花薄雪ノ抄
     ~鈴蘭編~

 

◆ 五条悟 「Secret Garden」

(呪術夢 「深紅の冠 ~鈺神朱冥~」 より)

 

 

鳥の囀りが聞こえてくる。

凛花は髪をひとつに纏め、ぶかぶかの男物の大きなシャツの上にエプロンを付けると、キッチンで朝食の用意をしていた。

 

器用に片手で玉子を割ると、フライパンでベーコンと一緒に焼く。

焼いている間に、ボウルに水気をきったレタスとミニトマト、スライスしたキュウリなど加えて、複数の調味料を混ぜて作ったドレッシングと和えていった。

そうしている間に、フライパンで焼いていたベーコンエッグが出来上がったので、それを皿に乗せると、一緒に焼いていたウインナーなども横に乗せていく。

ボウルの中のレタスやキュウリを綺麗に盛り付け、ミニトマトを添える。

それらをダイニングのテーブルのトレイに乗せて持って行くと、丁度軽く温めておいたバターとミルクをたっぷり使用した、しっとりとした食感の甘いブリオッシュが程よく焼けていた。凛花はそれらをバケットに入れると、そのままテーブルに置いた。

ハムとチーズ、後は生クリームも用意しておく。

 

「後は……」

 

ふと、壁の時計を見ると、針が“7”を指していた。

そろそろ、起こしに行った方がいいかもしれない。

 

そう思って、凛花は寝室へと続く扉を開けた。

そして、未だに膨らんでいる大きなベッドの方へと近づく。

そっと、ベッドの横に座り、その膨らみに声を掛けた。

 

「悟さん、もう起きて下さい」

 

そう声を掛けるが、その膨らみの主――五条悟は、完全に熟睡していた。

無理もないのかもしれない、と凛花は思った。

五条は、出張でここ数日東京にいなかった。

帰って来たのも、昨夜遅い時間でもあった上に、夜中に凛花のマンションに来たかと思えば、何故かそのまま五条所有のマンションに連行されて、抱かれた。

 

お陰で、凛花も寝不足で仕方が無かったが……確か、五条の今日のスケジュールは昼から任務があった筈だ。

しかも、その前に一度高専に寄ると言っていた。

逆算すると、もう起きないと朝食すら食べる時間も無くなってしまう。

 

「悟さん……! 眠いかもしれませんが――」

 

そう言って、凛花が五条の肩に手を伸ばした時だった。

突然その手をぐいっと、寝ている筈の五条に引っ張られたのだ。

 

「え……っ、きゃあ……!」

 

余りにも急な事に、凛花がバランスを崩す。

そして、そのまま五条の方に倒れ込んでしまったのだ。

 

「さ、悟さ……」

 

気が付けば、ベッドの上で五条に押し倒される形になっていた。

五条は、凛花をじっと見つめると、くすっと笑みを浮かべ、

 

「凛花ちゃん、僕のシャツの上にエプロンしてるんだ……可愛い」

 

そう言って、ぎゅっと凛花を抱き締めた。

ぎょっとしたのは、凛花の方だ。

慌てて離れようと踠くが、何故か腰をがっちり掴まれており、びくともしない。

そうこうしている内に、五条が凛花の頬に口付けを落とす。

瞬間、かぁっと凛花の頬が朱に染まった。

 

「も、もう! 悟さん!!」

 

流石の凛花が、五条の行動に怒ったかの様に声を荒げた。

が……五条には、まったく通じておらず、そのまま、ぎゅーっと凛花を抱き締めると、そっと彼女の耳元で囁くように……、

 

「……凛花ちゃんが、目覚めのキスしてくれたら、起きてもいいよ」

 

「え……」

 

この男は、今何と言ったか。

「目覚めのキス」?

それは、よくある御伽噺にある、王子様がお姫様を目覚めさせるキスの事を言ってるのだろうか。

 

「えっと、悟さん……? 何、訳の分からない事を――」

 

「勿論、ここにね」

 

そう言って、とんとんっと五条が自身の唇を指さす。

 

「う……っ」

 

それは、卑怯ではないだろうか。

最悪、頬辺りで済ませようとしたのに、先手を打たれた。

だが、こうなったら五条は梃でも動かない事を、凛花は知っていた。

 

「……もう」

 

凛花は諦めにも似た溜息を洩らすと、自分の目の前にある五条の頬に手を添えた。

そして、そのままそっと口付けをする。

触れるだけの、一瞬の口付け――。

 

凛花が、少し恥ずかしそうにしながら五条から、唇を離す。

 

「……終わりです。もう、いいでしょう? 早く離れて――」

 

「離れて下さい」と言い掛けた時だった。

五条は少し不満そうな顔をしながら、

 

「足りない」

 

「え? 何、言っ――んんっ」

 

その先は、言葉にはならなかった。

突然の五条からの激しい口付けに、息をする余裕すらない。

 

「……っ、さと、る、さ……待っ……」

 

五条の舌が、凛花の歯列を割って入ってくる。

そして、そのまま舌を絡められた。

まるで水音がしそうな程深い口付けに、凛花の息が上がる。

 

暫くすると、満足したのか……漸く五条の方から唇を離してきた。

二人の唇の間に銀糸が繋がり、ぷつりと切れる。

 

「ぁ……」

 

少し息の上がっている凛花をそっと離すと、五条はそのまま彼女の首筋に顔を埋める様に抱き締めてきた。

そして、凛花の耳元に唇を寄せると、

 

「おはよう、凛花ちゃん」

 

「……っ、お、おはよう、ござい、ま、す……」

 

そう返事をするだけで、凛花は精一杯だった。

 

 

 

 

 

   ****    ****

 

 

 

 

 

―――都立呪術高等専門学校・東京校 夕方

 

「伊地知―、僕もう疲れたんだけど。帰っていい?」

 

呪術高専の準備室のソファで、ぐでっとだらけた座り方をした五条が、デスクで事務処理をしている伊地知潔高に悪態を付く。

伊地知はというと、「はぁ……」と曖昧な返事をしながら、パソコンの画面と睨めっこしていた。

今日の五条の任務での、事後処理をさせられているのだ。

破壊した建造物や、被害の総額など――所謂、後始末である。

 

「車、出して」

 

そんな伊地知の苦労など知らないという風に、五条が無茶振りをしてくる。

伊地知は唖然としながら、

 

「あの、五条さん……? 私は、まだ五条さんの報告書も作らないといけないんですが……」

 

「えー、伊地知がてきとーに作ってよ」

 

いやいやいや、この人は相変わらず何を言っているのか。

本来、報告書は担当した術師の仕事である。

それを、五条のは一応多忙という理由で、伊地知が処理してるだけだ。

 

すると、五条は真顔で手を顎の下で組むと、

 

「伊地知……僕はね、昨日の夜中に長期出張から帰って来たんだよ?」

 

「はぁ、そうですね」

 

「しかも、休み一切無しで、今日も3件も呪霊片付けてさー」

 

「はぁ」

 

何が言いたのだろう?

と、伊地知が首を傾げる。

 

そんな伊地知を見て、五条はふるふると首を横に振った。

 

「分かってない! 分かってないよ、伊地知!! 僕はね、もう疲れたんだよ!!」

 

「そ、そうですか」

 

私も疲れてます。

貴方の尻拭いで……とは、口が裂けても言えなかった。

 

「そうなの! だから、僕は休暇を要求します!!!」

 

 

 

「………………はい?」

 

 

 

 

 

   ****    ****

 

 

 

 

 

―――その日の夜

 

「えっと、悟さん……」

 

「どうかした? 凛花ちゃん」

 

「いえ、どうしかした――ではなく……」

 

凛花は、正直この時、戸惑っていたかもしれない。

それもその筈、五条が帰宅してきたかと思うと、何故かそのまま連れ出された挙句、ブティックに入ったかと思えば、着せ替え人形状態で、あれやこれや着させられ、そして辿り着いたのが、この夜祭りの場所である。

 

凛花は、黒色の生地に淡い白と蒼のコントラストの花が描かれている浴衣を着ていた。

帯は、花に合わせて淡い蒼色に流水の模様の入った物と、少し濃い目の蒼の兵児帯を重ねている。

水色の根付に、同じ色の髪結いで髪を結って、上に纏めている。

巾着も、蒼色の物だ。

五条はと言うと、紺色の浴衣でシックに決めていた。

 

「その……夜祭りに来たいのでしたら、浴衣ぐらい取りに戻りましたのに……」

 

浴衣は何着も持っている。

わざわざ、新調する必要は無かったのでは――と、思ってしまう。

 

すると、五条は何でもない事の様に、くすっと笑って、

 

「僕が凛花ちゃんに着てほしかったの、この浴衣を。それとも、同じの持ってた? 嫌だった?」

 

「え……?」

 

そう言われて、まじっと自身の着ている浴衣を見る。

確かに、この色合いのは持っていなかった。

 

「いえ、嫌ではありませんけど……」

 

素直にそう答えると、五条がにやりと笑みを浮かべて、すっと顔を近付けてきた。

そして、凛花の腰を掻き抱くと、そっと耳元に唇を寄せ――。

 

「凄く似合ってる。僕色に染まってるようで、そそられる」

 

そう言って、ちゅっとその頬に口付けを落とした。

驚いたのは凛花で、慌てて距離を取ろうとするが、腰をがっちり掴まれていて相変わらずびくともしない。

 

「ちょっ……、悟さん……っ。人の多い所でそういう事するのは――」

 

顔を真っ赤にしてそう抗議すると、五条は一瞬その碧色の瞳を瞬かせた後、ふっと優しげに笑った。

 

「何? 人のいない所ならいいんだ?」

 

「ち、違っ―――」

 

「凛花ちゃん、意外と大胆だね」

 

「だ、だから、違いますっ!!」

 

いつもこれだ。

なんだかんだ言って、五条のペースに巻き込まれている気がする。

 

凛花は、恥かしさを隠すかのように、わざと咳払いをすると、

 

「それで、どうして今日は夜祭りに来たんですか?」

 

「ん? それがさー」

 

聞いてよ! という感じに、五条が話し始める。

なんでも、ここの所任務続きで、連勤真っ最中。

今日も任務を3件も片してきたという。

そこで、五条は伊地知に休みを要求したら――伊地知が今日ここで花火が上がる事を教えてくれたのだという。

 

「僕としては、1週間ぐらい凛花ちゃんと温泉にでも行ってゆっくりしたかったのにさー」

 

「……」

 

それは、私の任務は無視ですか?

と、突っ込みたくなるのを、凛花はぐっと堪えた。

 

「“1週間もなんて無理です!! 今は、呪霊の繁忙期なんですよ!?”とか言って、駄目しか言わねーの」

 

「いや、あの……」

 

夏場は、呪霊は大量発生する。

伊地知の言い分は正しい。

五条程になれば、それこそ引っ張りだこだろう。

凛花ですら、多忙なのだから……。

 

「そしたら、伊地知が今日ここで花火上がるから、それで我慢してくださいだって」

 

「は、はぁ……」

 

「あ、でも、明日は1日休みもぎ取ったから、今夜はゆっくりできるよ!」

 

そう言って、五条が嬉しそうにするが……。

凛花は少し困ったかのように、

 

「えっと、悟さん? お休み頂けたのでしたら、ゆっくりなさった方が―――」

 

人の多い所に出たりせず、家でゆっくりしていた方が良いのではないだろうか?

と、思ってしまう。

だが五条は、さも当然の様に、

 

「勿論、明日はだらだらするよ! でも、今日は凛花ちゃんと一緒に花火見たかっんだよね。……凛花ちゃんは、嫌だった?」

 

「え……、そ、そういう、わけ、で、は……その……」

 

知らず、顔が紅潮していくのが分かる。

顔が熱い。

そんな凛花を見て、五条がくすっと笑みを浮かべる。

 

「ね、凛花ちゃんは僕と来たくなかった?」

 

「そ、そんな事は――」

 

「なら、嬉しかった?」

 

「……っ、そ、そういう聞き方は、卑怯――かと……」

 

思う。

凛花が、言葉に詰まっていると、五条は悪戯が成功した子供の様に笑って、凛花の髪を撫でた。

 

「ごめん、余りにも反応が可愛かったから」

 

そう言うと、すっと手を差し出した。

凛花が、恥かしそうにしながら、そっとその手に自身の手を乗せる。

すると、五条がぎゅっと指を絡ませて握って来た。

 

「行こうか、花火。始まるよ」

 

「……はい」

 

そのまま2人して手を繋いで、夜祭りを見ながら歩く。

時々、止まっては五条が甘い綿菓子や、りんご飴などを買ったりしている。

そうして気が付けば、喧噪から離れた海岸沿いを2人で歩いていた。

 

ざざーんと、波の音が心地よい。

凛花が海風を気持ちよさそうに受けていると、五条がくすっと笑いながら、そっと凛花の髪に触れた。

 

「……悟さん?」

 

凛花が、不思議そうに首を傾げる。

すると、五条はふっと笑って、

 

「ね、凛花ちゃんはさ、僕といると安心する?」

 

「え……?」

 

唐突な質問に、凛花の心臓がどきっと鳴る。

だが、五条はそんな凛花の瞼に口付けを落とした。

そして、そのままぎゅっと凛花を自身の胸に抱き寄せる。

 

「……僕はね、凛花ちゃんといるといつもどきどきするよ。凛花ちゃんは? どきどきしない?」

 

「そ、それは……」

 

そんなの、決まっている。

五条といるのは、安心もするけれど、緊張もしてしまう。

意識――するなというのが、無理な話だった。

 

だって、本当は私はずっと――。

 

「ほら、僕の心臓の音聞いてみてよ」

 

そう言って、凛花を更に力強く抱き締めた。

耳から、五条の心臓の音が聞こえてくる。

どきどきと、早く脈打つ音が――。

 

「あ……」

 

悟さんも、緊張……している、の?

そんな風に思ってしまう。

 

「悟さ……ぁ……」

 

一瞬、五条の碧色の瞳と目が合ったかと思うと、そのまま唇を重ねられた。

瞬間―――。

 

ど―――ん!

 

と、大きな花火が上がった。

ぱらぱらっと花火の欠片が落ちてくる。

 

「凛花……」

 

五条が甘く凛花の名を呼んだ。

そして、再び唇を重ねてくる。

角度を変えて、何度も何度も――。

 

「……っ、ぁ……は、ンん……さと、る、さ……」

 

堪らず、凛花がぎゅっと五条の浴衣の袖を握った。

 

そして、そのまま首筋を這う様に舐められて、凛花がびくんっと震えた。

五条の手がそっと浴衣の合わせ目に差し込まれてくる。

 

「ぁ……、ま、待っ……」

 

それに気が付いた凛花が慌てて身を捩った。

だが、五条は強引に凛花の身体を引き寄せると、帯の結び目にその指を掛けてくる。

 

「待てない――」

 

しゅるりと音を立てて、帯が解かれた。

はらりと帯が解けると、そのまま浴衣の前が肌蹴てしまう。

すると、五条の片手が、凛花の浴衣の合わせ目に差し込まれて来た。

そのまま肌蹴た所から手を差し込んで来て、その手が直接胸に辿り着く。

 

「ぁ……っ」

 

ぴくんっと、凛花の肩が揺れた。

その大きな手のひらでそっと胸を包まれて、やわやわと揉まれる。

その間も、五条からの口付けは止まらなくて――。

お互いの舌が絡まって、口内を蹂躙される感覚に眩暈がしてくる。

 

もう、何も考えられない――。

そう錯覚しそうになる。

 

暫くして唇を離れると、つーっと銀糸が伝って切れた。

そしてまた五条に口付けられる。

今度はそのまま首筋を舐められ、鎖骨の辺りに吸い付かれると、ちりっとした痛みが走った。

 

「ん……っ」

 

その感覚に、凛花がびくっとする。

すると、くすりと笑いながら、五条の唇が更に下に下りてくる。

 

「ぁ、や……悟さ……」

 

「凛花」

 

五条の手が、凛花の浴衣を肩から落とすのと、その白い肌が露になるのは同時だった。

そして、そのまま五条の唇は凛花の胸の先に吸い付いて来た。

 

「……ぁ……っ、ゃ……だ……めっ……さとる、さ……っ」

 

ちゅうっと吸われて舌で転がされると、あっという間にそこは硬く尖ってくる。

もう片方の胸は、五条の大きな手のひらで揉まれたり摘ままれたりと弄ばれていた。

 

そして、五条の片手が凛花の太腿をそっと撫で上げる。

浴衣の裾から手を差し込まれて、そのまま内股を撫でられた。

 

「……は、ぁ……っ。ゃ、ぁ……んン」

 

その感覚に、ぞくぞくとしたものが背中を走る。

すると――。

どどーんっ! と、大きな花火が上がった。

ぱらぱらと、火の粉が落ちて来る。

そんな花火の光に照らし出されたのは、五条と凛花の姿だった。

 

「凛花……」

 

そっと、五条の唇が離れる。

そしてそのまま、耳許に寄せられた。

 

「……逃がさないよ」

 

そう言って、優しく耳朶を舐められると、ぞくっと背中に震えが走る。

 

「ん……っ」

 

もう羞恥で死んでしまいそう――。

 

それなのに、五条の手は止まらなかった。

帯を取り払って露わになった凛花の浴衣の合わせ目をぐっと広げると、ふるりと白い肌が露になる。

その胸の先は、五条からの愛撫ですっかり硬く尖っていて……。

それを口に含むと、そのまま舌で転がすように舐め回される。

その度に、凛花の身体がびくびくと震えた。

 

凛花の耳朶に舌を這わせながら、片手はそっと太腿を撫で上げてくる。

そして――。

五条の長い指が、すっかり濡れそぼったその場所に触れた。

 

「……ぁ……っ」

 

瞬間、凛花がびくんっと身体を震わせた。

 

途端、ぴちゃと淫靡な水音が鳴る。

それに気を良くしたように、五条の指の動きも大胆になる。

ゆっくりと上下に撫でていた指が、その上にある花芽にそっと触れた。

つんっと突いてやると、凛花が腰を捩って逃げようとする。

だが、それを許さずに押さえ込むと、また今度は指の腹で押し潰す様にぐっと力を込めた。

途端――。

 

くちゅっと音を立てて、中へと指が飲み込まれていく。

そのまま出し入れを繰り返してやると、やがて凛花の唇から甘い声が漏れ始めた。

それに気を良くした五条の指が2本3本と増やされて行く。

 

そして、膣内を広げる様に動かされた時だった。

 

「ぁあ……っ」

 

凛花の背中が、びくっと大きくしなったかと思うと、五条の指をきゅうっと締め付けた。

その感覚に、五条もふっと笑みを浮かべると、そのまま指の出し入れを繰り返す。

その度に、凛花の唇からは甘い声が漏れて――。

 

もうそろそろ良いかな? と思った所で、五条はずるりと指を抜いた。

 

「……ぁ、は……ン……っ」

 

すると、すっかり蕩けきった表情の凛花が、ぼんやりとした瞳で五条を見つめてくる。

そんな凛花に口付けると、そっと浴衣の帯を全て取り払ってやった。

 

「凛花……」

 

そのまま、足を開かせて抱え上げると堤防に寄り掛かる。

そして、すっかり硬く立ち上がった己自身を宛がうと、一気に中へ押し込んだ。

 

「……っ、あ……ぁあっ!」

 

その衝撃に、凛花が背中を撓らせた。

そんな凛花の身体を抱き締めながら、更に奥へと自身を押し進める。

 

「ぁ……っ、ゃ……悟さ……っ」

 

「……ん? 苦しい……?」

 

そう言ってやると、凛花はふるふると首を横に振った。

そして、五条の背に腕を回してぎゅうっと抱き締めてくる。

それに気を良くして、今度はゆっくりと引き抜こうとすると、凛花の中が逃がすまいと絡み付いてくる。

その感覚に、五条の背中にぞくっとしたものが走った。

だが、すぐにまたぐっと中に押し込むようにする。

 

「ぁ……は、ぁん……っ、ゃ、だ、めぇえ……っ」

 

凛花が、堪らず声を上げた。

 

そして――。

段々とその動きを早くしていくと、やがて凛花がぎゅっと五条の背を掴んできた。

同時に中もきゅっと締まって来るのを感じて、そろそろかと思う。

すると、凛花が五条の首に腕を回してきた。

 

「凛花……っ」

 

それを合図の様にして、激しく腰を打ち付ける。

その度に凛花の口からは甘い声が漏れた。

 

やがて……。

ぱんっと一際大きな音を立てて、五条自身が凛花の最奥へと押し入った。

 

「ぁ……ああ……っ」

 

途端――。

どくんっと脈打つような感覚がすると共に、熱いものが注ぎ込まれるのを感じる。

その感覚に堪らなくなったのか、凛花もびくびくと身体を震わせながら達したようだった。

そんな凛花をぎゅっと抱き締めながら、その唇に口付けを落とした。

 

「んっ……、ぁ……は、ぁ……悟、さ……ンン」

 

「凛花――愛してる」

 

そのまま五条が凛花の唇に再び重ねてくる。

 

暫くして唇が離れると、お互いに見つめ合った。

そしてそのままもう一度口付けを交わす――。

 

それから五条の手がそっと凛花のお腹に触れた。

それに反応するように、凛花はまた中がきゅっと締まった気がした。

それを感じると、五条の口元に笑みが浮かぶ。

そんな五条を、凛花が不思議そうに見上げた時だった。

どどーんっ!! と一際大きな花火が上がった。

 

五条と凛花の姿が照らし出される。

凛花のその白い肌には、行為の名残か所々紅く色付いた痕が残っていた。

そしてそんな身体には、五条の所有物であるかのように紅い印がちらほら付いている。

 

あまりの艶めかしさに、五条の口から感嘆の溜め息が漏れた。

 

「ぁ……んっ……」

 

そのままそっと手で撫でると、それだけで凛花は身体を震わせる。

更に奥深くへ自身を押し入れてやると、凛花が甘い声を漏らす。

 

「……ぁっ、は、ぁあん……っ、ゃ、だ、めぇ……これ、いじょ……は……っ」

 

凛花は嫌々とするように首を振った。

だが、五条の動きは止まらない。

 

寧ろ腰の動きが更に激しくなってくる。

そんな五条に抱きついていた凛花の手がそっと解かれると、その手が五条の身体に回される。

そして、ぎゅっと抱きついてきた。

 

そんな凛花の身体を抱き締めながら、再び唇を重ねた。

舌を絡めて深く口付ける。

すると――。

 

どどーんっ!! と、また花火が上がった音がした。

 

「ん……っ、ぁ……」

 

「凛花」

 

唇を離すと、そのままぎゅうっと抱き締める。

そして、耳元で囁いた。

 

「凛花、もう俺からは絶対に逃がしてあげないから――覚悟して」

 

五条の言葉に応える様に、凛花がぎゅっと抱きついた。

すると、そんな凛花の髪を優しく撫でてやる。

それから凛花の腕を掴むと、そっとその身体を引き寄せた。

そして耳元で囁くように唇を寄せると、凛花がくすぐったそうに首を竦めた。

そんな凛花の様子を見ながら、もう一度唇を重ねる。

そのまま暫くの間、2人の甘い時間は続いたのだった――。

 

 

 

 

 

   ****    ****

 

 

 

 

 

―――翌日

 

凛花が任務を終えて五条のマンションに戻ってくると、五条が嬉しそうに迎え入れてくれた。

正直な所、昨夜の事があって恥ずかしさで当分来たくなかったのだが、五条が久々の休みの為、仕方なく来たのだ。

 

とりあえず、コーヒーを淹れて五条に差し出す。

勿論、砂糖が入っているコーヒーだ。

何気なく隣に座ると、ふいに五条の手が伸びて、きゅっと手を握られた。

そして、そのまま指を絡める様にして握られたのだ。

 

「……っ」

 

途端に心臓がどきどきと鼓動してしまう。

それに気付かれたくなくて、何とか平静を保とうとするのだが――。

するりと指の間を五条の長い指が撫でてくると、凛花の身体にぞくっとしたものが走りぬける。

 

「あ、あの……、悟さ……」

 

そんな凛花に気が付いているのかいないのか、五条の指が凛花の指を優しく撫でてくる。

まるで愛撫するかのような動きに翻弄されて、思わず甘い吐息が漏れてしまった。

 

はっとして、凛花が慌てて口元を手で押さえる。

すると、そんな凛花の様子に気付いたのか、ふっと五条が笑う気配がした。

次の瞬間――。

 

ちゅっと頬にキスを落とされたかと思うと、そのまま五条の顔が近づいてきて耳朶をぺろりと舐められた。

 

「ぁ……っ」

 

同時に繋いでいた手が離されて、今度は腰に回され抱き寄せられる。

そして耳元で低く囁かれた。

 

「凛花……可愛い」

 

その瞬間、凛花の全身にぞくぞくとしたものが走り抜ける。

その感覚に思わず身体を震わせると、そっと五条の手に肩を押されてソファに押し倒されてしまった。

 

「ちょっ、待っ……」

 

「待てない」

 

そのまま覆い被さってくる五条を見上げると、その瞳は情欲に染まった色をしている。

それにどきりとした。

だが、すぐに五条の唇が下りてきて、凛花の唇を塞ぐ。

そしてそのまま何度も角度を変えながら口付けを繰り返した後、ゆっくりと離れて行った。

 

すると今度は首筋に顔を埋められて強く吸われる感覚があり、ちくりと痛みが走る。

それさえも快感に変わってしまい、凛花はぎゅっと目を瞑った。

暫くして五条の顔が離れると、今度は耳許に寄せられて囁かれた。

 

「んっ……、ぁ……」

 

その吐息がくすぐったくて身を捩ると、そのまま耳朶を舐め上げられて甘噛みされる。

そして、再び首筋に吸い付かれたかと思うと、今度は鎖骨の下辺りを強く吸われた。

五条によって付けられた所有印の数は既に数えきれない程になっていて、凛花の身体には至る所に五条の痕が残っている状態だ。

それを思い出すだけで羞恥心と嬉しさが同時に込み上げてくる。

が、凛花は、はっとして慌てて五条を押し退けようとした。

 

「ま、待って下さいっ……、さ、流石に3日も連続は――」

 

「嫌?」

 

そう言った五条の表情が少し哀しそうに見えて、凛花がぐっと押し黙る。

 

「そ、その顔は卑怯です……」

 

凛花が、頬を膨らませてそう言うと、五条はくすりと笑いながら、ちゅっと音を立てて口付けてきた。

そのまま深く口付けられる。

 

何度も角度を変えて繰り返されるそれに、頭がくらくらしてきた。

やがて唇が離れると、銀糸が伸びて行くのが目に入り、思わず視線を逸らすと五条に顎を掴まれて視線を合わせられた。

そしてまた唇を重ねられる。

 

今度は触れるだけの優しいキスだった。

 

「凛花――今日も離してあげられないよ。だって、きっとまた明日から連勤だから、しっかり“凛花”を補充しておかなきゃ」

 

「…………え」

 

五条の言葉を聞くや否や、凛花は固まってしまった。

そして――なし崩しのまま、また抱かれてしまったのは言うまでもない。

 

翌日、出勤した五条は、それはもう生気が満ちて艶々としていたそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五が、キレて休み要求する話?

で、花火~の流れw

 

2024.07.15