CRYSTAL GATE

  -The Goddess of Light-

 

 

 第一夜 創世の魔法使い 9 

 

 

「うわあああああああああ!!!!!」

 

それは突然起きた

エリスティアの言うアモンの聖門に触れた途端、アリババ達の身体は何かに吸い込まれるかの様に迷宮ダンジョンの中へ引きずり込まれた

 

なんなんだこれ!?

 

トンネルの様な中をすべり落ちる様に、どんどん底なしの穴に引きずり込まれていく

 

身体が……っ

引っ張られる……っ!!

 

それは、異常以外のなにものでもなかった

 

まるで、身体が引きちぎられそうになるぐらいの巨大な引力で、引っ張られていく

 

今までに感じた事のない感覚に、アリババの身体がギシギシと悲鳴を上げる

 

もう駄目だ……っ!!

 

そう思った時だった、突然視界が開けた

ハッとして目を開けると、視界に入って来たのは見た事も無い様な光景だった

 

「なっ……なんだ……!?これ……っ!!」

 

真っ暗な先の見えない空間に、空の星々が散りばめられ、無数の岩が浮遊している

その中心に、蒼い大きな丸い星があった

その星には無数の渦がひしめき合い、その渦からあふれんばかりの光の柱が立っている

 

その時だった

 

その中の一つの光の柱が、眩い位輝きだした

と思った瞬間、その光の柱がアリババ達を囲む様に伸びてきた

 

「……………っ!」

 

身体を強張らせた瞬間、光の渦にのまれる様にアリババの意識はその柱の中へ引きずられていったのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

————————————————

 

『こんな所に一生閉じ込められてるくらいなら……死んだ方がマシだよ……っ』

 

ガラガラ…と、周りの建物が崩れ落ちていく

周りのルフ達が、ピィィィと鳴り響いた

 

『………ねぇ!答えてよ!!僕は一体なんなの!?』

 

彼は言った

 

“お許しください。それを申し上げる事は許されていないのです”

 

彼のその言葉に、少年が力なく肩を落とした

ポタリ…ポタリと少年の大きな瞳から涙が零れ落ちてくる

 

“……ですが…もし、どうしてもと望むなら、この聖宮の力をもって貴方様の願いをなんでも一つだけ叶えることが出来ます”

 

『え…………』

 

少年は、彼の言葉に大きく目を見開いた

息を飲み、顔を上げる

 

壊れた“聖宮”の外に大きな蒼い星が浮かんでいた

その星から無数の光の柱が溢れ出ている

 

“我が王よ、偉大なる魔法使い。貴方の願いを叶えましょう”

 

光の柱が大きく輝きだす

 

“巨万の富も、幾億の星々を統べる力も、永遠の命さえも思いのまま―――さぁ、貴方の願い事はなんだ”

 

少年は息を飲んだ

ぐっと、涙を堪える

 

『僕の願いは――――………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      ◆      ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………

………………

 

……なんだ、ここ…

 

 

コポコポ…

 

……何も見えねえ……

 

コポポポポ……

 

不思議な感覚だった

まるで、何かの中に浮んでいる様な 不思議な感覚――――

 

何も感じない

何も考えられない

 

息すら出来ない――――……

 

………………

何も………

 

………………息……

 

そう思った瞬間、突如息苦しさが全身を襲ってきた

アリババが必死に息をしようと口を開いた

 

「…………っ」

 

 

その瞬間、何かが口の中に入って来た

水のような油のような――――水!

 

 

「がはっ……!」

 

 

それが水だと認識した瞬間、一気に息苦しさが襲って来た

アリババは、息をしようと必死に顔を上げた

 

「ぷはっ……!げほっ…げほっ……!!」

 

それは、直ぐに得る事が出来た

むせかえりながら、空気を何とか吸い込む

 

「けほ……けほっ………」

 

よくよくみると、そこは随分と浅い所だった

水底に座る形となっているのに、膝の高さぐらいしか水位は無い

 

随分と浅い所で自分は溺れそうになっていたのかと、呆れてくる

 

そう思うと、少し身体が落ち着いて来た

「けほ…」と息を整えながら辺りの様子を見渡す

 

「ここは……」

 

そこは、真っ暗な地底湖の様な所だった

だが、周りが暗すぎて何も見えない

 

が、徐々に目が慣れてきた瞬間 水底にある“それ・・”に気付き、アリババはぎょっとした

 

それは、人の頭蓋骨だった

髄骸骨だけじゃない

よくよく見ると、至る所に骨とういう骨が沈んでいる

 

アリババが思わず後退る様に後ろに手を付いた瞬間だった

その手に何かぬるっとした物が触れた

 

なんだ……?

 

それを手にとり、じっと見つめる

それは、黒い水だった

 

いや、違う

この匂い・・は………

 

瞬間、アリババはハッとした

アラジンとエリスティアが居ない

 

「アラジン……!エリス……!!」

 

慌てて辺りを見渡す

すると、少し向こうでアラジンが水の中に横たわっているのが見えた

アリババは慌ててアラジンに駆け寄った

 

だが、エリスティアの姿が見えない

 

「エリス!?どこだ!!?」

 

叫べども答えは返ってこない

 

まさか……

瞬間、嫌な予感が脳裏を過ぎる

 

迷宮ダンジョンは入ったら完全攻略クリアするまで二度と戻れない

 

アモンに挑んで帰ってこなかったものは何千万人もいる

誰一人、帰ってこなかった

 

いや

エリスティアは何度も迷宮ダンジョンに入っている

それに、制御されているとはいえ不思議な力も使っていた

 

彼女に限って何かある筈が無い

だが……

 

「エリス!!いないのか!?いたら、返事をしてくれ!エリス!!!」

 

その時だった

 

「アリババくん!!早く上がって!!!」

 

遠くの方から、エリスティアの声が聴こえた

 

アリババはハッとして声のした方を見た

瞬間―――――

 

 

ボォ!!

 

 

と、岩場に突然真っ赤な炎が灯った

そう思った瞬間、ボボボボと どんどん湖を囲む様に炎が灯りだす

 

「急いで!!その水は―――――!!!」

 

そうだ!!

 

その水の正体を思い出し、アリババは慌ててアラジンを抱えると走り出した

と同時に、岩場の炎が水の中に降り注ぎだす

 

瞬間、水がボォォ!!と勢いよく燃え上がりだした

 

「……………っ!!」

 

その炎は、瞬く間に湖を火の海に変えてしまった

走るアリババのすぐ後ろまで炎が襲い掛かってくる

 

くそ……っ!逃げ切れねえ……!!

 

水に足が絡め取られ上手く走れない

今にも炎に呑まれるんじゃないかと思った瞬間――――

 

 

   「疾風ハースィハ・リーフ!!」

 

 

 

エリスティアの声が辺り一帯に響き渡った

瞬間、アリババの身体がふわっと浮いたかと思うと、勢いよく後ろから何かに押された

 

 

「うわあああああああ!!!」

 

 

突然、自分に起きた異変に反応しきれずに、アリババがそのまま吹き飛ばされる

ごろごろごろごろ!……と、制御しきれず地を転がったと思うと、そのまま勢いよくガツン!と岩に激突した アリババだけ……

 

「……ご、ごめんなさい……アリババくん、怪我はない?」

 

「は、はは………た、助かったよ…」

 

心配そうにアリババを覗き込むエリスティアに、逆さまになったままのアリババが手を上げつつ苦笑いを浮かべた

アリババは、起き上がると真っ赤に燃える湖を見た

まさにそれは火の海だった

 

エリスティアの助けが無ければ、、今頃アリババもアラジンも火だるまになっていたかもしれない

 

「いったい、何がおきたんだい……?」

 

いつの間にか起きたのか、アラジンが突然目の前で燃え出した水を見て 大きな目を瞬かせた

 

「燃える水よ……」

 

その問いに、エリスティアが静かに答えた

その言葉に、アリババが小さく頷く

 

「ああ、ランプに使う油なんかよりよっぽどよく燃えるんだ。……最初に踏み出すのを躊躇ったら、それだけでアウトって訳か……」

 

あの湖に沈んでいた骨たちは、最初に躊躇った者達のなれの果てなのだろう

アリババも、あそこで竦んでいたら めでたく仲間入りしていたという事だろう

 

ごくりと、息を飲む

 

その時だった、アラジンが呟いた

 

「凄いね、アリババくん。エリスおねえさん」

 

「え……?」

 

アラジンが、楽しそうに顔を綻ばせる

 

「これが迷宮ダンジョンなんだね!」

 

「「…………………」」

 

アラジンの言葉に、アリババとエリスティアが顔を見合わせた

そして、2人してぷっと吹き出しだす

 

「そうね」

 

「あ、ああ、これが迷宮ダンジョンさ!」


そう言って、ようやく立ち上がると アリババはある事に気が付いた

 

「そういやぁ、なんでエリスは水の外にいたんだ?」

 

アリババもアラジンも燃える水の中に落ちた

だが、エリスティアは燃える水の外にいた

 

入った場所は同じなのに、違う所に飛ばされたという事だろうか

 

「アリババくん、どうかしたの?」

 

アリババの様子を不思議に思ったエリスティアが、心配そうにそのアクアマリンの瞳を瞬かせた

 

「あ、いや…ちょっと疑問に思ってよ」

 

「ぎもん?何をだい??」

 

すると、アラジンが興味津々に聞いて来た

 

「ん?いや、エリスだけ場所がずれて落ちたよなって……」

 

疑問に思っていた事を口にした時だった、ふいにエリスティアが何かに気付いたかの様に、その表情を強張らせた

 

「エリス?」

 

その尋常ではない様子にアリババも思わず身構える

 

だが、何も起きなかった

何の音もなく、何の気配もない

 

なんだ?

 

エリスティアは、何に対して警戒しているのか……

まったく分からなかった

 

ふいに、エリスティアがその緊張を解いた

 

「エリス?どうしたんだよ」

 

アリババがエリスティアにそう尋ねると、ふいにエリスティアは何かを呟いた

 

「………入って来た」

 

「え……?」

 

それだけ言うと、エリスティアがにっこりと微笑んだ

 

「ううん、何でもないわ」

 

そう言って、風で乱れたストロベリーブロンドの髪を手で押さえる

 

「そういえば、場所がずれていたって言っていたけれど、ずれているのは場所だけではないわよ」

 

「は?どういう意味だよ」

 

エリスティアが何を言いたいのか分からずに、アリババが首を傾げる

エリスティアは、一度だけそのアクアマリンの瞳を瞬かせると

 

「ずれているのは、時間もよ」

 

「時間……?それって一体――――……」

 

エリスティアの言わんとする事が分からずに、アリババが首を傾げた時だった

 

「アリババくん! エリスおねえさん!ねぇ、ねぇ、来ておくれよ!」

 

不意に、アラジンがエリスティアとアリババの手を引っ張った

 

「アラジン!?」

 

「ちょっ……アラジン、一体どうしたの?」

 

急に引っ張られて、エリスティアとアリババがお互いに首を傾げる

言われるまま付いて行った先には――――……

 

「こ、これは……!!」

 

アリババは、その先に広がる光景に思わず目を奪われた

それは、ここが迷宮ダンジョンの中だというのを忘れそうになるほどだった

 

広大に広がる岩肌

その岩肌は、太陽が差し込んでいるのかと錯覚するほどに、眩く光り輝いていた

そして、見た事のない植物が生息し、光っている

まさに、そこは光の渦の中だった

 

「すっげえ……!これが…これが、“迷宮ダンジョン”かっっ!!」

 

「ヤッタね――――!」

 

大興奮するアリババとアラジンを余所に、エリスティアは冷静だった

幾度となく、迷宮ダンジョンに入った事のあるエリスティアには分かっていた

 

“ここ“はあくまでも最初の場所

スタート地点に他ならない

 

最初のトラップは、もっとも脱落者が出ると言われている

 

そこを潜り抜けた物に、一瞬だけ”夢“を見せる

だが、本番はこれからだ

 

ここから、正しい道を選び最終地点である宝物庫に辿り着かなくてはならない

そして、そこにジンが眠っている

 

大概、そのジンが何の属性なのかは迷宮ダンジョン内を進んでいけばおのずと分かってくる

最初のトラップを見る限り「アモン」は炎の属性のジンなのだということは明白だった

 

アモンは確か、礼節と厳格のジンよね……

 

そういえば、アモンは最初から炎を操るのが得意だった・・・・・・・・・・・・・・・……

そのアモンの属性が「炎」とは、流石…というべきだろうか

 

そこまで考えて、ふとある事に気付いた

 

いやだ……まただわ……

 

彼と一緒に冒険していた時にも感じた既視感

不思議な感覚

 

私は知らないのに、私の中は知っている

 

懐かしいと―――そう感じてしまう

知らない筈なのに

 

「エリス――――!!!何やってんだよ、行こうぜ――――!!」

 

「エリスおねえさーん!早く、早く―――――!」

 

気付くと、いつの間にか先へ進んだアリババとアラジンが、大きく手を振りながらエリスティアを呼んでいた

 

その様子に、エリスティアはくすりと笑みを浮かべたのだった

 

あの2人はまだ知らない

この先、何が待ち受けているのかを―――――……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アモン突入――――!!しましたなww

やっとかwww

 

しかし…まだ、今からです

とりあえず、サクッと進めたいので原作にある穴はカットするよ!!

 

2013/06/17