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◆ 五条悟 「Sweeter Than Chocolate」
(呪術廻戦夢 「深紅の冠 ~鈺神朱冥~」 より)
―――2月14日・深夜
伊地知潔高の運転する車が、あるマンションの前に停まった。車内の時計を見ると、もう23時半を過ぎようとしていた。辛うじて、日付が変わる前に着いたことに安堵する。
「五条さん、お疲れ様でした。えっと……場所はここでよかったのですか?」
そう言って、伊地知が後ろに乗っている五条悟の方を、バックミラーで見る。すると、五条はふと外を見て、
「合ってるよ。伊地知もお疲れさん」
それだけ言うと、後部座席のドアを開け、五条は車から降りた。そして、そのままマンションのエントランスへ向かって行く。その後ろ姿を見ながら、伊地知は首を傾げた。伊地知の記憶が間違っていなければ、ここは、五条所有のマンションの内の一つではなく、彼女の――。
「……」
そこまで考えて、伊地知は考えるのをやめた。考えてもロクなことにならないと判断したのだろう。心の中で合掌すると、伊地知はそのままアクセルを踏んだのだった。
**** ****
凛花はソファに座ったまま、目の前のテーブルに置かれたままの、蒼いリボンに水色のラッピングペーパーで包まれた箱を見つめていた。部屋の時計を見ると、もう23時半を過ぎている。五条は今日中に逢いに来ると言っていたが、やはり任務が長引いているのかもしれない。
だからと言って、こんな時間に電話する訳にもいかない。そもそも、電話して任務の妨げにならないとも限らないし、それに――。
電話する程の内容でもないわよね……。
別段、今日中に渡さないといけないと、決まってはいない。明日でも、明後日でも目の前のこれは逃げたりしないのだ。ただ……。今日渡せると思って、朝からキッチンに立って頑張って用意した身としては、少し期待しすぎていた自分に苦笑いしたくなるような、所在ない寂しさを感じずにはいられなかった。
「任務だもの、仕方ないわ」
まるでそう自分に言い聞かせるように口にすると、目の前のそれを手に取り、キッチンへ向かった。そして、冷蔵庫へ仕舞おうとしたその時だった。
不意に、ピンポーンと、部屋のインターフォンが鳴ったのだ。一瞬「え?」と凛花がその瞳を瞬かせる。その音はエントランスではなく、自室の玄関のものだったからだ。
本来、このマンションは一階のエントランスで住人の許可を得なければ、エレベーターすら動かせない仕組みになっている。フロントを通さず、ましてや事前の連絡もなしにここまで辿り着ける人間など、一人しか心当たりがなかった。
「……悟、さん?」
驚きと、それ以上に溢れ出した安堵感。
凛花は手元の箱を慌ててカウンターに置くと、吸い寄せられるように玄関へと駆け出した。
モニターで外の様子を確認することすら、今の彼女の頭にはない。不審者だったら、とか、鍵を開ける前に相手を確かめなきゃ、といった日常の警戒心は、彼の気配を感じた瞬間にどこかへ吹き飛んでしまっていた。
もどかしい手つきでロックを解除し、勢いよくドアを開ける。
「……遅いですよ、悟さん」
少しだけ、本当に少しだけ、拗ねたような響きを含んだ声。
目の前に立つ彼に向けたその言葉は、彼が自分にとって「当たり前に受け入れられる存在」であることを何よりも雄弁に物語っていた。
すると、ドアの向こうに立っていた五条が、凛花を見るなり嬉しそうに微笑んだ。
「ごめん、待った?」
そう言いながら、すっと凛花の髪に触れる。そして、その長い指に髪を絡めると、そのままそっと頬を撫でてきた。そんな彼の仕草に、一瞬どきっとしてしまう。凛花はほのかに赤くなる頬に気付かないふりをしながら、さっと視線を逸らした。
「べ、別に……その、待っていた訳では……。に、任務は仕方ないですし……」
もごもごと、まるで言い訳のように口籠ってしまう。そんな凛花を見て、五条はくすっと笑った。そして、すっと凛花の耳元に唇を寄せると、
「――嘘だね」
そんな囁きを、その耳元へと落とした。
凛花が思わず、ぱっと五条の方へ視線を向けると、彼は悪戯っぽく笑ってみせた。その碧い瞳が優しく細められる。まるで愛しいものを見るようなその瞳に見つめられて、凛花の顔がますます赤くなった。そんな顔を見られるのが恥ずかしくて、思わず俯くと、不意に五条の長い指が彼女の顎を掬い上げたかと思うと、そのままそっと上向かせたのだ。
「あ……っ」と、思った時には遅かった。まるで、そうするのが当たり前であるかのように、五条の唇が凛花のそれに重ねられる。
最初は触れるだけの優しいキス。けれど、すぐにその唇は深く凛花に重ねられた。そして、そのまま彼女の唇を割って、五条の舌が侵入してくる。歯列をなぞり、上顎を舐められて、思わず凛花が声を漏らしてしまうと、それを待っていたかのように彼女の舌を絡め取ったのだ。そのまま吸い上げられ甘噛みされて、その度に凛花の身体が小さく震えた。
いつの間にか腰に回された腕でぐっと抱き寄せられて、逃げることすら許されなかった。
思わず五条の背中に腕を回してしまうが、まるでそれを望んでいたかのように、より一層強く抱き寄せられてしまう。そのまま何度も角度を変えながらキスをされて、凛花は思わずぎゅっと五条の服を掴んだ。すると、宥めるように背中を撫でられる。しかしそれは逆効果だったようで、余計に彼に縋ってしまうことになったのだ。
どれくらい時間が経っただろうか。ようやく解放された頃には、もう足腰に力が入らず、息も絶え絶えになっていた。そんな凛花の様子を見て満足そうに微笑むと、彼は再びその唇を啄んだ。
「ん……っ、さ、悟さ……ん……っ」
「凛花の唇、甘い。チョコレート味だね」
ぺろりと自分の唇を舐めながら言う五条に、凛花は恥ずかしさのあまり俯いてしまうが、その顎を再び五条の手で上向かせられると、またすぐに唇が重ねられる。
何度も繰り返されるキスの合間に、彼の大きな手のひらが、凛花の腰から背中を撫で上げてきて、思わずびくりと身体が震える。そのままその手が服の中に入り込みそうになった時だった。
「ま、待って……くださ……っ」
凛花が震える手でその大きな手の甲を押さえ、制止の声を上げた。まだ開いたままのドアの向こう、廊下の冷たい空気が流れ込んでいることに気づいたからだ。
だが、五条は止まらない。それどころか、空いた方の手で凛花の背後のドアノブを掴むと、バタンッ、と重低音を響かせてドアを閉めた。カチャリ、と鍵の掛かる音が静かな玄関に響く。
「……外、気にしてたの? 大丈夫、鍵も閉めたし、誰も来ないよ」
逃げ場を塞ぐように、閉まったばかりのドアに凛花を押し当てる。至近距離で見つめてくる碧い瞳は、任務明けの熱を帯びて、いつもよりずっと濃い色をしていた。
「ねえ、チョコの続き……。中まで味見させてよ」
凛花が「中って?」と聞き返す間もなく、再び深いキスが降ってきた。今度は玄関の冷たい壁と、彼の熱い胸板に挟まれて、凛花に逃げる術はない。
「ん……っ、ふ、ぁ……っ、さと、る、さ……っ」
舌が絡み合い、何度も角度を変えて、口内を蹂躙される。ぴちゃりという水音が、静かな玄関に響くのが居たたまれなくて、思わず耳を塞ぎたくなる。けれど、そんな余裕すら与えてもらえないまま、五条の手はいつの間にか彼女の服の中へと侵入していた。そしてそのまま下着越しに胸に触れられる。その大きな手のひらで包み込むように揉みしだかれて、凛花はまた小さく声を漏らした。
すると、ようやく唇が解放されたかと思うと、今度は首筋に顔を埋められ強く吸い付かれる。ちくりとした痛みが走り、思わず身を捩ると、今度は耳に舌を差し込まれた。
「ぁ……っ」
ぐちゅりという水音がダイレクトに響いてきて、思わず目を瞑る。けれど、それは逆効果だったようで、余計に彼の舌の動きを感じてしまうことになっただけだった。
耳の形をなぞるように舐められて、そのまま甘噛みされて、また強く吸い上げられる。そして同時に服の中に入り込んだ手が背中や脇腹を撫で上げてきて、凛花はびくびくと身体を震わせた。
まるで全身を愛撫されているかのような錯覚に陥りそうになる程の激しいキスと愛撫に翻弄され、もう何も考えられない。ただこの甘い快感に身を任せるしかなかったのだ。
やがて、ようやく五条の手が離れる頃には、凛花の息はすっかり上がってしまっていた。ぼんやりとした意識のまま彼を見つめると、ぺろりと舌を舐めながら見下ろしてくる碧い瞳と目が合った。その瞳に宿る情欲の炎に魅入られたように目が離せない。だが次の瞬間にはふわりと微笑まれるものだから、凛花の胸はどきりと高鳴った。
「……っ」
そんな顔されたら、何も言えないわ……。
熱を帯びた碧い瞳に見つめられ、凛花がなす術もなく立ち尽くしていると、五条は満足げに目を細めた。そして、逃がさないと言わんばかりに彼女の腰をぐいと引き寄せ、玄関に備え付けられた姿見の鏡へと押し付けたのだ。
「あ……っ、悟、さん……?」
背中に当たる鏡の冷たさに、凛花がびくりと肩を揺らす。だが、それ以上に彼女を動揺させたのは、鏡越しに自分を見つめる五条の視線だった。
「……見て。凛花、すごい顔してるよ」
耳元で、低く湿った声が響く。
五条の手が、今度は凛花のスカートの裾から、躊躇いなく滑り込んできた。薄い下着を隔てて、彼の大きな手のひらの熱が直接伝わってくる。
「待っ……ここで、は……っ」
「ここで『何』が嫌なの? 触られるのが? それとも……」
五条はわざと意地悪く言葉を途切れさせると、指先で彼女の最も敏感な部分を、服越しに愛撫し始めた。
「は、ぁ……っ! あ、ん、……っ」
「鏡、ちゃんと見て。自分でも気づいてなかったでしょ。いつも、こんなにトロトロな顔してるってさ」
鏡の中、五条に抱きすくめられ、視界が潤んでいる自分の姿が嫌でも目に入る。五条の長い指が動くたび、鏡の中の自分が快楽に顔を歪めるのが分かって、凛花は羞恥に震えた。
「……ぁ、だめ、……そんな……見れ、ない……っ」
「駄目じゃないよ。……ほら、もっと脚の力抜いて」
逃げようと閉じた脚を、五条の膝が強引に割り入ってくる。玄関という、誰かが来るかもしれない、薄いドア一枚隔てただけの場所。そんな場所で、彼の指が、直接肌に触れてきた。
「ぁ……っ! ン、ゃ、ぁ……っ!」
「ここ、チョコより甘い匂いする……。凛花、これ、もう我慢しなくていいってこと?」
ぐちゅり、と。指先が湿った音を立てる。その音さえも、五条は楽しむように、凛花の耳元へ吐息と共に吹きかけた。その刺激に、凛花はまた小さく身体を震わせる。そして、そのまま耳朶を食まれ、舐められたかと思うと、今度は首筋に強く吸い付かれたのだ。
「ん……っ、さと……っ。ぁ……、は、ぁ……っ」
まるで自分のものだと主張するようなその行為に、凛花は思わずぎゅっと目を瞑った。しかしそれは逆効果だったようで、五条の指は容赦なく彼女の敏感な部分を責め立てるように動き始めた。
くちゅりという水音が大きくなるにつれて、凛花の呼吸も荒くなっていく。やがて、五条の指が下着の隙間から差し込まれたかと思うと、直接割れ目に触れてきたのだ。
「あ……っ!」
その瞬間、今までとは比べ物にならない程の強い快感が凛花を襲う。思わず腰を引いて逃げようとするが、それは許さないとばかりに五条に引き寄せられただけだった。そしてそのまま何度も割れ目をなぞられるうちに、やがて彼の指先がある一点を捕らえたのが分かった。と、同時にそこを強く押されてしまい――、
「あぁ……っ! ン、はぁん……っ!」
一際高い声を上げ、凛花の身体が大きく仰け反る。一点を執拗に突かれる快感に、脳裏が真っ白に染まっていった。
「ほら、鏡見て? 今の凛花、すごく可愛いよ。……ここ、こんなに締まって、僕の指を離してくれない」
五条は耳元で蕩けるような低声を囁きながら、もう一度、彼女の顔を鏡へと向けさせた。そこには、悦びに瞳を潤ませ、唇を震わせる、自分でも見たことのないほど淫らな表情の自分が映し出されていたのだ。それに気付いてしまった瞬間、凛花の顔が真っ赤に染まった。
「ぁ、……ゃ、見ない、で……っ」
「見ないなんて無理でしょ」
五条はくすりと笑うと、背中から抱きしめていた腕を解き、凛花の身体をひょいと持ち上げた。そしてそのまま、玄関の壁際に設えられたコンソールテーブルの上へと、彼女を座らせたのだ。
「ぁ……っ、さと、る……さん……?」
「ここ、ちょうどいい高さだね」
テーブルに飾られていた花瓶や小物が、凛花が乗せられた衝撃で小さく音を立てる。五条は彼女の両膝を割り、その間に割り込むようにして膝をついた。そして、見上げるような形になった五条の碧い瞳が、凛花の脚の間、熱く濡れたそこをじっと見つめる。その視線だけで、凛花は全身が発火しそうなほどの羞恥に襲われた。
「ま、待って、……そこは、……っ」
「待たないよ。凛花が朝から一生懸命準備してくれた『ご褒美』、全部味わいつくすって決めたから」
五条はそう言って悪戯っぽく口角を上げると、躊躇いなくその顔を、彼女の秘部へと埋めたのだ。
「――っ! ぁ、は……っ、ん、あぁ……っ!!」
直接触れる舌の熱さと、逃げ場のないテーブルの上での感触。凛花は堪らず五条の白銀の髪に指を絡め、彼を押し除けようとするのか、あるいは引き寄せようとするのか、自分でも分からないまま、ただ激しく身を悶えさせた。だが、五条の舌は容赦なく凛花の一番敏感な部分を刺激してくる。ぴちゃりと濡れた音が響く度、彼女の腰が大きく跳ねた。
そして、その反応を楽しむかのように、彼の長い指が割れ目を何度も往復する。その度に、新たな蜜が溢れ出し、それをまた彼が舐め取るのだ。その繰り返しに、凛花はもう何も考えられなくなっていた。ただ与えられる快感に翻弄され、口から漏れるのは意味のない喘ぎばかりになっていた。
「あ……っ、ん、ぁ、悟、さ……っ、は、あっ! だめ……ぇ……っ!」
やがて五条の指先がある一点を捉えると、凛花はひと際高い声で鳴いた。それは今までよりも強い快感だったようで、彼女は無意識に腰を引いて逃げようとするが、五条の指がそれを許さないとばかりに追いかけてくるのだ。
「あぅ……っ! あ、ぁン、やぁ……! そこ、ばっかりぃ……っ」
いやいやするように首を振りながら懇願するも、五条には聞き入れてもらえない。それどころか、彼は更に強く凛花の花芽を吸い上げた。その瞬間、彼女の視界が真っ白に染まる。
――あ……っ、もう……っ!
そう思った時には遅かった。全身を電流が駆け抜けたかのような感覚に襲われ、次の瞬間には身体から力が抜けていくのが分かった。ぐったりとテーブルに身を預ける凛花を見て、ようやく五条も顔を上げる。
彼女は肩で大きく息をしていた。その呼吸に合わせるように、上下する胸は汗ばみ、白い肌に桜色の頂を彩っている。そんな姿を見下ろして、五条もまた熱い吐息を漏らした。そしてそのまま彼女の下着へ手をかけると、ゆっくりとそれを下ろしたのだ。
脚首まで下りたところで止まると、彼は片脚ずつそのしなやかな脚から抜き取った。五条の眼前に晒された凛花のそこは、すっかり蕩けきっており、ひくついているのが見て取れた。その光景に思わずごくりと喉を鳴らしつつ、今度は自分のズボンを緩めていく。
すると、現れた彼の剛直は既に硬く張り詰めており、血管すら浮き出るほどだった。それを見て、凛花は思わず息を呑んだ。
「ぁ……っ、悟、さ……待っ……!」
「無理、待てない」
そう言って彼は自分のものを見せ付けるように軽く扱いてみせた。そしてそれを彼女の秘部に押し当てる。
「ぁ……っ!」
その熱さと硬さに驚いたのか、彼女はびくりと腰を引いた。だが、それは逆効果だったようで、五条の先端がぬるりと滑って凛花の花芽を掠めたのだ。その瞬間、彼女はまた大きく背中を仰け反らせた。
「ゃん……っ! あ、ぁン……っ!」
その刺激に甘い声が上がる。それに気をよくしたのか、五条の動きが激しくなった。彼の硬く張り詰めた熱いモノに何度も花芽を擦られるたび、凛花の口からは悲鳴じみた嬌声が上がる。そしてついに耐えきれなくなったのか、彼女の瞳からは涙が溢れ出したのだ。
しかしそれは苦痛によるものではなく、むしろ快感からくる涙だった。その証拠に、彼女のそこは五条のものを離すまいとするように絡みついているのだから。
だがそんな状態になってもなお、彼女は必死に抵抗しようと試みていた。テーブルについた両手でなんとか上半身を持ち上げようとするが、そのたびに五条の手が伸びてきて引き戻されてしまうのだ。
そしてついには――。
「ああん……っ!」
ぐちゅんっ! という音と共に五条の剛直が全て凛花の中へ埋め込まれた。その衝撃に、視界が一瞬真っ白に染まる。だがすぐにまた激しい快感の波に襲われ、彼女は背中を弓なりに反らした。
「ぁ……っ、待っ……! こんな、とこ、で……っ。は、ぁ……っ!」
凛花は必死で首を振るが、もちろん彼が聞き入れるはずもなかった。それどころか、更に奥へと入り込もうとするようにぐいぐいと腰を押し付けられる。その動きに合わせて、彼女の口からは悲鳴じみた嬌声が漏れ出た。
そして、五条の太く長いモノが根元まで収まる頃には、彼女はすっかり蕩けきった表情になっていた。そんな姿に満足したのか、五条がゆっくりと動き始める。最初は緩慢だった抽挿は次第に激しくなり、その度に卑猥な水音が玄関に響き渡った。
ぐちゅっ、ずぷっという音と共に熱いモノが出入するたび、凛花の唇からは甘い声が漏れ出た。それはまるで自分の声ではないようで、凛花は慌てて手で口を塞ごうとしたが、それもまた五条の唇によって阻まれてしまう。
「……はっ、凛花……っ」
熱っぽい声で名前を呼ばれると、それだけでぞくぞくとした快感が背筋を駆け上がった。さらに激しく揺さぶられれば、もはや凛花に抵抗する術など残されてはいない。ただ彼に身を委ねるしかないのだ。
そしてついにその時が来た。五条の動きが一層激しさを増したかと思うと、次の瞬間には子宮口を押し潰すような勢いで剛直を突き立てられ、それと同時に熱い飛沫を叩きつけられていたのだ。
どくん、どくん、という脈打ちと共に吐き出されたそれは止まることなく続き、その刺激で凛花のそこはきゅうっと収縮する。まるで搾り取るかのようなその動きに、五条のモノは萎えるどころか更に質量を増したのだ。
やがてようやく全てを出し切ったのか、ずるりと引き抜かれると、後を追うように白濁液が流れ出たのが分かった。その感触にすら感じてしまい、凛花はふるりと身を震わせると、そのまま、凛花の身体は支えを失った人形のように、前へと倒れ込んだ。
「……っ、ぁ……」
だが、コンソールテーブルから滑り落ちそうになった彼女を、五条は当然のようにその大きな腕で受け止めた。熱く、逞しい胸板。先ほどまで自分を貫いていた男の体温がダイレクトに伝わり、凛花は堪らず彼の肩に顔を埋めた。鼻をつくのは、彼自身の香りと、隠しきれない情事の匂い。
「……凛花、可愛かったよ」
耳元で響く五条の声は、賢者タイムなど微塵も感じさせないほどに艶っぽく、甘い。彼はぐったりとした凛花の背中を優しく撫で、腰から片腕を回して、軽々とその身体を抱き上げた。まるで壊れ物を扱うような慎重さと、決して離さないという強引さが同居する抱き方。
「ぁ……、さとる、さん……」
「ん? 何?」
「……もう、むり……です……」
消え入りそうな声で訴える凛花に、五条はくくっと喉を鳴らして笑った。そして、彼女の額にそっと柔らかなキスを落とす。
「無理なんて言わせないよ。まだ『ご褒美』の半分も終わってないんだから」
五条はそう言うと、長い脚で寝室へと向かった。廊下の鏡に映る2人の姿――乱れた格好のまま彼に縋り付く自分と、余裕の笑みを浮かべて自分を運ぶ彼。
「……続きは、ベッドでしよっか」
その言葉が終わるか終わらないかのうちに、寝室のドアが開かれる。そしてそのままベッドに押し倒されると、噛み付くようなキスをした。歯列をなぞられ、舌を絡め取られ、呼吸すらままならないほどに激しく貪られたのだ。
漸く解放された時には、凛花の意識は既に朦朧としていた。
「さとる、さん……」
「うん、次はどうやって気持ち良くなりたいか言ってごらん?」
五条の指先が首筋から鎖骨へと降りていく。たったそれだけのことで甘い吐息が漏れた。もう理性など残っていない身体は正直で、彼女の口からは無意識のうちに言葉が漏れていた。
「触って、欲しいの……」
熱に浮かされた瞳で彼を見つめながら、自らシャツのボタンを解き、それを肩から滑らせた。露わになった白い膨らみが、まだ荒い呼吸に合わせて細かく波打つ。彼女は震える手で五条の大きな手を掴むと、それを導くようにして、自分の胸へと押し当てた。
「……っ」
柔らかな肌に、彼の硬く熱い手のひらが沈み込む。自分から誘うという、普段の彼女なら到底考えられない大胆な行動。その気恥ずかしさに凛花はすぐに視線を逸らしたが、五条の手を離そうとはしなかった。それどころか、もっと深く触れてほしいと願うように、自らその手のひらに胸を押し付けたのだ。
「へぇ……。自分からそんなことするなんて、相当感じてるんだ?」
一瞬、五条が驚いたように目を見開いたのを、凛花は見逃さなかった。だが彼はすぐに、獲物を見つけた肉食獣のような笑みを浮かべ、彼女が導いたその手を、自らの意思で動かし始めたのだ。
「っ、ぁ……あん……っ、はぁ……ぁ、ああ……っ!」
大きな手のひらで包み込まれ、指先で頂を弾かれる。凛花が自ら求めた刺激は、想像以上に彼女の身体を激しく突き動かした。
「……声、もっと聞かせて。凛花が自分から『ここ』を触らせたんだから、責任取ってよ」
五条は反対の手で彼女の後頭部を支え、逃げられないように固定すると、今度はその胸元に顔を埋めた。
「あぁ……っ! さと、る……さ……っ、は、ぁん……っ!」
敏感な頂を直接舌で転がされ、吸い上げられる。玄関先での行為で十分に感度が高まっていた凛花の身体は、彼の舌が触れるたびに弓なりに跳ねた。
「……ここ、さっきよりずっと熱いよ」
「ゃ……っ、いわな……で……っ」
快楽の濁流に飲み込まれ、凛花はただ彼の白銀の髪をかき乱し、縋り付いた。
舌先で転がされたり甘噛みされたりしているうちにすっかり硬く尖ったそこは、まるでもっとしてくれと言わんばかりにその存在を主張しているかのようだった。それを察したのか、五条の手の動きが激しくなる。
それと同時に彼のもう片方の指が、凛花の太腿の内側を這っていった。そして辿り着いた先は彼女の最も敏感な部分だ。
「ぁあ……っ」
既に十分すぎるほど潤っていたそこは、五条の長い指をいとも容易く受け入れた。くちゅくちゅという水音と共に与えられる刺激に、凛花の口からはひっきりなしに甘い声が上がる。
だがそれはまだ序の口に過ぎなかったようだ。中に入っていた指が引き抜かれると同時に、彼はその長い脚を凛花の脚の間に滑り込ませてきた。そして、そのまま彼女の腰を引き寄せるようにして持ち上げる。すると必然的に五条の膝上に跨るような体勢になったのだ。
瞬間、ぎくりと凛花の表情が強ばった。
あ……。
そう思った時には既に遅く、五条の手が凛花の腰を掴むと、そのまま己の剛直の上に引き下ろしたのだ。
「ああ――っ!!」
ずちゅっ! という音と共に熱い楔が挿入され、凛花の口から甲高い悲鳴が上がる。しかしそれはすぐに甘い吐息へと変わり、彼女は無意識のうちに自ら腰を揺らし始めていた。
結合部からは白濁した液体が溢れ出し、それが潤滑油となって五条のものが更に奥深くへと潜り込んでくる。その動きに合わせるようにして下からも突き上げられると、あまりの快感に頭が真っ白になった。
目の前がチカチカして何も考えられなくなる。だがそんなことはお構いなしとばかりに、五条の動きは激しさを増した。どちゅっ! ばちゅんっ! という激しい水音と肌同士がぶつかり合う音が響き渡り、その度に凛花は悶えた。快楽の波に飲み込まれた彼女の身体は、もう自分の意思では制御できない程になっていたのだ。
そんな凛花の姿を見下ろしながら、五条は満足げに微笑んだ。そしてそのまま上体を起こすと、今度は対面座位の姿勢になる。自重で更に深くなった結合部。その刺激だけで軽く達してしまいそうになったが、それも束の間のことで、すぐに下から激しく突き上げられたのだ。
「……っぁあ! ああん……っ、ゃ、だ、め……っ! さと、る、さ……っ!」
あまりの快感に一瞬意識を失いかけたものの、すぐに引き戻される。そしてまた激しい抽挿が始まるというループに陥っていた。
もはや何度絶頂に達したのかすら分からない。それでもまだ足りないとばかりに、彼は凛花の身体を抱き寄せた。
「……凛花……っ」
五条は涙で濡れた彼女の頬を親指でそっとなぞり、そのまま強引に唇を奪った。対面座位で密着した体躯からは、お互いの心臓の鼓動がうるさいほどに伝わってくる。五条は彼女の細い腰をしっかりと掴んで固定すると、逃げ場を奪うように、さらに深く、えぐるような角度で腰を突き上げた。
「――っ!! ぁ、は、ぁぁあ……っ!」
「……凛花の中、熱すぎて……っ、僕までおかしくなりそうだよ」
五条の低い声が、直接脳内に響く。
彼は凛花の耳朶を甘噛みし、そのままうなじへと鼻先を寄せ、深くその香りを吸い込んだ。任務で荒んでいた彼の神経が、彼女という至高の「毒」で塗り替えられていく。
「ぁ……っ、さと、る、さ……っ! も、もう、……いっぱ、い、で……っ」
「いいよ、全部出し切って。凛花の中、僕でいっぱいにしてあげるから」
容赦のない速度で繰り返される抽挿に、凛花は彼の首にしがみつき、激しく身を震わせた。結合部からはせき止められないほどの蜜が溢れ、シーツを汚していくが、そんなことを気にする余裕など2人にはない。
五条の動きが、一段と重く、鋭くなった。最奥を執拗に叩きつけるような衝撃に、凛花の視界は火花が散ったように白く弾ける。
「っ……凛花……っ!」
五条が彼女の背中に爪を立てるほど強く抱き寄せた瞬間、熱い奔流が彼女の奥深くに叩きつけられた。
「あぁ……っ!!」
凛花は言葉にならない絶叫を上げ、そのまま真っ白な絶頂へと突き落とされた。内側から焼かれるような熱に、全身が激しく痙攣を繰り返す。だがそれは彼女に苦痛を与えるものではなく、寧ろ脳髄までもが蕩けてしまいそうなほどの快感だった。
「凛花……」
そっと五条が名を呼び、その大きな手のひらで彼女の頬を包み込む。そしてそのまま優しく口付けた。それは、先ほどまでの荒々しさが嘘みたいに静かだった。呼吸を整えるように、凛花の額に、頬に、もう一度だけ唇が触れる。
「……お帰りなさい、悟さん……」
掠れた声でそう言うと、彼は一瞬だけ目を細めた。それから凛花を抱き寄せ、乱れた髪を指先で梳く。
「ただいま。……間に合ったでしょ、ちゃんと」
その言い方が少しだけ子供っぽくて、凛花は小さく笑った。彼の胸に頬を預けたまま、指先でシャツの端を掴む。
「……待って、たんです。今日……ずっと……」
今度は誤魔化さない。そんな凛花の背を、五条は何も言わず、ただゆっくり撫でてくれていたのだった。
しばらくして、彼が凛花の身体をシーツの上に優しく横たえる。そして、乱れた掛け布を整えると、サイドテーブルに置いておいた、水差しからグラスに水を注ぎ、差し出してきた。
「飲める?」
頷くと、彼は手を添えて少しずつ飲ませてくれる。その仕草が妙に丁寧で、さっきまでの熱の余韻が、静かに甘さへ変わっていった気がした。
ふと、凛花は思い出したように目を瞬かせた。
「……あの、キッチンに」
「ん?」
「チョコ、用意していたのです。今日、渡したくて」
五条は一瞬きょとんとして、それから愉しそうに笑った。
「じゃあ、取りに行こっか」
そう言って抱き上げようとする腕を、凛花が慌てて止める。
「じ、自分で歩けます……っ」
「ほんと? さっき“もう無理”って言ってたの誰だっけ」
揶揄う声に、凛花は頬を赤くしながらも立ち上がった。そして、手を引かれながら、2人でゆっくりとキッチンへと向かった。
カウンターの上、蒼いリボンの箱。
凛花がそれを差し出すと、五条は珍しく何も言わず受け取った。五条は慣れた手つきで包装を解くと、一粒、口に運ぶ。
少しだけ目を伏せて味わってから、彼は満足そうに凛花を見下ろした。
「ん、僕の好みに合わせて、相当糖度上げたでしょ? 凛花ちゃんは本当に僕の甘やかし方を知ってるよね」
そう言って、彼は凛花の指先を取り、残った欠片をそっと唇へ運ばせた。触れた距離で、低く囁く。
「でも、こっちの方がもっと甘い。……このチョコも、オマエも、全部僕のもの。来年からは、今日を『僕がオマエを独り占めする日』に固定しなきゃ」
「固定って……」
凛花が思わずくすりと笑ってしまうと、五条は彼女の指を自身の指で絡めとると、
「……じゃあ約束。来年も、その次も――ずっと僕の隣で甘くしてよ」
そう囁いて、その指に口付けたのだった。
2026.03.15

