◆ 鶴丸国永 「天泣」
(刀剣乱舞夢 「華ノ嘔戀 外界ノ章 竜胆譚」 より)
―――本丸・竜胆
その日、この季節には珍しく、しとしとと雨が降ったり止んだりしていた。
上空に雲はなく晴れているのに、だ。
沙紀は、“審神者”の業務をこなしながら、何かを確認する様に何度も窓の方を見ていた。
あ……まただわ。
先程止んでいたと思った雨が、ぽつぽつとまた降り始めていた。
それを見て、思わず沙紀が小さく息を吐く。
現世でもたまに起きる、いわゆる「天気雨」だ。
よく、狐の嫁入りとも言われるが――まさかそれを現世ではなく、この別空間にある本丸で見る事になるとは。
気候も現世に合わせている程だ。
それだけ、この空間も現世に近い形に作られているという証拠だろう。
きっとそれは、沙紀の為でもあるし、「ひと」として形を成した刀剣男士の為でもあるのだろう。
彼らは、まだ顕現したばかりだと「ひとの身体」に慣れていない。
それ故に色々と政府も考え、出来うる限り現世に近くとしたのかもしれない。
そんな事をぼんやりと考えていた時だった。
「沙紀?」
不意に声が聞こえたかと思ってそちらを見ると、廊下の方を鶴丸が書物を持って歩いていた。
「あ、りんさん……」
ふと、鶴丸の持っている書物に目が行く。
すると鶴丸はそれに気づき、
「ああ、これか? この間小野瀬に申請しておいた本だよ。流石にこの手の本は万屋とかには売ってないからなぁ」
そう言って、その書物を見せてくれる。
軍記物から歴史書、そして普通のハードカバーの小説の様なものから、図鑑のようなものまであった。
一部鶴丸が読むには、些かイメージ違いの様な物もあり、思わず沙紀が首を傾げる。
「俺が本を読むって知った他の奴からの要望も入ってるからな~。こっちの医療系は薬研からの希望だ。後は――」
と、色々説明してくれる。
鶴丸が現世の都内にあるマンションの自室に、大量の本を持っているのは見たことがあった。
なんでも昔 顕現したての頃、小野瀬に馬鹿にされるのが悔しくて、とにもかくも本を読んで、知識を詰め込んだのだと以前鶴丸が言っていた。
それが総じて、今はすっかりの読書家だ。
だが、やはり沙紀や刀剣男士達用に用意されている街では、現世の本は入荷になかなか時間掛かるらしい。
なので、鶴丸は沙紀を‟審神者”にすべく派遣された政府の官僚の小野瀬に、色々と「頼み物」をする様になったのだ。
ある意味、合理的なやり方でもあった。
「っと、悪い。仕事の邪魔をしたみたいだな」
と、沙紀の机の方を見て鶴丸が言うが、沙紀は小さく首を振り、
「いえ、大丈夫です。少し集中出来なくて――どうしようかと思っていた所ですので」
そう言って、ちらりと沙紀が窓の外をまた見る。
また雨がぽつぽつと、降ったり止んだりしていた。
それに気づいた鶴丸が「ああ……」と声を洩らし、
「天泣か……」
と、呟いた。
「てん、きゅ、う……ですか?」
「ああ、こういう天気なのに雨が降ったりするのを天泣って言うのさ。まぁ一般的には、天気雨とか狐の嫁入りの方が馴染みあるかもな」
「あ、同じ意味なのですね」
「沙紀でも知らなかったのか」
そう言って、鶴丸が沙紀の頭を撫でながら笑った。
それからふと何か思い立ったのか、
「ああ、少し待っててくれ。どうせなら、一緒に休憩しないか?」
「え? ですが、りんさんもお忙しいのでは……?」
休憩で一息付けるのはありがたいが、鶴丸の用事があるのでは……と思ってしまう。
だが、鶴丸は「はは」っと笑うと、
「俺も、丁度 休憩しようと思ってた所だ。きみが一緒だと俺も嬉しいしな」
「え……」
鶴丸がそんな事を言い出すものだから、沙紀は恥ずかしそうに、熱を帯びてきた頬を両手で押さえた。
すると、鶴丸は沙紀の頭をぽんぽんっと撫でると、
「先に、俺の部屋へ行っててくれ、これ届けたら俺も戻るから」
そう言って、持っていた書物を持つと、鶴丸はそのまま行ってしまった。
まさか、鶴丸の部屋へ待っていろと言われるとは思わず、沙紀の頬が更に熱を帯びていった。
な、何を考えているのよ、私……。
りんさんのあの言葉に、特別な意味はないのに――。
そう思うと、突然訪れた「難題・鶴丸の部屋」に行くのには些か勇気が必要そうだった。
沙紀は自身を落ち着かせようと、大きく息を吸って吐く。
それから、平常心平常心と念じながら厨へと先に向かった。
どうしよう……手ぶらで休憩っていうのも、変な話よね。
そう思って、とりあえず茶と菓子を用意すると、そのまま鶴丸の部屋へと向かったのだった。
**** ****
―――本丸・竜胆 鶴丸の部屋
一応、部屋の扉を叩いてから開ける。
が、鶴丸はまだ戻ってきてはいない様だった。
とりあえず、持ってきた茶と菓子をテーブルに置くと、沙紀は窓の外を見た。
あ、また……。
つい今し方、晴れていたと思っていたが、また雨が降り始めていた。
「天泣……」
それは、まるで天が泣いている様に見えるからそういうのだろうか。
そんな事をぼんやりと考えていた時だった。
ふいに、部屋の扉が開いて鶴丸が入って来た。
「悪い、待たせた」
そう言って、沙紀の元へ来ると、テーブルの上に用意されていた茶と菓子に一瞬目を止めて、
「うん? 沙紀が用意したのか?」
「あ、はい。何かあると良いかと思いまして――」
差し出がましかっただろうか。
一瞬不安が頭を過ぎるが、鶴丸は嬉しそうに笑いながら、
「それはありがたい。丁度、喉も渇いてたしな」
そう言ってソファに座ると、自分の隣をぽんぽんと叩いてきた。
「ほら、沙紀も座れ」
そう言って、もう一度隣を叩く。
「え、ですが……」
何故、正面ではなく隣なのか……とも思ったが、少しでも彼の傍に居たいという気持ちの方が勝ったのか、沙紀は少し躊躇いがちに鶴丸の隣に座った。
すると、鶴丸が嬉しそうに笑う。
「……っ」
瞬間、沙紀の心臓が大きく跳ねた。
うっ……その顔は反則だと思うの……。
そんな風に嬉しそうに笑われたら、嫌とは言えなかった。
知らず、頬がまた熱を帯びていくのが分かる。沙紀は慌てて話を逸らそうと、鶴丸の部屋を見ながら、
「りんさんのお部屋は、相変わらず本が沢山ありますね。それに、現世のりんさんのお部屋のイメージに近いので、他の方のお部屋と違い過ぎていつ見ても驚きます」
ずらりと大きな本棚に並ぶ本の山。
洗礼された空間に合いそうな、シックなテーブルとソファ。
他の男士達の部屋はどちらかというと、純和風といった感じなのに対して、鶴丸の部屋は洋風に近かった。
沙紀自身、和室でずっと暮らしていたので洋室だと少し落ち着かない気もした。
だが、鶴丸は何でもない事の様に沙紀の持ってきた茶を飲みながら、
「ん? ああ、俺はこっちの方が慣れてるからな――それに」
そう言い掛けて湯呑をテーブルに置くと、鶴丸はそっと沙紀の肩に手を掛けて、自分の方に手繰り寄せた。
「あ……っ」
突然の鶴丸からの行為に、沙紀が一瞬身体を強張らせる。
「こういう時、ソファがあると楽だろう?」
「え? あの、それはどういう――んっ……」
「意味」と問おうとした時だった。
伸びてきた鶴丸の手が、沙紀の顎を上へ向かせたかと思うと、そのまま口付けが降って来た。
「……ぁ、り、りんさ……」
一度で終わるかと思っていた口付けが、二度三度の重ねられるたびに深くなっていく。
沙紀がきゅっと思わず目を閉じると、鶴丸が優しく抱き寄せてきた。
そして、そのまま上を向かされると、口付けが更に深くなる。
「……ン……っ、は、ぁ……待っ……」
「待たない」
「待って」という言葉は封じられたかの様に、鶴丸の口付けで言の葉には乗せられなかった。
そのまま、口付けがどんどん深くなっていく。
舌と舌が絡まり合い、互いの唾液が混ざり合う。
「ふ、ぁ……ンっ、り、んさ……っ」
何度も角度を変えながら、鶴丸の舌が沙紀の口内を侵していく。
その度に、沙紀の身体からは力が抜けていった。
そして、ゆっくりと唇が離れる頃には、沙紀の身体はすっかり熱を持っていた。
互いの呼吸は荒く、頬を紅潮させたまま見つめ合うと、どちらともなく微笑みあった。
「可愛い」
そう言って、そっと鶴丸が沙紀の赤く染まって頬を撫でる。
何だかそれが恥ずかしくて、沙紀は照れ隠しの様に、
「りんさんこそ、いつも素敵ですよ……?」
そう返すと、一瞬鶴丸が驚いた様にその金の瞳を見開いたが、次の瞬間笑って、
「そう言ってもらって嬉しく感じるのは、沙紀だけだ」
また自然と二人の距離が縮まる。
今度は、沙紀の方から少し背伸びをして鶴丸に口付けた。
それに気分をよくしたのか、今度は鶴丸が沙紀の首筋へと唇を這わせ始めた。
ちゅっと音を立てて吸い付くと、首元から鎖骨まで紅い華が咲いていく。
それと同時に、鶴丸の指先が沙紀の腰紐に触れ始めた。
その感触に、びくっと沙紀が身体震わせる。
「り、りんさ……っ」
慌てて沙紀が、鶴丸の手を止めようと手を伸ばそうとするが、その手が辿り着く前に、あっさり解かれてしまった。
胸元の合わせが大きく開かれる。
「りんさん……っ、ま、待っ――ぁ……っ」
咄嵯に、沙紀は両手で前を隠そうとしたが、再び交わされた口付けがその言葉を封じた。
そして、そのまま沙紀は押し倒されると、鶴丸の手が沙紀のふくよかな胸に触れてきた。
柔らかく形を変える胸に、鶴丸の指が沈み込む。
「ンン……っ、ぁ……や、んっ……」
ゆっくりと揉まれる度に、沙紀の甘い声が部屋の中に響く。
思わず自分の発した声に、羞恥心が勝ったのか、慌てて声を我慢する様に口を手で押さえようとした。
すると、鶴丸の顔がそっと沙紀に近づき 耳元で囁くように、
「――声、聞きたい」
「……っ、で、も……」
今はまだ昼間だし、それにここは本丸だ。
もし、誰かに聞かれでもしたら――そう思うと、声など出せる筈がなかった。
すると、鶴丸はくすっと笑いながら、
「安心しろ。今、この辺に他の奴はいないから」
そう言って、片方の胸を愛撫し始めた。
だからといって、そんなに都合よく誰もいないとは限らない。
そう思って沙紀が躊躇していると、それを察したのか、鶴丸が沙紀の頭を優しく撫でた。
まるで幼子をあやす様な優しい手付きで。
りんさん……。
その手はあまりにも優しかった。
優しすぎて、ほだされそうになる。
暫く、そうしていたかと思うと、不意に顔を上げた鶴丸が、沙紀の頬に手を添えてもう一度、啄むような口付けをしてきた。
「んっ……ぁ、はっ……り、んさ……ン……っ」
何度も何度も繰り返される口付けと共に、熱を帯びた声で鶴丸が呟いた。
「……好きだ、沙紀。きみが――」
「……っ」
そう言われて、沙紀は嬉しさのあまり泣きそうになった。
すると、沙紀の目尻に浮かんだ涙を鶴丸が舐め取る。
そして、そのまま口付けを落とした。
それは、今までのどの口付けよりも甘美な果実の様に甘く感じられた。
次第に口付けが深くなる。
「……沙紀。口、開けて」
言われるがまま、沙紀が「え?」と上を向くと、それに応えるかの様に、鶴丸の舌が絡みついてきた。
互いの舌が擦れ合う度に、沙紀の身体がぴくりと震える。
飲みきれない唾液が、沙紀の唇から零れ落ちていった。
それでも、鶴丸は口付けを止めてはくれなかった。
角度を変えながら、何度も何度も口付けを交わす。
暫くしてようやく唇が離れると、鶴丸が少し名残惜しそうな表情を見せた。
「りんさん……?」
沙紀が鶴丸の名を呼ぶと、鶴丸はそっと沙紀の頬を撫でてから、まるで甘えるかの様に首筋に唇を這わせた。
「……っ、あ……」
その感触に、沙紀がびくっと反応を見せる。
すると、鶴丸はそのまま首筋から鎖骨に掛けて、ちゅっと音を立てながら口付けを落としていった。
彼の辿った道筋に赤い華が咲いていく。
「沙紀……」
熱の籠もった様な鶴丸の声に、沙紀の心の臓が跳ねた。
そのまま、再び口付けが降ってくる。
今度は先程とは打って変わって、激しいものだった。
呼吸すら奪われてしまう程のその口付けに、沙紀がぴくんっと肩を震わせた。
舌と舌が絡み合い、重なる。
甘噛みされ、吸われ、口内を蹂躙していくと、今度は歯列の裏をなぞられ、上顎をくすぐられていく。
「ふ、ぁ……っ……は、ぁ……っ……ンっ……」
その度に、沙紀の身体がびくっびくっと小刻みに震えた。
そうして暫くの間、互いの舌を絡ませ合うと、漸く唇を離した。
二人の間に銀糸が紡がれ、ぷつりと切れる。
互いに荒くなった呼吸を整える様に、肩で大きく息をした。
そして、鶴丸が沙紀を見つめてくる。
その金の瞳に、自分の姿がはっきりと見て取れて、沙紀の心臓が大きく跳ねた。
そこには、火照りきって頬を赤く染めた自分が映っていたのだ。
わた、し……。
今、こんな顔、し、て……。
そう思うと、一気に恥ずかしさが込み上げてきて慌てて、顔を手で覆った。
「……沙紀、顔。見せてくれ」
鶴丸が優しくそう促す。
だが、沙紀は恥ずかしさが勝っているのか、顔を横に振った。
すると、鶴丸がにやっと笑みを浮かべて、
「……そんなに焦らされたら、どうしても見たくなるんだがな」
そう言うなり、強引に沙紀の手を掴んで引き剥がすと、すかさず鶴丸の口付が降ってきた。
それも、先程よりも深く濃厚なものが――。
沙紀の舌を絡め取り、吸い付いてくる。
くちゅくちゅと水音が部屋で響き渡ると、次第に沙紀の思考が蕩け始めた。
頭の中がくらくらしてきて、鶴丸の事以外何も考えられなくなってくる。
「……んっ、り、んさ……っ」
無意識に沙紀の手が鶴丸の首に回される。
それに気を良くしたのか、鶴丸の愛撫が激しくなっていった。
口付けを交わしながら、沙紀の身体から着物を一枚ずつ脱がしていく。
やがて、すっかり上半身の下着を取り去られ、沙紀のたわわな胸が露わになった。
白くて形の良い胸はふるふると震え、その先にある突起は触って欲しそうに主張している。
鶴丸の手がそっとその先端に触れると、沙紀の身体がびくっと震えた。
そして、口付けを止めると鶴丸が舌でその先端を舐め始める。
「あっ、や……っ」
沙紀の口から甘い嬌声が漏れる。
それに気を良くしたのか、鶴丸はそのまま突起を口に含むと優しく吸い始めた。
「あ、ぁ……っ、は……んっ」
それだけでも甘い刺激が沙紀を襲う。
そして、ちゅっと音を立てて口を離したかと思うと、今度は反対側の胸に食らいついた。
そのまま舌と歯で愛撫すると、反対側の胸も同様にしていく。
それを何度も繰り返すと、徐々に沙紀の声が甘さを含み始めた。
鶴丸の唾液で光る突起は、すっかり硬くなってその存在を主張していた。
「ぁ……」
かぁっと、沙紀が恥ずかしそうに、顔を背けた。
そんな仕草も、鶴丸には愛らしく見えて仕方が無かった。
「沙紀――それ以上可愛くおねだりされたら、俺も抑えられなくなるんだがな」
冗談めかしてそう言うと、沙紀がますます顔を赤らめた。
そして、小さく肩を震わせながら、
「そ、そんなつもりは……っ」
「無いって? なら、ここがこんなになってるのはどうしてだろうな」
そう言って、鶴丸がぴんっと立った沙紀の胸の突起を弾いた。
瞬間、沙紀の口から甘い嬌声が上がる。
鶴丸が沙紀の胸元に顔を埋めると、胸の突起を口に含んだまま、舌で愛撫し始めた。
そしてそのまま強く吸い付くと、もう片方の胸を手で愛撫していく。
その刺激に沙紀が身体をびくんっびくんっと震わせた。
「ぁ……は、ぁ……ん……っ、り、りん、さ……っ」
鶴丸が胸の突起を舐め上げ、吸い付く度に沙紀の身体に甘い痺れが駆け巡る。
すっかり身体が火照った頃、鶴丸の手が沙紀の下肢に触れた。
そこは既に下着の意味を成してはおらず、ぐっしょりと濡れていた。
下着の上からでも分かる程に熟したそこに触れると、沙紀の身体が大きく跳ねた。
くちゅと水音が耳に届き始めると、それだけで羞恥心を煽られたのか、沙紀の顔が更に赤く染まっていく。
だが、鶴丸の手は止まらない。
下着の隙間から手を差し入れると、直接沙紀の秘部に触れてきたのだ。
「――ぁ……っ」
直接触れられた事で、沙紀の身体が跳ねた。
既にそこはしっとりと濡れていて、蜜壺から溢れ出したものが太腿まで濡らしていた。
それを指先で掬うと、鶴丸はわざとらしく沙紀に見せる様に自身の舌で舐めとる。
「……っ」
それを見て、羞恥心から沙紀は咄嵯に目を逸らした。
すると、鶴丸はそっと沙紀の耳元で囁く様に、
「沙紀――俺の事だけ考えてくれ」
そう言って、鶴丸はゆっくりと秘裂に沿って指を這わせていった。
時折、ひくつく花弁をなぞり、花芽を掠める。
その度に沙紀の身体がびくびくと小刻みに震えた。
蜜壺から溢れた蜜が鶴丸の手を濡らす度に、彼の指は秘裂の奥へ奥へと入り込んでいく。
そしてついには沙紀の最も敏感な部分――陰核へと辿り着いた。
「……ン、あ……っ」
その途端、今までとは比べものにならない程の快感が沙紀を襲った。
鶴丸の指が陰核に触れた瞬間、沙紀の口から一際大きな嬌声が上がる。
それに気をよくしたのか、鶴丸は陰核を指の腹で擦り始めた。
「……あ、ぁ……んっ……は、ぁ……っ」
くちゅくちゅという水音と沙紀の嬌声が部屋に響く。
沙紀のそこは、鶴丸が触れる度にどんどん蜜が溢れてきた。
それを潤滑油にしながら、鶴丸は更に激しく陰核を擦り上げていく。
やがて、沙紀の身体が大きく痙攣したかと思うと、秘裂から大量の蜜が溢れ出した。
だが、それでも鶴丸は、止めなかった。
ある一点で止まるとそのまま軽く押し潰すように刺激を与え始める。
「ンっ……っ、は、ぁ……、ああ、ンっ……ゃっ……だ、めぇ……っ!」
途端、沙紀の口から甘い声が上がった。
すると、鶴丸は執拗にそこばかりを攻め立ててきたのだ。
知らず、沙紀の腰が浮いていく。
すると、それに応えるかのように鶴丸の指の動きが激しさを増していった。
堪らず沙紀がぎゅっと目を閉じる。
その瞬間を狙っていたかの様に、鶴丸が口付けてきた。
それは、沙紀にとって更なる追い討ちとなった。
「ンンっ、……ぁ……は、ぁ……りん、さ……っ、ぁ……っ」
互いの舌が絡み合い、口端からは唾液が零れ落ちていく。
その間も、鶴丸の指先は休む事なく沙紀の弱い部分を弄んでいた。
そうして、暫くしてから鶴丸が唇を離すと、銀の糸が二人の間を繋いでいた。
それが途切れると、鶴丸は沙紀の耳元に唇を寄せて囁く様に告げる。
「――沙紀、いいか?」
沙紀その言葉の意味を理解する前に、鶴丸の長い人差し指がゆっくりとさらに奥へ入ってきた。
その異物感に、沙紀が「ぁ……っ」と声を洩らす。
堪らず、鶴丸の背にしがみ付く。
きゅんっと下腹部が締まるのが自分でも分かった。
痛みは殆ど感じなかった。
その代わりに微かな圧迫感と違和感が襲ってきた。
だが、沙紀の中で動き回る指が、ある一点に触れた時だった。
今までとは比べものにならない程の快楽が、沙紀を襲ってきたのだ。
「ああ……っ! はぁ……ンっ……ぁ、は……っ」
沙紀の口から、一際甘い嬌声が漏れた。
そこを擦ったり、押し潰したりする度に沙紀の身体が大きく震える。
そして、鶴丸の指は更に一本増やされたかと思うと、二本の指がまるで抽挿する様に動き出したのだ。
淫らな水音が部屋に響く中、沙紀は無意識のうちに腰を浮かせていた。
それを見計らった様に鶴丸が陰核をぐっと親指で押し潰すと、 瞬間的に目の前が真っ白になったかと思うと、沙紀は絶頂を迎えていた。
がくっと力が抜けた沙紀の身体を、鶴丸の腕が優しく支えてくれる。
沙紀の呼吸が落ち着くのを待って、鶴丸が沙紀の頬に触れながら優しく微笑んだ。
沙紀の瞳が鶴丸の姿を映しだす。
そこには、余裕のない表情を浮かべている自分が映っていた。
「り、んさ……ん……」
途切れ途切れに自分を呼ぶ沙紀の声が、ひどく心地よく感じる。
鶴丸はそっと沙紀の頬に手を伸ばすと、そのまま口付けを落とした。
「……んっ、ぁ……」
啄ばむ様に何度か口付けた後、徐々に深く濃厚なものへと変わっていく――。
その間に、鶴丸のもう片方の手は沙紀の胸元へ再び伸びていた。
そして、胸全体を包み込むようにゆっくりと揉み始めたのだ。
最初は、乳房の形が変わる程強く握っていたが、徐々に力を緩めていき、今度は頂を摘まみ始めた。
「……ぁっ……は、ぁ……んっ、ぁ……っ」
時折、引っ張ったり、指先で転がしたりしていく。
その度に、沙紀の身体が小さく反応を示した。
鶴丸が、首筋にちゅっと音を立てて吸い付くと、そこにはくっきりと赤い跡が残る。
それを満脚そうに見つめながら、鶴丸は執拗に沙紀の首筋から鎖骨にかけて口付けを落としていく。
そして最後に胸元まで辿り着くと、その先端を口に含んだ。
「……ぁ、ああ……っ、はぁ……んっ」
沙紀の胸の突起は先程よりも更に赤く色付き、ぷっくりと膨れ上がっていた。
その片方を手で愛撫しながらもう片方に舌を這わせると、沙紀の口から甘い吐息が漏れた。
すると突然、鶴丸の手が今度は沙紀の太腿にその手が這ってきたのだ。
そして、ぐっと両脚を開かされると、今度は内腿へ口付けを落としていく。
「ぁ……っ、ま、待っ……ンん……っ、は、ぁ……ゃ……ぁん……っ」
びくんっと、沙紀が身体を震わせた。
だが、鶴丸の口付けは止まらなかった。やがて脚の付け根辺りまで到達すると、鶴丸は沙紀の脚を持ち上げたかと思う、とそのまま大きく左右に開いたのだ。
「ぁ……っ」
沙紀は咄嗟に脚を閉じようとするも叶わず、逆に鶴丸の手によって固定されてしまった。
そうして露わになった秘裂からは蜜が溢れ出し、太腿を伝って流れ落ちていく。
かぁっと、沙紀が今までにない位真っ赤にその顔を染めた。
「ゃ……だ、めっ……りん、さ……っ」
何とか抵抗を試みるが、全く意味を成していなかった。
そうこうしている内に、鶴丸はそれを掬い取る様にして、舌で蜜壺を舐め取ったのだ。
「――ぁ……ああっ!」
その瞬間、びくんっと大きく沙紀の身体が跳ね上がった。
すると、鶴丸はそのまま執拗にそこを攻め始めたのだ。
ぴちゃっ、くちゅっという水音が部屋の中に響き渡る。
恥ずかしさと気持ちよさが複雑に入り交じって、沙紀はただひたすら喘ぐしかなかった。
鶴丸の舌が沙紀の花芽に触れる度に、沙紀の身体がびくびくと反応する。
次第に沙紀の息遣いが荒くなっていき、甘い吐息へと変わっていく。
それを見計らって鶴丸は顔を上げると、今度は指で花芽を挟み込む様にして捏ね回した。
「あぁ……っ!」
その瞬間、今までとは比べものにならない程の快感が沙紀を襲った。
堪らず腰を浮かせるも、それは、逆にもっととねだっている様にしか鶴丸には見えなかった。
そして再び花芽を口に含むと今度は強く吸い上げたのだ。
すると、それに呼応する様に蜜壺から更に大量の蜜が溢れ出した。
それを全て飲み干していくと、鶴丸は沙紀の秘裂に更に舌を差し入れた。
「――は、ぁ……っ、ン……っ」
その途端、沙紀の口から悲鳴の様な声が上がった。
だが、鶴丸は構わずに舌を動かすと、中を押し広げる様にして舐めていく。
そして、ある一点に触れた瞬間――今までより一層高い嬌声を上げながら、沙紀の身体が大きく仰け反った。
その反応を見て取った鶴丸が重点的に攻め立てると、沙紀の口からひっきりなしに喘ぎ声が零れる。
沙紀の瞳からはぽろぽろと涙が溢れてくると、鶴丸はそれを愛おしそうに舐め取った。
「り、ん……っ」
「馬鹿――そんな風に泣かれたら、きみをどうしても俺のものにしたくなるだろう?」
そう言って、最後にもう一度口付けると、今度は沙紀の脚を持ち上げた。
そして、膝の裏に唇を落としていく。
その途端、沙紀の身体がびくっと震えた。
だが鶴丸はその反応を楽しむかの様に何度も同じ場所に口付を落とした後、ゆっくりと再び脚を広げさせたのだ。
すると、今まで隠れていた部分が全て露わになり、鶴丸の目の前には蜜で濡れそぼった秘裂がひくついていた。
「――沙紀」
不意に鶴丸が顔を上げて沙紀を呼ぶ。
その声音には、隠しきれない熱が含まれていた。
それは、彼もまた限界を迎え様としている事を示していた。
鶴丸は軽く口付けると、そのまま沙紀の耳元に唇を寄せて囁いた。
「沙紀――もう、きみの中に入りたい」
その言葉を聞いた沙紀の心臓が大きく跳ねた。
だが、不思議と嫌だという気持ちは浮かんではこなかった。
むしろ、心の底から嬉しいと感じている自分に、驚きを隠ししれなかった。
「……りんさん」
小さく、恥ずかしそうに顔を朱に染めたまま、こくりと頷く。
その「答え」を聞いた瞬間、鶴丸が嬉しそうに微笑むと、再び沙紀に覆い被さってきた。
「……悪い、加減してやれない」
そう言うなり、一気に自身を奥まで突き入れてきたのだ。
「――ああっ!!」
瞬間、あまりの質量の大きさに沙紀は息が詰まりそうになった。
痛みに耐え切れず、沙紀の目尻から涙が零れ落ちる。
それを見た鶴丸が慌てて動きを止めた。
しかし、それも一瞬の事だった。
沙紀が首を横に振ると、鶴丸は安心させるかのように額や瞼、頬に優しい口付けを落としていく。
そうして、ゆっくりと動きを再開したのだ。
初めはゆっくりとした抽挿だったが、次第に早くなっていく。
それと同時に、先程の指とは比べものにならない程の快楽が沙紀を襲った。
「ぁ……っ、ああ……っ、は、ぁ……あ……っ」
結合部からは、絶えず水音が響いていた。
その度に、沙紀の口から甘い声が上がる。
更に、ある一点を突かれた瞬間、沙紀の身体が大きく仰け反った。
それを見逃さなかった鶴丸が、その一点ばかりを突いてきたのだ。
途端、今まで感じたことのない強い快楽が襲ってくる。
「――あ、ああっ! だ、だめ……っ、りん、さ……っ」
あまりの激しさに、沙紀の視界がちかちかと明滅を繰り返す。
そして、次の瞬間、沙紀は大きく目を見開き背中を大きく仰け反らせた。
「――ああっ!!」
同時に、膣内が激しく収縮し、鶴丸のものを締め上げる。
絶頂を迎えた沙紀の表情は、この上なく艶やかで美しかった。
その姿を目にした鶴丸は、沙紀の中で自身が大きくなるのを感じた。
たった今、絶頂を迎えたばかりの沙紀の中が、再び圧迫されていく。
その感覚すらも、今の沙紀にとっては快感となっていた。
そのままの状態で暫くの間静止していたが、やがてゆっくりと律動を開始する。
そして、激しく腰を打ち付け始めたのだ。
「あ、……ああっ、……は、ぁ……ん……っ」
肌同士がぶつかり合う音が部屋に響く中、沙紀は必死になって鶴丸にしがみ付いた。
鶴丸もまた沙紀を抱き締め返す。
そうして、互いの体温を感じながら、二人は絶頂を迎えたのだった。
やがて、沙紀の中で熱い飛沫が放たれると同時に、沙紀も再び絶頂を迎えていた。
どくんっと脈打つ度に、熱いものが注がれていく感覚に身を震わせる。
それから少しして、ずるりと引き抜かれた感触にまた小さな快感を覚えながら、沙紀は意識を手放した。
完全に意識を失う直前――最後に見たのは、幸せそうな笑みを浮かべて自分を見つめる、鶴丸の姿だった。
「……ん……」
どのくらい眠っていたのだろうか……。
気が付くと、沙紀は鶴丸のベッドの中にいた。
外は暗く、既に夜の帳が落ちていた。
沙紀は、朧気な頭のまま上半身を起こすと、隣には穏やかな寝息を立てながら眠っている鶴丸の姿があった。
その姿を見て、ようやく自分が彼の腕の中にいるのだという事に気が付く。
ふと自分の姿を見下ろすと、しっかりと夜着を着せられていた。
きっと、彼が着せてくれたのだろう。
その事実に気が付いた瞬間、急激に羞恥心が込み上げてきた。
あの時の自分は、間違いなく乱れていた。
あんな姿を見られていたのかと思うと、恥ずかしくて堪らなかった。
知らず、顔が熱を帯びていく――。
わ、私……っ、あんな風になってしまうだなんて……っ。
恥ずかしさのあまり、どこか隠れたい気分だった。
でも……そっと手を伸ばして、眠る鶴丸の髪を優しく撫でる。
「りんさん……」
心のどこかで、彼に求められたことが嬉しいと感じる自分がいた。
この気持ちをどう表せばいいのか分からないが――それでも。
今、この瞬間、ここにいる人が鶴丸である事が何よりも嬉しいと、そう感じてしまう。
「りんさん……好き、です」
こっそりと、聞こえないように口にする。
すると、僅かに身じろぎした後、鶴丸が薄らとその瞳を開けた。
どうやら起こしてしまったようだった。
鶴丸は何度か瞬きを繰り返した後、沙紀の姿を捉えると、とても柔らかな笑みを浮かべて――、
「沙紀――」
そう呼び、優しく撫で返してくれた。
その笑顔が余りにも綺麗で思わず見惚れてしまう。
だが、すぐに、はっとして顔を赤らめた。
そんな沙紀の様子を見て、鶴丸はくすりと笑うとそのまま唇を寄せてきた。
触れるだけの口付けを交わした後、再び抱き締められる。
今度は、お互いに何も言わなかった ただ静かに互いの温もりを感じていた。
ふと、その時窓の外から雨の音がぽつ……ぽつ……と、聞こえてきた。
顔を上げると、月が出ているのにまた雨が降り始めていた。
「……天泣……」
沙紀がぽつりとそう呟く。
まるで天が泣いているかのように降るその、雨音は心地よく――。
いつか、本当の意味で彼の――鶴丸の傍に居られたらどんなにいいだろうと。
そう――思わずには、いられなかった。
こちらは、以前「本」で書き下ろした話に、加筆したものです。
他も、順次出していきますねー
2024.06.02