Reine weiße Blumen

  -Die weiße Rose singt Liebe-

 

 

 1章 前奏曲-volspiel- 6

 

 

「あやねは、すごいな」

 

そう言って、「大好きな」あの人の手があやねの頭を撫でた。

その対応に、また子供扱いされたのだとわかり、あやねが頬を膨らませる。

 

「……別に、すごくなんて……」

 

全然、すごくない。

この人の「音」に比べたら、自分なんてまだまだだ。

 

そういう言うと、彼はくすっと笑い、

 

「こーら。“自分なんて”なんて、言うものじゃないぞ? 俺には俺の、あやねにはあやねの“音”がある。一緒にしたら駄目だ」

 

「でも……」

 

私は、貴方の様に弾きたい。

 

その言葉は“音”にはならなかった。

 

「でも? その続きは?」

 

その人はまるで あやねの言わんとすることが分かっているかの様に、そう口にした。

だが、あやねは、その続きを口には出来なかった。

 

言えば、きっと諭されてしまう。

なぜなら、“彼の言葉”はいつも”魔法“の様だから

言えば、“現実”を知ってしまう。

 

自分の「音」は、まだまだ「この人」に追いつけていないという「事実」に。

 

だから。

 

あやねは、そっと目の前のピアノに触れた。

そして、ゆっくりと奏で始める。

 

あやねのその「音」に「彼」は嬉しそうに微笑んだ。

 

「あやねの“音”だね」

 

瞬間、ざぁ……と、風が吹いた。

窓の隙間から白いカーテンと一緒に、桜の花びらが舞い始める。

 

それを見た“彼”は 少し寂しげに、

 

 

「ああ、時間だ……」

 

 

と、呟いた。

 

「え……?」

 

一瞬、何を言われたのか分からず、あやねが はっと顔を上げる。

すると“彼”はその顔に笑みを浮かべた。

 

そして――。

 

 

 

「…………ばいばい、あやね」

 

 

 

「……っ、や……」

 

 ざぁ……。

 

「桜」の花びらが舞い、視界を覆う。

脳裏に浮かぶ。

 

最後の言葉――。

 

 

 

 『ごめん、あやね――多分、もう、会えない……』

 

 

 

「い、や……」

 

 

 

  『さよなら……あやね――』

 

 

 

「いや……っ!」

 

 

行かないで。

 

   言えなかった。

 

言わないで。

 

   伝えられなかった。

 

 

本当は―――。

 

 

 

 

 

 

 

「……っ、い、か……な……で……」

 

「え……?」

 

ふいに、伸びてきた手が楽の袖を掴んだ。

反射的に、楽の動きが止まる。

 

場所は「聖マリアナ音楽学院」の医務室内。

時間は、夕刻。

 

あの時、あやねが急に倒れたので、

焦った楽は、慌ててあやねを事前に一応聞いていた医務室に運んだのだ。

 

だが、医務室には誰もおらず、楽はとりあえずここの医務員を探しに行こうとした矢先だった。

 

「あやね……?」

 

一瞬、目を覚ましたのかと思ったが、違った。

あやねの、その深海の様なあの青い瞳は閉じたままで。

だが、その瞳から涙が伝っていた。

 

うわ言の様に呟かれた言葉。

“いかないで”。

 

そう――聞こえた気がした。

 

楽は一度だけ、医務室の外へと続く扉を見るが、

こんなあやねを一人ここに置いていけるわけもなく……。

 

そっと、傍に座ると、

自分の袖を掴んでいたあやねの手を、自身の手で包み込んだ。

 

「俺は“ここ”にいる……」

 

そう言って、あやねの手を握る。

すると、あやねが小さく何かを呟いた。

 

だが、それを聞き取ることは出来なかった。

 

「あやね……」

 

そっと手を伸ばし、あやねの涙を拭ってやる。

そのまま、無意識的に さらっとあやねの柔らかなキャラメルブロンドの髪に触れた。

 

「……ん……」

 

あやねが、微かに声を洩らした。

気持ちよかったのか、その寝顔が少しだけ穏やかになる。

 

それを見て、楽は少しだけ ほっとした。

 

他に誰もいない“空間”。

ここに“いる”のは、自分とあやねだけ……。

 

 

「……」

 

 

あやねを見る。

 

日本人離れした、雪の様に白い肌に 細い指。

柔らかなキャラメルブロンドの髪。

形の良い、薄桃色の唇。

 

今この瞬間――時が止まれば……。

 

そう思わずにはいられなかった。

 

彼女に触れたい。

その瞳が自分を映すのを見てみたい。

 

そんな想いが浮かんでくる。

 

 

「あやね……」

 

 

ぎし……と、ベッドが軋む音が響く。

そっと、彼女の頬に触れた。

 

そして――。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ!! 八乙女くん、いました!!」

 

瞬間。

楽が、はっとしてスタッフの男性の声が聞こえた方を見る。

 

「あ……」

 

そこにいたのは、オーディションをしていた筈の監督と演出家。

そして、さきほどまで楽の近くにいたスタッフの男性と――カメラマン。

 

「……」

 

監督が意味深に笑みを浮かべ、

 

 

ぱたん。

 

 

「ちょっ――!! なんで、扉を閉めるんですか!!」

 

すかさず、楽が突っ込んだ。

 

「いや、だってなんか……邪魔ちゃったかな~と」

 

「邪魔って……っ」

 

監督の言わんとすることがわかり、楽がさっと顔を一瞬だけ赤くするが、

すぐに、気付かれまいと顔を背ける。

 

「そ、それよりも、医務員の先生を……」

 

そう言った時だった。

 

「ん……」

 

ふいに、あやねがゆっくりとその瞳を開けた。

 

「あやね!?」

 

「……? が、く……さん……?」

 

あやねは、何が起きたのかわからないという風に、ぼんやりと楽の名を呼んだ。

そして、そっと伸びてきた楽の手に支えられながら、その身体を起こす。

 

「わ、たし……」

 

「無理はするな、あやね。気を失っていたんだ」

 

「……だい、じょうぶ、……です」

 

なんとか、そう振り絞ると、あやねはベッドから出ようとした。

が、それは楽に止められた。

 

「馬鹿、まだ横になってろ。また、倒れたらどうするんだ」

 

「それは……」

 

そう言われては、倒れた手前言い返せない。

あやねが、少し恨めしそうに頬を膨らませて楽を見る。

 

その様子に、楽が少しほっとした様に笑った。

 

「……そんな顔出来るなら、大丈夫だな」

 

そう言って、あやねの柔らかなキャラメルブロンドの髪に触れる。

そのまま、彼女の少しピンク色に染まった頬を撫でた。

 

「あ、の……」

 

突然の楽の行動に、あやねが困惑の声を上げる。

瞬間、楽が「あ……」と声を洩らして、さっと手を離した。

 

「悪ぃ、急に触れたりして……びっくりするよな」

 

「あ、いえ……その……」

 

顔が熱い。

あやねの顔が、先ほどより熱を帯びた様に朱に染まっていく。

 

思わず、あやねが頬に触れて。

恥ずかしそうにその深海色の瞳を逸らした時だった。

 

 

「あ―こほん! ちょっと、いいかな?」

 

「あ……」

 

後ろから聞こえてきた監督の声に、楽がはっとする。

監督を見ると、なぜかその顔がにやにやと笑っていた。

 

 

わ……。

忘れてた――!!

 

がーんと、ショックを受けて楽が落ち込む。

が、天とも勝負レベルのスルーで、監督が楽をよそにあやねに話しかけた。

 

「白閖あやね、さんかな?」

 

「え……」

 

いきなり見ず知らずの人に名を呼ばれ、一瞬あやねが困惑の色をその瞳に映す。

が……直ぐに慣れているかの様に、

 

「はい……そうです」

 

と、答えた。

 

なぜなら、その人は「白閖」の名を出したからだ。

あやねが知らなくても、“向こうは知っている”のはよくある話だった。

 

なので、別段そこまで驚くことではないのだが……。

ちらりと、楽を見る。

 

この状況下で、確認するかの様に名を呼ばれるのは、些か疑問が残った。

 

何か、問題でも起こしてしまったのかしら……。

 

そんな不安に駆られる。

 

が、そこまで考えて、

この状況下で楽と一緒にいるのが既に問題になる気がした。

 

曲がりにも、楽は芸能人と呼ばれる人で、あやねは一応一般人だ。

普通に考えて一緒にいるのはおかしいだろう。

 

きっとここに、楽の(正確には“TRIGGER”の)マネージャーの姉鷺がいたら、怒髪天だったかもしれない。

あやねとしても下手に騒がれて「白閖」の名前が出るのは不本意だった。

 

ここは、きちんと訂正してやり過ごして去った方がいいわ、よね……?

そう思い、声をかけてきた男性の方を向き、

 

「申し訳ございません。私が倒れてしまったせいで、が――八乙女さん、が運んでくださっただけなのです。ご迷惑おかけしました」

 

そう言って、丁寧に頭を下げる。

そして、さっとベッドから出ると「では、失礼します」。

そう言って、去ろうとした時だった。

 

「あやねっ!!」

 

え……?

 

ぎょっとして、そちらを見るとなぜか楽があやねの手を掴んでいた。

 

「待てよ、行くなよ」

 

「な……」

 

掴まれている手が熱い。

あやねが、かぁーとその顔を赤く染める。

 

「ちょっ……や、八乙女さ……」

 

何事も無きように、離れようとしていたのに……。

どうしてこの人は。

 

これでは、めちゃくちゃだ。

だが、楽はお構いなしに、

 

「なんで、お前が謝るんだ。謝ることなんて何もしてないだろ」

 

そう言って、楽がぐいっとあやねを抱き寄せる。

 

「で、ですから、それは――」

 

「第一、女に責任取らせるような事出来るわけねーだろ」

 

「や、八乙女さんっ、……は、離し――」

 

「楽だ。楽って呼べって言っただろ」

 

「……っ」

 

あやねが言葉に詰まると、楽はすかさずあやねを自分の背に庇い、

 

「監督、すみません。俺の不注意で危うく彼女を危険な目に……」

 

嘘だ。

楽こそ、何も悪くない。

 

どうして、この人はいつも――。

 

「……っ」

 

知らず、涙が零れる。

 

失礼な態度しか取ってないのに。

なん、で……。

 

この人は、いつも庇ってくれるのか。

 

思わず、楽の背に触れる。

そのまま、ボロボロと涙を流した。

 

「なっ――」

 

驚いたのは、他ならぬ楽だった。

後ろに庇った筈のあやねが嗚咽を洩らし始めて、慌てて振り返る。

 

そして、そっとその頬に触れて涙を拭う。

 

「馬鹿、あやね。何、泣いてんだ」

 

「ど、し……て……っ」

 

涙が止まらない。

 

「ん?」

 

「……っ、い、つも……私なんかに、優しく……する、の……で、すか……っ」

 

何とか吐き出した言葉は、あっという間に楽の腕の中に抱き寄せられ遮られた。

 

「……っ、あ……だ、め……っ」

 

人が、見ている。

 

そう思い、なんとかその腕から逃れようとするが……。

楽は、その抱き寄せる手を緩めてはくれなかった。

 

まるで、世間の目よりもあやねの方が大事――という風に、あやねを抱きしめ、

 

「“私なんか”なんて言うな。馬鹿だな……決まってるだろ?」

 

あ……。

その“言葉”は――。

 

 

 

『こーら、“自分なんて”なんて、言うものじゃないぞ?』

 

 

 

「あの人」と同じ。

 

「俺は、お前が……」

 

 

     『俺は、あやねが……』

 

 

「――大事なんだよ。大切にしたいと思ってる」

 

 

     『――大事だからね』

 

 

「……っ」

 

「だから、俺の前で無理するな。俺はそんなお前は見たくない」

 

「……っ、が、く……さ……っ」

 

涙が止まらない。

 

こんなこと言ってくれる人は、「あの人」しかいなかった。

ずっとずっと……誰も、「あの人」以外は「あやね」を「あやね」としては見てくれはしなかった。

 

「白閖」の名が重かった。

それ、なのに……。

 

この人は……まだ、そんなに逢ったわけでもないのに。

どうして、「あの人」と同じような言葉をくれるのか……。

 

楽があやねの柔らかなキャラメルブロンドの髪に触れる。

そして、そのまま抱き寄せると、涙を流すあやねの瞳に口付けた。

 

「……っ、あ……」

 

「だから、泣くな……お前に泣かれたら、俺はどうしていいか迷う」

 

「っ……、楽さ……」

 

“楽さん”と言おうとした言葉は、あっという間に楽の唇に塞がれた。

 

え……。

 

「……っ」

 

初めてされる人からの“それ”に思わず、あやねが動揺の色をその瞳に映す。

反射的に身体が強張る。

 

「あ……、の」

 

何とか絞り出したその言葉も、また楽の唇によって塞がれた。

 

「ん……っ、あ……」

 

一度目は、触れるだけ。

二度目は、優しく。

そして、三度目は――。

 

ずっとずっと、深く 深くて……。

反射的に、あやねが楽のシャツを掴む。

 

どう、し、て……。

 

そう思う、反面。

周囲の視線が痛いほど感じるのと同様に、口付けを通して、楽の“想い”が流れ込んでくる様だった。

 

“愛おしい” と。

それと同じぐらい、あやねを求めてくれるのが分かった。

 

でも……。

 

「が、くさ……んっ……、ひと、が……ぁ……っ」

 

人が見ている。

それが、余計に恥ずかしさを 加速させた。

 

なのに、楽はやめるどころか、ぐいっとさらにあやねの頭を上げ、

 

「あやね――口、開けて」

 

「え……?」

 

何を言われているのか頭が追い付かず、あやね知らず口を開けさせられてしまう。

と、同時に、楽からの口付けが更に深くなった。

 

「あ、ん……っ、まっ……んん……ぁっ……」

 

“待って”と言いたいのに、いう事すら叶わない。

 

「あやね――」

 

甘く囁くように紡がれた自分の名前が、まるで麻酔の様に頭の中で反響する。

 

反面、楽は止められなかった。

泣いているあやねを見た瞬間、今まで誰にも感じたことのないぐらいの“愛おしさ”が込み上げてきた。

 

何とかしてやりたいと。

この涙をぬぐってやりたいと。

 

そう思ったら、もう身体が勝手に動いた。

 

知らず、あやねのその薄桃色の形の良い唇に触れていた。

そして、一度振れれば、もう耐えられなかった。

二度、三度と重ねるたびに、あやねがどんどん愛おしくなり、これ以上ないぐらい欲しくなった。

 

彼女が欲しい。

誰にも渡したくない。

誰の目にも触れさせたくない―――。

 

その心も身体も、すべて自分のものにしてしまいたい衝動に駆られる。

やばい……と、思った。

こんなにも、のめり込んだ女はいない。

 

“あやね”だけだ。

 

やべぇ、とまらねぇ……。

 

彼女を欲しいと思う感情が止まらない。

彼女が合間に洩らす吐息すら、愛おしい。

逆にそれが、楽の行動を加速させた。

 

周りにスタッフや監督がいるのも分かっていた。

でも、止められなかった。

自分の感傷をコントロール出来なかった。

 

こんなこと、初めてだ。

 

“あやね”が欲しい。

欲しくて欲しくてたまらない。

 

と、その時だった。

がく……っと、反射的にあやねが立っていられなくなり、力なく崩れかかった。

 

「あやねっ!」

 

はっとして、咄嗟にあやねが倒れそうになるのを、支える。

あやねを見ると、流石に意識が朦朧としかかっているのか……、とても一人で立っていられる様子ではなかった。

 

「……っ、悪い、あやね」

 

流石に、申し訳なさが込み上げくる。

初めてかもしれない相手に、いくらなんでもやりすぎた。

 

だが、止められなかった。

どうしても、手放したくなかったのだ。

 

その時だった。

監督が、見兼ねたかの様に、

 

「や、八乙女くん。とりあえず、彼女を―――」

 

「離したまえ」と言おうとしているのを感じ、さっと楽は監督が言葉を発する前に、

 

 

「監督!!」

 

 

いきなり、楽が叫んだ。

驚いたのは他ならぬ、監督やスタッフ達だった。

 

すると、楽はさっと頭を下げて、

 

「勝手を言って、すみません!! 彼女を――あやねを休ませたいので、今日は上がってもいいでしょうか?」

 

「え……? あ~う、うん……そう、だね」

 

いきなり、楽からの丁寧な申し出に、思わず監督が頷く。

いや、お前のせいだろ!! と、他のメンツの目が総突っ込みしているが……。

 

そう申し出る楽の目が、あまりにも真っ直ぐで。

それと同時に、理由はどうであれ あやねを本気で心配しているのが手に取るようにわかり、監督は、仕方なさげに溜息を洩らすと、

 

「わかったよ。今日の八乙女くんの分はもう終わってるし……彼女を連れて帰りなさい」

 

「ありがとうございます!!」

 

楽がもう一度頭を下げる。

そして、あやねの方を見ると、

 

有無を言わさないという風に、急に横抱きに抱き上げた。

驚いたのは、他ならぬあやねだ。

 

ただでさえ、頭が働かない状態なのに……。

更に、横抱きに抱き上げられパニックになる。

 

「あ、ああ、あの……っ、楽さ――」

 

真っ赤になって、口をぱくぱくさせるが、楽はお構いなしに、

 

「暴れると落ちるぞ。しっかり俺の首に手を回しておけ」

 

「……っ」

 

これはもう、きっと何を言っても放してくれそうになかった。

 

かといって、ここで抵抗する気力すら現状では出せない。

観念したかのように、あやねがそっと楽の首に手を回すと、そのままその朱に染まった顔を上げてられなくて、彼の肩に顔をうずめた。

 

あやねの、その可愛らしい反応に、微か楽が笑みを洩らす。

 

そして――「お先に失礼します」と言って、そのままあやねを連れてその場を去ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

   ****    ****

 

 

 

 

 

 

楽が見えなくなったところで、他のスタッフが監督につめ寄った。

 

「いいんですか!? あれ!! あれじゃまるで――」

 

“お持ち帰り”じゃないですか!!!

と、突っ込みが来そうなのを察知して、監督はスタッフが言う前に声を上げて笑い出した。

 

驚いたのはそのつめ寄ったスタッフだ。

なぜ、ここで、この状況下で監督が笑い出すのか理解出来ないのだろう。

 

すると、その監督は、

 

「まぁまぁ、八乙女くんもまだ若いってことだよ。それに、君、八乙女くんが連れてた彼女……誰か知ってる?」

 

言われて、スタッフが「え……?」と言い淀む

 

「誰って、ここの女子大生じゃ……」

 

「うん――半分正解だけど、半分不正解」

 

「は……?」

 

意味が分からないという風に、スタッフが首を傾げる。

すると、監督と演出家がなにやら、にまにま笑みを浮かべながら、

 

「彼……八乙女くんは、なかなかの審美眼の持ち主ですね。監督は、ご存じだったのでしょう? “彼女”が“この大学”の生徒だという事を」

 

演出家がそういうと、監督はにやりと笑みを浮かべ、

 

「ああ、勿論 知っていたよ。“八乙女くんと彼女の関係”も、“彼女が何者か”という事も――これも、想定内かな」

 

そう言って、笑ったのだ。

 

「なかなか、面白い“絵”が、撮れそうじゃないか。ねぇ?」

 

そう言って、演出家の方を見る。

すると、演出家もふふふ……と笑みを浮かべ、

 

「そうでうすね。この映画の撮影――なかなかに、楽しくなりそうですね」

 

そう言って、二人して笑ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なぜ、こうなった

いや、予定ではとある一件から、大喧嘩に発展するはず

だったんですけどねぇええええええ

 

喧嘩のけの字もねぇよwwww

 

とりあえうず、私的楽イメージは、「真面目」なんで

無理やりはない

 

新:2024.01.21

旧:2020.02.05