花薄雪ノ抄
     ~鈴蘭編~

 

◆ シンドバッド 「Beyond tha Dream」

(マギ夢 「CRYSTAL GATE-The Goddess of Light-」 より)

 

 

―――シンドリア王宮・紫獅塔

 

 

その日、エリスティアは庭にあるキオスクで、ピスティや、ヤムライハとお茶をしていた。ピスティおすすめのチャイに、宮廷料理人が準備してくれたバクラヴァや、バスブーサ、ガザル・ベイルートやデーツなどに舌を包む。

ピスティが、ふと、何かを思い出したかの様に、チャイに宝石の様な赤い柘榴の砂糖漬けを入れながら、ぼやいた。

 

「ねえ、エリスー。今、私の彼氏たちの間で、持ち切りの話があるんだよねぇ~」

 

「……? 持ち切りの話?」

 

ピスティの言わんとする事が解らず、エリスティアが首を傾げる。すると、ピスティは にやにやしながら、詰め寄って来た。その距離が余りにも近すぎて、思わずエリスティアが後退る。

 

「あ、あの……ピスティ……?」

 

「ふふふふー」

 

ピスティは、思わせぶりな笑みを浮かべる。すると、それを見ていたヤムライハが小さく息を吐き、

 

「ピスティ、少し落ち着いたら? 持ち切りの話って例の噂でしょう?」

 

と、何故かヤムライハも、何か知ってる風な感じで話す。そんな二人の様子に、エリスティアは、そのアクアマリンの瞳を瞬かせた。だが、ピスティはヤムライハの言葉に、食いつくように、

 

「え~~~、だってヤムも気になるでしょう?」

 

「それは――」

 

と、ちらりと、ヤムライハまでエリスティアの方を見た。その視線が、あまりにも何か期待に満ちた眼差しで、エリスティアがたじろぐ。

 

「あ、あの、二人とも……? そ、その噂話って一体……」

 

聞いてしまいたい様な、聞いてはいけない様な。そんな相反する気持ちが心の中で交差する。しかし、そうとは知らないピスティとヤムライハは、お互い顔を見合わせた後、こくりと頷いた。そして、二人してエリスティアの方を見ると――。

 

「ごめんね、エリス。実は私もいつなのか気になってたの」

 

「ほら~ヤムも気になってたって! で、で? いつのなの~? エリス~!!」

 

思わず「何が?」と返したくなるその質問に、エリスティアは「あの……」と口籠もった。だが、そんな事では二人は引き下がらなかった。特にヤムライハは少し悲しそうな目をして、

 

「エリス……私達、親友よね? 相談ぐらいしてくれたって……」

 

「え……!? いや、あの……」

 

「エリス~~、私達、友達でしょー! こういう秘密はよくないと思うの!!」」

 

「ひ、秘密?」

 

ピスティまでもそう言い出し、エリスティアは、もう訳が解らなかった。一体、二人は何の話をしているのだろうか。そう聞きたいのに、何処から聞いてよいのか、最早エリスティアには判断付かなかった。

 

「あ、あの、ね、二人とも……落ち着いて聞いて欲しいのだけれど――本当に話が見えないの。一体何のことを言っているの?」

 

エリスティアがそこまで言った時だった。ピスティと、ヤムライハが再び顔を見合わせた。そして、何かこそこそと相談し始める。だが、エリスティアには、本当に解らなかったのだ。でも、なにやら何かが噂になっているらしい、という事は察した。しかも、それが自分に関する事だと。

 

私、何かやらかしたかしら……?

 

そう思って、ここ最近を思い出すが、これといって特に何も浮かばなかった。すると、ピスティがそわそわしたように、叫んだ。

 

「も~~~~~!! じれったい!! “予定日”よ!!」

 

「よ……予定日?」

 

……って、何の?

何か、重要な祭典や、式典でもあっただろうか? もしや、自分の見落としているスケジュールでも……?

そう思って、エリスティアが考え込んでしまう。その様子を見たヤムライハが、何かを察した様に、はっとして、

 

「もしかして、エリス……何も聞いていないの?」

 

「え? 聞くって……」

 

誰に?

と、思うが、その前にヤムライハが口を開いた。

 

「だから、侍医からとか、その……シンドバッド王からとか……」

 

「え……? シン?」

 

何故、そこにシンドバッドの名前が出てくるのだろうか? それに、侍医も何の関係が?

という、疑問がエリスティアの頭の中でいっぱいになる。特に最近侍医に世話になるような事は、なかった――訳ではないが……。二ヶ月前くらいだっただろうか。あの日は、シンドバッドに明け方まで抱かれ続け、余りにも疲労が激しく、それで、起き上がれなくなっただけだ。シンドバッドが念の為にと、侍医を呼んだが、特にこれといって何も言われていない。

 

「何も……聞いてないけれど……」

 

もしかして、自分の身体に何か病気でもあったのだろうか? それを、シンドバッドや侍医が隠している……?

いや、それだとピスティの言う“予定日”とは何を指しているのか分からなくなる。エリスティアが本格的に考え込んでしまったのを見て、ピスティが「う~ん」と唸る。

 

「エリスは知らないって事? こんな大事な事なのに?」

 

「でも、この噂は王宮でだいぶん広まってるわよね?」

 

「広まってる~。私の彼氏たちも“間違いない!”って言ってたしー」

 

そう言って、ピスティとヤムライハが二人して首を捻る。だが、エリスティアはそれ所ではなかった。もしや自分は何か病気に掛かってしまったのではと不安になる。ピスティの言う“予定日”とは、“死期”の事を指しているのではないだろうか。そう考えると、辻褄が合う気がした。

シンドバッドと侍医がエリスティアに秘密にしている事。ピスティの言う“予定日”。それは全て――。

 

私……、死ぬ、の? 何の役目もまだ果たせていないのに――このまま……。

 

じわりと、今にも浮かびそうな涙を、エリスティアは必死に堪えた。ここで泣く訳にはいかない。きっと、二人に気を遣わせてしまう。そう思うと、絶対に泣けなかった。

 

「あの……、正直に話して欲しいんだけれど。その……“予定の日”っていつのなの?」

 

そうエリスティアが口にした途端、ピスティとヤムライハが二人して「え?」と答えた。

 

「え、ええ? “予定日”の事? んんー正確なのは私達じゃ分かんないよねぇ? ヤム」

 

「そうねえ……、普通なら七ヶ月か、八ヶ月じゃないかしら?」

 

七ヶ月か、八ヶ月……。一年もないのか。まさか、自分の死期がそんなに近かったとは思わず、エリスティアが沈んだ顔になりそうになる。でも、ここで気落ちした素振りをすれば、余計に気を遣わせてしまうかもしれない。エリスティアは精一杯の虚勢を張ると、「そう……」とだけ答えた。

そんなエリスティアに、ヤムライハが何か気付いたのか、そっとエリスティアの顔を覗き込み。

 

「エリス、どうかしたの? どうしてそんな悲しそうな顔をしているの? おめでたい話なのに――」

 

「おめ……でたい、はな、し……?」

 

え? どういう事だろうか? 自分が死病に掛かっているという話では無いのだろうか? なのに、「おめでたい」だなんて――。

思わず、ぎゅっとテーブルの下の手でドレスを握り締めてしまう。すると、ピスティが、うんうんと頷きながら、

 

「そうよ~めでたい話よ! だって、ついに!! 王サマにお世継ぎが生まれるんだから!!!」

 

 

 

 

「…………え……」

 

 

 

 

世、継ぎ……? シンに……?

 

ピスティのその言葉を聞いた瞬間、エリスティアは頭を鈍器で殴られたかのような、感覚に囚われた。シンドバッドの世継ぎ――それは、彼の子であるという事だ。だが、エリスティアには身籠った覚えはない。という事は――。

 

「……」

 

言葉が出ない。胸が抉られたかのように痛い。

 

 

“ワタシではない、ダレかが、シンドバッドのコを、ミゴモッタ”

 

 

その事実が、エリスティアに重く圧し掛かった。でも……エリスティアにはそれを止める権利も、責める権利も無かった。いつも、自分が彼に言っていた事だ。自分はシンドバッドの妻にはなれないと、同じ時間は歩めないのだと――自分で断ったのだ。

そう――だから、何度も、隣国の姫などが来賓で来た時、彼と会わせようともした。それでも、シンドバッドは、常にエリスティアを選んでくれていた。そんな彼の言葉に、甘えていたのも事実だ。でも、いつかはこのシンドリア王国の為に、世継ぎが必要だと思った。だから……。

そう、頭では解っていた。理解――したつもりだった。でも……それが現実となると、こんなにも、苦しい……。彼の手が、他の女性に触れたかと思うと、醜い嫉妬心に煽られる。

そんな資格、自分には無いのに――。

 

エリスティアは、ぎゅっと唇を噛み締めると、にっこりと無理矢理笑顔を作った。

 

「そう――それは良かったわ。それで、お相手はどこのご令嬢かしら? あ、もしかして以前来賓で来られたラチア国の――」

 

と、エリスティアが言った時だった。ピスティとヤムライハが二人して「え?」と、声を上げた。

 

「えっとぉ、エリス? 何言ってんの?」

 

「ちょ、ちょっと待って! エリス、何か誤解してない?!」

 

慌てて二人が口を開くが、エリスティアはそのまま、

 

「私は、もう一年も生きられないのでしょう? でも、良かった。国の為にも、シンの為にも、世継ぎが絶対必要だし、これで私も安心して――」

 

 

 

「ちょ―――――と、待ったあああ!!!!」

 

 

 

エリスティアが言い終わる前に、ピスティの大きな声が辺り一帯に響いた。その声が余りにも大きく、エリスティアが、きょとんっとする。

 

「あの、ピスティ?」

 

エリスティアが、驚いてその瞳を瞬かせていると、がしぃ! と、突然ピスティがその手を両手で掴んできた。

 

「エリス! 違うよ! 違う違う!!」

 

「え、違うって……何が? でも、ヤムが言ってたじゃない。私の死期は、後七ヶ月か、八ヶ月だって――」

 

そこまで言った時だった。ヤムライハが慌てて立ち上がって、エリスティアのもう片方の手を掴んだ。

 

「違うわよ! “予定日”の話をしたの! どうして、エリスの死期だなんて勘違い――」

 

「え? あの、でも、侍医とシンが私に内緒にしてるんでしょう? それは、私が何かの病期で……」

 

「身籠る事は、“病気”じゃないわ!!」

 

「え……?」

 

身籠ったのは他の女性の話では無いのだろうか。それと、侍医とシンドバッドが、エリスティアに内緒にしていた件と、どう関係が? 話の繋がりが、いまいち見えてこない。

エリスティアが、何度も首を傾げていると、ヤムライハが「はぁ……」と溜息を洩らしながら、

 

「もう、こういう事は、はっきり言った方が良いと思うの。ねえ、ピスティ、じらすと余計にややこしい方向になりそうな気がするわ」

 

「う~ん、だねぇ~。もうこうなったら、ストレートに聞いちゃお! ずばり、エリスに聞きます! 王サマとの御子の出産予定日はいつなの!?」

 

 

…………

…………………

………………………

 

「はい……?」

 

シンと、私の御子の出産予定日? 

 

「………………あの……話が、よく……見えないのですが……」

 

何処から何故、そんな話に!? 侍医と、シンドバッドの内緒の話は!? それに、世継ぎは、別の女性とでは??

逆の意味で、思考が付いていかず、エリスティアは混乱していた。そんなエリスティア見て、ピスティとヤムライハが顔を見合わす。

 

「えっとねー」

 

ピスティの話だとこうだった。

二ヶ月前――シンドバッドとエリスティアの寝室の前で、侍医とシンドバッドが神妙な顔で話していたのを、ピスティの彼氏の一人が見たという。侍医はエリスティアに、「滋養のあるものを……」と言ったり、「お身体に負担が……」などと言っていたりしたという。

そこで、その彼氏はピーンと来たらしい。エリスティアが身籠ったのでは!? と。そして、あれよあれよという間に、その噂は王宮内に広まったのだという。

 

「……」

 

その話を聞いた瞬間、エリスティアは頭を抱えていた。とどのつまり、全て勘違いなのだ。侍医が「滋養」や「身体に負担」と言っていたのは、単に毎夜シンドバッドの相手をしているエリスティアを気遣っての事であり、別に、身籠った訳ではない。そして、エリスティアも病気でもなんでもなく、単なる「疲労」。

なので、全て、その噂自体が真実では無いのだ。

 

その話を、ピスティとヤムライハに説明すると、「えええええ!!?」という声と共に、「残念」と何故か言われた。

 

「だから、あの日は、少しその……疲れて動けなかっただけで、何も無いのよ……。その、間違っても身籠ったりしてないから――」

 

そう伝えたのだが……。

 

「でもさーこの噂、結構城下まで広がってるっていう話だよ?」

 

「いや、そう言われましても……」

 

困る。としか、言いようがない。実際、身籠ってないし、身籠る予定もないのだ。かといって、いちいち説明して回るのも、内容が内容なだけに恥ずかしい。

エリスティアが困った様に俯いていると、ピスティが何か名案でも浮かんだという様に、「あ!」と声を上げたかと思うと……。

 

「だったらさ、いっそ事実にしちゃえば!?」

 

「え……?」

 

「ピスティ、まさか……っ!」

 

ヤムライハが何かに気付き、はっとする。すると、ピスティは「ふふふふふ」と笑いながら、

 

「このピスティ様にまっかせなさーい!」

 

と言ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

*** ***

 

 

 

 

 

 

 

 

――――その夜・紫獅塔 寝室前の扉

 

 

 

「……うう」

 

エリスティアは、何故かガウンを着たまま、寝室の扉の前で立ち往生していた。中に入ればいつも通りシンドバッドがいるだろう。

あの後――何故かピスティに連行されたハマムで、侍女に丹念に身体を洗われ、念入りに香油でマッサージされ、髪も梳かされた。そして、胸元と背中が大胆に開いた夜着を着せられたのだ。

こんな格好なんて、まるでエリスティアから誘っているようで、恥かしくて仕方がなかった。こっそり着替えようにも、タイミングもなく、そして――今に至る。

 

どうしよう……、いっその事今日はヤムの部屋に泊めてもらう……?

そう思って、踵を返そうとした時だった。

 

「エリス?」

 

突然部屋の扉が開いて、シンドバッドが出てきた。

 

「あ、えっと……」

 

エリスティアが、かぁ……と頬を赤く染め、視線を逸らす。すると、シンドバッドが何かに気付いたかのように、そっと、エリスティアの首元に鼻を寄せた。

 

「ちょっ……、シ、シン……っ」

 

突然のシンドバッドの行為に、エリスティアが慌てて手で押し返そうとする。しかし、いつの間にか、腰に手を回されており、びくともしなかった。シンドバッドは悪びれた様子ひとつ見せずに、くすっと笑みを浮かべると、

 

「今日は、違う香油なんだな」

 

「そ、それは……」

 

まさか、そんなあっさり見破られるとは思わずエリスティアが困惑していると、シンドバッドに「早く部屋に入れ、廊下だと寒いだろう?」と言って、有無を言わさず部屋の中に入れられてしまった。そして、そのままシンドバッドの手であっさり着ていた、ガウンを脱がされてしまう。

エリスティアのいつもとは違う夜着を見た瞬間、シンドバッドが嬉しそうに声を洩らした。

 

「どうしたんだ? 今日はやけに色っぽいな。俺好みだ。――誘っているのか?」

 

そう言ったかと思うと、さらりと、優しくエリスティアの髪を撫でた。その手が余りにも優しすぎて、思わずエリスティアが息を吞む。するとシンドバッドが、そのままエリスティアの腰に手を回すと、そのまま自身の方へと引き寄せた。ベッドに座るシンドンバッドに、寄り掛かるかのように膝を突く形になり、スプリングがぎし……と、軋む音を立てる。

 

「シン……」

 

知らず、熱の籠もったような声になり、エリスティアは自分がどうしたいのか、分からなくなった。拒みたいのか、受け入れたいのか――どちらなのか。

でも――昼間、ピスティの「シンドバッドの世継ぎが出来た」という言葉を聞いた時、胸が酷く痛いんだ。渡したくないと――他の誰にも、この人を渡したくない。そう思う、醜い感情が生まれた。自分はシンドバッドからの求婚を断ったのに、それでも、他の女性には渡したくないなんて、なんておこがましい。

そんな資格など、ないのに。それでも――この人の唯一の人でありたいと、そう思ってしまう。矛盾していて、そして、真黒な醜い感情。

 

「シン……私、貴方を――誰にも渡したくない。私だけを、見ていて欲しいの……」

 

そう言った瞬間、そっとエリスティアはシンドバッドの頬に手を添えると、そのまま口付けた。触れるだけの口付け。けれど、エリスティアにとっては精一杯のものだった。唇が離れると、エリスティアが恥ずかしげに視線を揺らす。シンドバッドは驚いたように目を見開いていたが、やがてその目を細めた。

 

「嬉しいよ、エリス――お前がそう思ってくれていて」

 

そう囁いたかと思うと、シンドバッドがそのままエリスティアの腰を掻き抱いたかと思うと、その唇を奪った。何度も角度を変えながら唇を啄まれ、舌を絡まされる。

 

「……っ、ん、ぁ……シ、ン……っ」

 

その度にぴちゃ……と厭らしい水音が響き渡り、それがエリスティアの羞恥心を煽った。そして唇が離れる頃には、既にエリスティアは蕩けきったような顔をしていた。頬は上気し、夜着の隙間から見える肌は仄かに色付いている。

シンドバッドはそんなエリスティアを見上げると、笑みを浮かべたまま、そっと彼女の夜着の胸元に手をかけた。そのまま合わせ目を開き、露になった胸元へと顔を埋める。そしてそのまま鎖骨の辺りに赤い痕を残すと、次いで胸の突起を口に含んだ。

 

「……ぁっ、ンン……は、ぁ……ぁあ、ん……」

 

そしてそのまま飴玉のように口の中で転がされ、エリスティアがぴくんと身体を跳ねさせる。もう片方の腕で片方の胸を揉まれると、エリスティアの口から甘い吐息が漏れた。シンドバッドは暫く片方の胸への愛撫を続けた後、そっと下へと手を這わせた。そのままエリスティアの秘部に指を這わすと、くちゅ……と淫らな水音と共に、ぬるりとした蜜が絡みついた。

 

「ん……ぁ……っ」

 

ぴくんっと、エリスティアの肩が揺れる。それに気をよくしたかのように、シンドバッドは笑みを深めると、そのままくぷり……と指を挿入してきた。そして中を押し広げるように動かされると、エリスティアの口から一際甘い声が洩れた。

指の動きはそのままに、空いている手で胸の突起を摘まむように愛撫する。するとエリスティアの身体がびくんと跳ね上がった。

 

「……は、ぁあ……ン……ゃ……っ、ぁ……」

 

そのままくちゅくちゅと何度も中をかき回され、時折奥深くまで挿入されては抜かれるの繰り返しだった。その度にエリスティアの口から嬌声が洩れる。

 

「あ……っ、ぁン……っ、や、シン……も、ぅ……」

 

エリスティアが限界を訴えると、シンドバッドは「一度達しておくか?」と言って指を引き抜くと、そのままエリスティアをベッドに横たえた。そして彼女の足の間に顔を埋めると、そのまま舌で舐め始めたのだ。

 

「……ゃ、あぁあっ……! ん、ぁあ……っ」

 

突然敏感な花芽を舐め上げられて、エリスティアの腰が浮く。そのまま何度も舐められ、甘噛みされる度にエリスティアの身体が跳ね上がった。同時に中を舌で愛撫され、感じる箇所を刺激されてはエリスティアの口から嬌声が洩れる。

そのまま何度も絶頂へと追いやられ、それから何度目かの絶頂を迎えた時――シンドバッドが顔を上げたかと思うと、ぺろりと、自身の唇を舐めた。その姿があまりにも、艶やかで、厭らしくて、エリスティアは目が離せなかった。

 

「シ、ン……っ」

 

こんな事を言うなんて、恥かしい。けれど――もっと、欲しい。シンドバッドの熱で、いっぱい満たされたい。エリスティアは涙で滲んだ瞳で彼を見上げると、

 

「――私に、もっと触れて、欲しい……駄目?」

 

そう言って、そっと彼の首に腕を回した。するとシンドバッドが一瞬驚いたように目を見開いた後――嬉しそうに笑みを零した。そしてそのままエリスティアに覆い被さると、彼女の耳元で甘い誘惑の言葉で囁いた。

 

「駄目な訳がないだろう? お前が欲しいなら、いくらでもくれてやる。だからエリス、俺に愛されてくれ――」

 

その言葉に、エリスティアが恥ずかしそうに頷く。そしてシンドバッドはそんなエリスティアに優しく口付けた。二度三度と繰り返すうちに、それは熱の籠もったものへと変わっていく。やがて、どちらともなく舌を絡ませ合わせ、厭らしい水音と共に互いの唾液を交換し合った。

 

「シ、ン……もっと……して……」

 

「ああ――」

 

エリスティアに応えるかの如く、シンドバッドは何度もエリスティアに口付けた。その度に、彼女の愛らしい唇から甘い声が洩れる。そんなエリスティアの痴態に煽られ、シンドバッドは自身が張り詰めていくのが分かった。

やがて、口付けを続けながらシンドバッドがエリスティアの秘部に、自身の楔を宛がった。エリスティアのそこは既に蜜で溢れていて、何の抵抗もなくシンドバッドを受け入れていく。

 

「ぁ……ンン、は、ぁ……ぁあ……っ」

 

ゆっくりと中を侵されていく感覚に、エリスティアの身体がぴくぴくと跳ねた。

やがて根元まで挿入されると、シンドバッドはそのまま腰を動かし始めたのだ。最初はゆるゆるとした動作だったそれは徐々に激しいものに変わっていき、その度に結合部から厭らしい水音が上がる。

 

「ぁあ……っ、は、ぁ……ゃ……うご、ちゃ……だめぇええ……っ」

 

淫らな音を響かせながら激しく動かれる度に、エリスティアの口から嬌声が洩れた。

 

「エリス……っ」

 

シンドバッドは何度も何度もエリスティアの弱い所を攻め立て、その度にエリスティアの身体がびくんと跳ねる。やがて一番奥を突かれた時、エリスティアの身体が一際大きく跳ね上がった。

同時に膣内が収縮し、シンドバッドのものを締め付ける。その刺激に耐え切れず、シンドバッドは息を詰めるとそのまま最奥に熱を放った。

 

どく……っ、と熱いものが吐き出される感覚に、エリスティアが身体を反らせる。そして全てを出し切るかのように何度か腰を打ち付けた後――ずるりと引き抜いた。すると収まりきらなかった白濁液がこぽりと音を立てて溢れ出てきた。

その淫靡な光景を見て、シンドバッドが再び笑みを零す。彼は再び硬度を取り戻した自身をもう一度あてがうと、エリスティアの足を持ち上げ、一気に押し込んだのだ。

 

「ぁあ……っ!」

 

突然奥深くまで挿入された事で、エリスティアが悲鳴じみた声を上げる。しかしそれも一瞬の事で、すぐに甘い吐息へと変わっていく。そのままシンドバッドが激しく動き始めると、結合部からは先程出されたばかりの精液が溢れ出てきた。

その卑猥な光景に、シンドバッドが更に興奮する。彼はそのまま何度も腰を打ち付けると、やがて限界を迎えたのか、再び最奥に熱を放った。熱が注ぎ込まれていく感覚に、エリスティアの身体がびくびくと痙攣する。

 

「エリス――愛している。お前だけを――」

 

そのまま、シンドバッドはエリスティアの唇を塞ぐと、再び舌を絡め合わせた。そして何度も角度を変えながら深く口付けた後、ようやく唇を離すと、そのままエリスティアの隣に横になった。

 

彼女を腕の中に抱き寄せれば、甘えるようにすり寄ってくる様が愛らしい。シンドバッドはその仕草に笑みを零すと、そっと彼女の髪を撫でた。すると心地いいのか、エリスティアは目を閉じたまま身を委ねてくる。その表情はまるで幼子のようで――本当に安心しきっているようだった。

そんな彼女の様子に愛しさが込み上げてきて、シンドバッドは優しく髪を梳いた後、額にそっと口付けた。すると、エリスティアがゆっくりと目を開ける。そして少し恥ずかしそうに微笑むと――、

 

「シン――」

 

シンドバッドの頬に手を伸ばし、そっと引き寄せて再び唇を重ねてきたのだ。そのまま何度か啄む様な口付けを繰り返し、やがてどちらともなく顔を離す。そして至近距離で見つめ合えば、自然と笑みが溢れた。

シンドバッドはエリスティアの身体を引き寄せるとその細い腰に腕を回して抱き締めた。すると彼女もそれに応えるかのように、自ら身を寄せてくる。その仕草が愛らしくて堪らず、彼女の額にもう一度唇を落とした。

 

それから暫くの間、二人は互いの温もりを分け合うように抱き合っていたが――不意に睡魔が訪れたのか、エリスティアの瞼がゆっくりと下りてきた。そしてそのまま、静かな寝息を立て始める。

そんなエリスティアを優しく抱き寄せながら――シンドバッドもそっと目を閉じたのだった。

 

 

 

 

翌朝、シンドバッドが目を覚ますと既に日は高く昇っていた。隣を見れば、そこには愛しいエリスティアの姿があった。彼女はまだ眠っているらしく、規則正しい寝息が聞こえた。その寝顔はあどけなく、とても可愛らしいものだった。思わず口元が緩むのを感じながら、そっと彼女の頬に触れる。すると擽ったかったのか、彼女が僅かに身じろいだ。その様子に愛しさを覚え、そっと頬を撫でると彼女に口付けた。

 

軽く触れるだけの優しい口付けだったが、それでも彼女の唇からは甘い吐息が漏れた。そしてゆっくりと開かれたアクアマリンの瞳が、ぼんやりとシンドバッドの姿を映し出す。暫くの間見つめ合っていた二人だったが、

 

「シ、シン……っ」

 

やがて我に返ったかのようにエリスティアの頰に朱が差したかと思うと――慌てて身体を起こした。

しかしまだ覚醒しきっていないのか、「あ……」と、そのままぐらりと身体が傾く。

 

「おっと」

 

それに気付いたシンドバッドが咄嗟に腕を伸ばして支えると、エリスティアの身体を抱き寄せた。そしてそのまま腕の中に閉じ込めるように抱き締めれば、安心したのか甘えるようにすり寄ってくるではないか。そんな仕草に愛おしさが込み上げてきて、シンドバッドはそっと彼女の瞼に口付けを落とした。

 

「おはよう、エリス。どうしたんだ? 朝から甘えん坊だな」

 

シンドバッドが、冗談めかしてそう言うと、エリスティアは恥ずかしそうに目を伏せたが――やがておずおずといった様子で顔を上げると、上目遣いでこちらを見上げてきた。その美しいアクアマリンの瞳には隠しきれない熱が見え隠れしていた。

そんな彼女の様子に気付いたのか、シンドバッドは小さく笑みを浮かべると、再び彼女に口付けた。

 

「ん……」

 

唇が離れると、今度はエリスティアの方から求めてきた。それに応えるように深く口付けてやると、彼女の口から甘い吐息が漏れる。彼女の口から「シン……」と、自分を求める様に名を呼ばれれば、それに応えるように強く抱き締める。

 

そのまま暫くの間互いの唇を堪能していたが、やがてどちらともなく顔を離すと――今度は正面から抱き合った。そしてもう一度唇を重ね合わせると、今度は深く舌を絡め合わせた。

 

「……んっ、ぁ……は、ぁ……ンンっ……シ、ン……っ」

 

互いの唾液を交換し合うかのように何度も角度を変えながら口付けを交わすうちに、次第にエリスティアの身体から力が抜けていく。それに気付きながらも尚も続けると、やがて完全に脱力したらしく、エリスティアがぐったりともたれかかってきた。

 

「は、ぁ……ん……っ」

 

唇を離すと二人の間を銀糸が伝う。それを舌で舐め取ると、再びエリスティアの身体をベッドに横たえた。そして彼女の上に覆い被さると、首筋に舌を這わせる。するとエリスティアの口から甘い吐息が漏れた。

そのまま首筋から鎖骨へと徐々に下に向かって愛撫を続けていくと、やがて一糸まとわぬ姿になった彼女を見下ろす形になった。白い肌に映える赤い痕は昨晩自分が付けたものだと思うと愛しさが募り、その痕を辿るように舌を這わせていく。そしてそのまま胸の先端を口に含むと舌先で転がし始めた。

 

「ん……ぁ……っ」

 

エリスティアは与えられる快楽に耐え切れず甘い吐息を漏らすが、それでも必死に声を押し殺そうとする姿がいじらしい。そんな姿に煽られるようにして、シンドバッドはその先端を強く吸い上げた。

 

「ぁあ……っ!」

 

するとエリスティアの口から悲鳴じみた声が上がる。しかしそれでも構わずにもう片方の胸を愛撫し続けると、

 

「シン……っ、わた、し……」

 

やがて彼女の口から懇願の言葉が溢れてきた。だがそれを無視して更に強く吸い上げれば、彼女は身体を弓なりにしならせた。そしてそのまま何度も執拗に責め立てていると、やがて限界を迎えたのかエリスティアの身体が大きく跳ね上がった。それと同時に膣内が収縮し、再び蜜が溢れ出てくる。

それを潤滑油代わりにして指を挿入すれば、既にそこはすっかり蕩けきっていた。中を探るように動かすと、

 

「ぁあ……っ、は、ぁん……っ、ゃ……待っ……ああっ」

 

それだけで彼女は敏感に反応を示した。

そのままゆっくりと指を動かし続ければ、やがて彼女の口から甘い吐息が漏れ始めた。その頃合いを見計らって指を増やすと、今度はバラバラと動かし始める。そしてある一点を掠めた瞬間――。

 

「ぁあ……っ!」

 

彼女の口から一際高い声が上がった。

どうやらここが弱いらしいと判断したシンドバッドは執拗にそこばかりを攻め立てた。するとその度に彼女は甘い声を上げ続けたが――やがて限界を迎えたのか、ひと際大きな嬌声を上げながら身体を痙攣させた。同時に膣内が強く締め付けられる感覚に、シンドバッドが小さく舌打ちする。そしてずるりと指を引き抜くと、代わりに自身を宛がい、一気に貫いたのだ。

 

「……っ!」

 

突然の事に驚いたのか、エリスティアが目を見開きながらこちらを見る。だがそれに構わず抽挿を始めると、彼女の瞳はすぐに快楽に染まっていった。

 

「ぁあ……っ、は、ぁン……、待っ……シ、ン……っ、ぁ……あ……っ」

 

徐々に激しくなるにつれ、結合部からは厭らしい水音が響き渡った。その音にすら興奮を覚えながら更に深く突き入れていくと、やがて最奥まで到達したのか先端がコツンと子宮口に当たったのが分かった。そのままグリグリと押し付けると、エリスティアの身体が大きく跳ね上がった。同時に中が激しく収縮し、まるで搾り取るかのようにきつく締め付けてきた為――シンドバッドも堪らず精を放ったのだった。

 

暫くの間余韻に浸っていると、やがてエリスティアがゆっくりと顔をこちらへ向けてきた。その表情はどこか不安げで、何か言いたげな様子だったのだが――次の瞬間、突然その瞳が大きく見開かれたかと思うと、彼女の身体がぶるりと震えた。どうやら自分の状況に気付いたらしい。

だが、シンドバッドは彼女が離れようとするのを許さず、逆に強く抱きしめてやった。

 

「シ、シン……っ」

 

するとエリスティアは、一瞬驚いたような表情を浮かべて抵抗しようとしたものの、すぐに安心したように身を委ねてくるではないか。その反応に気を良くして再び腰を動かし始めると、エリスティアの口から甘い声が漏れた。

 

「あっ……ぁン……っ、や……だめ……っ」

 

「駄目じゃないだろう? こんなに締め付けておいて――」

 

そう言って更に激しく突き上げれば、エリスティアの口から甲高い声が上がった。そのまま何度も激しく責め立てれば、やがて限界を迎えたのか彼女が大きく仰け反ったかと思うと、膣内が激しく収縮したのが分かった。それと同時にシンドバッドもまた達しそうになるものの、何とか堪えてやり過ごす。そしてそのままエリスティアの身体を反転させると、四つん這いの姿勢を取らせてから背後から覆い被さった。

 

「シ、シン……っ、待っ――ぁああ……っ!!」

 

エリスティアの制止も聞かず、一気に最奥まで貫く。それと同時に、彼女の悲鳴の様な声が上がった。そして、今度はゆっくりと腰を動かし始める。最初はゆるゆるとした動作だったが、やがて徐々に速度を上げていくと――やがてパンッと肌同士がぶつかり合う音が部屋中に響き渡った。その音に合わせて結合部からは愛液が飛び散り、シーツの上に染みを作る程だ。

その淫らな光景を見て興奮を覚えたシンドバッドは、より一層動きを速めた。

 

「ぁ……ぁあ……っ、は、ぁんン……っ、ゃ……っ、シ、シン……っ、わ、わた、し……ぁあ……っ」

 

エリスティアの喘ぎ声が響き渡る。そして遂に限界を迎えたらしく、エリスティアが一際高い声を上げると同時に膣内が強く締め付けられるのを感じた。その感覚に堪らず再び精を放ったのだが――それでもまだ足りないとばかりに硬度を取り戻すと、今度は背後から覆い被さった状態で抽挿を繰り返した。

 

「あっ……だめ……っ、だめえぇぇええ……っ」

 

そのまま何度も最奥を突き上げていると、やがて彼女が甘い声を上げながら絶頂を迎えたのが分かった。それと同時に膣内が激しく収縮し、まるで搾り取るかのような動きを見せるものだから堪らない。シンドバッドもまた彼女の後を追うようにして精を解き放ったのだった。

 

ぐったりとベッドに身を沈めているエリスティアを背後から抱き締めると、耳元に唇を寄せて囁いた。

 

「エリス――可愛いな」

 

そのまま耳朶を舐め上げれば、それだけで感じてしまうのか、彼女の口から甘い吐息が漏れる。そして首筋に舌を這わせながらゆっくりと手を下ろしていき――やがて胸の膨らみへと到達した所で動きを止めた。

 

「……んっ」

 

そのまま両手で包み込むように揉んでやれば、彼女は小さく身を捩った。だが決して嫌がっているわけではないようで――その証拠に、エリスティアの口からは甘い声が漏れ続けているのだ。

そんな反応に気を良くしたシンドバッドは、今度はその先端にある突起に触れた。するとエリスティアの口から一際大きな声が上がったので、そこを重点的に攻め立てる事にした。指先で摘まんだり弾いたりを繰り返しているうちに彼女の息遣いが荒くなってきたのを感じ取ると――そこで一旦動きを止めた後、今度は反対側の胸に吸い付いた。

 

「……は、ぁ……んっ、ゃ……ぁン……っ」

 

そして同時に両方の胸を同時に刺激してやると、エリスティアは堪らず身を捩らせたものの、やはり逃げる素振りは見せなかった。それどころか寧ろもっとして欲しいと言わんばかりに自ら押し付けてくる始末である。

その様子に気を良くしたシンドバッドは再び強く吸い上げると、今度は舌先で転がし始めた。それと同時に膣内の締め付けが強くなった事に気付きつつも、それでも構わず続けた結果――遂にエリスティアは絶頂を迎えたようだった。全身を痙攣させながら荒い呼吸を繰り返しているのだが、そんな姿すら可愛らしく思えた。

そこで一旦動きを止めた後、彼女の耳元に顔を寄せて囁いた。

 

「エリス――俺の、俺だけのエリス……愛している」

 

すると彼女は蕩けきった表情のままこちらを向いてきたので、その唇に口付けてやると、そのまま舌を差し入れる。そして歯列をなぞったり、上顎を舐め上げたりすると、彼女はそれに応えるように自ら舌を絡めてきた。

 

「ん……ふ、ぁ……っ、シ……ン……っ」

 

互いの唾液を交換し合うかのように、何度も角度を変えながら口付けを交わしていると、やがてどちらともなく唇を離す頃には、すっかり息が上がっていたのだが――そこで再び腰を動かし始めたシンドバッドに気付き、エリスティアが慌てて制止の声を上げたのだが時既に遅しであった。

 

「ぁ……ゃ、ンン……待っ……、こ、これ以上、は……っ、ぁあン……っ!」

 

そのまま激しく抽挿を繰り返すうちに限界を迎えたのか、彼は小さく呻き声を上げると同時に熱い飛沫を放ったのだ。

そして最後の一滴まで注ぎ込むかのようにゆるゆると動かし続けた後、ずるりと引き抜くと、栓を失ったそこから大量の白濁液が流れ出てきた。

その光景を見たエリスティアは顔を真っ赤にして俯いてしまったので――その様子がまた可愛らしく思えて仕方なかったシンドバッドは思わず笑みを浮かべていた。そして彼女の身体を抱き寄せながら優しく髪を撫でてやったのだが――それでもまだ恥ずかしさが残っているらしく、彼女は俯いたままだった。

 

そんな様子もまた愛しく思えた彼はそっと唇を重ねると、そのまま舌を差し入れたのだった。すると最初は戸惑っていた様子の彼女だったが、やがておずおずといった様子で応えてくる。そして暫くの間互いの口腔内を貪るような口付けを交わしていたが――やがてどちらともなく顔を離す頃にはすっかり蕩けきった表情を浮かべていたのだった。

 

 

 

その後、二人は一緒に風呂に入る事にしたのだが――そこでもまた一悶着あったのは言うまでもないだろう。

 

エリスティアが先に湯船に浸かり、その後ろからシンドバッドが入る形で落ち着いたのだが、それでもやはり落ち着かないのかそわそわとしている様子であった。そんな彼女を安心させるように優しく抱き寄せると、そのまま腕の中に閉じ込めるかのようにして抱き締めたのである。

最初は戸惑っていた様子のエリスティアだったが、やがておずおずといった様子で身を委ねてきた。そんな彼女の様子に気を良くしたシンドバッドは、そのまま彼女の耳元に唇を寄せると囁いたのだった。

 

「なあ、エリス。キス――してもいいか?」

 

その言葉に一瞬目を丸くしたものの――すぐにその意味を理解したのか彼女は小さく微笑んで見せたのだ。そしてそのまま背伸びをすると軽く触れるだけの口付けを交わした後、二人はお互いの存在を確かめ合うかのように何度も繰り返し唇を重ね合わせたのだった。

そんな二人の様子を浴室の鏡が映し出しており、それが余計に羞恥心を煽る結果となっていたのだが――それでもなお二人の行為は止まる事はなかったのである。

 

それから暫くの間、お互いの存在を確かめ合うかのように、何度も口付けを交わしていたのだが――やがてどちらともなく唇を離す頃には、すっかり息が上がってしまっていたのだった。

そこで一旦呼吸を整えた後、改めてお互いの顔を見詰め合ったのだが、そこでふとある事に気が付いた。それはエリスティアの美しいアクアマリンの瞳に、情欲の色が宿っているという事である。どうやら先程の口付けによってスイッチが入ったらしく、その瞳には確かな熱が宿っていたのだ。

そんな彼女の様子を見て取ったシンドバッドはニヤリと笑みを浮かべると――そのままエリスティアを大理石の上に押し倒した。そして覆い被さるような体勢になると、耳元で囁いたのである。

 

「もう一度お前を抱きたい……」と。

 

すると彼女は一瞬驚いたような表情を浮かべたものの、すぐにこくりと小さく首を縦に振ったのだった。そして二人は再び唇を重ね合わせた後、行為を再開したのであった。

 

 

それから数時間後、ようやく満足したらしいシンドバッドがゆっくりと身を起こすと、そこにはぐったりとした様子の、エリスティアの姿があったのだが――それでもなお意識はあるらしく、虚ろな視線をこちらへ向けてきたかと思うと、弱々しく微笑んで見せたのだ。

そんな彼女の姿を見て愛おしさが込み上げてきたシンドバッドは優しく髪を撫でてやると、瞼に軽く口付けを落とした後、ゆっくりと身体を離したのだった。

 

そして、エリスティアを横抱きに抱きあげると、そのまま浴室から出て、寝室のベッドの上に彼女を寝かせた。横に座って、そっと髪を撫でてやれば、エリスティアが嬉しそうに微笑む。そんな彼女が堪らなく愛おしく感じ、そのままぎゅっと抱き締めてやると、彼女もまた背中に腕を回してきた。

 

暫くの間そうやってお互いの体温を感じ合っていたのだが、やがてエリスティアがゆっくりと口を開いた。

そして一言だけ呟くように言ったのだ。

 

「シン――愛してるわ……」

 

「……ああ、俺もだよ」

 

そう応えてやると、エリスティアは幸せそうな笑みを浮かべた後、静かに目を閉じたのである。どうやら疲れて眠くなったらしい。シンドバッドはそっと彼女の髪を撫でてやると、自分も隣に横になって眠りに付いたのであった。

 

 

 

余談。

その日、朝議にも現れない二人の様子を察したジャーファルが、そわそわしていたのは言うまでもなく……。結局この日も、侍医が昼間に寝室に呼び出され、エリスティアの休む妨げにならない様に、廊下で話したものだから、それを見ていた兵士から、噂は更に広まったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2024.12.06