MARIKA

-Blue rose and Eternal vow-

 

  Act. Ⅰ 海上レストラン 20

 

 

「おれはそういう甘ったれた“義”や“情”なんてモンが最も嫌いだと常々言ってある筈だ。いいか、これは“戦闘”なんだ。勝利のみを目的とした戦いだ。勝ちゃあいいんだよ!たとえ、こんな“毒ガス弾”を使ってもな!!!」

 

瞬間、パカッとクリークの肩当ての中央が開く

 

ど……

 

 

「毒ガスですって……!!!?」

 

それこそが、クリークが東の海(イーストブルー)で最強を誇った“武力”

 

“MH5”という毒ガス弾だった

 

 

首領(ドン)!!」

 

 

ギンが、必死になってクリークを止めようと叫んだ

だが、ギンの声はクリークにはまったく届いていなかった

 

クリークは、にやりと笑みを浮かべ

 

「一息吸えば、全身の自由を奪う猛毒よ……これが、“強さ”だ!!!」

 

瞬間、クリークの盾から砲弾が放たれた

ぎょとっとした海賊達は、慌てて持っていたガスマスクを装着する

 

「やべェ!!海へ潜れ!!」

 

コック達も、慌てて海へ潜りこむ

そうこうしている内に、放たれた毒ガスがバラティエに向かって飛んできた

 

あんなものを食らったら、もうここは終わりだ

命がどうこうじゃない

毒ガスなど店に撃ち込まれたら、レストランとして当分営業は不可能だ

 

ルフィは、にやりと笑みを浮かべると

 

「あんなもん、海に叩き落としてやる!!」

 

そう言って、バラバラのヒレから飛び出して行った

 

「駄目よ、ルフィ!!」

 

「バカ、戻れ!!」

 

レウリアや、サンジの制止も聞かずに、ルフィは砲弾に向かって飛び出した

 

「毒ガスなんか……っ!」

 

そう叫んで、ルフィが蹴り飛ばそうとした時だった

 

瞬間、にやりとクリークが笑みを浮かべる

 

「…………駄目…っ! それは違うわ!!」

 

毒ガスなんかじゃない!!

あれは、違う!!

 

レウリアが止めに、走ろうとした瞬間――――クリークの放った毒ガス弾が、分裂した

瞬間、ルフィの目の前で破裂した砲弾の中から無数の飛び道具が飛び出す

 

「!!!!?」

 

「うわっ!」

 

「きゃぁっ」

 

いきなり、こっちにまで飛んできた飛び道具がサンジやレウリアの方も向かって飛んでくる

2人は咄嗟にそれを避けるが、目の前で破裂したルフィはその飛び道具を何発か食らってしまった

 

「……ぐっ…痛ェ~~~~~~~!!!!」

 

流石のゴム人間といえ、砲弾ははね返せても刃物は別だ

いとも簡単に斬れてしまう

 

ルフィは、肩や足などをに飛び道具があたり、パックリ斬れてしまっていた

 

「ルフィ!!」

 

レウリアが、慌てて駆け寄る

 

「ってェ~~~~~~」

 

ルフィが、ふーふーと斬れた肩に息を吹きかける

 

「もぅ!何やっているのよ!!」

 

レウリアは、スカートの裾をビリッと切り裂くとそのままルフィの肩を止血し始める

 

「いいよリア、お前の服破けちまうじゃん」

 

「……そう思うならば、変な無茶しないで」

 

こんなんじゃぁ、心臓が幾つあっても足りない

そう思いながら、ぎゅぅっ思いっきり締め上げた

 

「痛ェ~~~!!」

 

ルフィの叫び声に、「痛くしてるのよ!!」と、レウリアが言ったのは言うまでもない

 

サンジは、飛んできた飛び道具を見て首を傾げた

 

「なんだこりゃぁ…手裏剣……?」

 

それは、東のなんとかいう国にあるという飛び道具の一種だった

 

瞬間、ぶぱぁっとガスマスクを付けて海に潜っていた海賊達が一斉に顔を上げた

そして、その手裏剣を見た瞬間

 

「…………炸裂手裏剣か!!」

 

「ダマし撃ちだ!!」

 

その海賊達の言葉に、ルフィがハッとして

 

「あれ!?毒ガスじゃねェ!!!」

 

 

「「おせェよ(遅いわよ)!!」」

 

 

サンジとレウリアが突っ込んだのは言うまでもない

その反応に気分を良くしたのか、クリークが笑い出した

 

「ハッハッハ!バカか!!貴重な毒ガス弾だ。使う場所を選べば小せェ町の一つぐらい毒に冒せる代物を、たかが3匹のゴミを殺るのに使うまでもあるまい!」

 

「…なるほど、一本取られた

 

 

と、クリーク言葉にルフィがあっさり納得する

 

「いや、納得する所じゃないから!」

 

と、レウリアがすかさず突っ込んだ

 

クリークは、にやりと笑みを浮かべると

 

 

「戦闘ってのは、こういうことさ!お前を殺す方法などいくらでもあるんだ!!さァ言ってみろ!!おれか お前か、どっちが “海賊王”の器だァ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

「おれ。 お前、ムリ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうね、私もルフィだと思うわ」

 

と、ルフィに続き、レウリアまでそう言い切った

加えて、追い打ちをかける様にレウリアは小さく息を吐くと

 

「ダマし撃ちって…意外と大した事ないのね。この程度だとは思わなかったわ」

 

レウリアの言葉に、うんうんとルフィが頷く

ここまできっぱり言い切られると、ある意味清々しい

だが、クリークの怒りの沸点を上げるには十分だった

 

ピキリ…と、今にもブチ切れそうな位クリークの眉間に皺が寄る

 

「…………………っ!!ギン!!そのコックは、てめェが責任もって息の根を止めろ!!」

 

そこまで叫ぶと、ギロリとルフィとレウリアを睨みつけた

 

「そこの世間知らずどもは、おれが殺る!!」

 

クリークの言葉に、ギンは一度だけその瞳を瞬かせると、サンジを見据え

 

「―――分かりました、首領(ドン)・クリーク」

 

「おい、翔風、小僧!おれ様が東の海(イーストブルー)を制した本物の“武力”ってやつをたっぷりと味あわせてやる。 悪魔の実だろうとなんだろうと、お前ェらのその下らねェ能力は無意味だって事を思い知れ!」

 

「……………」

 

レウリアが、小さく溜息を付いた

ゆらりと、彼女の金にも似た銀色の髪が風も無いのに揺れ始める

くるくるくると、辺りを何かが回り始めた

 

「ごちゃごちゃと、煩いわね……ご託を並べて何が言いたのよ。―――ルフィ!」

 

ピイイイイと、何かがレウリアの周りで鳴き始める

その声に、くすりとレウリアが笑み浮かべた

 

「ネフェルティが早くしろって言っているわよ」

 

レウリアの言葉に、ルフィがいつもより数段低い声で

 

「分かってるさ。――――おれは、あいつをぶっ飛ばす。それだけだ」

 

そう言って、ぐいっと麦わら帽子を押さえた

そして、ニッと笑みを浮かべると

 

「今そっち渡っていくからな!首洗って待ってろ!!」

 

レウリアとルフィの宣戦布告とも取れる言葉に、クリークがギリッと奥の歯を噛み締めた

 

「……減らず口を…っ」

 

 

 

 

一方、サンジは何も言わずにギンを見ていた

ごくりと、海賊達をその様子を見ていた

 

「へへへ、これであのコック野郎もお終いだ」

 

「おうさ!あの武器を手にしたって事は、ギンさんは本気だっていう事だ」

 

ギンがサンジを見下すような瞳で、持っていたトンファーをくるり くるりと回し始める

そのまま、どんどん回転を速めていく

 

「あの人の異名は―――“鬼人”」

 

「敵が泣こうが喚こうが容赦なく殴り殺す……情けの欠片もねェ鬼人なんだ……っ」

 

敵にしたら最後

死ぬまで、なぶり殺す

それが、ギンという男だった

 

ギンが、トンファーを回転させながら一等低い声で叫んだ

 

「……悪いが、サンジさん。あんたじゃ、おれには勝てねェよ……!」

 

ギンの言葉に、サンジはタバコを吹かしながらにやりと笑みを浮かべた

 

「……へぇ…言ってろよ。上等だ、ザコ野郎」

 

その時、ギンが反動をつける様に腰を屈めた

瞬間――――

 

「――――行くぜ!」

 

一気に、サンジめがけて駆け出した

 

「やっちまェ!!ギンさん!!!」

 

オオオオオオオオオ!!!!と、海賊達が一気に興奮し始める

サンジは、そんなギャラリーを無視する様に、蹴り返して止めようとその態勢に入ろうとした

が、何かを感じ瞬間的に一歩手前で蹴りをさく裂させる

 

案の定、ギンがその蹴りを軽く一歩後退しただけで避けたかと思うと、そのまま串団子の様な鉄球の部分を、サンジのいた場所めがけて振り落した

 

バキィ!!という音と共に、鉄球の部分がヒレにめり込む

サンジはそれを跳躍して軽くかわすが――――

 

瞬間、ギンがにやりと笑みを浮かべたかと思うと、メリメリメリという音と共と、一気にヒレの部分を埋もれていた鉄球で打ち上げたのだ

 

「うわっ!」

 

一気に、サンジの視界にヒレの残骸が押し寄せてくる

だが、サンジは素早くその攻撃を避けると同時に、そのまま空中からの回し蹴りをさく裂させた

しかし、それすらもギンには通用しなかった

 

ギンは身体を捻ってその攻撃をあっさり避ける

瞬間、ギンがにやりと笑みを浮かべたかと思うと、そのままトンファーをサンジの首元めがけて振り下ろしてきたのだ

 

「…………っ!」

 

空中で体制の制御が出来なかったサンジは、その攻撃をダイレクトに食らってしまった

そのまま、気が付けば喉元をトンファーで押さえつけられてヒレに押し倒されていたのだ

ドカッとその隣に、ギンが座り込む

 

「サンジ!!」

 

「サンジさん!!?」

 

ルフィとレウリアの声が聴こえる

されど、もがけどもその鉄のトンファーはびくともしなかった

がっちり、首元を抑え込まれて身動きすら取れない

 

「だから言っただろ……おれには、勝てねェってよ」

 

そう言って、ギンが更に持っていたトンファーへ力を込めた

その重みがサンジの喉を圧迫する

 

「……………っは」

 

ギリギリと締め上げる――――筈だった

違和感を感じたのは いつからだろうか

何故か、トンファーからは、“それ”を感じなかった

 

なんだ?

 

サンジが訝しげに眉を寄せる

だが、それとは裏腹に、ギンは大きく目を見開くとニヤリと笑みを浮かべ

 

 

 

 

 

 「あばよ」

 

 

 

 

 

 

そう言うと、ぐるん ぐるんと鉄球を回し始めた

 

「せめて、跡形もなく消えてくれ」

 

そして、それはどんどん高速になっていく

あれで撃たれたら間違いなく死ぬだろう

 

観戦していた海賊達も、ウオオオオオと一気に歓喜の声を上げる

 

「ウオオオオ!やっぱすげーぜ、総隊長!!」

 

「そのまま一気にぶっ潰しちまえ!!!」

 

それとは逆にコック達は「サンジ~~~~~!!」と悲鳴のような声を上げた

 

だが、サンジの心は落ち着いていた

ふーと紫煙を吐くと、小さく舌打ちをする

 

ギンが見下ろしている

そして、一度だけ天を仰いだ後

 

 

「――――死ね!」

 

ふっ……っ

 

鉄球がサンジの頭に落ちてくる―――――

誰もがそう思った

だが、そうはならなかった

 

サンジが加えていたタバコを勢いよくギンに向かって吹いたのだ

いきなり目に前に火のついた吸殻が飛んできて、一瞬ギンの手が止まった

 

「………あつっ」

 

ジュッ…!という音と共に、火のついた吸殻がギンの額にヒットする

その瞬間、サンジを押さえつけていたトンファーの手が緩んだ

サンジはそれを見逃さなかった

 

素早くそこから抜け出すと――――そのままギンの頭めがけて脳天からの踵落としを食らわせたのだ

「ぐああっ!!」

 

まさかの、サンジの反撃に、ギンが前のめりに倒れそうになる

が―――ギンもそれだけでは倒れなかった

倒れる寸前、そのままブンッとサンジの横腹めがけてトンファーを横に振りきった

 

「…………っ!?」

 

ドコォ!!と、ダイレクトに鉄球がサンジの横腹にぶち当たった

「うあっ………!!」

 

「ああ………!」

 

サンジと、ギンが交差する様に2人して、左右に飛ばされながら倒れ込んだ

 

驚いたのは見ていた海賊達だった

 

「あのコック、ギンさんに一撃かましやがった!?」

 

「……ま、まさか、ギンさんまでやられたりしねェだろうな……」

 

今まで、総隊長であるギンが攻撃を食らう所など見た事など一度も無かった

圧倒的有利

誰もがそう思っていた

 

だが、実際は違った

サンジがギンに一撃食らわせたのだ

 

パールに続きギンまで…という不安が、海賊達の中に押し寄せてくる

だが、クリークは違った

不安など微塵も感じさせず

 

「フン…バカどもが、奴の戦闘に何の心配がいる……!てめェら、今まで何をその目で見て来たんだ」

 

首領(ドン)……!!」

 

クリークは、くっと喉の奥で笑うと

 

「ギンはおれが見込んだ冷徹な“鬼人”だ。だから、総隊長の座を与えた。……直ぐに本性を見せるさ」

 

その言葉に、ごくりと海賊達が息を飲んだ

 

そうだ

ギンが敵が泣こうが喚こうが容赦なく嬲り殺す 情の欠片も無い“鬼人”なのだ

 

敗ける筈が無い

 

 

「サンジさん!!」

 

レウリアが、慌ててサンジに駆け寄る

サンジは、わき腹を押さえながらレウリアに、「大丈夫です、リアさん…」と答えながら立ち上がる

どう見ても、全然大丈夫そうではなかった

 

そして、ギンもゆらりと立ち上がる

 

「サンジの野郎、大丈夫なのか?」

 

オーナーを守りながら様子を見ていたパティが心配そうにそう呟く

だが、カネルは「大丈夫なもんか!」と叫んだ

 

「さっきの盾男から合せて、アバラ5・6本はイッてるはずだぜ……!!」

 

それでも、サンジはレウリアの手を借りる事なく、よろりと立ち上がった

 

「……案外、大した事…ねェ…な、その串団子……。総隊長ってのは…その程度かよ。クリーク海賊団ってのは…名ばかりの、集団かよ…」

 

「!」

 

ピクリと微かに、ギンが反応した

そして、ぺろりと舌で舐めるとニヤリと笑みを浮かべたのだった

まるで、“鬼人”そのものの様に――――……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サンジVSギンです

やっぱ、ここはこの2人じゃないと駄目だと思うのよ

だって、ギンに優しくしてくれたのはサンジだけだしー(他2名は、見てただけー)

 

夢主が動くのはもう少し後ですな

 

2013/08/14