花薄雪ノ抄
     ~鈴蘭編~

 

◆ 五条悟

「月冴えて、紅葉すれば 照りまさらむ」

(呪術廻戦夢 「深紅の冠 ~鈺神朱冥~」 より)

 

 

―――京都・五条家本家

 

 

東京から京都まで、新幹線で移動する事2時間と少し。そこから車で移動して着いた頃には、18時を過ぎていた。車の後部座席のドアを開けられて、五条が降りると、すっと隣に座っていた凛花に手を差し出す。凛花は、少し躊躇った後、その手を取って車を降りた。すると、五条家本家の大きな門が視界に入る。

今まで何度か来たことあったが、東京の桜田屋敷とは格が違い過ぎて、どうしても緊張してしまう。何故ならば、ここには五条の両親も住んでいるからだ。

 

元々、京都へは任務で来たのだが、普通にホテルに泊まるつもりだった凛花に、五条が「本家うちに泊まればいいよ」と言い出したのが始まりだ。任務は先程完了させてきて、その為、本家に着く時間が遅くなったのだ。

五条の両親とは面識はあるが、そう何度も会っている訳ではないので、どうしていいのか分からなくなるのだ。

 

「あの、悟さん……」

 

凛花が、躊躇いつつ声を掛ける。すると、五条が「ん?」と首を傾げた。凛花は、少し俯きながら――。

 

「その……やっぱり、私はホテルに――」

 

「泊まる」と言い終わる前に、五条が口を開いた。

 

「だーめ。折角京都に来てるんだから、ホテルに泊まる必要ないでしょ。それにここはいずれ凛花ちゃんの“実家”にもなるんだから。気にせずゆっくりしていったらいいよ」

 

「や、あの、それは……」

 

幾らなんでも、飛躍し過ぎではないだろうか。そう思う凛花を他所に、五条は彼女の肩に手を掛け抱き寄せると、そのまま開いた門をくぐった。瞬間――。

 

「お帰りなさいませ、悟様」

 

と、ずらっと並んだ使用人達が一斉に頭を下げる。相変わらず、圧倒される光景だった。そんな彼らの中を、五条は気にした様子もなく、「ただいま~」と軽く手を上げて通っていく。

すると、屋敷の玄関の前に、使用人頭と思われる、初老の男が立っていた。男は、五条と凛花を見ると、すっと頭を下げて、

 

「お待ちしておりました、悟ぼっちゃん。そして、凛花お嬢様」

 

「も~じい。“ぼっちゃん”呼びはやめてよね。僕もう、28だよ?」

 

五条が少し頬を膨らませてそう言うと、“じい”と呼ばれた初老の男は「ほっほ」と笑いながら、

 

「じいにとって、ぼっちゃんはぼっちゃんのままですよ。さ、御父上と御母上がお待ちです」

 

そう言って、先導して屋敷の中へと五条を促す。五条は「はぁ……」と、小さく溜息を付いた後、その使用人頭の男に、

 

「父さんと母さんは、どこにいるの?」

 

「紅の間でお待ちです」

 

「分かった。後は僕達だけでいいから――行こう、凛花ちゃん」

 

それだけ言うと、五条はすたすたと凛花を連れたまま歩き始めた。使用人頭の男は一礼すると、そのまま五条達を見送ったのだった。

 

 

 

 

*** ****

 

 

 

 

少し歩くと、豪華な欄干のある部屋に着いた。庭の紅葉がとても綺麗な部屋だった。その部屋の中央に、和装の男性と女性が座って談話していた。五条の両親だ。五条は部屋に着くなり、傍にいた女中も下げさせると、そのままずかずかと部屋に入った。五条に気付いた男性の方が、五条を見るなり、ふっと柔らかく微笑んだ。

 

「ああ、お帰り、悟。元気そうだな」

 

そう優しい言葉を掛けてくる。すると、隣に座っていた女性もにっこりと微笑んで、

 

「悟、もっと傍で顔を見せて欲しいわ」

 

そう言ったかと思うと、すっと五条に向かって手を伸ばして、ぎゅっと頭を抱き締めて、髪をわしわしと撫でてきた。流石の五条もそれには、声を荒げる様に――。

 

「ちょ……っ、ちょっと母さん! 凛花ちゃんもいるのに――」

 

「凛花?」

 

ぴたっと、その言葉に、女性の手が止まる。そして、五条の隣にいる凛花をじっと見たかと思うと、ぱぁっと嬉しそうに顔を綻ばせ、

 

「まぁ! 貴女、あの凛花さん? 何年ぶりかしら、こんなに綺麗になって――」

 

と、今度は凛花を思いっきり抱き締めて、頭を撫でてきた。凛花はというと、どうして良いのか分からず、放心してしまっていた。すると、それを見た五条がべりっと、その女性から凛花を引っ剥がす。そして、ぎゅっと自分のテリトリーに保護すると、

 

「母さん! 凛花ちゃんが困ってるだろ!? そのすぐ抱き付く癖なんとかしろよ!」

 

「あら、誰でも彼でも抱き付く訳じゃないわよ?」

 

「はっはっは! そうだぞー悟。母さんは“可愛いもの”にしか抱き付かないからな。現に、私は抱き付かれない!」

 

いいのかそれで!? と、突っ込みそうになる。だが、五条からしてみれば、“可愛い”と言われても嬉しくもなんともなかった。

 

「とにかく! 母さんといえど、凛花ちゃんに抱き付くのは駄目だ!」

 

五条がそう言うと、その女性は「えー」不服そうな声を上げた。そして、ふぅ……っと小さく溜息を付くと、

 

「悟、男の嫉妬は醜いわよ?」

 

「何とでも言うといいよ。とにもかくも、凛花ちゃんだけは、ずぇ――――たい、駄目!!」

 

そう言って、五条が凛花をぎゅうううっと抱き締めた。凛花は困惑顔で五条を見ると、

 

「あの、悟さん。せめてご挨拶を――」

 

「挨拶なんてしなくていいよ」

 

「……そういう訳にはいきませんよ」

 

そう言って、五条の手から逃れると、すっと五条の両親の前に改めて座った。そして両の手の人差し指を正三角形の形で床に付けると、そのまま最敬礼の形を取る。それから、ゆっくりと身体を起こして、

 

「ご無沙汰しております。神妻の凛花で御座います。五条様におかれましては、息災でお過ごしのようで何よりです」

 

凛花のその言葉に、五条の両親がほぅ……と溜息を洩らす。それから、にっこりと微笑んで、

 

「君はうちの嫁になるんだ。そんな堅苦しい挨拶はしなくていいよ」

 

「そうよ、凛花さん。是非、お義父さんとお義母さんと呼んで頂戴」

 

そう言ってくるが、そう軽々しく呼べる訳が無い。凛花は苦笑いを浮かべて「ぜ、善処致します」と答えるので精一杯だった。

 

 

 

 

 

*** ***

 

 

 

 

 

五条の両親への挨拶と夕餉が終り、部屋へと案内された時は、もう凛花はぐったりしていた。必要以上に緊張してしまって、何を言ったのかすらよく覚えていない。酷く緊張した事だけは、鮮明に覚えていて、それが、疲労感となってきている状態だ。

 

「凛花ちゃん、平気?」

 

五条が心配そうに、覗き込んでくる。凛花は、無理矢理笑顔を作ると「大丈夫です」と答えた。そんな凛花を見て五条が、

 

「だから、無理に挨拶しなくていいって言ったのに。疲れるでしょ? 凛花ちゃんは真面目なんだから」

 

「……泊めて頂くのに、挨拶をしない訳にはいきませんよ……」

 

人として、お世話になるのに挨拶しないのはどうかと思うからだ。それに――。

 

「その……悟さんのご両親ですし、こんな事でよくない印象を持って頂きたくないです」

 

正直にそう話すと、五条がその碧色の瞳を大きく見開いた。そして、ぎゅっと後ろから抱き締めて来たのだ。突然の、五条からの抱擁に、凛花が かぁっと頬を朱に染める。

 

「さ、悟さん?」

 

どうしたのだろうと、振り返ろうとした時だった。五条の唇が、凛花の耳元に寄せられる。その唇は、そのまま耳朶を食み、耳の裏から首筋へと這わされる。そして、ちゅっと強く吸われたかと思うと、今度は舌でぺろりと舐められた。

ぞくっと背筋が震える。思わず声が出そうになり、慌てて手で口を押さえたが、五条にはバレてしまったようだった。五条はくすりと笑うと、

 

「凛花ちゃんのそういう所、可愛いよね……」

 

と囁かれて、凛花は かあっと顔が赤くなるのを感じた。その隙に、五条の手がするりと凛花の着物の合わせ目から滑り込んできた。その手がゆっくりと胸元へと這い上がってくる。そして、ぷくんと勃った胸の頂をきゅっと摘ままれて、びくんっと身体が震えた。そのまま指の腹で何度も擦られると、それはますます硬くなっていく。

 

「ん……ぁ……は、ぁ……っ」

 

感じている顔を見られるのが恥ずかしくて、手で口を押さえながら顔を背ける。すると、耳元でくすりと笑い声が聞こえてきたかと思うと――突然身体を半回転させられて、畳の上に押し倒されたのだ。

 

「さ、悟さん……っ」

 

「しーっ。黙って」

 

そう言われて慌てて口を噤む。すると、五条の顔が近付いてきて、ちゅっと唇が重なった。それはすぐに離れていってしまったが、再び重ねられると、今度は舌が捻じ込まれたのだ。

 

「……っ、ぁ……は……んんっ」

 

強引に入ってくるその舌に、思わず逃げ腰になるが、それすらも許されず絡め取られる。くちゅりと水音がしてそれが耳に響いたかと思うと、今度は耳を食まれた。そして、そのまま首筋へと這わされる唇はやがて胸元へと下りてきた。

ちゅっと強く吸われて、ちくっとした痛みを感じる。そしてまた執拗に舌で嬲られると、それだけで身体がびくびくと震えるのを感じた。

気付けば着物の帯も解かれていて、大きく前が肌蹴られていた。それでも構わず五条の舌が胸元を舐め上げたかと思うと、今度は乳首へと這わされて軽く歯を立てらた。その途端――。

 

「ぁあ……んっ!」

 

びくんっと背中が弓なりに反って腰が浮く。咄嗟に手で口を押さえたが、もう遅かったようだ。

 

「凛花ちゃん、駄目じゃないか。そんな大きな声出しちゃ」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

「いいよ、許してあげる」

 

そう言って、再びちゅっと額に口付けを落とすと、また胸元に顔を埋めた。そして乳首を執拗に舐め上げられて噛まれると、その度にびくびくと身体が震えた。時折ちらりと碧色の瞳が覗く度にどきりとする。その目は酷く妖艶で、まるで獲物を狙う獣のようだったからだ。

だが、それはすぐに見えなくなった。五条の唇が下へと降りていったからだ。そして、臍の辺りをぺろりと舐められた後、下腹へと唇が滑っていった。

 

「ぁ……は、ん……っ、ふ、ぁ……っ」

 

途端、ぞくぞくとした快感が下腹部に走る。それに耐えていると、やがて五条の唇は凛花の下生えにまでたどり着いてしまった。すると、そこをもどかしそうに撫でてから、その手は太腿へと触れていった。軽く撫でるとすぐに股の間に割って入り、そこに触れたのだ。既に濡れ始めているそこはすっかり熱くなっていて、ぬるりとした蜜が溢れ出ていた。それを掬うようにして、何度も指を往復させる。その度にぴりぴりとした快感が凛花を襲った。

 

「―――っ」

 

思わず声が出そうになると、五条の手が慌てて口を押さえてきた。そして耳元で囁いてくる。

 

「――駄目……我慢して……」

 

それを聞いてもどかしさを感じて身悶える。だが、そんな凛花を他所に、五条の手はどんどんエスカレートしていった。蜜の溢れるそこにゆっくりと指が挿入ってくると、中を探るように動かされたのだ。その刺激にびくびくっと身体が震える。

 

「凛花ちゃん、聞こえる? くちゅくちゅってやらしい音してるね。僕の指、もう凛花ちゃんの愛液でびしょびしょだよ」

 

「っ……ゃ……」

 

そんなのは分かっている。だが、改めて言われると恥ずかしくて死にそうだった。すると、五条の指がゆっくりと動かされ始める。最初は優しく撫でるような動きだったが、次第にそれは激しさを増していき、やがて激しく抜き挿しを繰り返されるようになったのだ。その度ぐちゅぐちゅと音が響いて、凛花は羞恥に顔を真っ赤に染めた。だが、それは五条も同じで、その頬は紅潮し息も荒くなってきている。

 

「……っ、凛花……」

 

堪らず、五条が凛花の名を呼んだ。そして、ずるりと指を引き抜くと、凛花の足を抱え上げた。その行動が何を意味するのか察した凛花は 慌てて足を閉じようとするものの、五条の力がそれを許さない。それどころか五条の手が太腿に掛かるとぐっと押し広げられてしまったのだ。露になったそこに熱い視線が注がれて、凛花は更に顔を朱に染めた。

すると、五条はその凛花の秘所へそっと顔を近付けると――ぺろっとそこを舐め上げたのだ。

 

「あ……っ」

 

その瞬間、ぞくぞくとした快感が背中を駆け抜けていったかと思うと、そのまま五条の舌が中へと挿ってきた。それと同時に指が一本挿入ってくる。そして、くちゅくちゅと音を立てて掻き回され始めたのだ。

 

「……は、ぁ……ぁあん……っ、ゃ……さと、る、さ……っ」

 

あまりの快感に堪らず凛花が身体をくねらせて悶える。だが五条にはお見通しで、容赦なく責め立てられ続けたのだ。同時に陰核を舌で舐められながら吸われるともう駄目だった。

 

「ぁあ……っ」

 

凛花の身体が弓なりに反って、がたがたと痙攣する。きゅうっと五条の指を締め付けてしまい、次の瞬間には、ぐったりと力が抜けてしまったのだ。

 

はぁ……はぁ……と荒い呼吸を繰り返しながら五条を見ると、その碧色の瞳はぎらついていた。まるで獣のように見えてぞくりとする。

だがそれは一瞬の事で、すぐにいつもの笑顔に戻ったかと思うと、ちゅっと軽く口付けてきたのだ。

そして、そのままぎゅっと抱き締められる。その腕の中はとても温かくて心地良かったのだが、身体は火が付いたように熱かった。

 

「さと……んっ……は、ぁ……んんっ」

 

五条が、再び口付けをしてくる。それは一度では終わらなかった。何度も角度を変えて徐々に激しくなっていく。頭が真っ白になって、何も考えられなくなりそうになった頃、

 

「凛花――口、開けて」

 

「え……?」

 

何を言われたのか分からず、凛花が口を開けると、そこからぬるりと五条の舌が挿ってきたのだ。そして、そのまま舌を搦め捕られてしまうと強く吸われた。

 

「んっ、ふ、ぁ……っ、ぁ……ん……っ」

 

その間も指は挿入れられていて、ぐちゅぐちゅと中をかき回されている。その度、凛花の蜜口から溢れ出すそれは止まらない。

やがて唇が離れると、つう……っと糸が引いた。それをぼんやりと見ていると、不意に身体を起こされて、今度は五条の上に跨るような体勢を取らされたのだ。凛花はぼんやりする頭で、今、自分は何をさせられているのだろうかと思った。

瞬間――ずぶりと熱いものが押し当てられる。

それが五条の猛った剛直だと気付いた時、凛花は顔を真っ赤にした。だが、それは五条も同じ事で、彼はどこか気まずそうに頬を赤く染めると視線を逸らす。その表情が妙に可愛く見えてしまい、思わず きゅんとした。すると、その隙を狙ったかのように――ずぷりと一気に挿入ってきたのだ。

 

「ぁあ……っ!!」

 

その瞬間、全身に電流が走ったかのような感覚に襲われて、凛花は背中を弓なりに反らせたまま達してしまった。しかしそれでも五条の腰の動きは止まらない。それどころかどんどん激しくなっていく。ぱんっぱんっと肌を打つ音が響き渡り、同時にぬるりとした熱いものが奥に放たれたのが分かった。

 

「あ―――っ! は……ん……っ、さと、る、さ……ぁあ……っ」

 

それすらも感じてしまうのか凛花がびくびくっと身体を震わせて喘ぐ。だが、休む間もなく抽挿は再開されてしまい、凛花はもう何も考えられなくなっていた。ただ与えられる快楽に翻弄されるだけだ。五条の突き上げに合わせて、腰が揺れる度に中の剛直が質量を増していくのを感じると、それだけで軽く達してしまうほど敏感になっているようだった。

 

「ま、待っ……ぁあ……んっ!」

 

凛花が制止の言葉を掛けるが、聞き届けられる事はなかった。それどころか更に激しく責め立てられる始末だ。

 

気が付けば凛花は畳の上に押し倒されていて、上から覆い被さるようにして五条に犯されていた。ぱんっぱんっと肌を打つ音が響く度に、結合部からは白濁が流れ落ちてゆく。それは太腿を伝って流れ落ちていき、着物の襟元を汚していた。だが、今の二人にそんな事を気にする余裕などなかった。

 

「凛花……っ」

 

五条の、切なそうな声が耳に響く。それすら酷く感じてしまい、きゅうっと膣内の剛直を締め付ける。すると、それが悦かったのか五条の動きが一層激しくなった。がつがつと奥を穿たれると目の前が真っ白になる程気持ち良かった。

 

そして――どくんっ! 一際強く突き上げられたかと思うと、熱い飛沫が流れ込んでくるのが分かった。同時に子宮口に先端を押し付けられてぐりぐりと動かされると、それだけで軽く達してしまう程だった。だがそれでもまだ足りないとばかりに何度も擦り付けられる。その度にびくびくっと身体が痙攣し、頭が真っ白になった。何も考えられない。ただただ、与えられる快楽に溺れるしかなかったのだ。

 

「悟さ……っ」

 

荒い呼吸の中、五条の名を呼ぶ。すると、五条がそれに応えるかのように口付けしてきた。何度も繰り返される口付けに、思考がぼんやりしてくる。それでも、必死に応えようと、凛花はその手を五条の首に回した。それが、五条にとって嬉しかったのか、口付けが更に激しくなった。

 

「凛花――愛してる」

 

そう愛を囁かれるのと同に、未だ繋がったままの剛直がどくんと脈打ったかと思うと、再び熱いものが注がれていった。それは止まる事はなく、どんどん流れ込んできては凛花の中を満たしてゆく。

そうして漸く全てを出し切ったのか、ずるりと引き抜かれるとどろりとした白濁が大量に溢れてきた。だが、それでもまだ終わりではないとばかりに五条の指が挿入ってくると、それを掻き出すように動かされる。

 

「ゃ……っ、あ……」

 

それだけで感じてしまい、凛花は甘い声を漏らした。だがそれも束の間で、今度は身体を反転させられると四つん這いにさせられたのだ。そして後ろから再び剛直を挿入されると、容赦なく突き上げられたのだった。

 

「あっ! ぁ……あ……は、ん……っ」

 

ぱんっぱんっと肌を打つ音が響き渡る度に甘い声が漏れてしまう。もう何度絶頂に達したか分からない程なのに、身体は貪欲に五条を求め続けていた。それは彼も同じようで――何度も何度も凛花の中に精を放った。それなのに一向に衰える気配がなく、それどころかどんどん激しくなっていった。

気が付けば凛花は再び畳の上に組み敷かれていて、上から五条に覆い被されていた。そのまま深く口付けられると舌を絡め取られて吸い上げられる。

 

「んっ……は、ぁ……んんっ、ぁ……」

 

その間も律動は止まる事なく続けられており、結合部からは絶えず白濁が流れ落ちていった。もう何度達したか分からない程なのに、それでもまだ足りないとばかりに責められ続けてしまうのだ。

もう無理だと訴えようとしても口を塞がれていて言葉にする事が出来ない。その間にも五条の剛直は再び熱を持ち始めていて、それが再び凛花の中を蹂躙し始めた。

 

「ぁ……っ、は、ぁ……んっ……っ」

 

「凛花……」

 

耳元で囁かれたかと思うと耳朶を舐め上げられて甘噛みされる。その刺激にさえ反応してしまい、きゅうっと膣内の剛直を締め付けてしまうと、それが更に質量を増したのが分かった。

 

「ゃ……だ、めぇええ……っ」

 

思わずそう口にしてしまうが、それは逆効果だったようだ。中のものがどくんと脈打つのを感じた直後――再び激しく突き上げられたのだ。

 

「あ―――っ! あ、ぁっ……ゃ、激し……っ」

 

ぱんっぱんっと肌を打つ音が部屋中に響き渡る。その度に結合部からは白濁が流れ落ちていて畳を汚していった。だがそんな事など気にする余裕もなく、ただひたすらに与えられる快楽に溺れるしかなかったのだ。そして何度目かの突き上げの後、五条の動きが止まったかと思うと――どくんと脈打ち熱いものが放たれたのが分かった。それと同時に凛花も達してしまう。びくびくっと痙攣する膣内に最後の一滴まで注ぎ込もうとするように何度か腰を動かした後、ようやく落ち着いたのかゆっくりと引き抜いた。その途端ごぽりと大量の白濁が溢れ出して凛花の太股を汚した。

 

はぁ……はぁ……と、荒い呼吸を繰り返す事しか出来ないままぐったりとしていると、不意に顎を掴まれ上向かされたかと思うと唇を重ねられた。そのまま舌を差し込まれて口内を蹂躙される内に段々と意識がはっきりしてくる。そして唇が離れた頃には完全に目が覚めていた。

五条を見上げると彼はとても嬉しそうな顔をしていた。それが何だか気恥ずかしくて視線を逸らすと、ぎゅっと抱き締められる。

 

「凛花……ありがとな」

 

一瞬、何のことを言っているのか、凛花には解らなかった。が、五条が両親の事を言っているのだという事に気付き、凛花は小さく首を振る。すると、五条がまた嬉しそうに笑った。そして、再び口付けてきたかと思うと、再び剛直を挿入れられ激しく抽挿を始めたのだ。先程出されたばかりの白濁が潤滑油代わりになっているせいか痛みはなく、むしろ快感の方が強かった。

 

「あっ! あ、ぁ……っ、は、ぁ……ぁあ、ん……っ」

 

ぱんっぱんっと肌を打つ音が響く度に甘い声が上がる。もう何度も絶頂を迎えた身体は敏感になっており、少しの刺激でも感じてしまっていた。そんな凛花を愛おしそうに見つめる五条の瞳には愛情が溢れていて、その瞳で見られるだけで子宮がきゅんとした。そして一際強く突き上げられたかと思うと再び熱い飛沫が流れ込んできたのを感じた。

 

その時だった、月に照らされた庭の紅葉が風に吹かれ、はらはらと舞い込んできた。それが五条の視界に入り、凛花の深紅の瞳と重なる。

 

ああ……綺麗だ……。

 

そう思うと、一層彼女が愛おしく感じた。そして――そのまま凛花の首筋に顔を埋めた。ちゅっと強く吸い付くと赤い痕が残った事に満足し、今度は鎖骨へと移動させる。そうして幾つも所有印を刻んでいった後、最後にもう一度口付けを交わしたのだった。

 

 

*** ***

 

 

翌朝――。

凛花がゆっくりと目を覚ますと、そこは五条の腕の中だった。一瞬、何故? と思うが、昨夜の事を思い出して、顔が羞恥で赤くなるのが分かった。

 

わ、私……昨夜、悟さんと……。

 

そう思いながらも、それはどこか幸せな気分だった。そっと自分の首筋に触れると、昨夜五条に付けられた所有印が指先に触れた。それを見て更に恥ずかしくなりつつも嬉しくもあった。

そっと、目の前で眠る五条を見る。とても綺麗だと思った。柔らかな髪も、長い睫毛も、整った顔も、全部が五条の為にあるようだった。

凛花は、そんな五条の頬に触れると、そっと静かに口付けた。

 

「悟さん……好き……」

 

これは、誰にも言えない秘め事。知っているのは、昨夜昇っていた月と、舞っていた紅葉だけ――。だから、これはそっと心の中に閉じ込めておくのだ。

 

いつか――。

いつか、素直になれるその時まで……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2024.11.26