深紅の冠 ~無幻碧環~ 幕間

 

◆ 五条悟の“癒し”について

 

神妻凛花の朝は早い。

基本、泊まり込みの仕事でもない限り、5時には起きて、自主練。

その後、汗を流すためにシャワーを浴びてから、朝食を取る。

 

今日も、自主練が終わって部屋に戻ってきてシャワーで汗を流していた。

やはり、朝は何かと効率がいい。

 

目も覚めるし、空気も心地よい。

頭もすっきりして、一石二鳥……いや、一石三鳥ではないだろうか。

 

などと思いつつ、シャワールームからバスローブを羽織ってタオルで髪を拭きながら出てきた時だった。

 

「あ、凛花ちゃん! おはよー!」

 

「…………」

 

何故か凛花のベッドに、銀髪に黒いサングラスをした不審な男が座っていた。

いや、正確には勝手に部屋に入ってきていた。

 

思わず凛花が扉の方を見る。

鍵はしっかりと掛けた筈……なのだが、何故か鍵が開けられていた。

 

何故!?

と、突っ込みたいところだが、ここ最近のいつものパターンなので最早驚きすら感じなかった。

凛花は、小さく息を吐くと、

 

「……悟さん。何度も言うようですけど、不法侵入でそろそろ訴えますよ?」

 

と、目の前の不審な男―――五条悟にそう言いながら、半分無視して五条の横に座るとそのまま髪を拭き始めた。

 

すると、まるでお決まりの様に五条がするっとそのタオルを奪う。

 

「あ-駄目駄目! 凛花ちゃんの髪拭くのは僕の仕事でしょ?」

 

「……そんな仕事、割り振った覚えはありません」

 

そう毎回言っているのに、五条は気にも留めず凛花の髪を拭き始めた。

悔しい事に、その手付きが気持ちよくて思わずほだされそうになる。

 

凛花は、また小さく息を吐くと、

 

「悟さん、暇なんですか? 貴方ほど忙しい人はいないと思うんですが……」

 

「ん? 忙しいよー」

 

と、あっさり答えが返ってきた。

いやいや、忙しいならそっち行きなさいよ!!

 

と、突っ込みたいところである。

すると、五条は凛花の髪の端をゆっくりと拭きながら、

 

「忙しいから、たまには“癒し”が必要なんです!」

 

「はい?」

 

それと、自分が何の関係が?

と、凛花が首を捻ると、不意に五条が凛花の髪に自身の指を絡ませて、

 

「ねぇ、凛花。こっち向いて」

 

「え?」

 

と、思った瞬間――突然、五条の手が後ろから凛花の顎に回されたかと思うと――、

そのまま、ぐいっと五条の方に引き寄せられた。

 

「ちょっ……悟さ―――」

 

いつの間にか外されたサングラスの下にあった碧色の瞳と目が合う。

 

「さと―――んんっ」

 

そのまま唇を塞がれた。

 

「……ぁ……」

 

突然の口付けに、凛花の肩がぴくんっと跳ねる。

ぐっと、五条は構わずに凛花に頭を押さえてきた。

 

「……っ、ぁ……さと、る、さ……待っ……」

 

「駄目。待てない」

 

そう言って、五条の手がいつの間にか凛花の腰を強く引き寄せた。

 

「“癒し”が欲しいって、言っただろ」

 

「……っ、そん、な、事っ、言われ、て……も……」

 

何とか抵抗しようと、凛花が五条を押し返そうとするが、

力で五条に適うはずもなく……、そのまま何度も角度を変えて、口付けが降って来る。

 

徐々に、思考が麻痺していく。

頭が上手く働かない。

 

「ほら、凛花。もっと口開けて」

 

「……え?」

 

何を言われているのか分からず、徐に顔を上げると、口付けが更に深くなった。

瞬間、凛花の口の中に、五条の舌が入り込む。

 

ぴくんっと凛花の身体が反応した。

だが、構わずに五条の舌が歯列をなぞる様に動く。

 

「……んっ、ぁ……」

 

ぎゅっと五条に抱き寄せられた凛花の頭が、段々ぼぅ……っとしていく。

一瞬の隙を突いて、五条の舌が凛花の舌に絡みついた。

 

「……っ、ふ、ぁ……んンっ、さと、る、さ……っ」

 

そのまま舌を甘噛みされ、吸われる。

その度に、凛花の肩がぴくんっと震えた。

 

「……凛花……」

 

甘く名を呼ばれ、凛花がぴくっとまた反応した。

思わず、五条の服をぎゅっと握りしめる。

 

身体中が痺れる様な感覚。

どんどん、頭がくらくらしてきて何も考えられなくなっていく―――。

 

そのまま暫くしてから、ゆっくりと唇が離れた。

互いの唇から伝う糸が妙に生々しい。

 

身体が熱い。

そして、力が抜けていくのが分かる。

 

そんな凛花の様子を見て、五条はくすりと微笑んで、自分の膝の上に座らせた。

そして、ちゅっと軽く唇に口付けると、 今度は凛花の頭を優しく撫でてきた。

 

まるで猫を甘えさせる様に、撫でてくる五条に、凛花が思わずその顔を赤くした。

そんな凛花を見て、嬉しそうに五条が笑う。

 

そして、そのままぎゅっと抱き締められたかと思うと、また小さく口付けを落とされた。

 

「うう……」

 

 

……何だかいつもこうなってしまっている気がする……。

いや、何故か完全拒否することが出来ない自分も自分なのだが……。

 

だからって……、

毎日毎日はないでしょう!!!!

 

と、突っ込みたい。

正直、恥ずかしさのあまり穴があったら入りたい気分だ。

 

だが、そんな凛花の心情を察してか知らでか、五条にぎゅっと抱き締められた。

 

「凛花、可愛い」

 

耳元でそう甘く囁かれて、凛花が かぁ……っと、顔を赤く染めた。

それから、慌てて誤魔化す様に、

 

「……っ、……で、ですからっ! そ、そういう事を真顔で言うのは止めて下さい!」

 

「ん? “真顔”?」

 

そう返す五条の顔は、にやにやと笑っていた。

思わず、突っ込みたくなるが何とか我慢する。

 

そんな凛花の気持ちなどお構いなしに、五条はそのまま更にぎゅっと抱き締めて来た。

そして耳元でそっと囁く様に―――。

 

「……だって仕方ないだろ? ……思ったんだよね」

 

「え?」

 

何を言い出したのかと首を傾げると、

 

「やっぱり、俺の“癒し”は凛花かな……って」

 

「……え……」

 

五条の言葉に、凛花がその深紅の瞳を瞬かせると、五条は笑いながら、

 

「だから、凛花ちゃんも“覚悟”してね?」

 

「え? あ、いや、あの……」

 

「はい! そゆことで!!」

 

「いやいや、“そういう事”じゃないでしょぉ!!!」

 

ぱんっと、五条が手を叩いてにっこりと微笑むが、

凛花がそれに対して突っ込んだのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五条せんせの”癒し”って……笑

※べったーとXに上げていたSSです

 

2023.12.23