CRYSTAL GATE

  -The Goddess of Light-

 

 

 第三夜 ファナリス 16

 

 

 

「モルジアナ!!!」

 

ファティマーの所から降りてきたモルジアナの所に、エリスティアが駆け寄ってくる

 

「あ・・・・・・」

 

そういえば、彼女達には助けられたのだ

モルジアナがすっと膝を折ると

 

「あの、危ない所を助けて頂いて、ありがとうございました」

 

そう言って、いつものように、手と膝を地に付けて頭を下げたのだ

その様子に驚いたのは他ならぬエリスティアだった

 

慌ててモルジアナの側に行くと

 

「顔を上げて、モルジアナ。 そういうことをして欲しくて手を貸したわけではないの! お願いだから、やめて」

 

「ですが・・・・・・」

 

これは重症だと思った

本来の真面目さに加えて、奴隷時代の事が尾を引いているのだろう

 

「とにかく、そのやり方のお礼は今後一切禁止よ!!」

 

「え・・・でも…」

 

「でも も、だって、も禁止です」

 

エリスティアはきっぱりとそういうと、モルジアナを立たせた

そして彼女の砂埃で汚れた部分をはたくと

 

「鍵は受け取れた?」

 

エリスティアの言葉に、モルジアナは「はい」と答えました

その手には、重そうな鍵がいくつも入っている袋があった

 

その時だっだ

 

「エリス」

 

後ろから、紅炎が話しかけてきた

 

「炎?」

 

「・・・・あの男はどうするのだ?」

 

言われて、岩場で足が震えて立てなくなっているファティマーを見る

 

思えば、ファティマーも可哀そうな男だった

でも――――

 

一瞬、過去の風景が思い出される

いっそこの場で、殺してしまい衝動に駆られる

 

だが、エリスティアはかぶりを振った

 

だめよ・・・・

 

そう自分に言い聞かす

 

紅炎に不殺をお願いしているのに、自分が殺すわけにはいかない――――・・・・・・

 

今にも出てきそうな憎悪を抑え込む様に、エリスティアはふいとファティマーから視線を逸らし

 

「放っておいていいと思うの・・・・後でデリンマーの警吏に言っておくわ」

 

そう言って、エリスティアは、ナージャを抱きかかえると、モルジアナに

 

「モルジアナはこの子を連れて、早くご両親の元へ。 きっと薬を持っていると思うわ。 その鍵があれば、殆どの牢も錠も開けられるはずよ」

 

「はい・・・・・・、わかりました」

 

「急いでね! 間に合わなくなるから!!」

 

それだけ言うと、エリスティアは紅炎の方に駆けっていた

 

「あ、あのっ!!」

 

不意に、モルジアナがエリスティアを呼び止める

 

「・・・・・・・・・・?」

 

エリスティアが不思議そうに、首を傾げた

 

「あの・・・・その・・・・」

 

なんだか、モルジアナが言い辛そうに言い淀む

それになにか思い当たったのか、エリスティアが再度モルジアナに側に近づくと

 

「アモンでのことを気にしているの? あれは、仕方のなかった事なのよ? あの時―――貴女は、領主さんに従うしかなかった・・・・・もう、身体が本能的に逆らえない状態になっていたのよ・・・・だから、気にしないで」

 

「でも・・・・・・」

 

自分は彼女たちに酷い事をした

この拳を、足を向けた

それは、簡単に許されていい事ではない――――・・・・・・

 

ぐっと、モルジアナが唇を噛みしめる

 

それを見た、エリスティアは、小さく息を洩らすと

 

「じゃぁ、こうしましょう? 今度、私が危険な時は、貴女が助けに来て? モルジアナ。 それでチャラにしましょう?」

 

「ね?」と、エリスティアが言う

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

一瞬、モルジアナが戸惑いの色を見せるが、少ししてからはにかむ様に「はい」と答えたのだった

 

それを見た、エリスティアはにっこりと微笑むと

 

「ほら、早くその子をご両親の元へ連れて行ってあげて」

 

そう言って、軽く手を振る

 

「あ、あの!!」

 

モルジアナが思わず口を開いた

 

「あ、あの、お二人はどちらに・・・・・・」

 

ふいに、紅炎の傍までやってきたエリスティアが振り向き――――

 

「重要な物を取り返しに――――」

 

それだけ言うと、紅炎と共に砦の方をと歩きはじめた

 

モルジアナは、そんな二人の背中を見ながら、もう一度頭を下げた

 

「おね、え、ちゃ・・・・・・」

 

ナージャが、ぎゅっとモルジアナのスカートを掴む

モルジアナは、微笑みながら

 

「行きましょうか」

 

そう言って、皆が捕らわれているであろう地下牢の方へ向かったのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ****    ****

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―————――― 一方:砦の中

 

盗賊たちは、一連の騒ぎを見て皆 殺気立っていた

その手には武器を持ち、振り回している

 

「侵入者は消すんだ!!!」

 

頭領の声が響いた

すると、皆が思い思いに雄叫びと共に武器を掲げる

 

と、その時だった

 

 

 

 

 

 

「―――――居場所、教えてくれてありがとう」

 

 

 

 

 

 

突然、頭上から声が聴こえたかと思うと―――

刹那、その場に、二人の男女が姿を現した

 

それは、先ほどの騒動のいた男女だった

 

「皆さんが大声上げるから、直ぐに居場所わかりやすくて助かったわ」

 

そう言って、にっこり微笑むエリスティアと

それを見て、ふっと笑う紅炎の姿だった

 

「さて、どうする? エリス」

 

すらっと、紅炎がアシュタロスの宿る剣を抜く

エリスティアは、少し考え

 

「交渉――――の余地はないと思うの。 だから―――・・・・・・」

 

ぼうぅ・・・・・・と、エリスティアが空中に何か文字を書く

すると、その文字の中から2匹の美しい蝶が姿を現した

 

「行って」

 

そう言うと、その蝶がどこかへと飛んでいく

それから、紅炎の方を見ると、にっこり微笑み

 

「倒しちゃいましょう。 ただし―――気絶させてね」

 

と、“お願い”する

そのエリスティアからの“お願い”に紅炎が、にやりと笑みを浮かべる

 

「ふ・・・・・・後でたっぷりと可愛がってやる。 ―――覚悟しておくんだな、エリス」

 

そう言うが早いか

 

紅炎が、すぐさま剣を逆手に持つと――― 一気に目の前の盗賊に斬りかかった

そして、あっという間に、その場の盗賊を打倒してしまったのだ

 

「う、わぁ!!」

 

驚いたのは、他ならぬ盗賊の方だった

多勢無勢という言葉など無きにも等しいような感覚に捕らわれる

 

相手はたったの二人だ

 

しかも、一人は女―――・・・・・・

 

となれば―――

 

「女を狙うんだ!!!」

 

盗賊が一斉に、エリスティアにめがけて襲ってきた

だが、エリスティアには慌てた様子など微塵もなく―――――

 

すっと、右手を前にかざすと――――

 

「深淵の炎の精霊よ―――――穿て」

 

そう呟いた時だった

 

突然、エリスティアの周囲一帯に、炎の柱が出現した

 

「うわちちちちちちち」

 

突如現れた、炎の柱に阻まれ盗賊が右往左往する

 

その時だった

 

 

 

  リ―――――――――ン・・・・・・

 

 

 

何処からともなく鈴の音が聴こえた

 

その音に気付いたエリスティアは、紅炎の方を見て

 

「炎!!」

 

それを合図とでもいう様に、紅炎がエリスティアの方にやってきた

 

「見つけたのか?」

 

そう問うと、エリスティアが「ええ・・・・・・」と、答えた

その答えに満足したのか、紅炎はにやりと笑みを浮かべると

 

「ならば、ここにはもう用はないな」

 

そう言うなり、ぼぅ・・・・・・と紅炎の持つ剣の金の装飾品が光だした

 

紅炎は剣を大きくかざすと

 

 

 

 

「慈愛と調停の精霊よ、我が前に姿を現せ――――フェニクス」

 

 

 

 

 

 

そう叫んだ瞬間だった

エリスティアを中心に光の渦が生まれだした

 

 

 

 

ピイイイイイイイイイイ

 

 

 

という、鳴きながら光の鳥が紅炎の持つ剣の金の装飾品に集まる

瞬間―――――

 

 

 

 

 

 

盗賊たちの頭の中に女の人の声が響いた――――

 

 

 

 

 

  『―――――お眠りなさい』

 

 

 

 

 

 

「う、あ・・・・・・なん、だ・・・・・・?」

 

「きゅう、に、ねむ、く―――――」

 

そう言い残して、ばたばたと盗賊たちが倒れていく

 

ぎょっとしたのは、頭領だった

 

「お、おい、お前ら!!!」

 

そう言うが、自身にも襲ってきた眠気に勝てずに

そのまま手を伸ばしかけて、倒れた

 

 

 

 

気が付けば、その部屋で立っているのはエリスティアと紅炎だけだった

 

「・・・・・・・・・・ふん、つまらんな」

 

そう言って、紅炎が剣を仕舞う

すると、エリスティアは少し心配した様に

 

「大丈夫? 平気? 疲れていない?」

 

そう尋ねてくる

すると、紅炎はすっと空いている手でエリスティアの腰に手を回すと、そのまま抱き寄せた

 

「えっ・・・・・・、ちょっと、炎っ」

 

紅炎の突然の行動に、エリスティアが困惑した様に、そのアクアマリンの瞳を瞬かせる

だが、紅炎は気にした様子もなく、エリスティアの美しいストロベリー・ブロンドの髪に口づけた

 

「安心しろ、お前のお陰・・・・・で、俺の魔力マゴイはほとんど使っていない」

 

そう言って、優しげにエリスティアを見た

 

「エリスこそ、無理はしていないだろうな?」

 

そう尋ねてくる

すると、エリスティアはくすっと笑って

 

「私は平気よ。 “マギ”の様な“受け皿”ではないから・・・・・・・・・」

 

「そうか」

 

「とろあえず、行きましょう? “あの子たち”が見つけたみたいだから――――」

 

そう言って、紅炎を促したのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ****    ****

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドカ・・・・・・!!

 

けたたましい音と共に、地下牢へと続く唯一の扉が蹴破られた

 

びっくりしたのは、そこに捕まっていた人達だった

 

「な、なんだ!!?」

 

それはそうだろう――――

ファティマーがエリスティアを連れて行った時とは訳が違う

扉が突然、破壊されたのだから

 

もうもうと土煙が立つ中、赤毛の少女―――モルジアナがナージャを抱いて立っていた

 

「逃げてください。 鍵はこの中にあります!!」

 

そう言って、鍵の入った袋を渡した

 

その時だった、それに気づいた夫婦が「ナージャ!!」と叫んだ

ナージャがはっとしてそちらを見ると、その目にじわりと涙を浮かべ

 

「おとうさん・・・・・・、おかあさん・・・・・・っ!!」

 

「ナージャ!!!」

 

母親が必死にナージャを抱きしめる

 

「早く、薬をお願いします」

 

モルジアナがそう言うと、両親は薬をナージャに飲ませていた

それを見て、ほっとしていた時だった

 

「・・・・・・あれ、おねいさん・・・・? あの時の、おねいさんかい?」

 

聞き覚えのある声にはっとしてモルジアナが辺りを見渡す

すると、そこにいたのは―――――

 

「――――やっぱり、あの時のおねいさん!!」

 

「――――あなた、は――・・・・・・」

 

そこに他いたのは、青い髪の小さな少年―――アラジンだった

すると、横の商隊キャラバン長が

 

「アラジン? 知り合いか?」

 

そう尋ねると、アラジンは「うん」と答え

 

「前に話した、強いおねいさんさ!!」

 

モルジアナは、驚いたようにその瞳を大きく見開き

 

「あなたみたいな強い人がどうして捕まってるんですか?」

 

「う~ん、商隊キャラバンの前に大きな岩を落とされちゃったんだ・・・・・・そのまま僕は気をうしなちゃって・・・・・・気づいたらみんなと捕まっちゃってて・・・・・・あ!!」

 

と叫んだ瞬間、「いたたたた」と、お腹を押さえた

 

驚いたのは他ならぬモルジアナだった

突然、お腹を押さえてうずくまたアラジンに慌てて手を伸ばしかける

 

「ど、どうしたんですか!?」

 

と、そこまで言い掛けてはっとする

よく見ると、アラジンもその隣の商隊キャラバン長もぼろぼろだった

 

「酷い怪我・・・・・・どうしてこんな」

 

すると、アラジンは「う~ん」と少し唸った後

 

「エリスおねえさんをしらないかい? あのへんな人に連れていかれたんだ・・・・・・」

 

「エリス・・・・・・さ、ん?」

 

ふと、脳裏に先ほどまで一緒にいたエリスティアが思う浮かぶ

あれは、どう見ても“捕まっている“様ではなかった

 

「えっと、エリスさんでしたら、もう一人の男の方と一緒に重要なものを取り返すと―――」

 

「え? 男の人・・・・・・? アリババくんかい?」

 

「あ、いえ、アリババさんではなく、もっと大人の人でした」

 

そう答えると、アラジンが「え? 誰だろう・・・・・・?」と、呟いた

 

その時だった

 

 

 

 

「こっちです!!!」

 

 

 

 

どたどたと、地下牢へと続く扉の残骸の方から声が聴こえてきた

 

盗賊の残党だ

 

 

 

「絶対に逃すな――――ぐあ!!!!」

 

 

 

突然、盗賊の一人が階段を転げ落ちてきた

 

「・・・・・・え?」

 

一瞬、何は起きたのかとアラジンがきょとんとする

流石のモルジアナも、その瞳を大きく見開いた

 

すると、地上の方で

 

「うわぁ!!」

 

「ぎゃぁ!!」

 

などと声が響いてくる

 

「な、何が起きてるんだい・・・・・・?」

 

アラジンが、その大きな瞳を待たたせながら呟いた

その時だった

 

 

 

 

「アラジン!!」

 

 

 

 

不意に、扉のあった方から、何かがアラジンに向かって投げられてきた

それを見た瞬間、アラジンが

 

 

 

 

 

「あっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドドドドドドドドド

 

武装した一団の馬が盗賊の砦に向かっていた

 

「恩に着るさ。 捕まてる俺の仲間を助ける為に傭兵を雇ってくれるとは!」

 

そう一人が発すると、すぐ後ろを走っていたもう一人の男が

 

「友人の商隊キャラバンの隊員を見捨てられないからな!!」

 

とそこまで言って、後ろを振り返り――――

 

「こら―――――!!! ライラ! サアサ!! お前たちは宿で待ってろと―――――」

 

そこには、モルジアナが世話になっていた商隊の一員のライラとサアサもいた

 

「そうはいくかよ・・・・・・っ!! モルジアナも捕まってるかもしれないんだ!!!」

 

 

モルジアナ・・・・・・

みんな・・・・・・

 

無事でいてくれ―――――――!!!!

 

 

 

そう願って、ぐっと手綱を持つ手に力を込めた時だった

 

前方の盗賊の砦の方から騒がしい音が聴こえてきた

まるで何かから、逃げまどうかのような―――――

 

「なんだ?!」

 

そう思った瞬間――――

 

「た、た、たすけてくれええええええ!!!」

 

「青い・・・・・青い巨人がぁぁぁぁぁ!!!!」

 

そう叫び名ながら、盗賊の残党が逃げまどっていた

瞬間、にゅっと青い巨人が姿を現した

 

それを見た、ライラとサアサは その顔に微かに笑みを浮かべ

 

「大丈夫、あれは―――――・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ****    ****

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

残りの盗賊も締め上げると、皆 思い思いに再会を喜んでいた

 

 

 

 

そして、アラジンは―――

 

「おねいさん、ひさしぶりだねぇええ」

 

と、サアサの胸に顔を埋めていた

それを見たライラは呆れた様に

 

「変わってないな・・・・・・お前は」

 

とぼやいた

それを見たモルジアナが

 

「不思議な少年とは・・・・・・この方の事だったのすね」

 

「アリババくんと知り合う前の街で知り合ったのさ! 懐かしい感触だよ~~」

 

と、更にサアサの胸に顔を埋めるアラジン

すると、業を煮やしたかのようにライラが

 

「いい加減にしろ!!!」

 

すると、苦笑いを浮かべたサアサが

 

「それにしても、モルジアナも知り合いだったなんて、すごい偶然ね」

 

すると、それを聞いていた商隊キャラバン長が

 

「そうでもないぞ~旅の途中、友人との思わぬ再会はあるものだ」

 

「はは! 俺たちのようにな!!」

 

そう言って、互いに見合って笑い出した

 

すると、アラジンはその手に持つ杖を見て

 

「そうさ、ある人が言ってたんだ。 “世界は実は繋がっているんだ”って・・・・・・」

 

そう言って、杖を懐かしむ様に見る

 

「出会えた人とは強いも導きで繋がっているのさ。 離れてしまっても、きっと・・・・・・大切な人は魂のすぐそばに・・・・・・」

 

「――――――・・・・・・」

 

モルジアナがはっとする・・・・・・

 

あの時―――

足の錠が外れないないと思った時――――

 

確かに・・・・・ゴルタスの声が聴こえた、気がした・・・・・・

 

きっとあれは、ゴルタスが――――・・・・・・

 

「それにしても、酷い怪我だなアラジンも、お前も」

 

そこ声にモルジアナもはっとした

そうなのだ

なぜか、アラジンとそのアラジンのお世話になっていた商隊キャラバン長の二人は酷い怪我をしていたのだ

 

「こんな傷大したこと・・・・・・いてててて」

 

商隊キャラバン長がお腹を押さえる

 

「そうだ!! エリスおねえさん!!!」

 

アラジンがはっとした様に、叫んだ

 

「モルジアナさん!! エリスおねえさんの居場所を知らないかい?」

 

「えっと・・・・・・」

 

確かに、あの時―――――

 

アラジンに向かって投げられた金の縦笛

あの声は――――・・・・・・

 

 

 

 

「も~炎のお陰で、時間を取ってしまったわ・・・・・・」

 

 

「ふん、そう急ぐ必要はないだろうが」

 

 

 

その時だった

そう会話しながらエリスティアと紅炎がこっちに向かってきていた

 

「エリスおねえさん!!!」

 

はっとして、アラジンがエリスティアの方を見る

それに気づいたエリスティアは、慌ててアラジンに駆け寄ってきた

 

「アラジン、商隊キャラバン長さんも・・・・・・無事でよかった」

 

半分涙ぐみそうになっているエリスティアとは裏腹に

アラジンたちの方も

 

「心配したぞ、エリス。 お前だけ連れていかれたからどうしようかと――――と、そこの方は誰だ――――――いててて」

 

不意に、商隊キャラバン長が腹を押さえて顔を顰める

 

あの時の怪我だ――――

あの時、私は素直に従っておけばこんなことには――――・・・・・・

 

「炎・・・・・」

 

エリスティアが言わんとすることがわかったのか、紅炎は小さく息を吐くと

すらっと剣を束のままを持ち

 

 

 

「癒せ、フェニクス」

 

 

 

そう言った瞬間だった

辺り一帯に優いし風が吹いた

 

「痛みが・・・・・・」

 

あれだけ酷かった怪我も痛みも、何もなかったかのように引いて行ったのだ

 

「今のは――――・・・・・・」

 

何が起きているのかわからない、商隊キャラバン長にアラジンが「あ・・・・・・」と何かを言おうとするが、エリスティアが「しー」と人差し指を口元に当てた

 

それを見て、アラジンが慌てて口を押える

 

だが、紅炎の風体があまりにも一般人には見えないせいもあり

 

商隊キャラバン長が思わず

 

「えっと・・・・・・エリス? そちらのお方は・・・・・・」

 

と、尋ねるが エリスはさらっと流すように

 

「あ、商隊キャラバン長さん、荷物関係全て取り戻しましたから。 後で確認おねがいしますね?」

 

「え? あ、ああ・・・・・・」

 

急にそう振られ、慌てて商隊キャラバン長が頷く

 

その時だった

ふいに、紅炎がエリスティアの腰をかき抱くと、そのストロベリー・ブロンドの髪に口づけを落とした

 

ぎょっとしたのはエリスティアだけではなかった

周りのアラジンやモルジアナ、商隊の人たちも唖然としていた

すると、紅炎はふっと笑みを浮かべ

 

「エリスは俺の妻となる女だ。 丁重に扱え」

 

「え? は・・・・・・はい・・・・」

 

よくわかってないのか、商隊キャラバン長が頷く

が、慌ててエリスティアが

 

「ちょっ!! 誤解を招くような発言はしないで、炎の馬鹿!!」

 

そう言って紅炎を殴るが、紅炎にはまるっきり効いていなかった

 

「では、名残り惜しいが・・・・・・俺は行くが、お前も来るか?」

 

冗談めかしてそう言うが、エリスティアは顔を真っ赤にして

 

「行きません!!!」

 

と言ったのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅炎をあの時渡された迷宮道具ダンジョンアイテムで送った後、エリスティアは「はぁ・・・・・・」と大きな溜息を付いた

 

後ろで、紅炎との事を聞きたそうにしているライラとサアサの視線が痛い・・・・・・

 

「なぁなぁ、エリスティアさんだっけ? 今の人ってさ、煌帝国の―――――「あ――――待って! その話は待って!!」

 

そわそわするライラを制するように、エリスティアが手を伸ばした

 

「お願い・・・・・・これには、ふか~~~~い、事情があって・・・・・・聞かないで欲しいのだけれど・・・・・・」

 

と言い辛そうに、お願いする

お願いだから、そっとしておいてほしい・・・・・・

 

その時だった

 

「モルジアナ、これでバルバッドに行けるぞ!」

 

モルジアナの所の商隊キャラバン長がそう言ってきた

それを聞いたアラジンが

 

「え? モルジアナさんもバルバッドに行くの? 僕と、エリスおねえさんもそうなんだよ~」

 

「ね~」と、エリスティアの方をみる

すると、ライラから解放されると思ったのか、エリスティアがその話に乗ってきた

 

「ええ・・・・・・バルバッドである人と待ち合わせしていて―――・・・・・」

 

「こいつは、チーシャンには会いたい奴がいなくて、バルバッドに行くことになったんだ」

 

その言葉に、モルジアナがはっとした

 

「それって・・・・・・アリババさんのこと・・・・・・?」

 

そう尋ねると、アラジンが小さく頷いた

 

「そうだ! 一緒に行こうよ!! ね?」

 

そう言って、モルジアナに手を伸ばす

あの時は弾いた手だけれど――――・・・・・・

 

微かにモルジアナが目を細め

 

「異論はありません」

 

そう言って、手を取ったのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やっと終わった~~~!!ヾ(´∀`)ノ

これにて、第三夜閉幕~~~

本当はもう1話ぐらい伸ばせたんですが・・・・・・

早く、シン様出したいし!!

というわけで~紅炎はあっさり帰還させましたww

余計な一言残していったがなwww

 

 

2020.09.19