CRYSTAL GATE

  -The Goddess of Light-

 

 

 第二夜 ルシとマギ 12

 

 

 

アラジンは、“ウーゴくん”の乗りながら、黄牙の村に向かっていた

先程会った白瑛は、不思議な感じのするおねえさんだった

 

何とも言えない、感じがあの白瑛から感じたのだ

それは特に、“ウーゴくん”の反応が気になったからかもしれない

 

「ウーゴくん、あのおねえさんに初めて会った時、全然出てきてくれなかったね」

 

“ウーゴくん”は何も答えなかった

 

よくよく考えれば、アリババの時もエリスティアに会った時もそうだった

 

「後さ、君は“第七迷宮”でアモンくんと何を話したんだい?」

 

「……………」

 

やはり、“ウーゴくん”は何も話さなかった

だが、アラジンには分かっていた

 

「そっか、大丈夫だよ!君が僕に答えられない事がたくさんあるのはもう分かてる……だから……」

 

アラジンは空を見上げた

綺麗な月だ

真ん丸なお月様が欠けたその月はとても綺麗だった

 

「僕は、思うがままに僕の事を探ってみるよ!この村で何かが分かる……そんな予感がしてるんだ」

 

その時だった

 

 

 

    ピイイイイイイイイイイ

 

 

 

アラジンの回りのルフ達が一斉に騒ぎ出した

それは、あの黄牙の村の方からだった

 

「何だろう?」

 

嫌な予感がした

ルフ達が言っている

 

駄目だと

このままでは駄目になってしまうと―――――

 

 

アラジンは、急いで黄牙の村に向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ****    ****

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黄牙の村は大騒ぎだった

ドルジは馬にまたがると大きく綱を振った

ヒヒーンと馬が嘶いだ

 

 

「あいつら、絶対許さねぇ!!」

 

 

何人もの男達が、馬にまたがり剣を構える

 

 

「行くぞ!」

 

 

「「「おー!!!!」」」

 

 

怒りと憎しみで今にも人を殺しそうな彼らにババが叫んだ

 

 

「敵は決して殺すな、一人でも殺せば戦争になる!!よいな!!」

 

 

ドルジが一度だけババを見る

だが、次の瞬間踵を返すとそのまま馬腹を蹴った

男達も、一斉に馬を走らせる

 

「頼むぞ!」

 

ババは天に祈る気持ちで瞳を閉じた

 

「無事に、連れ帰ってくれ……」

 

その時だった

ドウウウンという音と共に、“ウーゴくん”に乗ったアラジンが姿を現した

 

それを見た瞬間、ババは大きく目を見開いた

 

「お主は、一体……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

許せない

許せない 許せない

 

ドルジは、全速力で馬を走らせた

ほんの少しの間たった

ほんの少し目を離した瞬間にトーヤが消えた

 

いや、トーヤだけではない

村の若い女たちが皆消えていたのだ

 

残っていたのは、馬車と馬の蹄の跡

争った形跡もあった

 

間違いない、誰かに連れ去られたのだ

そんな事をするのは、決まっている

 

 

奴隷狩りだ

 

 

あの煌帝国の軍人が女達を連れ去ったのだ

 

いつもいつもそうだ

何度、こんな目に合えばいい?

 

大国の奴らに家族が物みたいに突然奪われて死ぬまでこき使われる

 

何が「ご先祖様の夢」だ

綺麗事を並べても、やはり大国の奴らにとって、自分達は家畜や奴隷にしか思われていないのだ

 

 

「待ってろ、トーヤ……っ!」

 

 

絶対に助け出す!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

馬車の中―――――

 

猿ぐつわをされ、手足を縛られたトーヤ達は、震えながら、そこにいる煌帝国の兵士を睨んだ

瞬間、シュ…と剣を突きつけられる

 

「……………っ」

 

トーヤはビクッと肩を震わせてギュッと瞳を閉じた

 

「へへ…上手くかっぱらえたぜ」

 

そう言って、ピタピタと剣先をトーヤの額に当てる

 

「いい値で買ってくれよ商人さんよ。なんでも、こいつらは剣なんかで刺されてもなかなか死なない丈夫な一族なんだ」

 

そう言って、トーヤの額に付けていた剣先を胸元へとすりおろす

プチッとボタンを外すと、露わになった柔肌に剣先をくっつけた

 

「ちょっと試してみようか?」

 

そういって、ススス…と剣先を下へとずらす

 

「……………っ!!」

 

瞬間、トーヤがびくりと肩を震わせた

ガタガタと身体が震えるせいか、少しだけ血が滲み出る

 

その時だった、兵士の1人が呆れた様に溜息を付いた

 

「やめておけ、こいつらはもっと“末永く金儲け”に使うんだから」

 

「“末永い”?こいつらを一体どうするんで?隊長」

 

隊長と呼ばれた男が、にやりといやらしく笑みを浮かべる

 

「決まってるだろう?」

 

そう言って、部下の持つ剣をトーヤの腹の部分に押し当てた

 

「……………っ!!」

 

トーヤが悲鳴をあげそうなぐらい身体をびくつかせ

顔は真っ青で、血の気はもうない

 

気を失てしまえたらどんなに楽だろう……

だが、恐怖のあまり意識が鮮明に残っていた

 

隊長と呼ばれた男は、くっと喉の奥で笑うと

 

「延々と子供を創らせるんだよ!大量に繁殖させれば、俺達はずっと儲けられる……」

 

そう言って、ズズ…と、トーヤに突きつけた剣先を下へとずらす

 

「長い事、可愛がってやるよ、お嬢ちゃん」

 

そう言ってにやりと笑みを浮かべた

 

「……………っ」

 

トーヤがキッと目に涙を浮かべながら男を睨みつけた

男はくっと喉の奥で笑うと

 

「なんだ?文句でもあるのか?」

 

そう言って、トーヤの前髪の三つ編みをぐいっと引っ張ると――――――………

 

「ないよなぁ~?」

 

 

 

  ザク……!

 

 

 

 

「……………っ!」

 

パサリと三つ編みの破片が馬車に落ちる

 

もう、駄目だ――――――

そう思った時だった

 

 

 

 

 

 

  「隊長!追手です!!」

 

 

 

 

 

 

後方を見ていた兵から叫び声が上がった

 

「ああん!?」

 

何事かと、馬車の後方を見る

すると、物凄い速さであの黄牙一族の男達が追って来ていたのだ

 

 

「黄牙の奴らが、追ってきましたァ!!」

 

「何だとォ!?」

 

 

 

 

  「ト――――ヤぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

ドルジの声が聴こえてくる

 

ドルジ………っ

 

トーヤはそのまま気を失ってしまった

 

兵達はそれ所では無かった

突然追って来た黄牙一族に、チッと舌打ちをすると

 

「ええ~い、射殺せ!!射殺して、埋めちまえ!!!」

 

隊長の男がそう叫ぶな否や、兵達が一斉に弓矢を放った

だが、黄牙の戦士達には通用しなかった

 

馬をそのまま旋回させると、二手に分かれたのだ

 

「ええい!撃て撃て!!!」

 

そう言って、第二陣を撃ち放つ

だが、それも通用しない

 

それもその筈

黄牙一族は最も馬術に長けた騎馬民族

馬にまたがった彼らに避けられものなど———————ない!!

 

「は…早え……っ!」

 

「当たらねぇ……!!」

 

そのままドルジ達は馬を二手に分けたまま一気に馬車に近づいた

 

「近づけるな!」

 

そう叫ぶな否や兵士の1人がドルジに向かって矢を放つ

しかし、素早く抜いた剣がその矢を弾いた

 

瞬間、兵達の動揺している隙に一気に馬車に近づくと、そのまま乗り込んだのだ

がしっと肩を持つとそのまま蹴り飛ばす

 

そのままギロリと男を睨みつける

 

 

 

「黄牙の一族を、なめんじゃねぇ!!」

 

 

 

「く、くるなぁ!!」

 

兵士が剣を構えようとするが、ドルジは思いっきりその剣を弾き返した

そして、今にも斬りかかろうとせんばかりに剣を振り上げた

 

許せなかった

自分達を家畜の様に扱うこいつらが

許せなかった――――――

 

 

瞬間

 

 

 

   『一人でも殺せば戦争になる!』

 

 

 

 

ババの言葉が脳裏を過ぎった

はっとして、その動きが止まる

 

殺してやりたい

殺してやりたいが―――――

 

 

その時だった

 

 

傍に倒れていたトーヤが目に入った

涙を浮かべ、髪を切られ、衣服を乱れさせられたトーヤの姿が――――

 

 

 

 

 

 

 

ぶつ……

 

 

 

 

ドルジの中で何かが切れた気がした

 

トーヤ……

 

『ドルジ』

 

そう言って、いつも笑って傍に居たトーヤが……

 

  大事に、大切にしたかったトーヤが―――――………

 

 

 

 

 

 

「――――――っ、貴様ぁぁ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      ◆      ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はっと、エリスティアは目を覚ました

ゆっくりと身体を起こし辺りを見渡す

 

何も無い

何も起きていないが――――

 

気のせい……?

 

エリスティアは、ショールを羽織るとそっと家の外に出た

空には欠けた月が昇っており、別段おかしい事はない

 

ない、が――――

 

ルフ達がざわめいている

 

エリスティアの回りのルフだけじゃない

木も風も生命の息吹とも呼べるルフ達がざわめいている

 

西……の方かしら

 

ここよりもずっと西方

そこで何かが起きている

 

 

そんな気がした

その時だった

 

 

 

 

   ピイイイイイイイイ

 

 

 

 

 

瞬間、ルフが鳴いた

ルフは鳴きながらエリスティアの回りに集まってくると、彼女の囁きかけた

 

 

「助けて」と

 

 

助けて……?

何を恐れているの……?

 

ルフに問い掛けても、返事は来ない

ただ、「助けて」「助けて」

 

 

そう囁いてくる

 

 

何故そう囁いて来るのかは分からない

分からないが―――――

 

 

「……分かったわ」

 

 

それだけ言うと、エリスティアはすぅっと息を吸った

 

 

解除(レリフラージ)

 

 

そう唱えた瞬間、ピイイイイイイイイと大量のルフが彼女の回りに集まりはじめる

それはキラキラと光に渦になり空高く昇り始めた

 

 

「“彼ら“に届けて―――――さぁ」

 

 

そう言って、大きく羽ばたく様に手を天高く伸ばした

 

瞬間―――――

 

 

 

 

 

 

 

   ピイイイイイイイイイイ

 

 

 

 

 

 

無数のルフ達が空高く舞い上がると西方の彼方へと飛び去って行った

残ったのは、わずかなルフ達だけだった

 

ピイピイと鳴きながらエリスティアに囁いてくる

 

「ありがとう」「ありがとう」と

 

その言葉に、エリスティアはにっこりと微笑んだ

 

「ううん、少しでもこれで“彼ら“へと届くといいけれど―――――」

 

その時だった

 

 

 

 

「エリス」

 

 

 

ここにいる筈のない人の声が聴こえてきた

はっとして声のした方を見ると――――そこにいたのは

 

 

「え……炎……」

 

 

そこには、紅炎がいたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      ◆      ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アラジンとババは“ウーゴくん”に乗って、ドルジ達を追い掛けていた

 

「あれ……?どうしよう、おにいさん達を見失ってしまったよ」

 

「それはいかんな。止まり、アラジン」

 

言われて、“ウーゴくん”の足が止まる

 

「ワシは目が見えんし、お主は星を読めん。草原は広いから迷ってしまうよ。村の火が見える位置でドルジ達を待つのじゃ」

 

「でも……」

 

「大丈夫じゃよ。やつらとて立派な黄牙の心を持つ戦士じゃ、必ずや女達を無事救い出してくれる。信じてやっとくれ」

 

「………………分かったよ」

 

アラジンは、ババの言葉に小さく頷いた

アラジンは“ウーゴくん”を仕舞うとババと2人して草原に腰を下ろした

 

「しかし、アラジンはほんに不思議な子じゃのぅ~~~」

 

「そうかい?」

 

「そうじゃよ?巨人を使い、ルフを使い……まるで、お伽噺の“マギ”の様じゃなァ……」

 

ホッホッホと笑いながらババがそう言う

その言葉に、アラジンはハッとした

 

 

  “マギ”

 

 

あの第七迷宮のアモンやチーシャンの領主もいっていた

自分は“マギ”だと

 

だが、アラジンは”マギ“についてなにも知らなかった

でも、もしかしたら……

 

そんな可能性が浮かんでくる

 

「……おばあちゃん、“マギ”を知ってるの?」

 

「ああ、知っとるよォ」

 

まさか……と思った

でも、もしかしたら―――――……

 

「ねぇ、教えて!”マギ“ってなんだい?僕はその”マギ“かもしれないんだ。この間”迷宮(ダンジョン)“のジンに言われたんだ。僕は”王の選定者“だって………」

 

「……………!」

 

ババが、ハッとした様に顔を上げた

アラジンは、自分を探していた

その真実が分かるかもしれないのだ

 

「ねぇ、教えてよ。”マギ“ってなんだい?僕は、自分が何者かを探している途中なんだ!!」

 

「…………………」

 

ババは一度だけその瞳を瞬かせた後

 

「ええよォ。では、1つお主に昔話をしてやろう」

 

「昔話?」

 

「そう、黄牙の村に残る不思議な伝説さ。それはな、こんなお話しじゃよ……」

 

 

そう言って、ババはゆっくりと語り始め

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とうとう、トーヤ達攫われるww

話が進みますよー

 

といいつつ、なんか夢主サイドも入りましたw

以外と、入れられるものだよな うん

 

次回は、マギに付いてですね!

 

2013/12/05