MARIKA

-Blue rose and Eternal vow-

 

  Act. Ⅱ アーロンパーク 12

 

 

 

「つー訳で、ナミの奴はおれを殺したと見せかけて逃がしてくれた。どうやら、あいつが魚人海賊団にいる事にはワケがあるとおれは見てる!!」

 

ウソップの言葉にサンジとレウリアが深く頷いた

 

「当然だな」

 

「そうね…何かあるとは思っていたけど……ただ、その理由が分からないままでは動き様がないわよ?」

 

ナミが頑なに拒絶する理由

自分の手を犠牲にしてまでウソップを助けた理由

そして―――アーロン一味に組みしている理由

 

すべてが、一つに繋がっている――――そんな気がした

 

「どうする? 乗り込むか?」

 

突然発せられたゾロの言葉にウソップがぎょっとして慌てて首を振る

 

「ちょっ…! ちょっと待てよ!! その前にナミにどんな理由があるのか突き止めねェと!!」

 

その言葉に、レウリアが小さく頷いた

 

「マリモさん、乗り込んで解決するなら もう、とっくの昔に解決しているわよ。 でも、実際はそうはならなかった…でしょう?」

 

レウリアの言葉に、ゾロが不機嫌そうにちっと舌打ちをする

 

その時だった

 

 

 

 

「無駄だよ」

 

 

 

 

 

はっとして後ろを振り返ると、そこには褐色の肌に刺青を入れた女が立っていた

 

誰……?

 

見たことのない人物だった

その女は、腰に手を当てたままじっとこちらを見ていた

 

「あんた達が何をしようと、アーロンの支配は終わらない」

 

「ノジコ!」

 

彼女の言葉にいち早く反応したのは、他ならぬウソップだった

ルフィがきょとんと目を瞬かせて、ノジコと呼ばれた女を指さす

 

「だれだ?」

 

「ナミの姉ちゃんだ」

 

「ンナ!!…ナミさんのお姉さまvv 流石お綺麗だァ~~~~vvv」

 

“ナミの姉“という言葉に、サンジが目をハートマークに変えてうっとりする

それを見たレウリアは半ば呆れながら

 

「サンジさん、落ち着いて」

 

今にもノジコに飛び掛からんとするサンジを言葉で制する

するとサンジは、くるっと振り向きながら

 

「やだなぁ~リアさん、焼きもちやいてくれるんですかァ~vvv」

 

「はい?」

 

一瞬、何を言われたのか理解出来ずレウリアが首を傾げる

だが次の瞬間、サンジはキリッと顔を引き締めると、突然がしっとレウリアの両手を握り締めた

 

「あの…? サンジさん???」

 

益々意味が分からず、レウリアが更に首を捻ろうとした瞬間――――

 

「ご安心ください。 おれはリアさん一筋ですから!!」

 

「……はぁ…」

 

仰る意味が良く分かりません

思わず、そう突っ込みたくなる

 

「でも、お姉さまも素敵だァ~~~~vvv」

 

と、「一筋」と言った口で更に身体をくねくねさせながらノジコを褒め称えた

 

「何処が一筋なんだよ」

 

と、それを見ていたゾロが突っ込んだのは言うまでもない

 

これだは話が進まない

とでも言う様に、レウリアはサンジを無視してノジコの方を見た

 

「無駄って、どういう事かしら?」

 

レウリアがそう尋ねると、ノジコは瞬き一つせずにこちらを見据えたまま

 

「お願いだから、これ以上この村に関わらないで。 ナミを放っておいてあげて! 経緯は全て話すから、大人しくこの島を出な」

 

「経緯……?」

 

レウリアがはっとした様に声を洩らした

 

「それは、ナミがアーロン一味に加わる様になった理由かしら?」

 

その言葉にノジコは小さく頷いた

 

「ええ…聞けば、この島を出ていく気になるわ」

 

それこそ、今自分達が一番知りたい事だった

もしかしたら、話を聞く事で解決の糸口が見つかるかもしれない

 

「よーよし、なら聞かせてもらおうじゃないか! そのわけとやらを――――」

 

ウソップがそう言った時だった

 

「おれはいい」

 

「え?」

 

突然ルフィが口を開いたかと思うと、すたすたと歩き出した

 

「お、おい!」

 

ウソップが驚いてそう声を洩らすが、ルフィは止まらず歩いて行った

 

「あいつの過去になんか興味ねェ」

 

そう言って、そのままノジコの横を通り過ぎる

 

「おい、何処に行くんだよルフィ」

 

サンジの問いに、ルフィは何でもない事の様に一言

 

「散歩」

 

「散歩って、お前!! 話聞かねェのかよ!?」

 

ウソップが慌てて止めようと叫ぶが、ルフィはそのまますたすたと歩きながら

 

「うん、いい」

 

それだけ言い残すと、そのまま歩いて何処かへ行ってしまった

 

「……あいつは?」

 

呆気にとられたノジコがそう尋ねてくる

無理も無い

こっちが一番知りたいであろう事情を話すと言っているのに、聞かないというのだ

 

戸惑いの色を見せるノジコに、レウリアは苦笑いを浮かべながら

 

「気にしないで、ルフィっていつもああだから」

 

「でも……」

 

さらにそう続けるノジコに、ゾロが木陰の方に歩いて行きながら

 

「話なら、おれ達が聞く。 ま、聞いて何が変わる訳でもねェと思うがな」

 

そう言って、どっかりとその場に腰を下ろしたと思った瞬間

 

「んがー、ぐごぉー」

 

「寝てるし……」

 

「言った傍から、寝てんじゃねェよ!!!」

 

ウソップが突っ込んだのは、言うまでもない

 

ゾロといい、ルフィといい、本当にここの男達は…

レウリアが、呆れにも似た溜息を洩らした

 

「えっと…重ね重ねごめんなさい。 話はきちんと聞くから……」

 

レウリアが苦笑いを浮かべながらそう言う

 

「………おれも聞くぜ!! この島で何が起きてんのか、ちゃんと理解してェ」

 

「おれもv ナミさんの全てが知りたいぜ」

 

と、ウソップとサンジ

 

ノジコが、それぞれをもう一度見渡した

 

話を聞かずに散歩にいたルフィ

聞くと言って即寝したゾロ

レウリア一筋と言いつつ、ナミの全てが知りたいというサンジ

自分をキャプテンと名乗った、ウソっぽいウソップ

そして、一番苦労してそうなレウリア

 

ノジコが、はぁ…と呆れた様に溜息を洩らした

 

一癖も、二癖もある連中

 

でも――――……

 

「成程…ナミが手こずる訳だ……」

 

その顔には、笑みが浮かんでいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      ◆      ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「海軍船が海岸に来たって!?」

 

海岸は騒ぎだった

今まで近づく事すら叶わなかった海軍の船がこのコノミ諸島に着岸しているのだ

 

「第16支部の船だ!!」

 

「もしかして、さっきの77支部の件で本部が動くという話じゃあ……」

 

そんな期待が膨らんでいく

ごくりと息を飲み、海兵が降りてくるのを見守っていると…

 

ザッと一列に並んだ海兵の後ろから、1人の男が姿を現した

ひょろりとした風体に、MARINEと書かれた帽子には小さな耳と、髭

まるでネズミを思わせるその風貌に皆が首を傾げた

とても、この男がアーロンの攻撃をしのいで来たとは思えなかったからだ

 

男は、「チチチチ」と笑みを零すと

 

「私は、海軍第16支部大佐ネズミだ。 ココヤシ村の駐在ゲンゾウを呼べ」

 

その言葉に、皆が更に顔を見合わせた

 

その場に居合わせたゲンゾウは、隣のドクターと顔を見合わせると、一歩前に出た

 

「私がゲンゾウですが、大佐殿」

 

ゲンゾウを見たネズミはにやりと笑みを浮かべて

 

「君かァ…ナミという女の家に案内したまえ」

 

その言葉に、ゲンゾウが顔を顰めた

 

「ナミ…ですか? 一体どの様なご用件で……」

 

「君はただ、案内をすればいい」

 

そう言ったネズミの顔は酷く歪んでいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      ◆      ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハチが粉々になった船の残骸の瓦礫を押し上げながら中を覗いた

しかし、その船にはもう誰一人残っていなかった

 

「ふーいやァ驚いたぜ、天から船が降って来るのを見たってのは本当の話だったんだなァ」

 

数時間前、突然部下の一人が奇妙な事を言ったのだ

 

「天から船が降って来た」と

 

その部下を疑う訳じゃなかったが、余りにも話が突飛過ぎて俄かには信じられなかった

そこで、ハチ、チュウ、クロオビの幹部3人が様子を見に来たのだ

部下の言っていた方角には、確かに船の残骸だけが残されていた

どうやら、これが「天から降って来た船」らしい

 

だが、クロオビは冷静だった

 

「どうやら、この島に普通の人間じゃねェ奴が降り立った様だな…」

 

その言葉に、チュウが静かに頷く

 

「一体誰が…何の目的で――――」

 

その時だった

ハチの視界に、見知らぬ少年が歩いている姿が目に入った

 

「見ろ! あいつは!? この島の人間じゃねェ!!」

 

この島の人間は全て把握している

だが、視界の先を歩く少年には見覚えがなかった

明らかに、“外”から来た人間だという事に、間違いはなかった

 

この船といい、見覚えのない島外の人間といい

答えは一つだった

 

ハチとチュウとクロオビは、その少年の通るであろう道を塞ぐかのように、立ちはだかった

 

ふと、麦わら帽子を被っていた少年がそれに気付いたのか顔を上げた

だが、ハチ達を見ても特に驚いた様子もなく、ただぽつりと

 

「ああ、あれか…魚人ってのは……」

 

と小さな声で呟いた

 

そして、睨みつけるハチ達を気に掛ける事もなくそのまま素通りしていったのだ

まさか、無反応を返されるとは思わず、そのまま去って行く少年めがけて慌ててハチが叫んだ

 

「お、おい! 待て!! お前!!」

 

その瞬間、ふと少年が足を止めた

ゆっくりと振り返ると、何事も無かったかのように

 

「ん? 呼んだか?」

 

「お、おおおおお前誰だ! この島で何してるんだ!?」

 

「そんな事聞いて、どうすんだ?」

 

まさか、質問を質問で返されるとは思わず、ハチが動揺の色を見せる

彼の言う事は正しい

何かしようとして止めた訳ではないのだから

 

「そ、それもそうだ…お前の言う通りだ…」

 

ハチが反応に困っていると、少年は何でもない事の様に

 

「おれはルフィ。 散歩中だ」

 

と、あっさり答えた

 

「散歩中??」

 

「ああ」

 

それを聞いたハチはにぱっと笑って

 

「なんだ、散歩中か! いってらっしゃーい!」

 

と、6本の手でハンカチを振りながらそのルフィという少年を見送ったのだ

だが、クロオビは違った

訝しげに眉をひそめると、ルフィという少年を見た

 

今まで自分達を見た人間は皆、恐怖と畏怖を露わにした

しかし、あの男は――――

 

「貴様、何処へ向かっている」

 

「さぁ? そんなの知るか」

 

チュウの問いにそう答えると、ルフィという少年はそのまま何処かへ行ってしまった

 

ハンカチを振り終えたハチはその顔に笑みを浮かべながら

 

「アハハハ、なんか笑える奴だったなァ」

 

だが、チュウとクロオビの顔は笑っていなかった

 

「あいつ、一体何者だ……?」

 

「おれ達に臆する事なく歩いて行きやがった…得体の知れねェ奴だ…」

 

ただ歩いていただけ…

それが、酷く不気味に見えたのだった――――……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――8年前

     ココヤシ村

 

まだ、ナミとノジコが幼かったあの日――――あの人はまだこの村にいた

2人が生涯忘れ得ぬ人

 

彼女の名は―――ベルメール

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ついに、次回よりベルメールさんの話になります

と言っても、 過去話をだらだら続けても仕方ないので…

 

サンジの時みたく、2話ぐらいで収めたいなぁ…(希望)

 

2014/12/28