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◆ 鶴丸国永 「白檀と伽羅と、契りの檻」
(刀剣乱舞夢 「華ノ嘔戀 外界ノ章 竜胆譚」 より)
「あの……りん、さん?」
「「なんだ?」」
沙紀の声に、「二人」の声が重なった。思わず、沙紀が頭を抱える。
なぜ、こんな事に……?
沙紀の目の前には鶴丸が――二人いた。いつもの白い鶴丸と、それとは真逆の黒い鶴丸。そして、「りんさん」と呼ぶと、二人共反応する。
「……」
「……」
「……」
ど、どうすればいいの……?
何度考えても答えなど浮かばず――目の前の「二人の鶴丸」も特に慌てた様子はないが……。
私が困ります。と、沙紀が心の中で叫んだのは言うまでもなく、実際、沙紀が何かしようとすると、二人が同時に反応するので、毎回ややこしい事になっているのだ。
思考も、行動も、言動も、すべて同じ。違うのは白か黒かだけ。
事の原因は、政府の官僚である小野瀬が送って来た香だった。変わった香りのする「お香」で、小野瀬曰はく「政府で今とある実験しているんだ」と言って、半強制的に送って来たのだ。
そして、鶴丸が一応警戒しながらその「お香」を焚いたら――こうなったのだ。
その時だった。
「大将! 解析終わったぞ!!」
その「お香」の解析を頼んでおいた薬研藤四郎が部屋に駆け込んできた。
「薬研さん、それで……?」
解決策は分かったのだろうか。そう一縷の望みを掛けて薬研に問うが――。薬研は、少し申し訳なさそうな顔をして、
「すまねえ、大将。解決策までは分からなかったんだ」
「……そう、ですか……」
目の前で落胆する沙紀に、薬研は少し困ったように鶴丸を見た。すると、白い鶴丸が右から、黒い鶴丸が左からそっと沙紀の肩を抱き、
「仕方ないだろう、沙紀。そんなに落胆するな」
「俺はそこまで困ってないから、気長に元に戻る方法を――」
と、両サイドから鶴丸の声で言われて、沙紀が諦めたかのように、
「あの……、すみません。りんさん、両側から話されるのは止めていただけますか?」
正直、両耳から鶴丸の声が入ってきて、このままでは身がもたない。
「ああ――原因というか、この香の効力は分かったぞ」
「え?」
突然の、薬研からの言葉に沙紀が思わず身を乗り出す。
「あの、それで……こちらは一体どうの様な――」
「ん~、どうやら戦力増強用の香らしいな」
「せ、戦力増強……?」
「まぁ、まだ実験段階だとは思うが……この香を刀剣男士が嗅ぐと、もう一人の……同位体とでも言うべきか。つまり、力も能力もそのまま同じ刀剣男士が出現するようだ」
「えっと、あの……?」
「ああ、まあ要するにコピー?」
「こ、コピーですか?」
すると薬研の話を聞いていた白い鶴丸が「ふむ……」と少し考えた後、
「まぁ、要は俺のコピーがこの黒い俺ってわけか」
そう言って、じっと黒い鶴丸を見る。すると、黒い鶴丸は、
「やっぱり、政府は馬鹿なのか? こんなもの下手に出回って歴史修正主義者に渡ったら一大事だぞ?」
「そうだな、改良でもされて、時間遡行軍が分身されたらいい迷惑だ」
二人の鶴丸のいう事は尤もな話であり――沙紀は、諦めにも似た溜息を洩らした。
「薬研さん、ありがとうございます。……とりあえず、小野瀬様に連絡してみます」
*** ***
『あ、やっぱり駄目だった?』
と、端末からコールすると、直ぐに小野瀬がモニターに姿を現した。そして、開口するなりこの台詞だ。
「やっぱり?」
「駄目だった?」
二人の鶴丸が小野瀬を訝しげに睨む。すると、モニターの向こうの小野瀬が慌てて口を塞ぐ。
が、もう時遅く……。
「小野瀬。おい、どういうことか説明して貰おうか?」
「事と次第によっては――」
と、二人の鶴丸がモニター越しの小野瀬を今にも殴るんじゃないかという勢いで指を鳴らした。すると、小野瀬が慌てて、
『いや、いやいやいや! 暴力反対!! ステレオで言うのも禁止いいいい!!!』
「「うるさい、黙れ」」
白い鶴丸と、黒い鶴丸の声がハモった。このままでは、埒が明かないと判断したのか、沙紀が止めに入る。
「あの、りんさん。落ち着いてください」
『ああ、やっぱり“審神者”殿は僕の味方なん――』
「味方ではありませんので、お間違えの無いように。たた、この事態を瞬時に収束させたいだけです」
『お、お厳しいお言葉で……』
「それで、どうすれば元に戻るのですか?」
沙紀がそう尋ねると、小野瀬はけろっとした顔で、
『う~ん、香の効力切れた時?』
小野瀬のあっけらかんとしたその言葉に、若干 苛っとしたのだが我慢する。
「それはいつですかと、問うているのです」
『どうだろう……? 明日かもしれないし、明後日かもしれないし、一ヶ月後か、一年後か――』
「ふざけないでいただけますか?」
にっこりと微笑んでいるが、その沙紀の声音には怒気が混じっていた。すると、小野瀬はさも当たりまえの様に、
『ふざけてないよ――事実を述べただけだよ、僕は。実証がないんだ、戻ったっていう』
「はい……?」
『まぁ、確実に戻すなら“刀解”したら一発で消えるよ』
「え……?」
今、この男は何と言ったか……。
『だから、“刀解”。これが、一番手っ取り早い方法だよ。その後また顕現させればいい』
「な、ん……」
思わず、後ろの二人の鶴丸を見る。彼らを私が“刀解”しなくてはいけないの……?
「……」
“刀解”したらそれもう、沙紀の知る“鶴丸国永”ではない――。ずっと、幼いころから見守ってくれていた「りんさん」ではなくなってしまう。
そんなの――。
ぐっと、沙紀が拳を握りしめた。
「……出来ません」
『でも、困ってるんでしょ? それなら、一番確実な方法は“刀解”だよ』
「――それでも! ……っ、それでも……出来ません」
出来る筈がなかった。
「りんさん」を失うなんて、考えたくもなかった。いや、たとえ鶴丸以外の刀剣男士が、なっていたとしてもその選択肢は選べなかった。
「……他に、方法はないのですか?」
声が震える。
次第に、呼吸が苦しくなる。すると、モニターの向こうの小野瀬は少し考えてから、
『まぁ、可能性のひとつだから、確証は持てない。誰も試してないしね。ただし、やってみる価値はあるかもしれない案なら――』
「それはっ! それはどの様な――っ」
そこまで言いかけた時だった、ぐらっと沙紀の視界が揺れた。
「「沙紀!!!」」
二人の鶴丸の声が響く――。
そのまま沙紀は己の意識を手放したのだった。
*** ***
微かに、鳥が鳴いている声が聞こえてくる。
「……」
ここは……。
見慣れた天井。見慣れた部屋。視線を横へずらすと、白い影と黒い影が視界に入った。
「……り、ん、さん……?」
その声に反応する様に、二つの影が動いた
「沙紀?」
「気が付いたのか?!」
そう言って、二人の鶴丸が沙紀に駆け寄って来た。二人共、沙紀を見て心配そうに金色の瞳を揺らしていた。
ああ、この表情は……、やはり、二人とも「りんさん」なんだわ……。
そう思うと、すっと少しだけ心が軽くなった。沙紀は、白い鶴丸に手を借りながらゆっくりと起き上がると、改めて周りを見た。そこは、やはり自分がいつも使っている部屋だった。
「あの、りんさん? 私、あの後どうし――」
確か、小野瀬と通信していた筈だ。そして、そこでこの問題を解決するのは“刀解”しかないと言われて――。
「……」
その後の、記憶が怪しい……。
「あの、私……」
そこまで言いかけた時だった、黒い鶴丸がそっと沙紀の額に手を伸ばした。
「……覚えてないのか? きみはあの時、小野瀬の言葉を聞いた後、突然気を失ったんだ」
「あ……、そうなのですね。お手間取らせて申し訳ございません」
沙紀が申し訳なさそうに、その躑躅色の瞳に影を落とすと、白い鶴丸が気にした様子もなく、すっと沙紀の手に自身の手を重ね。
「気にするな。いきなりあんな事言われたら、動揺しない方がおかしいからな」
「……」
それでも――、一体どうすれば……。このまま時間が経つのを待つしかないの……?
そう思って、二人を見る。
「……“刀解”はしません。したくありません」
そう言って、ぎゅっと沙紀が手を握り締める。すると、その手に白い鶴と黒い鶴丸の手が重ねられた。
「ああ、そう言ってもらえるだけでも、俺は果報者だな」
「そうだな、沙紀にそう言ってもらえるだけで充分だ」
「な……」
まるでそれが別れの言葉の様で、沙紀が慌てて顔を上げた
「何を仰るのですか!? “刀解”はしません!!」
「だが……このままでは、皆も困るだろう?」
「それは――それでも“りんさん”を失うなんて……っ。とにかく、私は“刀解”だけはしません!!」
絶対に嫌だった。“刀解”だけは、出来ない。したくない。出来る筈がない。
今にも泣き出しそうな沙紀に、白い鶴丸は少し困ったように、
「大丈夫だ、俺達は何処にもいかないから――」
「ああ、沙紀の決断に従うよ」
そう言って、黒い鶴丸が沙紀の頭を撫でる。
「――っ」
それだけで、泣きそうになる。
どうすれば、いいの……。どうすれば――――。
すると、白い鶴丸が少し悩んだ素振りを見せてから、
「小野瀬の話だと、ひとつだけ他に可能性がある方法があるにはあるとは言っていたが……」
「本当ですか!?」
沙紀が、がばっと白い鶴丸の腕を掴む。
「それは、どのような――」
“刀解”以外に、他に方法があるならば、それに賭けたい。懇願するようなその沙紀の眼差しに、白い鶴丸が言い辛そうに、少し顔を赤くして口元を抑えた。
「その……」
「はい」
「あ~、その、だな。小野瀬が言うには、俺と黒い俺との中にある沙紀の霊力が合わされば、元に戻るだろう――と」
「霊力……です、か?」
すると、それ以上は白い鶴丸が言い辛いのだと察した黒い鶴丸が、
「要は、沙紀と俺達が同時に交われば、霊力は自然とひとつになるそうだ」
「あ、そうなのですね。お二人と同時に交われば――」
…………
………………
……………………
「え!? 同時に交わるって……」
瞬間、沙紀の顔がゆで蛸の様に真っ赤になる。
「まぁ、驚くのも当たり前だよなあ」
ははっと、黒い鶴丸は笑っているが、白い鶴丸は頬を朱に染めたまま、
「その、沙紀の気持ちが優先だから――無理にとは……」
「……ですが、その方法しかない、の、です、よね……?」
「りんさん」は失いたくない。だから“刀解”だけは、絶対にしたくないし、出来ない。となれば残された道は――。
こんなこと、自分から言うなんてはしたないと思われるかもしれない。でも……それで「りんさん」を失わずに済む可能性があるならば……。
「私は、その……構いません。お二人さえよければ――」
「沙紀!?」
白い鶴丸が、驚いた様に声を上げた。だが、沙紀は小さく首を振ると、
「……“刀解”は絶対にしません。それならば、この方法しか……」
「しかし、二人同時だぞ!? きみへの身体の負担が――」
だが、やはり沙紀は小さく首を振ると、
「大丈夫、です。お二方とも“りんさん”ですから……」
そう言って笑って見せる。そんな沙紀を見て、白い鶴丸が諦めにも似た溜息を洩らした後、
「……途中で、待ったは出来ないぞ?」
「……はい……」
「本当に、いいんだな?」
念を押す様にそう尋ねてくる白い鶴丸に、沙紀は小さく頷いた。
本当は不安だ。今にも逃げ出したくなる。でも、今逃げれば、鶴丸はもしかしたらずっとこのままかもしれない。それだけは嫌だった。
「りんさん」
そっと、二人の手に自身の手を添える。そして、ぎゅっと目を閉じて……。
「私を――抱いて……くださいます、か?」
「「……っ」」
二人が息を呑むのが分かった。
自分でも、こんなことを言うのは恥ずかしい。でも、「りんさん」を失うよりずっといい。それに相手は鶴丸だ。それならば、拒む理由はない。
心臓が早鐘の様に鳴り響いている。二人に聞こえているのではないかというくらい、激しい音を感じる。
「……っ」
まるで死刑宣告された場所に立たされている様な気分だ。二人の反応が怖い。その時だった、ふいにどちらかが顔に手が触れる感触があった。
「あ……」
ゆっくりとその瞳を開けると、それは白い鶴丸だった。
「そんな顔するな、きみにそんな顔させたくて言ってるんじゃないんだ」
「ああ――無理だと思ったらやめるからな?」
そう言って、黒い鶴丸がそっと頭を撫でてくれる。なんだか、それがむず痒くて沙紀は少しだけ頬を赤く染めると頷いた。
そのまま、寝台に沙紀を挟んで白い鶴丸と、黒い鶴丸が座る。そして、ゆっくりとした動作で白い鶴丸の口付けが降って来た。
「ぁ……、ん……」
優しく、まるで壊れ物に触れる様な口付け。
「沙紀――」
甘く名を呼ばれて、沙紀がぴくんっと肩を震わせた。すると、黒い鶴丸がすっと後ろから手を回してきて、そのまま首に口付けを落としてきたのだ。
「あっ……」
「沙紀、俺も構ってくれないか?」
そう言って、黒い鶴丸がちゅっと沙紀の首筋に舌を這わすと、そのままゆっくりとした動作で、沙紀の着物の帯をするりと外していく。
突然の事に、沙紀が「待っ……」と、慌てて制止を掛けようとするが――。
「沙紀――こっち見ろ」
そう言われたかと思うと、白い鶴丸からの口付けがどんどん深くなっていった。
「……ぁ、はぁ……ン……りん、さ……っ」
その度に、沙紀の口から甘い吐息が零れ落ちた。堪らず、沙紀が白い鶴丸の衣をぎゅっと握る。それに気分をよくしたのか、やがて白い鶴丸の舌が、沙紀の唇を割り中へと侵入してくると、そのまま沙紀の舌を搦め捕った。
「……ん……ふ、ぁ……っ、は、ンン……っ」
くちゅ、ちゅっ……と、厭らしい音が部屋に響いて、それが更に沙紀を追い詰めていった。そして、白い鶴丸の手がゆっくりと着物の裾を割ると、そのまま沙紀の太腿へと伸びていったのだ。
その感覚に、沙紀が思わず身悶えしていると、今度は黒い鶴丸の手が後ろから胸元へ伸びてきたかと思うと、その手が沙紀の着物の合わせを乱す様にして、中へと侵入してきたのだ。
「……ぁ、ん……っ」
その瞬間、沙紀の背中がぞくんっと震える。だが、黒い鶴丸の手はそのまま、沙紀のふくよかな胸に優しく触れると、ゆっくりとした動作で揉みしだく様に動きだした。
「……は、ぁ……っ、ゃあ……っ、ぁん……っ」
びくんっと、沙紀の身体が震える。すると、白い鶴丸がぐっと沙紀の顎をその長い指で絡め取り、自身の方に意識を向けさせたのだ。そして、再び沙紀の唇を貪るかのように口付けてきた。
角度を変えて何度も口付けられれば、次第に沙紀の呼吸が荒くなり、乱れていく。それでも、白い鶴丸は、沙紀の唇を堪能するかのように、その行為を何度も繰り返した。
その間も、黒い鶴丸の手は止まることなく、沙紀の胸の感触を楽しむかのように揉みしだいる。そして、その指先が胸の突起に触れた瞬間だった。
「ぁ……っ」
びくん……っ!と沙紀の身体が大きく跳ねた。
それに気が付いた白い鶴丸は、ゆっくりと唇を離すと、そのまま沙紀の首筋へと顔を埋める。そして、ちゅっと音を立ててそこに吸い付いたのだ。そして、首筋から肩へと唇が移動していき――ちゅっという音と共に、肌に赤い華が散らされていく。
それと同時に、白い鶴丸の手も沙紀の胸元を愛撫し始めて――二人の鶴丸からの手の感触に、沙紀の口から甘い声が上がった。
「り、りん――ぁ、ん……っ、待っ……」
「駄目、待たないって言っただろう?」
そう言うと、白い鶴丸の手が胸の頂を軽く摘まむとそのままくにっと押し潰すように弄り始めたのだ。すると、それに合わせる様に黒い鶴丸が沙紀の耳朶を甘噛みして、ぺろりと舌で舐めてくる。
「……ぁ、ん……っ、は、ンン……」
その途端、ぞくぞくとしたものが背中を駆け抜けていった。そして、段々とそれが甘い痺れに変わっていく感覚に、沙紀は涙を溜めて喘ぐことしか出来なかったのだ。
「沙紀、気持ちいいのか?」
黒い鶴丸に耳元でそう囁かれて、沙紀がふるふると抵抗するように首を横に振った。すると、白い鶴丸がくすっと笑って、
「じゃあ、これはどうだ?」
そう言うと、そのまま胸の突起を口に含み舌で転がし始めたのだ。そして、もう片方の頂は黒い鶴丸の手によって弄られている。その甘い刺激に耐え切れずに、沙紀の口から嬌声が上がった。
「……っ、ぁ……んン……っ、りん――っ」
沙紀が堪らず、寝台のシーツを握り締める。ほぼ同時に二人の鶴丸に攻められて、沙紀の頭は既に思考が追い付かなくなっていた。
ただ分かるのは、二人が自分を求めているということ――だけ。
「あっ……」
その刺激に沙紀の身体がびくりと震えた。だが、それすらも心地よく感じてしまう程に沙紀は翻弄されてしまっていたのだ。
頭がぼぅ……として、何も考えられない――。
白い鶴丸の口が、沙紀のその突起を口に含んでいく。そして、そのまま舌で器用に転がしたり、甘噛みしたりしてきた。
「ぁ……、ああ、ンンっ……り、りんさ……っ」
その瞬間、沙紀は今までとは比べ物にならない程の快感に襲われた。同時に、反対側からは黒い鶴丸に耳を舐められて、ぞくりと背筋に何かが走る。それは、嫌悪感ではなく――もっと別のもので……。
すると、白い鶴丸はその口で沙紀の乳房を愛撫しながら、もう片方の手で反対の胸をも揉み始めた。――まるで、それを楽しんでいるかのように。
「は、ぁ……、ぁ、やっ……、ンン、あ……は、あぁん」
沙紀の口から甘い声が漏れる。一方、黒い鶴丸は沙紀の耳を執拗に攻め立ててきていた。
「あ、ぁあ……、ンンっ、は……んっ」
時折、歯を立てて甘噛みされれば、沙紀が堪らず声を上げてしまう。
二人の鶴丸の行為が激しさを増すにつれ、沙紀の思考がどんどん失われていき――。そうして、沙紀の口は無意識の内に甘い声を上げ続けていたのだった。
白い鶴丸の口が離れると、そこには赤い花が咲いていた。次に、黒い鶴丸が耳から口を離すと、そこも同じように赤い痕がくっきりと付いている。
ふとそんな二人に翻弄される沙紀の姿が、近くにあった姿見に映し出されていた。それを見て、沙紀は自分が今どんな姿をしているのか分かってしまった。そして、それを見た二人が嬉しそうにしているのも――。
「あ、あの……」
恥ずかしくて、顔が上げられない。真っ赤にしたまま顔が見えない様に背けていると、ふっと、黒い鶴丸が微かに笑みを浮かべ、
「沙紀――」
そう名を呼んだかと思うと、そのままくいっと自分の方に沙紀を向かせ、口付けをしてきたのだ。
「ンンっ……、り、りんさ……」
そのまま何度も角度を変えて口付けられると、沙紀はもう、何も考えられなくなっていた。
「ふ、ぁ、……ンっ……、ぁ、は……」
沙紀の口の中に入ってきた舌が、絡み合う。互いの唾液が混ざり合い、口の端から飲みきれなかった唾液が零れ落ちていく。口付けをしながら、黒い鶴丸の手が沙紀の下肢へと伸びていった。
そして、そのままゆっくりと着物の裾を割ると、その長い指先で下着越しに秘部を撫で上げたのだ。
「ぁ……っ、ぁ、はぁ……ン……っ」
すると、そこは既にしっとりと濡れそぼっていた。それに気が付いた黒い鶴丸が、ふっと嬉しそうに笑みを浮かべると、更にそこへと指を這わせてくる。少し触れただけで、くちゅっという厭らしい音が部屋に響いた瞬間、沙紀の顔が羞恥に染まった。そんな沙紀の様子に、白い鶴丸がくすりと笑って、
「沙紀、可愛い……」
そう言う彼のその表情はいつもより艶っぽく見えて、それがまた沙紀の心臓を大きく跳ねさせた。
白い鶴丸はちゅっと音を立てながら、沙紀の胸の頂をその舌で転がしつつ、もう片方の手でもう一方の胸を揉みしだいていく。
と、同時に秘部に触れていた黒い鶴丸が、ゆっくりと指先を動かし始めた。それが恥ずかしくて堪らなった沙紀は首を左右に振って逃れようとするのだが……やはりそれは叶わなかった。それどころか、そのまま下着の隙間から指を挿入され、直接秘部をなぞられてしまったのだ。
「あ、あぁ……っ……ゃ、ん……っ」
その瞬間、びくんっと沙紀の背中がしなった。
それに気をよくしたのか、黒い鶴丸は何度も割れ目をなぞる様に指を動かしてきた。そして、そのままゆっくりと花弁を開く様にくいっと二本の指で開いてきたのだ。
すると、その奥の小さな花芯が顔を覗かせる。白い鶴丸が、それを愛おしそうに見つめると指先を使い優しく弄り始めたのだ。
「……ぁ、あん……っ、は……ぁ、ゃあ……っ、りん、さ……っ」
同時に与えられる刺激に堪らず沙紀の口から嬌声が上がる。
最初は軽く触れる程度だった指の動きは徐々に激しくなり、やがて花芯をぎゅっと摘ままれると沙紀の身体が大きく弓なりに撓った。それと同時に白い鶴丸もそこをぐりぐりっと強く押し潰してきたのだ。
「ああ……っ!」
その瞬間、一際高い嬌声と共に、沙紀の蜜口から愛液が溢れ出てきた。その感覚にびくびくと身体が痙攣し、沙紀の瞳からは涙が零れ落ちるが、それでも白い鶴丸は愛撫を止めることなく、そのまま花芯に刺激を与え続けた。
そして、それに合わせる様に黒い鶴丸が沙紀の蜜口へと指を一本挿入してきたのだ。
「ぁ、んん……っ」
その異物感に一瞬、身体が強張るがすぐに別の感覚が襲ってくる。それは痛みではなく快感だった。
ゆっくりと中を探るように抜き差しを繰り返された後、ある一点に触れた瞬間だった。びくんっと沙紀の身体が大きく跳ねたのだ。すると、それに気付いたのか黒い鶴丸がそこばかりを攻め始めたのだから堪らない。
「……ぁ、あ、ああ、ん……っ、は、ゃ……ぁ……っ、だ、めぇえ……っ」
沙紀は、初めて感じる強い快楽に涙を流しながら、首を左右に振って耐えるしかなかった。白い鶴丸もその様子に気付いたのだろう。沙紀の唇に優しく口付けると、そのまま舌を絡ませてきた。そして、その間も黒い鶴丸は沙紀の中の弱い部分を擦り上げてくるのだ。
その強すぎる刺激に、沙紀の瞳から止めどなく涙が零れ落ちた。だが、それでも二人の愛撫は止まることはなかった。むしろ激しさを増していったのだった。
「ぁ、ん……っ、はぁ……あ、ああ……っ」
沙紀の口から甘い声が上がる。
白い鶴丸は沙紀の胸を愛撫しながら何度も口付けを繰り返し、黒い鶴丸は沙紀の中に指を増やしながら弱い部分を重点的に攻めてくる。その快楽に、沙紀はただ翻弄されるしかなかった。
「……ぁ、んっ……はぁ……ぁ、あ、あ……っ」
彼らの動きが激しくなるにつれて、沙紀の声も大きくなっていった。頭の片隅では駄目だと分かっているはずなのに、身体は正直に反応してしまう。
沙紀は、二人から与えられる快楽に完全に支配されていたのだ。
「ゃ、あ……っ、も……だ、めぇ……っ」
やがて限界が来たのか、沙紀がそう訴えると白い鶴丸が優しく微笑んでくれた。そして、黒い鶴丸もそれに合わせる様に沙紀の弱い部分を強く擦り上げたのだ。その瞬間――目の前がチカチカとして頭が真っ白になり――そのまま沙紀は絶頂を迎えたのだった。
沙紀がぐったりとして、黒い鶴丸に寄り掛かるように肩で息をしていると、既に白い上着を脱ぎ捨てた白い鶴丸の身体が視界に入った。細身ながらも引き締まったその身体は美しくて――とても綺麗だった。
沙紀がその姿に見惚れていると、ふっと白い鶴丸は微かに口元に笑みを浮かべ、
「沙紀――きみの方がずっと綺麗だ」
そう言って、そのまま唇を重ねてくる。啄ばむような口付けを繰り返してから徐々に深くなっていくその口付けに、沙紀が翻弄されそうになった時だった。
「沙紀――」
どちらかともなく、甘く名を呼ばれたかと思った瞬間、沙紀は寝台の上に押し倒されていたのだ。そして、そのまま白い鶴丸が沙紀の両脚を大きく左右に割り開くと、そこに黒い鶴丸が自分の衣の前を寛げて大きくなった彼自身を取り出してきたのだった。
それは既にそそり立ち、先走り液で濡れていた。それを見ていた沙紀の顔が真っ赤に染まった。思わず、視線を逸らすが、それを二人が許す筈もなく――。
二人の鶴丸がゆっくりと腰を進めて来たかと思うと、そのまま一気に前後から同時に奥まで突き入れてきたではないか。
「ああ―――っ!」
その衝撃に、沙紀が背をしならせた。そしてそのまま激しく抽挿が開始される。くちゅっという厭らしい音と共に、沙紀の蜜口からは愛液が溢れ出てシーツを汚していく。そして、それが潤滑油となり更に動きが激しさを増していったのだ。
「……ぁ、ああ……っ、ゃ、む、り……っ、ぁあん……っ、は、ぁ……っ、り、ん――」
白い鶴丸が何度も腰を打ち付けてくる度に、沙紀の口から甘い声が上がる。それに気をよくしたのか、彼はさらに強く奥を突いてきたのだった。
その度に子宮口を突かれて、沙紀の身体がびくんと跳ねる。だが、それでもまだ足りないのか、今度は黒い鶴丸が激しく腰を動かし始めた。
「ゃ、あ……っ、ああ……っ、だ、め……そん、な……動か、な……ぁああ……っ」
あまりの激しさに沙紀の瞳からは涙が零れ落ちる。だがそれでも二人の動きが止まることはなかった。それどころか激しさを増していく一方だった。そして、そのまま沙紀の一番感じる場所を探り当てるとそこばかりを攻め始めたのだ。
「……っ、あ……りん、さ……っ、だめ……だめぇええ……っ」
沙紀が、いやいやと首を横に振るが、二人は止まらなかった。
白い鶴丸が子宮口を突きながら花芯に手を伸ばし弄り始める。すると、それに合わせる様に黒い鶴丸も胸の先端を口に含み舌先で転がす様に愛撫してきたのだ。その強い刺激に、沙紀の口から悲鳴の様な声がひっきりなしに上がった。
「……ぁ、あ……っ、ゃ、はげ、し……っ、壊れ……ぁ、ん……っ」
沙紀の瞳から涙が止めどなく零れ落ちる。それでも二人は止まらない。それどころか更に激しくなり、そしてそのまま一気に奥まで突かれた瞬間――、
「ぁあ……!!」
熱い飛沫を子宮口に叩きつけられたと同時に、沙紀もまた達してしまったのだった。そしてそのまま意識を手放してしまったのだった。
だが、それも一瞬のことでだ。すぐにまた、二人の愛撫によって意識を引き戻されてしまう。
でも、沙紀はもう限界だった。これ以上されたら壊れてしまうかもしれない。そんな恐怖すら感じていた。
だが、それでも二人の愛撫が止まることはなかった。
二人と繋がったまま、どちらからともなく唇を奪われる。
「……んっ……ぁ、は……っ、ぁ……っ」
そしてそのまま舌を絡め取られ、歯列をなぞられ、下顎を擽られる。
交互に繰り返されるそれだけでも、もう駄目なのに……今度は黒い鶴丸が沙紀の脚を更に大きく開かせ、その間に入り込んでくると、そのまま一気に押し上げて来たのだ。
「ぁ……っ!」
その質量の大きさに、一瞬息が詰まる。だが、それも最初だけだった。すぐに甘い痺れが身体中を駆け巡ってくる。そして、抽挿が開始されればもう何も考えられなくなった。ただただ与えられる快楽に身を任せるだけしか出来なくなってしまったのだ。
やがてそれは激しさを増していき、沙紀の口から漏れる声にも艶が混じっていった。
すると、それに合わせる様に白い鶴丸も動き始めたのだ。
ゆっくりと引き抜かれたかと思うと一気に奥まで穿たれ、それと同時に黒い鶴丸が激しく子宮口を突き上げてくるものだからたまらない。
そのあまりの快感に沙紀はただ喘ぐことしか出来なくなっていた。
そして、そのまま何度も奥を突かれているうちに限界が訪れたのだろう。目の前が真っ白になり沙紀の身体が痙攣し始めたのだ。
それに気付いた二人が更に動きを速めていく。
「ぁ、あ……っ、ゃ、だめぇぇえ……っ!」
「ああ……俺もそろそろ限界だ……っ」
その言葉に白い鶴丸が沙紀の腰を掴むとそのまま激しく抽挿を繰り返し始めた。そしてそれと同時に黒い鶴丸もまた子宮口を突き上げてきたのだ。
その瞬間、目の前が真っ白になり頭が真っ白になる程の強烈な快感に襲われたかと思うと――次の瞬間には熱い飛沫が叩きつけられていたのだった。その熱さにまた軽く達してしまったのか身体がびくんと跳ねる。
だがそれでも二人の動きは止まることがなかった。むしろ激しさを増したと言った方がいいのかもしれない。
「ぁ、あ……っ、りん、さ……っ、ゃ……も、もう……っ」
「はぁ……っ、まだだ。もっときみが……沙紀が欲しい……」
そう言って黒い鶴丸が再び動き始めると、それに合わせて白い鶴丸もまた腰を動かし始めた。そしてそのまま同時に攻め立ててくるものだからたまらない。
沙紀は、もう何度絶頂に達したか分からなかったが、それでも二人の動きが止まることはなかったのだ。
そうして、二人は代わる代わる沙紀を求め続けてきた。何度も何度も繰り返し愛される度に、沙紀は意識を失いかけたが、それを許さないと言わんばかりに白い鶴丸が沙紀を抱き締めてきたかと思うと激しく突き上げてくるのだ。
その瞬間、今までとは比べ物にならない程の強い快感に襲われて沙紀は大きく背をしならせた。そしてそのまま絶頂を迎えたのだが、それでもまだ終わらなかった。
それどころか今度は背後から黒い鶴丸に抱きしめられてしまったのである。そしてそのまま一気に貫かれるとそれだけでまた達してしまいそうになり、沙紀は堪らず悲鳴を上げた。
そしてそのまま何度も二人に奥を突かれているうちに、沙紀はとうとう意識を飛ばしてしまったのだった――。
「……」
どのくらい時間が経ったのだろうか……。身体が酷く、重い。沙紀がゆっくりと身体を起こそうとすると――、
「まだ、横になってた方がいい」
「え……?」
聞き慣れた声に、沙紀がはっとして振り返る。そこには、こちらを見つめるいつもの鶴丸の姿があった。
「……、りん、さ、ん……?」
恐る恐るそう聞くと、鶴丸はくすっと笑いながら
「ああ、なんだ?」
そう言って、沙紀の頭を撫でた。
もしかして――――。
「あの、霊力は融合出来たのです、か……?」
一番重要な事だ。すると、鶴丸は手を動かしながら
「……ああ、多分な。起きたら俺だけになっていたし、あの黒い方が消えたって感覚はない。一緒にいる感じだ」
「……っ」
瞬間、沙紀が鶴丸に抱き付いた。
「お、おい、沙紀?」
驚く鶴丸とは裏腹に、沙紀はぽろぽろ涙を流しながら、
「よかっ……、もしだめだったらどうしようかと……っ」
そんな様子の沙紀を見て、鶴丸が優しげに笑みを浮かべ、そっと沙紀の背を撫でた。
「大丈夫だ。……心配、掛けたな。とりあえず――後で小野瀬は絞めとくから」
と、後半何やら物騒な事を言っていたが……今の言葉は聞かなかった事にしようと思った。その時だった。鶴丸が少し言い辛そうに……、
「その、沙紀。喜んでくれるのは嬉しいんだが……その恰好で抱きつかれると、俺も男だから、その……」
「……?」
沙紀が首を傾げながら、自身を見る。瞬間、顔を真っ赤にして……、
「……っ、す、すみませんっ!!」
沙紀が慌てて鶴丸から離れた。そう――沙紀は一糸纏わぬ姿だったのだ。
は、恥ずかしい……っ!!
嬉しさのあまり、情事の後だという事をすっかり忘れていた。沙紀は、今更だがもそもそと衣を手繰り寄せると、
「その……、シャワー浴びてきますので、りんさんは少し待っていて――きゃぁ!」
「待っていてください」と言おうとしたところ、不意に伸びてきた鶴丸の手が沙紀をぎゅっと後ろから抱きしめてきた。鶴丸からのその行為に、沙紀がますます顔を赤らめる。
「あ、あの……っ」
「もう少し――もう少しだけ、このままじゃ駄目か?」
「え……」
少しその言葉に切なさを感じ、沙紀は言われるがままに小さく頷いた。
「その、少しだけ、でしたら……」
そう念を押す。その言葉に、鶴丸がふっと優しげに笑う。
「ありがとう、沙紀――」
そう言って、沙紀の肩に顔をうずめたまま、抱きしめる手に力を籠めた。
「……」
もしかして、今回の件で自分に責任を感じてしまっているのか……。
「……りんさん、その、何と言ったらいいか分かりませんが……、大丈夫です、よ?」
そう言って、そっと鶴丸の手に自身の手を重ねる。
「大丈夫ですから。だから、りんさんも安心してください。――それに、今回の原因は小野瀬様ですし」
沙紀のその言葉に、思わず鶴丸が吹き出す。
「はは! 確かに、まぁそうだな」
そう言って笑う鶴丸を見て、少し沙紀はほっとしたのだった。
この後―――。
小野瀬が鶴丸にこってり絞られたのは言うまでもない。
2025.03.11

