深紅の冠 ~無幻碧環~ 幕間

 

◆ 誕生日のプレゼントでした(夏油傑BD:2024)

 

 

 

「え?」

 

五条の言葉に、凛花がその深紅の瞳を瞬かせた。

すると、五条は半分面倒くさそうに、

 

「だから、今日誕生日なんだよね。傑の」

 

「……」

 

その言葉に、凛花が半分小首を傾げた。

それがどうかしたのだろうか?

そう思ってしまう。

 

すると、五条は何か言いたく無さそうに、視線を逸らしながら、

 

「なんか……傑が誕生日プレゼント欲しいのがあるっていうんだよ」

 

「え? あ、はい……」

 

夏油に希望があるならば、それを渡せばいいのではないだろうか?

だが、五条はそう思っていない様で、不満そうに顔を歪めた。

 

「……何か問題あるのですか?」

 

そう問いかけると、五条は「問題ある」とばかりに、こちらを見て、不満そうに頬を膨らませたのだった。

 

 

 

   ****    ****

 

 

 

「あの……」

 

何故、こんな事になっているのか……。

その日、凛花は何故か夏油と一緒に街を歩いていた。

 

というのも、五条の話だと夏油が欲しがった「誕生日プレゼント」というのが……。

 

「凛花ちゃん、何処か行きたい所はある?」

 

「え……あ、いえ……特には」

 

と、隣を歩く夏油に何故かリクエストを聞かれた。

そもそもどうして凛花が夏油と一緒に歩いているかというと……、なんでも、夏油の希望だと言うのだ。

しかもそれが、五条に頼んだ「誕生日」プレゼントだという。

 

どうして、凛花と街を一緒に散策したいが彼の「誕生日」の希望なのか……。

はっきり言って、謎である。

 

夏油とは、そこまで会った事ある訳でもないし、そもそもそんなに親しい仲でもない。

それなのに、何故、と思ってしまう。

 

だが、そんな凛花を他所に夏油は楽しそうに笑っていた。

 

その時だった。

ふと、夏油が何かを見つけたのか、凛花の手をぎゅっと握りしめて、

 

「あっちに、行こうか。美味しいケーキのあるカフェがあるんだ」

 

そう言って、凛花の手を引いて歩きだした。

凛花は「えっ……」と答えつつも、その後に続いて行くしかなかった。

 

カフェに付くと、テラス席に案内される。

すっと、自然に椅子を引いてくれる夏油に、凛花は少し戸惑いつつも、素直にお礼を言った。

すると、夏油が嬉しそうに笑ったのだ。

その表情が余りにも優しく見えて、知らず微かに頬が熱くなるのを感じた。

 

「あ、えっと、その……」

 

思わず、しどろもどろになってしまう凛花に、夏油がくすっと笑みを零す。

そんな風に優しく笑われると、何だか恥ずかしくなってしまい、凛花は慌てて口を開いた。

 

「きょ、今日は暑い、です……ね」

 

何とか誤魔化す様にそう言うと、夏油がふっと笑いながら、凛花の方に手を伸ばしてきて、

 

「あ……」

 

その手が、微かに凛花の髪に触れた。

そして、そのままその長い指に絡め取られる。

 

その仕草があまりにも自然で、凛花が かぁ……っと頬を朱に染めるのに、時間は掛からなかった。

 

「あ、の……」

 

堪らず、凛花が恥ずかしさのあまり俯いてしまう。

すると、夏油はくすっと笑って、

 

「悟の言った通りだ。髪、とても綺麗だね」

 

「え……」

 

突然、髪を褒められて、凛花が今までにない位 顔を真っ赤にさせた。

それから、慌てて視線を逸らすと、

 

「あ、ありがとう、ござい、ま……す」

 

何とかそう返すと、夏油が嬉しそうに笑った。

 

「どういたしまして。でも――」

 

突然、夏油の手がするっと髪から頬へと動く。

そして、そのまま凛花の頬を撫でると上へ向かせ、

 

「お礼は、私の目を見ながら言って欲しいかな」

 

そう言って、にっこりと笑ったのだ。

夏油のまさかの行動と言葉に、凛花が戸惑っていると、夏油はやはりくすっと笑いながら、凛花の頭を優しく撫でたのだった。

 

う……、何だか分からないけれど、恥かしい……っ。

 

凛花が、堪らずぎゅっとその瞳を閉じると、夏油がふと徐に、

 

「凛花ちゃんは、どうして今日、私が君を望んだか分かるかな?」

 

「え……?」

 

唐突にそう言われ、凛花がその深紅の瞳を瞬かせた。

そんなの、こちらが聞きたいぐらいだった。

 

「……あの、どうしてでしょうか?」

 

そう尋ねると、夏油は何でも無い事の様に、ふと少しだけ視線を遠くに向けて――。

 

「気になったんだ。悟が夢中になる〝神妻凛花〟っという人物にね。私も興味が沸いたとでも言おうか。一体、どんな女性なんだろうとね」

 

「……それは、その」

 

凛花が言葉に詰まると、夏油はくすっと笑みを零し、

 

「それを確かめたくて、君を指名したんだ。……私の中で君と言う存在がどんなものか――少し分かった気がするよ」

 

そう言うと、夏油が凛花を見た。夏油の濃い金の瞳と目が合う。

 

「凛花ちゃん、君は魅力的だ。今まで私が会ってきた女性の中で一番といえる程ね。悟が夢中になるのも分かるよ。君には君にしかない魅力がある。だから、悟も――そして、私も君に惹かれるんだろう」

 

それだけ言うと、夏油が不意に凛花に触れていた手で、彼女の顎に手を回した。

そして、そのまま上を向かすと――、

 

「どうかな? 悟は止めて私にしないかい?」

 

「……え?」

 

そう言って、にっこりと笑ったその時だった。

 

 

 

「ちょ――と、待ったあああああ!!!」

 

 

 

突然、何処からともなく五条が姿を現したかと思うと、後ろから凛花をぎゅっと抱き締めた。

まさかの、五条の登場に凛花がぎょとしたのは言うまでもなく……。

夏油は気付いていたのか、その姿を見るなり、くつくつと笑いだした。

 

「あ、あの……? 悟さん? いつから、そこに……」

 

戸惑いながらそう言う凛花を、自分の方に引き寄せると、五条はキッと夏油を睨み付け、

 

「傑!! 凛花だけは駄目だ!! ぜってー渡さねえ!!」

 

そう言うが、夏油はすました顔で、

 

「決めるのは、凛花ちゃんだ。悟じゃないだろう?」

 

そう言って、頭上でばちばち火花を散らし始めたものだから、凛花がそれに対して「お2人とも、いい加減にして下さい!!」と、キレたのは言うまでもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1日遅れ……夏油BDです(生存if)

五夢ベースなのでお気をつけ~

※便座上、ここに入れてるだけでーす

 

2024.02.04