◆ 忘れたくとも、忘れられない日(五条悟BD:2023)
12月7日。
この日が、何の日か忘れたことはないけれど――それでも、進んで何かをしようと思った事はなかった。
兄である、昴が死んでからは―――。
の、筈なのだが……。
何故か、仕事が終わって部屋に戻るとサングラスをした五条悟がにこにこ顔で人のベッドに座って待っていた。
「…………」
凛花が思わず、顔を顰める。
が、五条は気にした様子もなく凛花に気付くと、ぱっと嬉しそうに顔を綻ばせた。
「あ、凛花ちゃん。お帰りー!」
そう言って、いそいそと凛花の元へやってくると、
「お風呂にする? ご飯にする? それとも……僕にす―――「何、訳の分からない事を言っているんですか、悟さん」
ずばっと、五条の台詞をぶった切ると、凛花はとんとんっと自身の肩を叩きながら、持っていた荷物をテーブルの上に置いた。
「あの……着替えたいので、部屋から出て行ってもらえます?」
凛花がそう言うと、五条が全然気にした様子もなく、
「あ、僕に気にせず着替えていいよー」
「いや、流石にそれは……」
どうかと思うんですけど……。
と、言いそうになると、ふと、五条が凛花の腰を引き寄せた。
突然の行為に、凛花の顔が かぁっ朱に染まる。
「ちょっ、ちょっと悟さ―――」
「凛花ちゃん、今日何の日か知ってる?」
「え……」
その言葉に、凛花がぎくりと顔を強張らせた。
知っている。
知っているけれど―――。
凛花は、ふいっとその深紅の瞳を五条から逸らすと、気付かないふりをする様に、
「さ、さぁ、何かの日だったかしら?」
そうとぼけると、五条がにやりと笑ったかと思った瞬間―――そのままぐいっと腰を更に引き寄せられたかと思うと、そのまま唇を奪われた。
「んっ……、さ……悟、さ――」
突然の口付けに、凛花が困惑の色を示す。
だが、五条は気にした様子もなく、そのまま凛花の唇を貪る様に何度も角度を変えて口付けしてくる。
「……ぁ、待っ……んン……っ」
なんとか抵抗の意志を見せるが、腰をがっちり掴まれていて、びくともしない。
すると、五条がくすっと微かに笑みを浮かべ、
「凛花さ、俺にキスされるの好きだよね」
その言葉に、凛花が かぁっと顔を赤くする。
だが、そこで素直に認めないのはいつもの事で―――。
「そ、んな、こ……と……っ」
なんとかその言葉を紡ぐと、五条はやはりくすっと笑って、
「嘘だね。凛花が俺の事好きなのは分かってるんだ。ちなみに、俺は凛花の事昔からずっと愛してるよ」
「……っ」
五条の言葉に、凛花の顔がますます赤くなる。
違う。
私は……私は―――。
でも、本当は……。
ぎゅっと堪らず、凛花が五条の服を掴んだ。
それで気分を良くしたのか、五条がぺろっと凛花の唇を舐めると、そのままくいっと彼女の顎を持ち上げた。
「……ぁ……」
潤んだ彼女の深紅の瞳が、五条の視界に入る。
その顔が自分を煽っているなんて、彼女は思いもしないだろう。
「なぁ。“今日”が何の日か――知ってるよな?」
そう言って、再び彼女の唇を奪った。
今度は、先程の様に軽くではなく――もっと、激しく。
凛花が苦しそうに、五条の胸を叩くが、五条はそんなのお構いなしに彼女の唇を貪り続けた。
くちゅっと湿った水音が耳につく。
「ん……っ、さと……る、さ……っ」
やがて、息苦しくなったのか、凛花が僅かに口を開けたのを見計らって舌をねじ込むとそのまま彼女のそれと絡ませる。
じゅっと吸い上げると、ぴくりと凛花の体が震えた。
抵抗の意味なのか、凛花は五条の服を強く握りしめて離さないので、仕方ないとばかりに口付けを解くと、その首筋に顔を埋めて舐め上げる。
彼女の白い首筋が、五条の唾液で光った。
そして、そのまま彼女の鎖骨に舌を這わせながら、もう片方の手はゆっくりと彼女の胸に這わせた。
瞬間、びくんっと凛花の身体が震える。
「ちょ、ちょっと……待っ……」
凛花が、慌てて五条の手を掴むと、潤んだ深紅の瞳で五条を睨むと凛花が口を開いた。
「だ、駄目……っ。さ、悟さん……」
「なんで?」
「なんでって……」
そう問われても困る。
でも、ここで許してしまってはなし崩しのまま抱かれるのが目に見えていた。
「と、とにかく! 駄目なものは駄目です!!」
そう言って、なんとか凛花が五条から離れようともがくが、やはりびくともしない。
そんな彼女が可愛らしくて、ついふっと五条は笑ってしまう。
「俺、今日誕生日なんだけど?」
「……知っています」
ぼそっと、凛花がそう呟いた。
「じゃあ、俺のいう事、聞いてくれてもいいよな?」
「……」
五条のその言葉に、凛花はぐっと黙り込む。
そんな彼女の態度にくすりと笑うと、そのまま五条の手が再び彼女の胸に這わせられた。
「……っ」
びくんっと凛花の体が跳ねる。
「さ、悟さん……っ」
駄目だから――。
そう言おうとした瞬間、凛花の身体がふわりと浮いた。
そして、どさっという音と共に、ベッドへと押し倒される。
しまったと思い、五条を見上げると――。
そこにはいつの間にサングラスを外したのか、あの綺麗な碧色の瞳で凛花を見下ろす五条の姿があった。
「あ……」
駄目だ……。
と思った時には、時すでに遅しで――。
その日の夜は、五条にいつも以上に抱かれる羽目になったのは言うまでもなかったのだった。
五条せんせの誕生日(通常版)です
※R18版はこちら※
※べったーとXに上げていたSSです
2023.12.23