花薄雪ノ抄
     ~鈴蘭編~

 

◆ 梅宮一 「Under This Fleeting Glow」

(WB夢 「PLATINUM GARDEN」 より)

 

 

――梅宮一は最近、とても気になっている事があった。それは蘭飛鳥の事である。飛鳥は風鈴高校生ではない。というのも、風鈴が男子校なのもあるが、そもそも、彼女は有名な私立学院の高等部三年に通う、いわゆる“お嬢様”というやつだ。風鈴生からすれば、“高嶺の花”のような存在なのだ。

だが、訳あって彼女は“ボウフウリン”の“華姫ひめ”をしていた。“華姫”とは、そこにいるだけで、そのチームを界隈の「最強」と認識される程の力を持つ存在なのだ。彼女がここにいるから、争いも、揉め事も、ほどほどに収まっており、誰彼構わず喧嘩を吹っ掛けてきたりしなくなったのである。それぐらい“華姫”の存在は大きかった。要は、チームの“顔”といっても過言ではない。

 

そんな彼女が、最近どうも疲れているようなのだ。時折風鈴に顔を見せに来ていたが、最近は忙しいらしく、あまり来ることがなかった。彼女曰はく、全国統一実力テストと、学院内のテスト時期が被っているらしく、勉強で手が離せないと言っていた。

風鈴はそういうのとは、ほぼ無縁なので梅宮も最初は「無理しない程度に頑張れよ」という気持ちだけだった。だがしかし、ここ1ヶ月――先月ぐらいから、めっきり彼女が姿を現さなくなったのだ。電話をしても、「忙しい」「疲れてるから」とすぐ切られ、チャットをしても、簡単な返事しかくれない。正直、梅宮は彼女が心配で心配で仕方がなかった。

 

無理をして、身体を崩しているんじゃないかとか、勉強に明け暮れて眠れてないんじゃないかとか、後……まさか、他に男が……!? などと、思ってしまう始末だ。相当重症である。

 

もう、彼女に逢いたくて逢いたくて仕方がなかった。逢って彼女の顔を見て安心したい。少しでも、こちらにその肩の荷を分けて欲しい。そう思えて仕方が無いのだ。

そこで、梅宮が考え抜いた結果──。

 

「はぁ? 癒されるもの?」

 

いきなり屋上に呼び出されたかと思ったら、突然そう梅宮に投げかけられ、柊登馬は首を傾げた。それはそうだろう。梅宮の突飛さはいつものことだが、今回ばかりは予想の範囲を超えていた。だが、梅宮はさも当然そうに、

 

「そう! 癒しだ!! オレは思うんだ。今の飛鳥に必要なのは“癒し”だと!!」

 

「は……?」

 

意味が通じない。飛鳥と癒しと何の関係があるのか。しかし、梅宮の事だ。何か一応考えての発言なのだろう、飛鳥の為に。と、結論付けて柊は首を捻った。

 

「癒し……。良く分からんが、飛鳥が喜ぶものならいんじゃないのか?」

 

「それが分かれば苦労しない!」

 

それはそうだ。だが、この風鈴で飛鳥を一番知っているのはお前では? と、言いたくなり、柊はぐっと堪えた。それから、「はー」と息を吐きながら頭をかく。

 

「あー、オレより、椿野に聞いた方がよくないか? あいつら仲良いだろう」

 

椿野とは、柊と同じ“ボウフウリン”の四天王の1人の椿野佑の事である。女性のような恰好と容姿をしているからか、飛鳥とは話が合うらしく、あの2人は仲が良かった。

だが、梅宮は小さく首を振ると、

 

「あいつも、最近は例のじいさんの家と、ケイセイ街の店で忙しいみたいで、あんまり掴まらねぇんだよな」

 

と、梅宮は言うが、「いや、お前が呼べば椿野はすっ飛んで来るぞ」と、柊が思ったのは言うまでもない。だが、梅宮は椿野の気持ちを知らないので、気付かないようだった。色々と、面倒なやつらだな……。などと思いつつ、柊は頭を悩ませるのは止めた。これ以上、考えると胃痛が酷くなりそうだったからだ。

ふと、その時、柊の脳裏にある事が思い出された。

 

「そういえば──」

 

 

 

 

 *** ***

 

 

 

 

「一さん?」

 

その日の夕方。風鈴高校の屋上に呼び出された飛鳥は、少し疲れたような顔で梅宮の前に現れた。あまり眠っていないのか、その深緋色の瞳の下には薄っすらクマも見える。そんな飛鳥を見て、梅宮は心配そうに駆け寄った。

 

「悪い、飛鳥。疲れてるところを――って、お前ちゃんと寝ってるのか?」

 

そう言われて、飛鳥が「え、ええ、まぁ……」と言葉を濁す。その返事で、もう半分まともに寝てないのは確定といった感じだった。海宮は少しスマホの時計を見た後、「まだ、少し早いか……」とぼやくと、ぐいっと飛鳥の腰を掻き抱いた。突然の事に、飛鳥がびっくりしていると、そのまま何故か一緒にソファに座らせられる。

 

「あ、あの……?」

 

飛鳥が戸惑ったように声を上げようとすると、ぽすっという音と共に、梅宮の膝に頭を押し付けられた。いわゆる、膝枕状態をされて、飛鳥がその瞳をぱちくりさせる。

 

「あ、の……はじ、め……さん?」

 

一体、何が起きているのか……。そう思っていると、ぽんぽんっと優しく頭を撫でられた。飛鳥は意味が分からなかった。どうして、何故、こんな状態になっているのか……。思考がまるで追いつかない。

すると、梅宮の手がゆっくりと飛鳥の髪を撫でる。

 

「いいから、少し眠れ。オレが傍にいてやるから──」

 

「……」

 

そう言って、また優しく頭を撫でられる。それが酷く心地よくて……気持ち良くて……、飛鳥の意識がゆっくりと眠りの淵に落ちていくのに、時間は掛からなかったのだった――。

 

 

 

 

 

 

どのくらい眠っていたのだろうか。飛鳥がゆっくりと目を覚ますと、辺りはすっかり日が落ちており、薄っすらと夜の帳が落ちていた。

 

「私……」

 

どうしたんだったかしら……。

そんな事を思いながら、身体を起こそうとすると、ぱさりと風鈴の上着が落ちた。一瞬「え?」と思ってそれを拾おうと手を伸ばし掛けると、上から大きな手が伸びてきて、それを拾った。

 

「あ……」

 

飛鳥が思わずそちらを見ると、梅宮がそこにはいた。梅宮が飛鳥に気付くと、そっと、再びその上着を彼女に掛けてから、顔を近付けてくる。一瞬、その仕草にどきっとするが、梅宮はじっと飛鳥の顔を見た後、にかっと笑った。

 

「顔色。大分よくなったみたいだな。良かった良かった」

 

「え……? あ……」

 

そういえば、あれだけあった疲労感がすっかり抜けている。ほんの少し眠っていただけだというのに……彼が、梅宮が傍にいたからだろうか? そう思って、梅宮の方に顔を向けると、彼の空色の瞳と目が合った。すると、その瞳が優しげに微笑む。そして、ぽんぽんっと頭を撫でられた。

 

「飛鳥──寝顔。可愛かったぞ」

 

「え……、ええ!?」

 

その言葉に、飛鳥が慌てて飛び起きた。そして、顔を真っ赤に染めて両手で覆い隠す。

み、見られていたの……? ずっと!?

そう思うと、顔から火が出そうだった。だが、梅宮はそんな事にすら気付かず、飛鳥をじっと見つめてくる。その瞳が余りにも優し過ぎて、飛鳥は言葉を失ってしまった。すると、ゆっくりと彼の手がこちらに伸びてきたかと思うと、そのままそっと抱き寄せられてしまった。

飛鳥は抵抗する事すら敵わず、そのまま彼の胸に自身の身体を預ける。すると、梅宮が嬉しそうに笑ったのだ。その笑顔がまるで、自分を愛おしむ様に見えて、飛鳥はまた頬が熱くなるのを感じた。

 

「あ、の……はじ、めさん……? その、手を――」

 

「離して」という言葉は、音の葉に乗らなかった。そのままゆっくりと上を向けさせられると、口付けが降ってきたからだ。

 

「……っ、ぁ……」

 

一瞬、触れるだけの口付け。そっと離れた瞬間、梅宮が囁くように、

 

「飛鳥――好きだ」

 

「……っ」

 

それは、いつも彼がくれる言葉。あの日からずっと、彼が囁いてくれる言葉だった。飛鳥が戸惑ったように、その深緋色の瞳を揺らすと、頬を朱に染めた。そんな飛鳥を見て、再び梅宮が口付けてくる。二度、三度と繰り返す内に、次第に深くなっていく。

 

「ん……っ、はじ、め……さ……っ」

 

堪らず、飛鳥が梅宮の服をぎゅっと掴んだ。すると、それに気をよくしたのか、梅宮がその手にそっと自身の手を重ねてきて、そして、何度も何度も口付けてくる。

飛鳥は戸惑いながらも、その口付けを受け入れていた。どうしてだか、今は心が満たされて仕方がなかったのだ。ずっと願っていたものが手に入ったようなそんな気すらして……。だからか、初めは抵抗を示していた手をいつの間にか梅宮の背に回していたのだ。それに気をよくしたのか、梅宮の口付けが更に激しくなっていく。

 

飛鳥はもう夢心地だった。とろんとした瞳で彼を見つめていると、その瞳を覗き込み梅宮が満足そうに微笑む。そして、ゆっくりとその唇を飛鳥の耳元に寄せたかと思うと──ちゅっと音を立てて、そこにキスしてきたのだ。

 

途端、飛鳥の身体がぴくんっと跳ねる。梅宮がくすくすと笑うと、そのまま耳元でとても密やかで、優しい声色で囁いたのだ。

 

「飛鳥――触れてもいいか?」

 

その言葉が何を意味するのか。飛鳥が一瞬、ぴくっと身体を強張らせたが、すぐにその身体から力が抜けた。そして、ゆっくりと梅宮の首に腕を回すと、顔を真っ赤に染めて小さく頷いたのだ。

梅宮は嬉しそうに微笑むと、そのまま飛鳥の唇に触れてきた。最初は浅く、そして徐々に深く口付けていく。そっと、その隙間を割って舌先が絡められると、飛鳥の身体がぴくりと反応する。

 

それに気付いた梅宮はくすりと笑うと、更にゆっくりとその舌先で飛鳥の口腔内を弄ってきた。歯列をなぞる様に舐めると、縮こまっていた彼女の舌に絡みついてくる。少し吸い上げる様にしてから離すと、今度は自分の口の中へとそれを誘い込む。そのまま絡ませて、吸い付くようにすると、飛鳥の口からくぐもった声が洩れた。だがしかしそれは決して嫌がっているのではなく、恥ずかしさを堪えているような声音だった。

 

梅宮は愛しそうに目を細めると、ゆっくりと唇を離す。それから彼女の顔を見て、心底嬉しそうに微笑んだ。飛鳥の顔はすっかり赤く染まり、口の端からは呑み込めなかったどちらとも分からない唾液が垂れている。梅宮はそれを親指の腹で拭うと、その身体を抱きしめたまま髪を撫でたのだ。

それが心地よいのか、飛鳥がゆっくりと目を細める。それが愛らしくもあり、愛おしくもあり、梅宮はまた口付けたくなって、そっと彼女の顔を上げさせると、その潤んだ深緋色の瞳とかち合った。

 

そのまま彼女に顔を近付けると、飛鳥がゆっくりと瞳を閉じる。梅宮はそれに気をよくすると、また彼女の唇を塞いだ。今度は、先ほどよりも長く、何度も角度を変えてその唇を堪能する。

 

「飛鳥、口。開けて」

 

そう言われるがままに、飛鳥が少し唇を開くと、その隙間を割って梅宮の舌先が侵入してきた。そのまま、ゆっくりと彼女の歯列をなぞる様にして撫でていくと、飛鳥の身体がぴくんっと反応する。それに気付いた梅宮は、更に深く唇を合わせて舌を絡めた。

くちゅりという水音を立てて、何度も角度を変えては口付ける。その度に飛鳥からくぐもった声が洩れて、それがまた梅宮の欲を刺激していった。

 

やがて、飛鳥の身体から完全に力が抜けると、そっと唇を離したのだ。そして、少し上がった息を整えながら彼女を見ると――飛鳥は顔を真っ赤に染めたまま、潤んだ深緋色の瞳でこちらを見つめていた。荒い息をつき、口の端には飲み込みきれなかった唾液が伝い落ちている。その姿は酷く煽情的で、梅宮はぐっと唾を呑み込んだ。

 

しかしそれは飛鳥も同じ事で、彼の空色の瞳に見つめられると身体が熱を帯びていくのを感じていたのだ。そしてその唇がゆっくりと耳元に寄られ、先程と同じように囁くように耳へ言葉を注ぎ込まれる。

 

「――好きだ」

 

「……っ」

 

そう言われた瞬間、飛鳥は自身の身体が熱くなっていくのを感じた。まるで、全身が沸騰しそうな程、身体が熱い。きっと火が出るんじゃないかというぐらいに……。

 

すると、梅宮の手が飛鳥の頬をゆるりと撫でてくる。その手がとても心地良くて、思わず瞼が閉じる。と――ふと、唇に柔らかい感触がした。それが梅宮の唇だと気付いて目を見開くと、深緋色の瞳から涙が溢れた。その涙の意味はよく分からない。悲しいわけではないと思う。ただ嬉しくて泣いてしまいそうだった。そしてまたゆっくりと唇が離れて行ったかと思うと、こつりと額同士が合わさったのだ。

 

梅宮の大きな手が、飛鳥の小さな手を握る。そして優しく頬を撫でると、額同士をくっつけたままゆっくりと瞳を合わせてきた。その瞳は愛おしい物を見る様に細められており、飛鳥は思わずきゅぅっと胸が締め付けられるのを感じた。

 

ああ、この人はこんなにも、私の事を――。

 

そう思うと、胸がいっぱいになってまたぽろぽろと涙が溢れてしまう。

すると、梅宮がそっと親指でその涙を掬い取った。飛鳥はそれが嬉しくて、彼の首に手を回して抱き着いたのだ。梅宮はそんな飛鳥を優しく抱きしめ返しながら、ゆっくりと彼女の髪に触れる。そして、その髪を一房手に取ると、それに口付けたのだ。

 

それはまるで“誓い”の証のようで――。

 

「飛鳥……」

 

そっと名を甘く囁かれて、また涙が溢れそうになった。そのまま、ゆっくりと近づいてくる梅宮の唇に身を委ねる。そっと重ねた唇は何度も啄むように重ねられて、飛鳥がそれに応じるように薄く口を開けると、まるでそれを待っていたかの様に口腔内へと彼の舌先が伸びてきた。

 

くちゅりという水音を立てて絡み合う舌に、飛鳥は頭がくらくらするのを感じた。それは決して嫌なものではなくて、むしろもっとして欲しいと思ってしまう程で……。飛鳥は夢中になって梅宮を求めた。そしてそれに応える様にして、梅宮もまた飛鳥の唇を貪る。歯列をなぞって、上顎を撫でられれば、その度に飛鳥の身体がぴくんっと反応してしまう。そんな彼女が可愛くて、梅宮はまた何度も繰り返した。

 

やがて、ゆっくりと唇を離す頃には飛鳥の息は完全に上がっていて……、梅宮はそんな彼女を見て、くすりと笑うとその身体をそっとソファに横たえる。すると飛鳥が恥ずかしそうに身を捩ったので、それを宥める様にして髪を撫でてやった。それから彼女の上に覆い被さり、もう一度口付けを落とす。今度は触れるだけの優しいもので、何度か角度を変えてから顔を離すと、飛鳥が物足りなさそうな顔をしたのが見えた。それに気をよくした梅宮はそのまま首筋へと顔を埋め、ちゅっと音を立てて吸い付いたのだ。

 

「ん……っ」

 

その瞬間、ぴくっと飛鳥の身体が跳ねるが、そのまま舌を這わせて舐め上げると、飛鳥の口から甘い声が上がった。梅宮はそのまま首筋や鎖骨の辺りを何度も愛撫し、時折強く吸い上げたかと思うと優しく舐め上げたりを繰り返す。その度に飛鳥はぴくぴくと身体を震わせながら小さく喘ぐのだ。それが堪らなく愛おしい。

 

やがて、梅宮の手が服の上から胸に触れた瞬間、飛鳥は身体を大きく跳ねさせた。それに気付いた梅宮が顔を上げると、彼女は顔を真っ赤にしてふるふると震えているではないか。どうやら緊張しているらしく、梅宮は安心させる様に微笑みかけた。

 

「ぁ……、は、はじめ、さ……っ」

 

飛鳥の服の中へ手を忍ばせ、少し汗ばんだ肌を優しく撫でてやると、その刺激にまた飛鳥の身体が小さく跳ねた。そしてそのまま下着の上から胸に触れると、飛鳥の口から小さな悲鳴が上がったのだ。しかしそれは決して嫌悪からではなく、戸惑いや驚きといったものからだという事を梅宮は知っているので、構わず続ける事にした。

 

ゆっくりと胸を揉みしだき始めると、飛鳥が戸惑ったように身を捩る。だがそれも最初だけですぐに甘い声が漏れ始める。

 

「ん……っ、は、ぁ……ン……ぁ……っ」

 

飛鳥は梅宮の愛撫によって、どんどん身体の熱が上がっていくのを感じた。それはまるで熱に浮かされているようで……。頭がぼんやりとしてくると同時に身体の奥が疼き始める。その感覚に戸惑いながらも、梅宮の手の動きに合わせて自然と腰が浮いてしまう事に更に羞恥を覚えた。

 

だがしかし、それを梅宮に見られていたらしく、くすりと笑われてしまった事に気付いて慌てて脚を閉じようとしたのだが――それよりも早く梅宮の手が太腿の間に割り込んできたのだ。そしてそのまま脚の付け根辺りを撫でられると、飛鳥の口からまた甘い声が漏れた。

 

梅宮はそのままゆっくりと太腿を撫で回し始め、時折秘部を刺激するように指先が触れるのでその度に飛鳥の身体が小さく跳ねる。そしてそのままスカートの中に手を入れ込むと、下着の上から割れ目をなぞり始めたではないか。

 

「ぁ、あん……っ、は、ぁ……んっ、ゃ……待っ……ああ……っ!」

 

その刺激に飛鳥の腰が跳ね上がり、口からは甘い吐息が漏れた。だが、梅宮はその反応を見て気をよくしたのか、更に強く押し当ててきたのだ。布越しとはいえ、一番敏感な部分を擦られている為か、徐々にそこが熱を持ち始めるのが分かる。そしてそれに比例する様にして、飛鳥の口から洩れる嬌声も大きくなっていった。

 

それに気付いた梅宮は満足そうに微笑むと、そのまま何度も指を動かし続ける。すると、次第にそこは湿り気を帯びてきており、梅宮が指を動かす度にくちゅりと水音が聞こえてきたかと思うと、飛鳥の口から一際大きな声が上がったのだ。その反応を見た梅宮は一瞬動きを止めてからくすっと口元に笑みを浮かべると、今度は下着の中に手を入れ込んできたのである。

 

「……ぁあ……っ、だ、めぇ……っ、はじめ、さ……っ、ぁ、ああ、ん……っ」

 

その瞬間に飛鳥の背筋がぶるりと震えたのが分かったが、それでも彼女は抵抗しなかった。それどころか、まるでねだるように腰を浮かし始める。そんな飛鳥を愛おしく思いながら、梅宮は割れ目に沿って指を動かすと、そのままゆっくりと中指を押し込んでいったのだ。

 

「あぁ……っ! は、ぁ……っ、ぁ、あ、あ……ゃ、ぁん……っ!」

 

そして同時に親指で陰核を刺激するようにしながら膣内へ挿入すると、飛鳥の腰がびくんと跳ね上がった。その反応を見た梅宮は更に笑みを深くし、そのまま抽挿を開始したのだ。最初はゆっくりだったその動きは次第に激しさを増していき、それに合わせて水音が激しくなっていく。それと同時に飛鳥の口から漏れる声も大きくなってきた為か、やがて彼女は梅宮の服にしがみ付いてその唇を塞いできたのだ。

 

それにより、飛鳥は声を抑える事ができたのだが、その代わりに鼻から抜けるような甘い吐息が漏れ始めた。それを聞きながらも梅宮は指の動きを速めると、今度は親指で陰核を押し潰すようにして刺激を与え始めたのだ。突然の強い快楽に飛鳥の身体が大きく跳ね上がり、くぐもった嬌声が上がる。だがそれでも梅宮は手を緩める事無く動かし続け、やがて飛鳥が限界を迎えたのか一際大きく身体をしならせた瞬間だった。

 

その拍子に膣内の締め付けが強くなり、それに呼応するように梅宮の指を締め付けて来たのだ。梅宮が、そのままゆっくりと指を引き抜くと、飛鳥の口から小さな吐息と共に甘い声が漏れた。そんな彼女の頭を優しく撫でてやると、飛鳥はゆっくりと顔を上げて梅宮を見つめてきたではないか。その瞳はまだ熱っぽく蕩けており、頬も赤く染まっている事からもまだ満足していない事は明白だ。

 

それを確認した梅宮は満足げに微笑むと、そのまま飛鳥に覆い被さり唇を重ねてきた。

 

「ん……っ、ふ、ぁ……は……っ、ぁ、ん……っ」

 

ちゅくという水音と共に舌を絡ませ合いながら、梅宮の手が服の中へと侵入してくる。そして今度は直に触れられて、飛鳥は思わず身体を強張らせたが、それも最初だけですぐに力が抜けていった。梅宮の手は大きくて温かくて、触れられた場所から熱が広がっていくようで、それがとても心地よい……。

 

やがて唇が離れて行くと互いの舌先を繋ぐように銀色の糸が伸びていき、ぷつりと切れると同時に飛鳥が切なげな吐息を零すと、梅宮が微笑みながらそっと耳元に顔を寄せてきたのだ。そして──。

 

「飛鳥――お前だけを愛してる」

 

そう囁かれる言葉は低く甘く、飛鳥の思考を蕩けさせるには十分すぎるほどのものだった。そしてそのまま優しく押し倒されると、梅宮の手が再び飛鳥の秘部へと伸ばされた。

 

既にそこはすっかり潤っており、まるで待ちわびていたかのようにひくついているのが分かる。その反応を見た梅宮は嬉しそうに微笑みつつゆっくりと指を挿入していくと、中は熱く蕩けていて柔らかい肉壁が絡みつくようにして梅宮の指を受け入れていったのだ。それを確認した後、彼は一度奥まで入れた指を入り口付近まで引き抜くと、今度は一気に根元まで押し込んだ。

 

「は、ぁ……っ、あ、ぁあ……っ!」

 

するとその瞬間、飛鳥の口から大きな悲鳴が上がった。だが梅宮はそんな事など気にせずに、何度も抜き差しを繰り返して行くうちに飛鳥の口から漏れ出る声にも次第に甘い物が混じっていくようになっていったのである。それに伴い膣内が痙攣するように震え始めてきた為か、きゅうっと指を締め付けてきており、それに比例するかのように内壁の動きが激しくなってきているようだった。

 

それを見て頃合いだと判断した梅宮は一度指を抜いてやると、今度は二本同時に挿入してきたのだ。先程よりも強い圧迫感を感じたものの、それでも痛みはなく寧ろ快楽の方が勝っていたようで、飛鳥は無意識のうちに腰を浮かしてしまっていた。そして梅宮もそれを察したらしく、二本同時に出し入れし始めたのである。

 

「ぁ、ああ……っ、ゃ、は、ぁん……っ、あ――っ! だ、だ、めぇえ……っ!!」

 

くちゅりと音を立てながら出入りする二本の指は飛鳥の良いところを的確に刺激し、その度に彼女の口から甘い声が上がった。それと同時に膣内からはとぷとぷと愛液が溢れ出し、それが潤滑油となって動きがよりスムーズになっていく。

やがて三本目の指が入る頃にはすっかり準備万端と言った様子で、飛鳥は早く欲しいと言わんばかりに腰を浮かして誘っていたのだった。それを見た梅宮はゆっくりと指を引き抜くとズボンの前を寛げさせ、そこから自身の剛直を取り出したのである。

 

「……っ、ぁ……」

 

瞬間、飛鳥がかぁっと、頬を赤く染めた。思わず視線を逸らすと、梅宮はそんな彼女の顎を掴んで、自分の方へと向けさせた。

 

「ま、待っ……」

 

飛鳥が何か言う前に、その唇を塞いだのだ。そのまま舌を差し入れて絡ませれば、飛鳥もまたそれに応えるように自ら積極的に絡めてくるようになった。それを嬉しく思いながらも梅宮はゆっくりと顔を離すと、今度は耳元に唇を寄せたのだった。そして――。

 

「飛鳥、お前が欲しい――」

 

耳元で囁かれた言葉に飛鳥は目を見開いた後、恥ずかしそうに視線を逸らしながらも小さく首を縦に振ったのだ。それを見て梅宮は小さく微笑むと、再び唇を重ね合わせた後にゆっくりと腰を進めていったのである。ずぷりと亀頭部分が飲み込まれていく感覚を感じながら、梅宮はそのまま一気に奥まで突き入れたのだ。

 

「ん……っ、ぁ……は、ぁ……あ、ああ……っ!!」

 

その瞬間、飛鳥の身体がびくんと跳ね上がり、悲鳴じみた声が上がったがそれもすぐにくぐもったものへと変わった。どうやらあまりの衝撃に声が出ないようで、必死に唇を噛んで耐えているようだった。そんな健気な姿に愛おしさを感じつつ、梅宮はゆっくりと抽挿を開始したのだ。最初は緩やかだった動きも徐々に速さを増していき、それに比例するように飛鳥の口から漏れる声も大きくなっていく。

 

「ぁ、あ、ああ……っ、は、ぁ……ゃ、あ……っ! だ、だめ……っ、だ、めえぇぇえ!!」

 

激しく揺さぶられながらも飛鳥は必死になって梅宮の背にしがみつき、襲い来る快感に耐えようとしていた。だが、それも長くは続かなかった。やがて限界を迎えた彼女は一際大きな声で叫んだ直後、全身を痙攣させて達してしまったのである。膣内が激しく収縮を繰り返しており、その刺激に耐え切れず梅宮もまた飛鳥の胎内へ精を解き放ったのだった。どくんどくんと脈打ちながら大量の精を注ぎ込まれていく感覚に飛鳥は陶酔した表情を浮かべていたのだが……。

 

しかしそれだけで終わるはずもなく、すぐにまた抽挿が再開される。梅宮は飛鳥の身体を抱き寄せると、そのまま体勢を変えて対面座位へと持ち込んだのだ。そしてそのまま下から突き上げるようにして腰を動かし始めると、飛鳥の口からは再び甘い声が漏れ始めたのである。

 

「ぁあ……っ! は、ぁん……あ、あ……っ、うごか、な……っ、ああ……っ!」

 

その反応を見た梅宮はさらに激しく攻め立てていき、飛鳥もまた必死になって梅宮にしがみ付いた。だが、それでも彼は止まる事無く動き続け、やがて再び限界を迎えたのか膣内の剛直が膨らみを増してきたのである。その変化を感じ取った飛鳥は慌てて止めようとしたが時既に遅く、次の瞬間には熱い飛沫を子宮口に叩きつけられる感覚を感じ取っていたのだった。

どくんどくん、という鼓動と共に大量の精が放たれているという事を自覚した瞬間、飛鳥は再び絶頂を迎えてしまったようで、びくびくっと身体を震わせながら声にならない悲鳴を上げ続けたのである。そうしてようやく長い射精を終えた梅宮はゆっくりと自身を抜き取ると、そのまま飛鳥を押し倒したのだ。そして今度は後背位の体勢になると、梅宮は再び自身の剛直をあてがい、一気に貫いたのである。

 

「ああ――っ!!」

 

先程までとは違う角度からの挿入に、飛鳥は戸惑いながらも甘い声で鳴いており、そんな彼女を安心させるように頭を撫でると梅宮はゆっくりと抽挿を開始したのだった。最初は緩慢な動きだったものの徐々に速度を上げていき、ばんっ! ばぁんっ!という音と共に肌同士がぶつかり合う音が響き渡っていく。それに合わせるように飛鳥の口からも嬌声が漏れ始めており、それがますます梅宮の興奮を煽っていく事となった。やがて限界に達した梅宮が再び膣内へ精を解き放つと、飛鳥もまた同時に絶頂を迎えたようで身体を大きく仰け反らせたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

それから――どのくらい時間が経ったのだろうか。ふと、飛鳥が目を覚ますと、屋上のソファに寝かされていた。日は完全に落ちており、辺りは真っ暗だった。空には満点の星が瞬き、大きなまあるい月が昇っている。

肩には梅宮の制服が掛けられているが、彼の姿はない。なんとなく、寂しく感じて思わず視線が彼を探した。ふと、その時だった。

 

「飛鳥? 起きたのか」

 

後ろの方から声が聞こえてきて、はっとして振り返ると、カフェオレを淹れたマグカップを2つ持っている梅宮が居た。嬉しくなって思わず彼に駆け寄りそうになった瞬間、はっと自分の姿に我に返る。制服は乱れ、髪もめちゃくちゃだったのだ。

なんだか恥ずかしくなり、思わず肩に掛けられていた彼の制服を手繰り寄せてしまう。そんな彼女の意図に気付いたのか、梅宮がくすっと笑みを浮かべると、飛鳥の横に腰掛けてきた。

 

「ほら、落ち着くから」

 

そう言って、カフェオレを差し出してくる。飛鳥は、そっとそれを受け取ると、一口だけ飲んだ。じわっと、カフェオレの甘さと、温かさが滲んできて、まるで梅宮の腕の中にいるかのうようだった。

 

「あの、一さん、その……最近、あまり顔出せなくて、ごめん、ね?」

 

おずおずとそう口にすると、一瞬梅宮が驚いたかのようにその空色の瞳を瞬かせた後、ふっと優しげに笑った。そして、飛鳥の髪に自身の指を絡めると、そのまま頬を撫でてくる。

 

「いや、オレこそ、忙しい時に呼び出しちまって悪かったな。でも、どうしても、お前を癒してやりたくてな……それが、これだ」

 

そう言って、梅宮が空を見上げた。飛鳥が、思わず「え……?」と思いながら、顔を上げる。すると――。

 

「……っ」

 

そこには、夜空を幾筋もの光が流れていく光景が広がっていた。

静けさの中、すっと空を横切る光の帯。それが一つ、また一つと現れては消え、まるで夜空がふたりだけのためにショーを演出しているかのようだった。

 

「うしかい座流星群――だって。今日がちょうど見頃らしい。……って、柊に聞いたんだけどな」

 

そう言って微笑む梅宮の横顔は、流れ星に照らされてどこか幻想的で、飛鳥はしばらく言葉を失ってしまった。

 

「……すごく、きれい……」

 

ようやくそう呟いた飛鳥の声も、流星たちの軌跡に溶けて夜空へ消えていく。

 

梅宮が静かに肩を寄せてくる。カフェオレの温もりと彼の体温、そして流れ星の煌めきが、すべてがひとつに溶け合って、飛鳥の胸の奥に静かに沁みていった。

 

「ありがとう……。とっても素敵な贈り物だわ」

 

そう言った、飛鳥の顔はとても幸せそうで、どこか切なげでもあった。梅宮はそんな飛鳥の肩を抱き寄せると、彼女の長い髪をそっとひと房手に取った。そして、その髪に小さくキスを落とし、呟く。

 

「……また、一緒に見ような。お前とずっとこれから先も見ていきたい」

 

その言葉は、まるで祈りのような響きで……。飛鳥は、返事をする代わりに、小さく微笑むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2025.06.23