花薄雪ノ抄
     ~鈴蘭編~

 

◆ 五条悟 「Until Midnight Snow」

(呪術廻戦夢 「深紅の冠 ~鈺神朱冥~」 より)

 

 

―――12月23日

その日、東京は冬だというのに、朝から雲ひとつない晴天だった。天気予報も『数日は晴れ模様が続きそうです』と言っていて、折角のクリスマス前だというのに、雪の気配は欠片もなかった。

 

今年は、きっと降らない――。そう思わせるほど、空はあっさりと澄んでいる。

 

夕方になると、街は一気にイルミネーション一色に染まった。道行くカップルたちは手を繋ぎ、腕を組み、当たり前のように幸せそうに歩いている。窓の外を見れば、きらきらと光るライトアップが視界いっぱいに広がっていた。

 

凛花はというと、そんな光景を何処か他人事ように感じていた。というのも、毎年この時期になると、五条が強制的に「クリスマスの凛花の予約」をしてくるのだが、今年は違った。何故なら、彼は今日から25日までの3日間、任務という名の出張でいないからである。

五条的には24日から25日は、凛花は自分と過ごす決まり! とまで常々言ってた程なので、今回の任務はかなり不服だったらしい。

 

『任務は仕方ないですよ』

 

そうは言ったものの、正直凛花は少しほっとしていた。理由は二つある。まず一つは、五条と24日も25日も一緒にいるとなると、朝までコース確定で、生半可な覚悟では乗り越えられないからである。それにもう一つは、たまには1人ゆっくりとしたクリスマスもいいかもしれないと、思ったからだ。

 

五条と出逢ってからずっと、基本クリスマスは完全に押えられていた。なので、彼以外と殆ど過ごした記憶がない。最後の記憶は、初等部に通っていた頃だろうか……。今思うと、五条と出逢って今年まで、結構な長い時間を一緒にいる事になる。そう思うと、少し彼のいなクリスマスは寂しく感じた。

 

時計をみれば、もう23時半を指していた。もう少ししたら日付が変わる。窓の外は相変わらず満天の星空と、イルミネーションで、雪の気配はなかった。

 

「やっぱり、雪……降らない、わよね……」

 

思わず、そんな言葉がぽつりと零れた。きっと、この様子だと“奇跡”でも起きない限り、雪など降らないだろう――。

 

「……」

 

凛花は、無意識に唇に指先を当てた。

 

――もし、日付が変わる前に逢えたら。その時は、私からキスをする。

そんな約束を、確かに交わしたのを思い出す。

 

雪なんて降らなくてもいい。でも……。

 

そこまで考えて、小さくかぶりを振る。

 

馬鹿みたい。来るはず、ないのに……。

そう思った時だった。

 

 

――ピンポーン

 

 

「え……?」

 

不意に部屋のインターホンが鳴った。こんな遅い時間に誰が……? と、一瞬疑問に思ってしまう。凛花は少し躊躇いつつも、部屋に付いている、モニターからマンションの入り口を見た。そこにいたのは――。

 

「……っ」

 

凛花は息を呑んだ。慌てて部屋を飛び出す。

 

――そう、“奇跡”なんて起きない。

 

息が上がる。走る足がもつれて、上手く走れない。

 

――でも……でも、もし本当に“奇跡”が起きたら……?

 

エレベーターを待つ時間が惜しくて、階段を駆け下りる。それから、そのままマンションの入口へ向かうと――。

 

 

「……凛花」

 

 

そこには、息を切らせた五条が立っていたのだ。

 

凛花は、思わずその場に立ち尽くしてしまった。あり得ない――。25日まで出張でいない筈の五条が、ここにいるなんて……。でも……。

 

伸ばす手が震える。そっと彼の頬に指で触れると、ひんやりとした感触が伝わってきた。見ると、いつもより髪も乱れていて、息も少し上がっている。でも、その表情は彼そのもので……。五条はにっこりと微笑むと、

 

「……ちゃんと、帰ってきたよ」

 

「……」

 

――ああ、本当に……。

 

そう思った瞬間、凛花の深紅の瞳からぽろりと涙が零れ落ちた。それは、止まる事を知らないように、次々と溢れてくる。すると、五条が一瞬驚いたような顔をした後、ふっと柔らかく笑みをかべた。そして、その親指でそっとその涙を拭ってくれる。

 

「……泣くほど僕に逢いたかったの?」

 

半分冗談めかしてそう言う彼の声音は酷く優しくて――凛花は、溢れ出てくる涙を止める事が出来なかった。首を振って、否定しようとしても、喉が詰まって言葉にならない。代わりに、震える息をひとつ整えてから、凛花は小さく口を開いた。

 

「……おかえり、なさい」

 

それは、声は掠れていたけれど、それでも確かに“迎える言葉”だった。そう告げた瞬間、五条の長い指が少しだけ、凛花の頬に触れた。

 

「……うん」

 

短く息を吐いてから、

 

「ただいま」

 

その声は、まるで冬の気配に溶けるように、優しく、そして、暖かかった。五条の「ただいま」を受け取った瞬間、胸の奥で、何かが静かに落ち着く音がした気がした。

 

――ああ、帰ってきたんだ。

 

そう実感した途端、今度は力が抜けて、足元が少し頼りなくなる。その変化に気付いたのか、五条は自然な仕草で凛花の肩に手を回した。

 

「ほら、寒いでしょ」

 

指先が服越しに触れただけなのに、そこからじんわりと熱が広がる。凛花は小さく頷くと、彼に身を預けたのだった。

 

 

 

二人並んでエレベーターに乗る間、言葉はなかった。ただ、閉まる扉の向こうで、外の冷たい空気とイルミネーションが遮断される。

 

――それだけで、世界が変わった気がした。

 

部屋に着き、凛花が鍵を開ける。玄関に入ると、五条は迷いなく扉を閉め、カチリと確かに鍵を掛けた。その音が、やけに大きく響く。

 

「……」

 

凛花が振り返ろうとしたが、それよりも早く、背中から壁に軽く押し付けられた。逃げ道はある筈なのに、ないと分かってしまう距離。すると、五条は覗き込むようにして、凛花の目元に残った涙の跡を指でなぞった。

 

「我慢、してたんだね」

 

責めるでもなく、揶揄うでもなく。ただ、全部分かっている人の声だった。凛花が何か言おうと口を開き掛けたその瞬間、五条の額がそっと凛花の額に触れる。それは、吐息が混ざるのではないかと思う程、近かった。

 

「――今日は、ここまで1人で過ごしたんでしょ」

 

低く、静かな声。

 

「だから……今からは、僕との時間」

 

そう言って、指先が顎にかかり、ゆっくりと顔を上げさせられる。

 

キスまでは、まだ。

でも、その直前の距離。

 

「ねぇ、約束。覚えてる?」

 

凛花の逃げ場を塞いだまま、五条は微笑った。その問いに、凛花は答えなかった。ただ、伏せていた視線をゆっくりと上げて、五条を見つめる。頬に熱を帯びていくのが分かる。

 

近すぎる距離。呼吸が、触れてしまいそうな程。

 

一瞬、迷うように視線が揺れてから――、彼の腕にそっと手を乗せ、凛花は背伸びをした。触れたのは、ほんの少し。唇が重なるか、重ならないかの境目で、軽く、確かめるようなキス。熱を伝える前に、すぐに離れる。

 

「……っ」

 

凛花が距離を取った瞬間、五条の喉が小さく鳴った。

 

「……それで終わり?」

 

低く落とされた声には、冗談めかした響きが混じっている。けれど、指先は凛花の逃げ道を塞ぐ位置にあった。凛花は何も言わず、ただ、頬を朱に染めたまま、視線を逸らした。

 

「……ずるいなぁ」

 

五条が、苦笑するようにそう呟く。

 

「そのキス、今の僕に一番効くって分かっててやったでしょ」

 

そう言いながら、五条は一歩だけ距離を詰めた。それは、逃げる隙を与えない動きだった。凛花が反射的に後ろへ下がろうとした、その瞬間。

 

「――あ」

 

手首を、やさしく、でも確実に掴まれる。力は強くない。けれど、離してもらえないと直感で分かる温度だった。

 

「今日はさ、まだ終わってないよ」

 

静かに告げられた言葉に、凛花の胸が小さく跳ねる。

 

「約束、果たしたでしょ」

 

そう続けて、五条は凛花の手首を壁の横に押さえたまま、少しだけ距離を取った。瞬間、視線が絡んだ。熱を含んだ沈黙。――止めてくれているのは、彼の理性だと分かってしまう。すると、五条は顔を寄せ、凛花の耳元に唇を近付けた。

 

「ねぇ、凛花ちゃん――」

 

囁き声は低く、息がかかるほど近い。

 

「凛花ちゃんが悪いよ。あんなキス、されたらさ……」

 

言葉の途中で、わざと一拍置いて。

 

「――我慢、できなくなる」

 

手首を掴んでいた指に、きゅっと一度だけ力を籠めてから、ゆっくりと解かれる。代わりに、凛花の腰に添えられる手。

 

「だから、さ」

 

微笑みはいつもの五条なのに、声の奥に滲む独占欲は、隠しきれていなかった。

 

「もう一度、凛花ちゃんからしてよ」

 

そのまま、とん……と、壁際に追いやられて完全に逃げ場を失う。間近にある五条の綺麗な碧い瞳が、見惚れる程美しく、凛花は息を呑んだ。低く落とされた声に、一瞬だけ迷うように視線を伏せる。

けれど――次の瞬間、彼の胸元に手を伸ばし、今度は逃げなかった。そっと、確かめるようにもう一度 唇を重ねた。

 

先程よりも、ほんの少しだけ長く。触れて、離れない距離。

そのまま、呼吸が重なる。

 

――ピッ。

 

その時だった。どこかで、電子音が鳴った。まるでその音に反応したかのように、五条の肩が、僅かに揺れる。凛花の唇がまだ触れているというのに、彼は動かなかった。

 

「日付、変わったね」

 

囁く声は、先程までとは違っていた。掛かる吐息が、急に熱を帯びた気がした。そう思った刹那――凛花の腰に添えられた手に力が籠り、ぐっと引き寄せられた。同時に唇が深く重なり合う。

 

「……っ、ぁ……」

 

呼吸すら奪われそうなキスに、思わず逃げ腰になりそうになる。けれど、それを許さないとばかりに後頭部を押さえられて、そのまま壁に押し付けられた。息苦しさから酸素を求めて開いた唇の隙間から、熱い舌が差し込まれる。歯列をなぞられ、上顎を舐め上げられれば、ぞくりと背筋が震えた。

 

やがてゆっくりと離れた唇は、そのまま凛花の首筋に埋められた。柔らかな唇が触れる度、ぞくぞくとした何かが背中を走る。首筋から鎖骨へと五条の唇が滑り落ちていくと、肌に触れる吐息の熱さが増していった。

 

「ま、待って……悟、さ……っ」

 

凛花が制止の言葉を掛けようとするが、五条は止めなかった。それどころか、むしろそのまま、凛花の首筋や鎖骨に痕が残るように強く吸い付いて来る。

 

「待たないよ――もう、僕の時間だから……」

 

そう、低く囁かれると同時に、今度は耳朶に軽く歯を立てられた。その刺激に思わず身を竦ませると、そのまま耳に舌を這わされる。くちゅりと濡れた音がダイレクトに響いてきて、凛花はぎゅっと目を閉じた。

 

五条の唇が触れる度に、そこから熱が広がるようだった。まるで全身を溶かされていくような錯覚に陥る。けれどそれは不快ではなくて――むしろ……。

 

不意に、服の上から胸の先端を摘まれた瞬間、びりっとした甘い痺れが背筋を走った。同時に身体が小さく跳ねる。

 

「ん……っ、ぁ、は……っ」

 

五条は、凛花の反応を愉しむように執拗にそこを弄んだ。指先で軽く撫でられたかと思えば、摘ままれて転がされ、時折爪先で弾かれる。その度に甘い痺れが広がり、身体の奥底からじわりと熱が生まれるような感覚があった。次第にその熱が全身に広がっていき、頭がぼんやりとしてくる。

 

いつの間にか足からは力が抜けていて、完全に五条に縋る形になっていた。その様子に気付いたのか、彼は耳への愛撫をやめて、凛花の顔を覗き込むようにして視線を向けた。その瞳は熱を帯びて妖しく光っているようで、凛花は思わず息を呑んだ。

すると、今度は彼の手が服の下に入り込んで直接素肌に触れられた。ぞくりとした感覚が走る。そのまま指先が胸元の膨らみに触れると、彼はゆっくりと揉み込むように動かし始めたのだ。同時に反対側の胸にも舌が這わされて、ぬるりとした感触が伝わってくる。その刺激に小さく吐息を漏らすと、五条の唇はそのまま肌を辿りながら下降し始めたではないか。鎖骨から首筋にかけて舐められた後、喉の辺りに強く吸い付かれる感覚があったかと思うと――不意に耳元で囁かれた。

 

「――凛花、もっと僕に甘えてよ……」

 

その声は今まで以上に低くて、そして何処か甘ったるい響きがあった。それはまるで、麻薬のように思考を鈍らせるようで――。

 

五条の唇が首筋から胸元までをゆっくりと下りていくと、その度凛花は小さく身体を震わせた。やがて彼の舌が胸の突起に触れると、一際強い刺激が身体を襲ってきた。

 

「ぁ、ん……っ」

 

その瞬間に思わず声が出そうになって、慌てて口を噤む。だがそれも束の間で、今度は舌先で転がすように舐められると堪らず甘い吐息が漏れた。それを必死に抑えようとするものの、上手くいかないのは明らかで……。

五条の手がスカートの下に伸びる。太腿を撫で上げられ、下着越しに秘部に触れられると、凛花はびくりと肩を揺らした。そこは既に濡れているらしく、指先が触れた瞬間くちゅりと水音がした気がした。

それに気付いたらしい五条の口元に笑みが浮かぶ。恥ずかしさに顔が熱くなるのを感じた。だが抵抗出来ないまま、彼の長い指が下着の上から秘裂をなぞるように動かされたのだ。

 

「……っ、ぁ……あ、あ……っ、は、ぁん……っ」

 

瞬間、自分でも驚くぐらい甘ったるい声が出てしまった。今まで感じた事のない強い快感に、頭の中が真っ白になる。五条がそれに気付いたのか、今度は下着の隙間から指を差し入れられたのだ。直接触れてきた指先は熱くて……凛花の口からまたあられもない声が漏れる。それは自分のものとは思えない程甘く響いて、ますます羞恥を煽った。

 

同時に胸に吸い付かれ、二本の指で秘裂を広げられて――そのまま敏感な芽をぐりっと押し潰されるようにされると、目の前に火花が散るような感覚があった。

途端に全身が痙攣し始め、足先までピンと伸びる感覚に襲われる。そうして次の瞬間、凛花は一際高い声を上げて達してしまったのだった。

 

「は、ぁ……はぁ……っ」

 

荒い呼吸を繰り返しながら五条にもたれ掛かってぐったりとしていると、不意に身体を持ち上げられる感覚がした。「え……っ」と思う間もなく、そのまま寝室へ連れて行かれる。そして、ベッドの上に下ろされたかと思うと、今度は五条から組み敷かれる体勢となり、そのまま唇を奪われたのだ。

そのキスは先程のものとは違い、優しかった。ちゅ……っと、音を立てて何度か啄ばむような口付けを繰り返すと、今度は深く貪るようなものに変わっていった。歯列をなぞられ、上顎を舐められると、背筋がぞくぞくする。同時に服の上から胸の先端をきゅっと摘まれると、甘い痺れが広がっていった。

 

その間も彼の手は止まらず、いつの間にかスカートの中に入り込んで太腿を撫で回していた。時折際どい部分に触れられて肌が粟立つ感覚に襲われながらも、凛花は必死に彼の背に腕を回してしがみ付いていた。

 

やがて唇が離れる頃には、すっかり息が上がってしまっていた。そんな凛花を見下ろす五条の瞳は熱を帯びていて、その眼差しだけで身体の奥底が疼いてしまう気がする。

 

彼は無言のまま、今度は首筋に顔を埋めてくると、強く吸い付かれた。ちくりとした痛みが走るが、それすらも今は快感として捉えてしまいそうになる自分がいて――それが酷く浅ましい気がして恥ずかしかった。

だが、そんな事などお構いなしとばかりに再び唇が重ねられる。何度も角度を変えて貪るような口付けを繰り返された後、ようやく解放された頃にはすっかり蕩けきった表情になっていた。

 

「凛花……その顔、最高に可愛いよ」

 

そんな凛花の姿を見て、五条はくすりと笑みを浮かべると、再び凛花の首筋に顔を埋めた。そして今度はゆっくりと舌を這わせながら鎖骨へと下りていき、そのまま胸の膨らみへと辿り着くとそこにも強く吸い付くようなキスをする。

その間もずっと彼の手は太腿を撫で回しており……際どい部分に触れそうで触れないというもどかしい刺激を与え続けていたのだ。そのせいか次第に身体の熱が高まり始めていったのだが、不意に五条の手が足の付け根にまで到達したかと思うと、下着の上から割れ目をなぞり始めたのだ。その瞬間――。

 

「ああ……っ、はぁ、ん……っ!」

 

今までとは比べ物にならない程の強い刺激に襲われ、凛花は目を見開くようにして仰け反った。

そしてついには下着の中にまで手を入れられてしまい――直接秘部に触れられてしまった事で一気に羞恥心が高まったのだが、同時にそれ以上の興奮を覚えてもいるのも事実だった。

 

そのままゆっくりと指を動かされ始めると、凛花の口から甘い吐息が漏れ始めていく。それは自分のものとは思えない程に甘く蕩けた声で、それを自覚した途端ますます羞恥が増していくようだった。だがそれでも止める事が出来ず、寧ろもっと欲しいと思ってしまう自分がいて……。

五条の指が動く度にくちゅくちゅという水音が聞こえてくるようになり、凛花の思考は次第に蕩けていった。そしていつの間にか彼の動きに合わせるようにして自ら腰を動かしてしまっている事に気付くと、更に羞恥心を煽られた気分になったのだった。

 

しかしそれは不快などではなくむしろ逆で……。もっとして欲しいと思ってしまう自分に驚きつつも、与えられる快楽に逆らう事が出来ずにいる状態だったのである。

 

そんな時突然、膣内に指が差し入れられた事により一際大きな嬌声が上がる事になった。そのまま中を探るようにして動かされると堪らず腰が浮いてしまいそうになるのだが、それをぐっと抑え込まれるように抱き寄せられ、耳朶を甘噛みされれば、それだけで力が抜けていく。その隙を狙ったかのように五条の長い指が奥まで差し入れられ、ゆっくりと抜き差しを始めたのだ。

 

「あ、ああ……っ、は、ゃ、ぁ……っ、さと、る、さ……っ、ああ……っ!」

 

五条が指を動かす度に、その動きに合わせてまたくちゅ……っと、水音が響き始め、それと同時に甘い痺れが全身を襲ったかと思うと、再び頭の中が真っ白になったような気がした。だが、それで終わりではなかったのだ。

今度は二本の指が同時に挿入され、凛花の反応を楽しむかのように動かされる。その度に身体が跳ね上がり、まるで自分のものではないような甲高い声が上がるのを止める事が出来なかった。

 

やがて三本目の指が挿入されると、膣内を押し広げるようにバラバラに動かされる。時折一番感じる部分を掠められるとその度に電流のような物が走り、びくびくっと痙攣したように身体が震えた。

 

もう限界が近いと思った時、不意にずるりと指を引き抜かれた。唐突に訪れた喪失感に戸惑いを覚えたのも束の間――今度は先程よりも太くて長いものが押し当てられる感覚があったかと思うと、そのままゆっくりと挿入されたのだ。

 

「ぁ……っ!」

 

ぴくんっと、凛花の身体が震えた。指とは比べ物にならない程の質量を持ったそれに息が詰まりそうになるものの、不思議と痛みはなかった。むしろ待ち望んでいたかのように膣内がきゅうっと締まり、離さないとばかりに絡み付くような動きをしているのが分かる。

その所為だろうか、まるで自分の身体ではないかのような錯覚に陥りかけた時――突然腰を強く掴まれて激しく突き上げられた。

 

「あ……っ! は、ぁあん……っ!!」

 

一気に現実へと引き戻される。ごちゅんっと子宮口を突かれた瞬間、目の前に火花が散ったような感覚に襲われると同時に、激しい快感に襲われた凛花は背を仰け反らせながら達してしまったのである。だがそれでもなお、抽挿が止まる事はなかった。むしろ激しさを増していったのだ。パンッ! という肌同士がぶつかり合う乾いた音と、ぐちゅっという水音が入り混じった音が部屋中に響き渡り、それがより一層凛花の羞恥心を刺激した。

 

「ぁあ……っ! さと……っ、ゃ、ああ……っ! 駄目……だ、めぇええ……っ!」

 

だがそれ以上に快楽の方が勝ってしまい、頭の中は真っ白になりつつあった。もはや理性など欠片も残っておらず、ただ本能のままに五条を求め続けているような状態だったのである。

やがて再び絶頂の波が押し寄せてくる感覚に身を委ねようとしたその時だった。突然ずるりと引き抜かれてしまい、その拍子にどろりと熱いものが溢れ出してしまう感覚があったのだ。何故止められたのか分からず呆然としていると、今度は身体をうつ伏せにひっくり返された。かと、思うと腰を高く持ち上げられる格好にされたのだ。

 

「……っ」

 

これから何をされるのかを悟った凛花は、思わず息を呑んだ。その刹那、再び熱い杭が勢いよく挿入される。

 

「あぁ……っ!」

 

先程よりも深く突き入れられているせいか圧迫感が強く、苦しいはずなのにそれ以上に気持ち良くて堪らなかった。子宮口を突かれる度に甘い痺れが全身を駆け巡っていくような感覚を覚えながら、必死で耐えようとするものの、五条の動きが止まる事はなかった。むしろ激しさを増す一方で、何度も何度も執拗に攻められ続けていくうちに意識が朦朧とし始める。

その時だった。突然五条がぎゅっと上から左手を握って来たのだ。そして、そのまま指を絡めてくる。彼の唇が耳元に寄せられ、甘い声で囁かれた。

 

「凛花……っ、は……好きだ……、愛してる――っ」

 

その一言で、凛花の中の何かが崩れていくのを感じた。それと同時に膣内が激しく痙攣し、五条のものを締め付ける。堪らず、凛花も必死に伝えようと、言葉を紡いだ。

 

「悟さ……、わ、たし……も……っ、ぁ、はぁ……っ、愛して、ま……す……っ」

 

そう口にした瞬間、膣内の陰茎が更に大きくなったような気がした。同時に彼も限界を迎えたようで――次の瞬間には熱いものが注ぎ込まれたのが分かった。だがそれでもなお彼の動きが止まる事はなく、それどころかより一層激しさを増したのだ。

 

「馬鹿、凛花……っ、そんな事言われたら、もう――止めてやれない……っ」

 

余裕のない声でそう呟くと、彼は更に深くへと押し入ってきた。そして子宮口をぐりぐりと刺激される度に目の前がチカチカするような感覚が襲ってくる。それが恐ろしくもありつつもどこか心地よくもあった。もっとして欲しいと思ってしまう自分に戸惑いを覚えながらも、もう止められなかったのである。

 

 

 

それからどれくらい時間が経っただろうか。何度絶頂を迎えたかも分からない程何度も求められ続けた結果、凛花の意識は朦朧とし始めていたのだが、不意にずるりと陰茎が引き抜かれると、今度は仰向けに寝転ばされた。そして、そのまま両足を大きく広げられた状態で覆い被さられたのだ。そしてそのまま再び挿入されると、先程とは違った角度からの刺激に凛花はまた甘い声を上げてしまった。

 

「は、ぁあん……っ、悟さ……っ、あ、あ……っ! 動かな……っ、ああ……っ!」

 

だがそんな事を気にする余裕もなく、ただひたすら与えられる快楽に溺れる事しか出来なかった。やがて五条の動きが激しくなり始めると、不意に彼が覆い被さってきて、そのまま唇を奪われた。そして同時に膣内の陰茎が大きく脈打ち、熱いものが注がれる。その事に、まるで幸福感に満たされていくような感覚に囚われたのだった。

 

そうして気付けば、その腕を五条の首に回し、自ら彼を求めていた。重なった唇から吐息が零れると、

 

「凛花……は……っ、口、もっと開けて――」

 

彼の荒い呼吸と共に紡がれた言葉に従うように、おずおずと唇を開けると、すぐさま口内を蹂躙された。歯列をなぞり、舌を絡められながら強く吸い上げられると、それだけで頭が真っ白になりそうだった。それと同時に膣内の陰茎が再び硬度を取り戻しつつある事に気付き、凛花は戸惑いを覚えずにはいられなかったのである。だがそれも束の間、再び抽挿が開始されると、思考はすぐに快楽によって塗り潰されていったのだった。

 

何度も絶頂を迎えた事で敏感になっている身体は、先程よりも貪欲に快楽を求めようとしており、自然と腰が揺れてしまっていた。そんな凛花の様子を見て満足げに笑うと、五条は耳元で囁いたのだ。

 

「……っ、もっと欲しいの? 強請ってよ……っ」

 

そう尋ねられても羞恥心が邪魔をするのか中々口に出せない凛花だったが、そんな彼女の弱点を知り尽くしていると言わんばかりに容赦なく攻め立てられてしまえば、抵抗など無意味なもだった。しかも、ぎりぎりの所で止められてしまう。きっと、言わないとこれ以上はしてくれないのだ。凛花は、熱くなる頬を感じながら、震える声で言葉を紡いだ。

 

「悟さんが……っ、欲しい、の……です……っ」

 

懇願するようなその言葉に、五条が大きく目を見開くと、嬉しそうに笑った。そして、優しく髪を撫でながら、

 

「いいよ……っ、全部、オマエにあげる……っ」

 

その言葉と共に再び激しい抽挿が開始されると、凛花は快楽の海に突き落とされるような錯覚に陥った。それと同時に彼の動きがどんどん激しさを増していき、やがて膣内に熱いものが注がれる感覚を覚えた瞬間――目の前が真っ白になった気がした。五条の熱を全身で受け止める。

それだけで、もう十分だと思った。これ以上の幸せはないとさえ思えたのだ。だがそんな思いとは裏腹に身体は貪欲で、もっともっと欲しいと訴えかけてくる。気が付けば、自ら五条を求めてしまっていたのだった。

 

「悟さ……っ、は、ぁ……あ、ン……っ、あ、ああ……っ!」

 

何度も絶頂を迎えたせいで敏感になった身体は、少しの刺激でも快楽を拾ってしまう。そんな凛花の様子を見て、五条もまた余裕のない表情を浮かべていた。だがそれでも容赦なく攻め立てられると、再び頭が真っ白になりそうになる程の強い快感に襲われたのだった。

 

 

 

それから先のことを、凛花は上手く思い出せなかった。

ただ、確かだったのは、何度も名前を呼ばれたこと。そして、離されることは、一度もなかったこと。

 

窓の外では、静かに雪が降り始めていて、イルミネーションの光が白く滲み、カーテン越しに淡く揺れていた。

 

その夜は、ただ、長くて――暖かかった。

 

 

 

 

 

 

目を覚ました時、部屋は白い光に満ちていた。カーテンの隙間から差し込む朝の光。その向こうで、世界はすっかり白くなっていた。

 

「……雪」

 

そう呟いた瞬間、背後から腕が回ってきた。逃げ場のない、けれど当たり前のような温度。

 

「起きた?」

 

まだ少し眠そうな声が、耳元で囁かれる。振り返ると、そこには見慣れた笑顔があった。

 

「おはよ、凛花ちゃん。ちゃんと、クリスマスだね」

 

その言葉に、昨夜のすべてが胸に落ちてくる。

 

凛花は小さく息を吸って、彼の胸に顔を埋めた。暖かい。そして、酷く落ち着く。ああ、今、本当に彼の腕の中にいるのだと、そう実感出来た。

 

と、その時だった。ふと、凛花はある事に気付いた。

 

「……そういえば、昨日……どうして、帰ってこれたのですか?」

 

五条の胸に頬を預けたまま、視線だけを上げる。確か、記憶が間違っていなければ、五条は3日間の出張任務だった筈である。にも拘わらず彼は初日に帰ってきた。今考えれば、おかしな点ばかりだ。しかも……。

 

「あんな時間だったのに……」

 

その問いに、五条は一瞬きょとんとした顔をしてから、すぐにいつもの調子で口角を上げた。

 

「ん? 決まってるでしょ」

 

そう言って、凛花の髪を指で梳きながら、さらりと。

 

「爆速で終わらせたんだよ」

 

あまりに当然のような口ぶりに、凛花は言葉を失った。

 

「……あの……それ、普通ではないですよ……」

 

小さく呆れたように言うと、五条は楽しそうに笑った。

 

「だってさー帰る理由、あったし」

 

そのまま、額に軽く口付けられる。

 

「待たせるつもり、最初からなかったよ」

 

その言葉に、凛花の頬が次第に赤くなるのに時間は掛からなかった。思わず、恥ずかしさのあまり、顔を俯かせてしまう。そんな彼女に、五条はくつくつと笑いながら、そっとその髪を撫でた。

 

「だからさ」

 

そう言うと、五条は少しだけくすっと笑い、

 

「ただいま」

 

「……」

 

一瞬、凛花は言葉を失ったように、その深紅の瞳を瞬かせた。そして、嬉しそうに微笑みながら、

 

 

「……おかえりなさい、悟さん」

 

 

それは――雪よりも、夢のような“奇跡”が、確かにここにあったのだと。

静かに、そう思えた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2025.12.31