花薄雪ノ抄
     ~鈴蘭編~

 

◆ 鶴丸国永 「白き嫉悋の灯」

 (刀剣乱舞夢 「華ノ嘔戀 外界ノ章 竜胆譚」 より)

 

 

――――現世・政府機関内

 

 

その日、政府機関内では月一の“審神者会議”が開かれていた。

会場は、いつもと同じ異空間。

真っ暗な中、中央に立つ監察官が3人――

 

そこを中心の縦長のタワーの様に伸びたボックス席式の個別部屋。

上に行けば行くほど、高ランクの“審神者”がおり、発言権を持つ。

 

基本、いつもは刀剣男士を護衛として一人~二人同行が許される。

が、この日は、“特別会議”という事で、刀剣男士は控えの間へと異動されたようだった。

 

沙紀は、顔を隠す雑面を取り出すと、その身に付ける。

この雑面には、各本丸の“華号”の刺繍が施されており、沙紀の雑面には「竜胆」の“華号”が刺繍されていた。

 

これは、素顔を晒して“審神者”間のトラブルを回避する為でもあった。

それと同時に、“審神者”を区別する為でもある。

 

ボックス席に入ると、真っ暗な縦長の筒状の空間のいたるところに、他の本丸の“審神者”達がいるであろう、気配を感じた。

 

すると、中央にいた監査官の一人が、かんかん! という音と共にガベルを叩いた。

 

「――静粛に! ただ今より、緊急審神者会議を執り行います」

 

そうして、幾つものデータが転送されてくる。

 

「本日、皆様に集まっていただいたのは――」

 

 

 

 

 

   ****    ****

 

 

 

 

 

――――三時間後

 

“緊急会議”が終わると、沙紀は雑面を外すと、小さく息を吐いた。

沙紀はどうしても、この雑面が苦手だった。

 

確かに、トラブル防止なのは分かるが――これでは相手の顔が見えないのが……正直、やり辛いのだ。

対面しても、何を考えているか分からない――。

ずっと“神凪”として、御簾越しにしか巫覡とも会話してこなかったが……正直、巫覡達が不満を抱いている事には気づいていた。

 

「…………」

 

沙紀は小さく息を吐くと、そのまま異空間の大会議室の個室から退出する。

そして、鶴丸と山姥切国広が待つ控えの間へと急いだ。

 

と、誰かの横を通り過ぎた時だった。

突然、ぴんっと髪が何かに引っ張られる感覚に見舞われた。

 

「……っ、痛っ」

 

思わず、痛みで顔を顰める。

そして、そちらの方を見ると、見知らぬ男性のスーツのシャツに付いているカフスボタンに髪が引っ掛かっていた。

 

今日の会議に出席していた“審神者”だろうか。

 

「あ、あの……」

 

沙紀が口を開こうとした時だった。

その男性が、カフスに絡まっている髪に気付いたらしく、「あ」と声を洩らした。

 

「ごめん、引っかかっているのに気付かなくて――」

 

そう言って、慌ててその男性がカフスに絡まっている沙紀の髪を解こうとするが……不器用なのか、焦っているのか、解けるどころかどんどん絡まっていっていた。

 

「……あの……」

 

流石に見ていられなくて、沙紀が少し遠慮がちに、

 

「解けない様でしたら、切っていただいても――」

 

そう言い掛けた時だった、

 

 

「駄目だ!!」

 

 

突然、その男性が叫んだ。

まさか、怒鳴るとは思わなかったので沙紀の方もびっくりしてしまう。

 

瞬間、男性は はっと我に返り、

 

「あ、ご、ごめん。 いきなり大きな声出して――でも、せっかく綺麗な髪なのに切るなんて勿体ないよ。 と、とにかく解くからもう少しだけ待って」

 

そう言って、男性が必死になりカフスに絡まった髪と格闘している。

そんな様子がおかしくて、沙紀は思わず笑ってしまった。

 

だから、気づかなかった――「彼」が、すぐ傍でこの様子を見ていた事に――……。

 

 

 

 

 

 

 

――――時は、数十分前に遡る

 

沙紀に同行していた鶴丸と山姥切国広は、他の“審神者”の刀剣男士と同じく、控えの間で彼女を待っていた。

鶴丸が持っていた懐中時計を見る。

指針は会議が始まってから既に三時間以上経過していた。

 

「……今回の、会議は随分長いんだな」

 

大概、刀剣男士を伴わない会議の場合は三十分、長くても一時間で終わる簡易的な物だった。

何故ならば、“審神者”を政府内で一人にするのは“危険”と判断されているからだ。

 

この事を知るのは一部の上層部の者だけの話だが、

なんでも、過去に刀剣男士の目を盗んで“審神者”が逃げた事が何度かあったらしい。

それは、時間遡行軍との戦いに疲れ果てたからか、それとも、自我を保てなくなったからか。

 

どちらにせよ、政府は“審神者”を“本丸”以外で長時間一人でいる事を禁じた。

その為、“審神者”が現世へ来る時は、必ず刀剣男士が一人以上護衛という立場という名の監視役として同行する事になっていた。

 

それは、“審神者会議”も例外ではなく――。

故に、短時間ではない会議には刀剣男士も同席する。

 

の筈、なのだが――……。

 

ちらりと入り口の扉の方を見ると、何人かの“審神者”が控えの間に戻ってきている。

つまり、会議はもう終わっているという事だった。

 

なのに、その中に沙紀の姿がない。

 

おかしい……。

まず、今日は“神凪”のデータチェクの日でもないし、身体検査の日でもない。

彼女が逃げるなどまずありえない。

 

いや、きっと少し遅くなっているだけかもしれない。

でも、もし違ったら……?

 

そんな不安が、鶴丸の頭を過ぎる。

 

まさか――何かに巻き込まれ――……

 

「鶴丸?」

 

山姥切国広の声に、鶴丸がはっとする

慌ててふり返ると、山姥切国広が何かに気付いたかのように、

 

「……どうした? お前、顔色悪いぞ」

 

その言葉に、鶴丸が慌てて苦笑いを浮かべながら

 

「あ、あ~いや、沙紀が遅いなって思ってただけだ」

 

「……確かに、いつもより遅いが――心配なら様子を見に……」

 

そこまで山姥切国広が言い掛けた時だった。

突然、がたんっと鶴丸が立ち上がり、

 

「……俺はちょと外の様子見てくる。 国広はここで待っててくれ。 万が一入れ違いになったら面倒だからな」

 

鶴丸が探しに行っている間に、沙紀が戻ってくる可能性もある。

じっとしておくのが得策かもしれないが――沙紀の事を想うと、じっとなどしてられなかった。

 

「……わかった。 気を付けてくれ」

 

山姥切国広のその言葉に、鶴丸が軽く手を上げて部屋を出ていく。

そのまま今日使われたであう異空間の大会議室の入口へ、早足で向かう。

 

その間、何人もの“審神者”とすれ違ったが、その中に沙紀の姿はなかった。

 

やはり、何かに巻き込まれて――……。

そんな考えが頭をよぎった時だった。

 

「……すみません、まだお時間掛かりそうですか?」

 

ふと、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

沙紀だ。

 

鶴丸は慌てて曲がり角に身を隠した。

誰かといる……?

 

そっと、そちらをみると見た事のない男と一緒だった。

おそらくこの度の会議に参加した“審神者”の一人だという事は容易に想像付いたが――。

二人は、かなりの至近距離にいた。

 

何故、あんな近くに?

なんだか、胸のあたりがもやもやする。

それは、あまり心地の良いものではなかった。

 

しかも、普段の沙紀なら直ぐに距離を取るだろうが、何故か今日は距離を取ろうとしない。

それも、時折笑っている。

 

「…………」

 

彼が「人」だから、か……?

 

俺は「刀」で「人」じゃない……。

単に「ひとのかたち」をした、「刀」だ――。

 

そうだ。

最初から願っていた事じゃないか――。

『沙紀には人として、幸せになって欲しい』――と。

 

そう思ったから、俺はあの時・・・彼女の傍を離れる事を決めたんじゃないか。

「偽物のひと」である「刀」の俺とではなく、「本物の人」と幸せになれるように――と。

 

でも――。

沙紀は言ってくれた。

 

『今、私の目の前にいる、りんさんが……鶴丸国永が傍に居てさえくれれば、私は……それ以上は望みません……』

『いいえ、私の目の前にいるのは、鶴丸国永という男の“人”です。“モノ”ではありません。 そして、ずっと傍に居て下さったのも――貴方です』

 

そう言って、涙を流してくれた。

傍にいて欲しいと。

俺が、いいのだと。

俺でなければ嫌だと――だから、俺は――……。

 

「…………っ」

 

違う、俺は……。

俺は、沙紀が――。

 

きみが、「人」を選んで幸せになってくれるなら――。

俺は、ずっと彼女を見護ろうと――。

 

本当に?

今の俺は、本当にそう思っているのか……?

 

この胸の内に眠る様などす黒い感情は?

 

嫌だ。

きみを、沙紀を俺以外の誰かに渡すなんて――。

彼女が自分以外の手に触れられるだけで、こんなにも醜く黒い「感情」が込み上げてくる。

 

嫌だ。 嫌だ嫌だ嫌だ。

 

「沙紀……」

 

これが何という感情なのかなんてどうでもいい――。

きみが、沙紀が他の誰かのものになるのなんて――見たくもない。

 

 

 

「すみません、後少しで取れそうなんですが……」

 

「あ、はい……」

 

沙紀は、少し苦笑いを浮かべながら、ちらりと時計を見た。

彼が沙紀の髪と苦戦してかれこれ三十分は過ぎている。

まさか、ここまで時間がかかるとは思わず……、こんなことなら早めに切ってしまったほうが良かったのでは……? とさえ思ってしまう。

 

どうしよう……、きっと、りんさんも、山姥切さんも待っているわ、よね……?

 

何とか、早めにこの場を切り上げてしまいたい所なのだが……ここまで頑張ってくれている彼の意思を蔑ろにする訳にもいかず――。

どうしようかと、考えあぐねている時だった、不意にふっと視界に影か差し掛かった

 

「え……?」

 

何かと思って一瞬、顔を上げようとした時だった。

不意に、後ろから伸びてきた手が沙紀の肩をぐいっと引っ張った。

 

「きゃっ……!」

 

突然の事に、沙紀が思わず声を上げてしまうが――その手の主を見た瞬間、その躑躅色の瞳を大きく見開いた。

 

「り、りんさ、ん……?」

 

それは、ここにいる筈のない鶴丸だったのだ。

 

一瞬、ほっとしそうになるが、彼の金の瞳を見た瞬間、何故かぞくりと背筋が凍った様な錯覚に捕らわれた。

 

な、に……?

 

いつもとは違う。

もっと冷やかな瞳――。

 

「…………」

 

初めて見るその鶴丸の瞳に沙紀が言葉を失っていると、ふいっと鶴丸が沙紀の目の前の男性に視線を向けた。

瞬間、その男性がびくっとする

 

「あ、あの、これは……」

 

そう言う男性の声は震えていた

 

「…………」

 

鶴丸がその手元に一瞥を送ると、ふっと呆れた様な笑みを浮かべる。

そして、半強制的に男性の手を弾くと、そのままぐいっとカフスごと沙紀の髪をその手に取った。

そして片手であっさりその絡まっている沙紀の髪を解くと、カフスだけ男性へ投げた。

 

「この程度――」

 

はっと、渇いた笑みを浮かべると、そのまま沙紀を引っ張って歩き始めた。

 

「えっ、あ、あの……っ」

 

沙紀が慌てて、鶴丸と男性を見る。

 

「あ、あの……っ、ありがとうございました!」

 

そう男性にお礼を言うと、そのままずるずると鶴丸に連れていかれてしまったのだ。

男性はというと――唖然としたまま、その場に立ち尽くすしかなかったのだった――。

 

 

 

 

   ****    ****

 

 

 

 

男性と別れた後、鶴丸は問答無用で沙紀の腕を引っ張ったままズンズンと進み始めた。

 

「あ、あのっ、りんさ――」

 

足がもつれつつも、何とか鶴丸に付いていく。

だが、あまりにも鶴丸が早く歩くものだから、何度もこけそうになる。

 

それでも、鶴丸は歩幅を緩めてはくれなかった。

 

怒っているの……?

 

何となく、鶴丸からそんな気配を察するが、沙紀には何故こんなにも鶴丸が怒っているのか分からなかった。

そうこうしていると、控えの間ではなく、見知らぬ通路を歩き始めた。

何処に向かっているのか分からない沙紀が、慌てて口を開く。

 

「り、りんさん……っ、あの、こっちは控えの間の方向では――」

 

「知ってる」

 

底冷えするようなその声音に、沙紀がびくっと肩を震わす。

それ以上、何も言えなかった。

 

そうしていると、ひとつの扉の前に着いた。

鶴丸は、その扉の横のパネルと叩くとあっという間にその扉に鍵を解除してしまった。

そのまま扉を開けると、無理やり沙紀をその部屋の中へと連れて入ると、鍵を掛けてしまった。

 

「……あ、の……」

 

状況が全く掴めない沙紀の声が微かに震えている。

その部屋は、小さなベッドと机、そう――まるで仮眠室の様な場所だった。

 

沙紀が震える手をぎゅっと握りしめる。

 

「りん、さ――――きゃぁ!」

 

恐る恐る、鶴丸の名を呼ぼうとした瞬間、ぐいっ手を引っ張られたかと思うと、そのままどんっと壁際に追いやられた。

 

見上げる様な場所から注がれる冷やかな視線に、沙紀が息を呑む。

 

「りん―――「あの男と何をしていた」

 

「え……?」

 

唐突に、投げかけられた言葉に沙紀が一瞬、その躑躅色の瞳を瞬かせる。

反応に困ていると―――淡々とした声で、

 

「……俺には、「刀」ごときには口出しするなと?」

 

「そ、そんな事、思ってな――――んんっ」

 

それは突然だった。

いきなり、顎を持ち上げられたかと思うと、唇を奪われた。

 

「あ……、の、待っ……っ」

 

何とか逃れようと沙紀がもがくが、女の力で男に敵うはずもなく――。

そのままぐぐっと更に上を向かせられたかと思うと、そのまま角度を変えて何度も口付けされていく。

 

「り、りん、さ……苦っ……」

 

息が出来ない。

それなのに、鶴丸はその口付けをやめてはくれなかった。

 

何とか呼吸しようと口を開けた瞬間、何かが侵入してきた。

その感覚に驚いて沙紀が目を見開く。

 

それは、紛れもない鶴丸の舌だった。

容赦なく沙紀の口腔内を犯していく。

 

「ンン……っ、り、りんさ……、ぁ、はぁ、ん……っ」

 

その舌が苦しくて、沙紀がたまらず声を洩らした。

沙紀はどうしたらいいのか分からず、ただされるがままになっていた。

 

漸く鶴丸が沙紀から顔を離すと、つぅーと銀糸が二人の間を伝った。

その感触にびくっとする沙紀の耳元で、鶴丸が低い声を出す。

 

「きみは――やはり「人」がいいのか」

 

「え……?」

 

なんの、話、を……?

沙紀が困惑していると、どん!と、突然鶴丸が壁を叩いた。

 

「―――答えろ!!」

 

鶴丸のその言葉に、沙紀がびくっと肩を震わす。

 

「…………」

 

だが、鶴丸の質問の意図が分からず、沙紀は答えられなかった。

すると、それを「沙紀の答え」と取ったのか、

鶴丸の金の双眼が、明らかに憎悪の様な怒りの色に染まっていた。

でも、表情は何かに苦しんでいる様にも見える。

 

初めて見る、鶴丸のそれに、沙紀は動揺の色を隠せなかった。

 

何て答えるのが正しいのか――――それが分からない。

 

沙紀は、ただ黙って、鶴丸の言葉を待つしか出来なかった。

 

暫くして、鶴丸がふっと自嘲気味に息を洩らす。

そして、静かに沙紀の頬に手を添えると、悲しげに笑った。

 

沙紀が戸惑っていると、 鶴丸はゆっくりと沙紀の唇に指で触れると、そのままその長い指でなぞった。

 

「そうか――やっぱり、きみも――――……」

 

「え……?」

 

一瞬、何か分かりそうな気がした時だった。

突然鶴丸の手が沙紀の方に伸びてきたかと思うと。そのままぐいっと無理やり胸元の合わせを開かせられた。

 

「りんさ―――」

 

沙紀がその行為を止めようとしたが、それよりも早く鶴丸がぐいっと力任せに襟を引っ張った。

途端に、巫女装束が大きく乱れる。

 

沙紀が、咄嵯に手で押さえようとするが、鶴丸は許してくれなかった。

そして、露わになった白い肌にそのまま口付けてきたのだ。

はだけた胸元に散る紅い華。

 

その痕は、まるで所有印の様にいくつも散らばっていった。

 

その光景に、鶴丸はぎりっと奥歯を噛み締めた。

 

こんなもの――……

 

そう思うと同時に、鶴丸の感情が一気に膨れ上がる。

そして、気付いた時には、その首筋に思いっきり噛み付いていた。

そう――まるで獣のように――――。

 

「…ぅ……っ」

 

その痛みに、沙紀が思わず苦痛の声を上げる。

沙紀のそこには、血が滲む程の傷が出来ていた。

 

それを見て、鶴丸が一瞬ぴくっと反応するが――それは、ほんの数秒だった。

その表情は直ぐに冷淡に戻り、

 

「きみが、いけないんだ」

 

そして、その痕をひとつずつ確かめる様に鶴丸が舌で舐める。

 

「きみは、俺なんかより、「人間」の男の方がいいんだろう?!」

 

「え……、なに、を―――ぁっ!」

 

鶴丸が、ぐいっと沙紀の足を持ち上げたかと思うと、袴の隙間から手を差し入れ、太腿の内側に手を置いた。

びくんっとなる沙紀を無視して、そのまま鶴丸がするりと下着の中に手を入れる。

そこは既に濡れていて、ぴちゃっとした水音が響いた。

 

そのまま鶴丸の長い指が、沙紀の中へと入ってくる――。

くちゅくちゅと中を探るように動かされていくと、

 

「―――あ、ンンっ!」

 

いきなりの刺激に、沙紀の身体が弓なりにしなった。

その動きに合わせて、さらりとした黒髪が揺れる。

 

その扇情的な姿に、鶴丸の動きが激しくなる。

いつの間にか二本目の指も入り、激しく抜き差しを繰り返していた。

 

その度にきゅうっと下腹部が締まる感覚に捕らわれる。

そして、部屋の中に響くその音に羞恥心を煽られていく―――。

 

最早、沙紀はぎゅっと目を閉じて耐えることしか出来なかった。

そんな沙紀を追い詰めるように、鶴丸がさらに追い打ちをかける。

 

鶴丸のもう一方の腕が沙紀の腰に回されると、ぐいっと自分の方へ引き寄せた。

その瞬間――。

ぐいっと強く押し付けられたそれは、明らかに硬く熱いもので――。

 

思わず、沙紀がかぁっとその顔を朱に染めた。

それを見逃さなかった鶴丸が、微かに口角を上げながら沙紀の顔を覗き込む。

 

その瞳には明らかな欲情の色が浮かんでいた。

 

それに気づいた沙紀が、慌てて顔を逸らそうとするが、鶴丸はそれを許さなかった。

顎を掴まれ強引に視線を合わせられると、そのまま深く口づけられた。

 

「ンっ、んん、……ぁ、はぁ、……りん――――っ」

 

それと同時に、中で動いていた指が抜かれると、

次の瞬間、 指とは比べ物にならない質量のものが入ってきた。

 

「――――あ、んんっ!」

 

ぎょとしたのは、沙紀だ。

突然の強い圧迫感に、沙紀が目を見開く。

 

だが、それも束の間だった。

そのまま鶴丸が一気に奥まで貫いてきたのだ。

 

「――――あっ、ああ!!」

 

その衝撃に、沙紀の口から悲鳴の様な声が上がる。

 

だが、それに構うことなく、鶴丸は沙紀の最奥を何度も突いていった。

そのたびに、結合部からは、肉同士がぶつかる卑猥な音が聞こえてくる。

 

その激しさに、沙紀の視界にちかちかと星が飛んだ。

 

「んっ、ぁ……待っ、……ああっ、や、だ、めえええ!」

 

沙紀の唇からは絶え間なく甘い喘ぎ声が漏れていた。

その表情は艶めかしく、無意識に鶴丸自身を締め付けていった。

 

すると、それが伝わったのか、鶴丸が更に抽挿を速めた。

鶴丸の額からも汗が流れ落ちる。

 

それが、ぽたりと沙紀に落ちると、沙紀が微かに身じろいだ。

沙紀は、「はぁ……、はぁ……」と荒い息を繰り返すと、涙の滲んだ瞳で鶴丸を見た。

その潤んだ瞳は、困惑と、恐怖の色に染まっていた。

 

それに気付いた鶴丸が、ふっと自嘲気味に笑う。

そして、沙紀の耳元で囁く様に。

 

「沙紀―――きみは、誰にも渡さないっ。 一生―――俺のものだ」

 

まるで、何かの呪いの言葉のように囁かれたその言葉に、

沙紀が、一瞬驚いた様な顔を見せたが、直ぐに苦しげに眉根を寄せた。

 

彼は何を言っているのだろか……。

沙紀には、鶴丸の言う意図がわからなかった。

 

なぜならば、沙紀はもう鶴丸無しの生など考えられなかったからだ。

それは、前にも伝えた筈なのに――。

 

何故、彼は今になってそう言ってくるのか……。

 

「りんさ、ん、なにか、誤解、が……」

 

そう思うと同時に、沙紀の中でとある記憶が蘇った。

そう――それは、先程の出来事。

 

髪が引っかかった、カフスボタンから髪を解こうと男性が沙紀の目の前で四苦八苦していた。

まさか、それを見て……?

 

でも、彼とは初対面だし、他には何も――。

だが、もしそれが鶴丸を不安にさせたのだとしたら……?

 

その時だった。

 

「誤解? はっ……、そんなもの、もうどうでもいい――――」

 

そう言うと、鶴丸が再び動き出した。

 

「あ、ンン……、だ、だめぇ―――っ」

 

沙紀は、必死に首を振ってそれを止めようとするが、全く聞いてくれない。

 

むしろ、その動きはさらに激しくなっていく。

 

「――――ああっ!」

 

そして、再び限界を迎えた沙紀が、身体を大きく仰け反らせた。

壁際でぐったりする沙紀を、鶴丸はその腕に閉じ込めるながら、自虐的にその顔に笑みを浮かべた。

 

「あれが“誤解”? あんな風に、あの男に近くにいて! 笑って! 結局、きみも「人」だ、「刀」の俺なんて、本当はどうでも――――」

 

「――――っ!!」

 

鶴丸のその言葉に、反射的に沙紀がその躑躅色の瞳で鶴丸を睨みつけた。

 

「―――勝手な事言わないでください!!」

 

反抗的に初めてそう言った沙紀に驚いたかのように、鶴丸がその金の瞳を大きく見開いた。

だが、沙紀は止まらなかった。

 

「私は、私にとってはりんさんが―――「鶴丸国永」が全てなんです!! りんさんの傍を離れる気も、他の誰かの元へ行く気もありませんっ! 貴方が……りんさんが私を“要らないもの”と言わない限り、傍にいます! どうして……どうして、分かって下さらないのですが!? 私の世界は、全て貴方様でいっぱいなのに―――――」

 

涙が零れた。

一度、関を切った涙は止まらず、沙紀の瞳からぽろぽろと涙が零れ落ちる。

その表情は悲しみに歪んでいた。

 

すると、沙紀の言葉を聞いた鶴丸の顔色が変わった。

驚きと喜びと戸惑いが入り混じったような表情だった。

 

だが、それも一瞬だった。

次の瞬間には、その口元には薄い笑みが浮かべていた。

 

「りん――――」

 

その表情の変化を不思議に思いながら、沙紀が鶴丸を見つめていると、突然、中にあったものが引き抜かれていく感覚に捕らわれた。

 

だが、それも束の間だった。

 

次の瞬間には、再び最奥まで一気に突き上げられていた。

 

「あ、ああ、んンっ、は……、ああっ!! り、ん――――っ」

 

しかも、今度は容赦のない激しい抽挿、沙紀の口から悲鳴のような声が上がった。

何度も何度も何度も――。

奥深くまで何度も何度も何度も何度も何度も何度も。

 

気が遠くなるほどの快楽を与えられ続けた沙紀の思考は、既にまともに機能していなかった。

それは、沙紀自身もわかっていた。

だがそれでも止める事は出来なかった。

 

沙紀の頭の中には、たった一つしかなかったからだ。

――愛しいこの人のことだけ。

 

「りん、さ……、ぁ、ああ……っ」

 

だから、沙紀はただひたすらに鶴丸の名前を呼び続けた。

まるで、その存在を確かめるように――その背中に腕を回すと、きゅっと抱きついたのだ。

 

その行動に、鶴丸の心臓が大きく跳ねた。

 

だが、その感情の正体が何なのか分からず、 鶴丸は戸惑った。

すると、それに気づいたのか……沙紀がふわりとその顔に微笑みを浮かべた。

 

そして、そのままぎゅっと鶴丸の首筋に自分の顔をうずくめたのだ。

 

それがどういう意味かは分からない。

ただ、首元にかかる吐息がやたら熱く感じた。

 

――――どくん

 

それと同時に、今までとは比べ物にならない程の大きな鼓動が、鶴丸の胸を打った。

 

それは、一体何を意味しているのか――。

鶴丸にも理解できなかった。

 

だが、今はそんなことはどうでも良かった。

それよりも、目の前にいる彼女の事の方が重要だったからだ。

 

今、彼女は何と言っただろうか……。

 

『私は、私にとってはりんさんが―――「鶴丸国永」が全てなんです!! りんさんの傍を離れる気も、他の誰かの元へ行く気もありませんっ! 貴方が……りんさんが私を“要らないもの”と言わない限り、傍にいます! どうして……どうして、分かって下さらないのですが!? 私の世界は、全て貴方様でいっぱいなのに―――――』

 

「人」よりも「刀」の俺の方がいい、だと?

そんな事、ある筈が――――。

 

脳裏に浮かぶ。

いつも自分を見て嬉しそうに微笑む彼女の顔が――。

彼女は自分の言葉や行動に、一喜一憂する彼女が愛おしくて、嬉しかった。

 

“必要”とされているのだと――実感できた。

 

でも、今は――――。

 

先程の光景が頭から離れない。

「人」である男に微笑みかける彼女の姿が――――。

瞬間思った、「刀」の俺ではなく、「人」のあいつを選んだのか、と。

 

そう思った瞬間、何もかもぐちゃぐちゃに壊してやりたい気分になった。

だから、俺は。

どうせ、壊すのならば俺の手で――。

 

その時だった。不意に沙紀の手が伸びてきたかと思うと、その唇が鶴丸のそれに重なった。

最初は触れるだけの優しい口付けだったが、次第に深いものに変わっていく。

 

その舌使いは決して上手いものではなかったが、鶴丸にとっては十分過ぎる程の破壊力を持っていた。

そして、長い口づけの後、名残惜しそうに沙紀の唇が離れた。

 

鶴丸が、至近距離にある沙紀の顔を見ると、そこには幸せそうな笑顔があった。

 

それは、鶴丸だけにいつも見せてくれる沙紀の満面の笑みだった。

それを見た瞬間、鶴丸の中で何かが壊れる音がした。

 

「……沙紀、……」

 

もう、限界だった。

沙紀の細い腰を掴むと、さらに激しく揺さぶった。

己の欲望を叩きつけるように―――。

 

そして、沙紀もまたそれに応えるかのように、必死に鶴丸にしがみついた。

互いの汗が混ざり合い、部屋中に淫靡な水音だけが響き渡る。

それはまるで、互いの存在を確かめ合うかのようで、二人はひたすらお互いを求め合った。

 

やがて、沙紀が再び絶頂を迎えると、その締めつけによって鶴丸も同時に果てた。

 

そのまま崩れ落ちるようにして床に座り込むと、鶴丸は荒くなった呼吸を整えながら、沙紀を抱きしめた。

沙紀もその身体をそっと抱き返えす。

 

「沙紀……俺は「刀」なんだ……」

 

「りんさん……?」

 

「……俺は今でも思ってる。きみは俺を選んでくれたが……もし、きみが「人」の男を望むのなら、俺は身を引くべきだと」

 

「それは――――」

 

沙紀がその言葉を否定する様に、発しようとした時だった。

鶴丸は自信の頭を押さえ、

 

「でも、駄目だった。 実際目の前で、きみが他の「人」の男に笑い掛けるのをみたら、腸が煮え返えりそうになった。胸のあたりから、黒くて濁った様な気持ちが溢れてきて……抑えが利かなかった」

 

「…………」

 

「だから、沙紀が他の誰かのものになる位なら、いっそ俺の手で壊してしまいたい――と。そう思ってしまったんだ」

 

だから――と鶴丸は沙紀を離すと、その頬に手を添えて真っ直ぐに見つめた。

その金の瞳には、悲しさと切なさが入り混じっていた。

だが、その奥には確かな愛情の色もあった。

 

「りんさん……」

 

沙紀は、その眼差しに吸い込まれるような感覚を覚えた。

 

ふと、伸びてきた鶴丸の手が沙紀を優しく包み込むと瞼に口付けしていった。

 

「……っ、り、んさ……」

 

突然の事に、沙紀がかぁっと恥ずかしそうに顔を朱に染める。

そっと目を開けると、今度は唇に微かな感触があった。

 

「あ……」

 

鶴丸が少しだけ身を乗り出すと、二人の距離が一気に縮まる。

そして、再び唇が重なると、鶴丸は沙紀の背中を支えながらゆっくりと押し倒した。

そのまま覆い被さると、何度も角度を変えながら沙紀の唇を貪っていく。

 

「……ぁ、り、りんさ……っ、ンン、は、ぁ……」

 

途切れ途切れに聞こえる沙紀の吐息が、鶴丸の思考を支配していくかの様な、錯覚を覚える。

鶴丸の手がそっと、沙紀の太腿をなぞるように撫でいった。

 

「ンンっ……、ぁ……、」

 

すると、沙紀の口から甘い声が上がる。

 

今更かもしれない。

さっきまで自分は彼女に酷い事をしてしまった。

 

でも、もし許されるならば――――。

 

「沙紀……」

 

名を呼ばれ、沙紀がゆっくりと微笑む。

まるで、鶴丸の全てを受け入れると言っているかの様に――。

 

「……馬鹿だな、きみは」

 

そう呟くと、鶴丸は沙紀の首筋に顔を埋めていった。

そして、きつく吸い上げると、そこに紅い花びらが咲く。

 

それはまるで、沙紀が自分のものであるという証のようにも見えた。

それが嬉しくて、鶴丸は再び首元や鎖骨にも口付けを落としていった。

その度に沙紀の身体が小さく震える。

 

そして、また一つ花を咲かせていく――そんな事を繰り返しているうちに、いつの間にか沙紀の白い肌の上にいくつもの赤い華が咲き乱れていた。

 

「あ……」

 

沙紀が恥ずかしそうに、脱がされていた衣を手繰り寄せる。

すると、不意に鶴丸がその手を掴んだ。

 

「り、りんさ……んっ」

 

そして、そのまま彼女に口付けする。

最初は軽く。そして、二度三度と繰り返すうちに熱のこもった様な口づけへと変わっていく。

やがて、舌と舌を絡め合わせる濃厚なものに変わる頃には、沙紀の瞳は完全に蕩けてしまっていた。

 

「ふ、ぁ……ンン、りん、さ……っ、ぁ……」

 

舌を甘噛みし、歯列をなぞる。

そして、最後にもう一度舌を強く吸ってから解放してやる。

 

互いの舌先から銀糸が伸びて、プツンと切れた。

 

鶴丸が沙紀を見つめると、そこには頬を上気させながら潤んだ瞳で見つめ返す沙紀の姿があった。

 

その姿があまりにも艶っぽくて、鶴丸は自分の理性が大きく揺らぐのを感じた。

でも――もう、遅い――――

 

そのまま、彼女の耳たぶを食み、熱い吐息を吹きかける。

 

「……っ……」

 

すると、沙紀はぴくんっと身体を震わせた。

そのまま舌先で輪郭をなぞるように舐め上げれば、沙紀が小さく喘いだ。

 

そのまま穴の中に舌を差し入れながら、反対の手で乳房を揉み解していく。

 

「ぁ……んっ、は、ぁ……ンンっ」

 

時折、頂を摘まんでは弾いてを繰り返せば、沙紀の身体が小刻みに揺れた。

そして、片方の手は下肢の方へ伸ばしていき、先ほどの行為で蜜が濡れそぼっている秘部に触れた。

そこは、指が触れただけでくちゅ…と水音を立てた。

 

「沙紀―――」

 

「……え? あっ、ンン……、ぁあ」

 

割れ目を何度か往復させると、さらに奥から愛液が流れ出してくる。

それを掬い取り、陰核に触れた。

 

「――――ああっ!!」

 

途端、沙紀の腰が跳ね上がる。

同時に、沙紀の口から一際大きな声が上がった。

 

その反応を見て、鶴丸は嬉しそうに笑うとそこばかりを攻め立て始めた。

親指と人差し指で挟んで擦ったり、掬い円を描くように捏ねくり回す。

 

「あ、ああっ、ン……っ、は、ぁ……やっ、そこ、は―――ああっ!」

 

その度、沙紀の口から悲鳴のような声が上がる。

しかし、その声はどこか甘くて、まるで求められてるようにも聞こえた。

だから、鶴丸は更に執拗にそこを責め立てた。

 

「あ、ああ―――っ!!」

 

そうしている内に、沙紀の身体が痙攣したかのように大きく震えたかと思うと、次の瞬間には達していた。

肩を上下させて呼吸を整える沙紀を見ながら、鶴丸はそっと沙紀の脚に手を伸ばした。

 

「あっ……」

 

沙紀がそれに気づき、慌てて鶴丸の手を押さえようと手を伸ばしかけるが――一歩遅かった。

鶴丸の手が沙紀の脚の間に入ると、そのまま脚を広げられた。

 

そして、その間に鶴丸が割り込んでくると、沙紀の秘部に顔を近づけていく。

 

「り、りんさ――」

 

その行動の意味する事を悟った沙紀が、顔を真っ赤にして慌てるが、鶴丸はそのままそこへ口付けると、溢れ出る愛液を飲み込んだ。

そして、そのまま舌を使って膣内を犯していく。

 

「あっ! やっ、だ、だめえぇ……っ、んぁ、は、ぁ、ああん……っ」

 

すると、沙紀の口から甘い声が漏れ出した。

鶴丸の舌が動く度に、沙紀の口からは断続的に声が上がる。

そして、再び絶頂を迎えると、沙紀の身体が弓なりに反り上がった。

 

すると、鶴丸はゆっくりと顔を上げた。

そして、沙紀を見下ろす。

 

沙紀は、肩で息をしながら視界が定まらないのか、顔を上気させたままぐったりしていた。

 

その姿に満足そうに笑みを浮かべると、鶴丸は彼女の上に覆い被さった。

そして、そのまま唇を重ねる。

 

最初は触れるだけの口付けだったが、次第にそれは深いものへと変わっていった。

 

「んっ……ぁ……、は、ぁ……、ンン……」

 

鶴丸の腕の中で、沙紀が身じろぎする。

それに応える様に、鶴丸が腕の力を強めると、沙紀もそれに応える様に鶴丸の背に手を回した。

 

やがて、どちらからとも言えずに離れた二人は、互いに見つめ合った。

互いの目に映る己の姿が見える。

 

「沙紀――」

 

甘く名を呼ばれ、沙紀が頬を朱に染めながら「はい……」と答えた。

その返事を聞くと、鶴丸は沙紀の額に優しく口付けした。

 

そして、そっと沙紀を抱きしめると耳元で囁く様に。

 

「――きみを……きみだけだ。 俺が愛しているのは沙紀だけなんだ……だから―――」

 

“ずっと、その命尽きても傍に置いて欲しい”

 

そう聞こえた気がした。

すると、沙紀が嬉しそうに微笑むと、そっと鶴丸の髪に触れて

 

「私もです……、ずっとお傍に――」

 

そう答えると、鶴丸が嬉しそうに笑った。

 

お互いに、どちらからともなく唇を合わせる。

二度三度と重ねていく内に、どんどん心臓が早鐘に様に鳴り響くのを感じた。

 

「沙紀……」

 

「んっ、りん、さ……っ」

 

互いに求め合う様に口付けを何度も交わす。

 

そして、鶴丸が再び沙紀の上に身体を沈めた。

そのまま首筋に舌を這わせながら胸を揉みしだいていく。

既にそこは固く尖っていて、鶴丸の指先が掠めるだけでぴくんっと沙紀の身体が大きく跳ねた。

 

そのまま頂を口に含むと、舌先で転がしながら吸い上げる。

 

「あ、あぁ……、っぁ、は……、ンンっ」

 

もう片方の手では、指先で摘まんだり押し潰したりを繰り返していると、沙紀の口からは絶えず喘ぎ声が上がった。

そして、またすぐに沙紀は限界を迎えてしまった。

 

それを見ていた鶴丸は、ふっと口角を上げると今度は下肢の方へ手を伸ばす。

 

先ほどよりも更に濡れそぼっている秘部に触れると、沙紀の腰が小さく震えた。

指先を埋めるように沈めていくと、中は熱くて溶けてしまいそうな程だった。

 

その心地よさにうっとりしながらも、鶴丸はそのままそっと抽挿を始めた。

初めはゆっくり抜き差ししていたが、段々激しくなっていく。

 

「ぁ……、ああ、ンっ……は、ぁ……り、りんさ……、ああっ」

 

それに伴い水音も大きくなっていき、それに比例して沙紀の声も大きくなった。

沙紀が何度目か分からない絶頂を迎えた時、鶴丸は漸く自分のものを宛がって一気に挿入した。

 

「あっ―――!!」

 

その衝撃に、一瞬沙紀の顔が苦痛に歪められたが、それも束の間のことだった。

 

沙紀の膣内は狭く、それでいて柔らかく包み込むような感触に、鶴丸はすぐに持っていかれそうになる感覚を覚えた。

何とか耐えて、そのまま律動を始める。

 

最初は緩やかに動いていたが、徐々に早くなる。

沙紀の膣内からは、愛液が止めどなく溢れてきて、それが潤滑油となり動きやすくなった。

沙紀の口からは、艶やかな声が上がり続けている。

 

「沙紀……っ」

 

「ああ……、は、ぁ……ぁあンン……、はぁ、ぁ……っ」

 

水音と二人の声が共鳴するかのように、部屋の中に響き渡る。

 

沙紀は、鶴丸の首に腕を回すと自ら口付けた。

 

「んんっ、……りん、さ……っ」

 

「沙紀―――」

 

それに応えようと、鶴丸も舌を差し入れ絡ませる。

次第に口付けが深くなり、息苦しさを感じながらもそれでもお互いを求め合い続けた。

 

やがて、鶴丸は沙紀の最奥まで貫いた。

 

「あ、はンン……っ、ぁ、はぁ……ンっ!」

 

子宮口を突かれる度に、沙紀は甲高い声で鳴き続ける。

そして

 

「――――ああっ!!」

 

一際大きく突き上げた瞬間、沙紀は身体を大きく痙攣させて達してしまった。

それと同時に、鶴丸もまた絶頂を迎える。

二人同時に果てると、そのまま倒れこむようにして重なり合った。

 

暫くの間、余韻に浸っていた。

 

それから、鶴丸は名残惜しそうに自身を引き抜くと、そのまま沙紀を優しく抱きしめるとそっと髪を撫でる。

すると、沙紀が甘える様に擦り寄ってきた。

 

そんな仕草が可愛らしくて、鶴丸はくすっと笑うと優しく頭を撫でる。

すると、少し落ち着いたのか沙紀が少しだけ顔を上げる。

その表情は幸せそうで、見ているこっちが恥ずかしかしくなるくらいだ。

 

だから、鶴丸は照れ隠しに誤魔化す様に彼女の頬に口付けた。

すると、沙紀はくすっと笑って同じように唇を寄せてくる。

そうやってじゃれる様なやり取りを何度か繰り返した後、突然鶴丸が「あ」と声を洩らした

 

「りんさん……?」

 

どうしたのかと、沙紀がちょこんと首を傾げる。

その仕草が余りにも愛らしくて、思わず抱きしめたくなるが――それどころではない事実に今気づいた。

 

鶴丸は口元を押さえながら、視線泳がせつつ

 

「あ、あ~いや。控えの間に国広待たせてるんだったなぁっと……」

 

「あ……」

 

言われて沙紀も、それを思い出した。

あれからどのくらい時間が経っているのだろうか?

 

その後、二人して慌てて身支度を整えると、山姥切国広が一人残っていた控えの間に行った。

すると、山姥切国広は全てを察しているかのように「はぁ~~~~~~~」と、重い溜息を付くと、

 

「……あんた達は、時と場所を考えた方がいいと思うぞ?」

 

冷え冷えとした声で、そう言うとさっさと転移装置に方に向かい始めた。

 

「国広、悪かったよ。今度お前の好きな物おごってやるから」

 

鶴丸のその言葉に、ぴくっと山姥切国広が反応する。

 

「……好きな、もの、だと?」

 

珍しくそれに反応した山姥切国広に鶴丸が「お」と声を洩らすが―――。

山姥切国広はすいっと鶴丸の横を歩いていた沙紀の方に行き。

そのままぽんっと、沙紀の肩に手を置くと、

 

「……だったら、一日こいつを借りる」

 

「はぁ!?」

 

それに対して鶴丸が半切れ状態で返事をして却下するのと、山姥切国広が淡々と言い返すやり取りを見ていて、沙紀が思わず笑ってしまったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テーマ「嫉妬」

でーす笑 別で書く書く予定が……

なぜか、真反対になったので、再チャレした

 

 

2023.06.13