

 

「な・・・・・・」

 

シンドバッドの言葉に、エリスティアの顔がどんどん赤く高揚していく

 

「な、何言っているのよ・・・・・・」

 

少し不貞腐れた様にエリスティアが少しだけ ふいっと目を逸らす

すると、すっと伸びてきた手がエリスティアの腰に回されたかと思うと、そのままぐいっと抱き寄せられた

 

「ちょっ、ちょっとシン・・・・・・っ」

 

シンドバッドの突然の行為に、抗議しようとするが

やはり、シンドバッドの方が1枚上手なのか・・・・・・

そのまま優しくエリスティアのストロベリー・ブロンドの髪に手を絡ませたかと思うと、口付けが降って来た

 

「ん・・・・・・」

 

最初は触れるだけの優しい口付けだった

だが、二度 三度と繰り返されるたびに、その口付けがどんどん深くなっていく

 

「ちょ、ま、待って・・・・・・」

 

身の危険を感じたのか・・・・・・エリスティアが慌ててシンドバッドを止める

だが、そんな簡単にシンドバッドが解放してくれるわけもなく――――・・・・・・

 

なし崩しのまま、そのまま押し倒されそうになって

流石のエリスティアもそれには慌てた

 

「だ、だめ!!」

 

エリスティアがぐいっとシンドバッドを押し退ける

彼女のその態度に、シンドバッドは少し不服そうに

 

「エリスは、俺とは嫌なのか? いつもあんないい声で啼いているのに――――・・・・・・」

 

「と、時と場所を考えて!」

 

突然何を言い出すのだ、この男は

だが、シンドバッドが全然気にした様子もなく

すっと、エリスティアのストロベリー・ブロンドの髪をすっとすくうとその髪に口付けを落とした

 

「俺は、いつどこでもエリスを愛する事が出来るぞ?」

 

そう言って、にやりと笑みを浮かべる

 

「~~~~~っ」

 

流石のエリスティアも言葉を失った様に、顔を真っ赤にさせて口をぱくぱくさせた

 

「と、とにかく! ここは、駄目――――」

 

そこまで言った時だった、ぽろっとエリスティアの持っていた蒼い薔薇から何かが落ちた

 

「え?」

 

シンドバッドがそれに気づき、すっと落ちた“それ”を拾った

 

「これは・・・・・・」

 

それを見た瞬間、エリスティアがそのアクアマリンの瞳を大きく見開いた

 

「え・・・・・・うそ」

 

それは、とても綺麗な蒼色をしたサファイアだった

 

「ふむ、ブルーサファイアかな?」

 

と、シンドバッドが言うが――――

違う

いや、確かにこれはブルーサファイアだが・・・・・・

この他のブルーサファイアとは比べ物にならないほどの鮮やかなブルーに

照明の下では密度濃く発色し、太陽の下では驚くほど印象的に青の閃光を放つのは――――・・・・・・

 

「まさか・・・・・・コーンフラワーブルーサファイア?」

 

ルビー、サファイア、エメラルドの三大宝石の一つであり

サファイアの中でも、別格の美しさを持つサファイア

 

それが、コーンフラワーブルーサファイアだ

 

「どうしてこんな高価なものが・・・・・・」

 

薔薇の中から出てくるのだ

 

すると、シンドバッドはそっとその石をエリスティアの手に乗せて

 

「きっと、薔薇が涙を流したんだな・・・・・・それが形となってこうしてエリスの元へやってきたんだよ」

 

「・・・・・・・・・・」

 

なんか、ワザとらしいほど説明的なシンドバッドの言葉に、一瞬エリスティアがそのアクアマリンの瞳を瞬かせた

が、次の瞬間くすくすと笑いだした

 

なんとなく、わかってしまった

この“仕掛け”をした犯人

 

「そうね、それなら―――指輪にでもして持ち歩こうかしら」

 

そう言ってにっこりと微笑む

 

「その方が、きっと喜んでくれるだろうし――――」

 

そう言って、シンドバッドの方を見る

 

そう――――彼はそういう人だから・・・・・・

 

「ありがとう」

 

小さな声でそう言った

その言葉が、“彼”に聞こえているかは分からないけれど――――・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作中に出てくる「蒼い薔薇」は、分かる方にはバレてしまうと思いますが

シン様のEpisode ZEROで書いている「七海の闇と光」に出てくる‟あれ”ですv

といっても、「七海の闇と光」もまだ書きかけですけどwww

蒼い薔薇はもう出てますけどねwww

 

 

 

2022.12.14