MARIKA

 -Eternal Message-

 

 エース夢 「君に贈る蒼い約束」

 

 

――――3年前

 白ひげ海賊団・本艦 甲板

 

 

その日は、ずっと空席だった白ひげ海賊団2番組隊長が決まった事で、船内は大宴会が開かれていた

皆が皆、手にジョッキをもってなみなみに注いだラム酒を一気飲みする

 

「今日はめでたい日だな!」

 

「やっと、2番組の隊長が決まっておれはほっとしたよい」

 

そういいながらマルコが、中央に座っているエドワード・ニューゲート――――通称“白ひげ”を見た

すると、白ひげはグラララと笑いながら

 

「・・・・・・まあ、あいつなら任せられると思ったんだ」

 

そういって、その大きな口の口角をにやりと上げる

 

今回、新たに空席だった2番組隊長になったのは、「ポートガス・D・エース」

――――通称「火拳のエース」と呼ばれる男だった

 

元々は、別の海賊団を結成していたが、四皇の一角でもあるシャンクスとの出会いを果たしたエースは更に高みを目指した

 

当時“世界最強の海賊”と称された“白ひげ”ことエドワード・ニューゲートに戦いを挑もうとする

 

だが――――彼に代えがたい大恩を持つ魚人“海侠”ジンベエがエースの前に立ち塞がる

しかし、約5日間に渡る大激闘の果てに引き分ける事となった

 

二人が傷と疲弊から倒れ込んだその直後――――

エースの噂を聞いた白ひげがとうとう姿を現したのだ

 

そこには、大きな「壁」とも呼べる「大海賊」がいた

 

エースは先の戦いで疲弊しきった身体を奮い立たせると、白ひげ1人を相手に自身の海賊団全員で一斉に挑みかかるが――――まるで歯が立たず敗北してしまう

 

仲間を逃すために1人・エースは白ひげの前に立ちはだかった

白ひげはその何度ぶっ飛ばされても自分に向かってくるエースの気合と根性に感心し、エースとその乗組員達を白ひげ海賊団に誘う

 

 

『まだ暴れたきゃ、この海でおれの名を背負って 好きなだけ暴れてみろ・・・・・・!! おれの息子になれ!!!』

 

 

エースは「フザケんなァ!!」とその誘いを蹴ると、再び攻撃を仕掛けようとした

しかし、連日のジンベエとの激闘の疲弊もあり間もなく気を失ってしまう

そして、そのまま白ひげの船に担ぎ込まれてしまったのだった――――

 

それからの日々は、もう恒例行事の様だった

エースは白ひげの首を取ろうと100回以上も命を狙うが、いつもあえなく失敗

惨敗の日々だった

 

そんな中、隊長格のマルコやサッチからはその都度介抱されると共に、マルコからは白ひげと船員たちが「親子」と呼び慕う理由を知らされる

 

ずっと、「鬼の子」と言われてきたエースにとって、それは大きな意味を持っていた

 

そして、自分のことを「息子」と呼んでくれる白ひげに次第に心を開き、

ついには白ひげ海賊団に加わる決意をする

 

「白ひげの息子」として多くの活躍をしていく内に、白ひげ海賊団で存在感を増していった

そして、いつしか長年空席だったという2番隊の隊長に抜擢されたのだ

 

今日は、そんなエースの就任祝いをして居る日なのだが・・・・・・

 

サッチがきょろきょろと、辺りを見回す

 

「エースはどこいったんだ?」

 

何故か、主役であるエースの姿が見当たらないのだ

すると、何でもない事の様にマルコがラム酒を飲みながら

 

「ああ、エースはな・・・・・・まぁ、察してやれよいってな」

 

そう言って笑う

 

 

 

 

その頃―――――

エースは1人甲板で片手にジョッキを持ったまま、海を見ながらにやにやしていた

 

そして、ごそごそと黒い短パンのポケットから“あるもの”を取り出す

それは、小さな黒い箱だった

 

「へへ・・・・・・」

 

その箱を見て、またエースが嬉しそうに笑う

 

白ひげ海賊団に入ると決めた時、偶然とある島で見つけた代物だ

もし―――自分が白ひげに認められて、隊長格を担えるようになったら彼女へ贈ろうと思っていた代物だ

 

「リア・・・・・元気でやってるかなァ・・・・・・」

 

ぽつりと、思い出の中の“彼女”に語りかける

エースの中の記憶にある彼女は、いつも笑っていた

その銀糸の様な髪が海の光と重なってきらきらとしていた

 

あの時の約束の品はまだ見つかっていない

 

“蒼い花”

 

彼女は言っていた

 

『・・・・・・知らないの? エース。 蒼いチューリップも、バラも、存在しないのよ?』

 

そう言っていた

だが、“偉大なる航路”グランドラインに行けば、蒼い花だってある

そうエースは信じていた

 

だから、必ず見つけるんだ

見つけた暁には、彼女に――――レウリアにこの俺の想いを――――・・・・・・

 

「エース! な~にしけた顔してんだよ!!」

 

「ぶはっ・・・・・・!!」

 

突然、誰かに背中を思いっきり叩かれエースがむせる

瞬間、黒い箱が手からぽろっと落ちた

 

「ああああああああ!!!!」

 

エースが慌てて手を伸ばす――――が、届かない

海に落ちる!!!

 

そう思った瞬間、ひゅおっと何かが吹いたかと思ったら、マルコが“能力”で、その箱をキャッチしてくれた

 

「・・・・・・ほら、大事なモンなんだろ? しっかりもってろよいっと」

 

そういながら、その箱をエースに渡す

エースは「はああああああ~~~~~~~」と、重~~~~~い溜息を付きながら

 

「・・・・・・っんの、あほサッチ!! あぶねーだろが!! うっかり海に落ちる所だったぞ!?」

 

ものすっごい剣幕でそう攻められて、サッチが

 

「お、おお、わりぃわりぃ」

 

と、両手を上げて降参のポーズを取る

 

「で? その箱は何だよい」

 

マルコにそう尋ねられて、エースが「うっ・・・・・・」と口篭もる

その反応で大体の予想は付いたのか・・・・・・

 

「ああ、例のリア嬢に渡す物か――――」

 

そう言って、マルコとサッチがにやりと笑う

 

「う、うるせェ!!!」

 

からかわれているのがわかり、エースが顔を真っ赤にして叫んだ

 

「でも、例の約束は“蒼い花”じゃなかったか?」

 

サッチがそう言うと、エースは少しだけその箱を見て

 

「まぁ、まだみつからねェし・・・・・・とりあえず、今渡せる代わりをやりたくてさ」

 

そう言いながら、遠くの方を見る

この海の続く先のどこかに彼女が――――レウリアがいる

 

そう思うだけで、心が少し軽くなった

 

「で? どうやって渡すんだよい」

 

「そ、そこは―――ストライカーで行く・・・・・・ぐらいしか浮かばねェ」

 

ストライカーとは、エースが最初に結成したサーフボードのような小型船である

エースの能力「メラメラの能力」を動力として動く

 

すると、突然マルコがエースの脳天にチョップをかましてきた

 

「いてっ!!」

 

「あほか、そんな何年かかるか分かんねェ方法をオヤジが許すはずないだろうよい」

 

「しかも、約束の“蒼い花”はないのに、逢えるのか?」

 

サッチにいたい所を突っ込まれ、エースが「うっ・・・・・・!」と口籠もる

 

そうだ

再開する時は“蒼い花”を渡す時と決めている

でもまだその花は見つかっていない――――・・・・・・

 

「うう~~~ん」

 

そこまで考えていなかった

どうやってこれをレウリアに贈ればいいのだろうか・・・・・・?

 

すると、マルコが半分呆れたかのように溜息を洩らして

 

「まったく、うちの弟分は世話が焼けるなよい」

 

そう言って、マルコがさっとエースの箱を奪う

 

「お、おい! 何を――――」

 

エースが慌てて手を伸ばすが、マルコの方が1枚上手なのか届かない

 

「返せって!!!」

 

エースが今にも怒りを露にしようとしているのを見て、サッチがはらはらしていると

マルコがけろっとしたように

 

「リア嬢は、今“東の海イースト・ブルー”か?」

 

「あ? あ、あ―――多分?」

 

「ならおれがひとっ飛びして届けてやるから、お前は何かメッセージを書けよい」

 

「は?」

 

「だから、メッセージカード」

 

「は、はぁ!?」

 

突然メッセージカード書けと言われても困る

何を書いていいのか分からない

 

「ほら」

 

と、サッチに可愛らしい水色のカードを渡される

 

「ちょっ、ちょと待ってくれ!!」

 

何処からそんなカードを!?

と、突っ込みたいが、今はそれ何処ではない

 

「え、ええっと・・・・・・」

 

エースが悩んでいると、マルコとサッチが急かす様に

 

「早くしろよ、エース」

 

「夜が明けちまうぞ、よい」

 

「わ、分かってるよ!!!」

 

 

とりあえず、今浮かんだ言葉をささっと書き込む

そして、見せない様に裏側にしてマルコに渡したのに――――

 

ぺら

 

「あ―――――!!!」

 

あっさり、ひっくり返された

 

「見るな! 読むな!!!」

 

「・・・・・・お前、これだけでいのか、よい?」

 

「いいんだよ!!!」

 

エースが突っ掛かる様に反応した

マルコはやれやれといった感じで溜息を洩らすと

 

「んじゃ、ちょっくら飛ばすよい」

 

そう言った瞬間―――――

マルコの手から炎の様な青い鳥が姿を現した

マルコの能力「トリトリの実」の 幻獣種――――不死鳥だ

 

マルコはその箱とカードを不死鳥に括りつけると、そのままはるか上空へ飛ばした

 

「・・・・・・どのくらいで着くんだ?」

 

エースがそう問うが、マルコも分からないのか「さぁ?」と答えた

 

「いや、さぁってお前・・・・・・」

 

「仕方ないだろ。 おれはお前から聞いたリア嬢しか知らないんだからよい」

 

「や、そうだけど・・・・・・」

 

「まぁ・・・・・・」

 

「なんだよ?」

 

ふっと、マルコが笑って

 

「なんでもないって、よい」

 

東の海”イースト・ブルー、海軍、プラチナ・ブロンドの美人さん

と限定すればほぼ間違いなく、届くだろうと思った

 

それぐらい“プラチナ・ブロンド”は希少なのだ

それに――――今の海軍の中に該当する人物に心当たりがあった

 

エースはまだ知らないようだが・・・・・・

マルコの耳には入っていた

 

“翔風のレウリア”と呼ばれる、プラチナ・ブロンドの髪の少女の海軍将校がいる――――という噂を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――数日後

東の海イースト・ブルー”・海軍基地

 

 

レウリアは、書類を持ってばたばたと艦内を走っていた

 

思ったより部下のへました処理を対応するのに時間がかかってしまった

 

「間に合うかしら――――」

 

そう呟きながら、一応上官に当たる将校の元へと書類を運ぶ

まだ海軍に入隊してそんなに日が立っていないレウリアにとっては雑用が殆どだった

 

ただガープの義娘という事で、最初から少佐という話が上がっていたが、レウリアはこれを却下した

そういう目で見られたくないからだ

親のコネ―――――

そう思われるのが不愉快でならなかった

 

だが、ガープも譲らなく――――

なんとか少尉で押さえて貰ったのだが・・・・・・

 

目的の部屋のへ着きノックする

 

「海軍本部少尉・リディ・レウリア。 入ります」

 

そう宣言した後、ガチャリと扉を開けた

中には、自分の直接指導に当たってくれている海軍本部中将である・つるが座っていた

 

「待ってたよ、随分時間かかたようだね」

 

優しくそう諭されて、レウリアが小さく頭を下げた

 

「はっ、申し訳ありません」

 

どんな理由だろうと、言い訳はしない

それがレウリアのやり方だった

 

そもそも、新人少尉とはいえ、本部の中将が指導に当たるのは例外中の例外で

だがこれもガープが譲らなかった

 

おなじ女性同士の方がいだろうというのもあったとは思うが

ひとえに、つるの人柄だと思った

 

“大参謀”と言われるだけはある

 

つるは、書類を見るとこくりと頷き

 

「ご苦労様。 今日はもう休んでもいいよ」

 

「――――ありがとうございます」

 

そう言って、レウリアが頭を下げる

そのまま部屋を後にすると、自室へ向かう為に甲板を歩いていた

 

――――と、その時だった

 

ひゅうっとレウリアの前を何かが通って行った

 

「え?」

 

その気配はすぅ・・・・・・とそのまま消えてしまった

 

な、に・・・・・・?

 

気配が来た方角を見てみるが、海以外何もない

 

「・・・・・・?」

 

その時だった、こつんっと手の中に何かが落ちてきた

 

「え?」

 

見るとそれは黒い箱と、水色のカードだった

カードを見るとそこには――――

 

「――――っ」

 

レウリアが慌てて辺りを見渡す

だが、もう先ほどの気配は何処にもいなかった

 

レウリアはぎゅっと、その箱とカードを握りしめると慌てて自室へ向かった

部屋に入るなり鍵をかけて、着替える事もせずに机にカードと箱を置く

 

カードにはこう書かれていた

 

 

  “逢いたい”

 

 

「・・・・・・・・・・・・っ」

 

こんなことを言う人なんて、一人しかいない

 

 

 

―――――エースっ!!

 

 

 

でも、先ほどの気配はエースの気配ではなかった

初めて感じる気配だった

 

レウリアはごくりと息を呑み、その箱を開けた

 

「あ・・・・・・」

 

中には二対のレウリアの瞳と同じ色のピアスが入っていた

そっとそのピアスを手に取ってみる

 

すると、中に何かの花がハーバリウムの様に閉じ込められていた

 

「・・・・・・きれい」

 

月に照らされてピアスがきらきらと光っている

レウリアは今付けているピアスを外すと、そのピアスを身に付けてみた

 

鏡の前に立つ

不思議とまるでエースが傍で見守っていてくれている様な不思議な感覚だった

 

もう一度カードを見る

たったひと言 それしかなカードだが彼の気持ちは充分に感じ取れた

 

きっと、彼なりに悩んで書いたに違いない

そう思うと、思わず笑みが浮かんできた

 

「エース・・・・・・早く、私も貴方に逢いたい・・・・・・」

 

この海上線の何処かにエースがいるのだとしたら

 

 

 

   きっといつか――――・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お題以外で、エースピンは初かもしれんwwww

いつもは、お題でちまちま書いてたので

だって、本編まだ来ないし・・・・・・(最初と回想しか)

 

 

2022.03.21