◆ 伏黒恵 「夢の境界」
(呪術廻戦夢 「深紅の冠 ~鈺神朱冥~」 より)
―――都立呪術高等専門学校・東京校 1年の教室
「ん……っ、ぁ……めぐ……っ」
くちゅと音がして、伏黒の舌が隙間をぬって入ってくる。そのまま歯列をなぞられて、上顎をくすぐるように舐められた。その刺激に、凛花がびくんと身体が跳ねさせる。
思わず、伏黒を押し退けて逃げようとしたけれど、後頭部に添えられた手によって阻まれてしまった。そのままぐっと引き寄せられたかと思うと、より深くまで舌が侵入してくる。
「……っ、ふ、ぁ……っ、待っ……ンン……っ」
「待って」という言葉は、そのまま彼の口付けによって飲み込まれてしまった。舌を絡め取られてしまえば、くちゅりと淫らな水音が教室内に響き渡り、知らず凛花の頬が赤くなっていく。
何度も何度も、角度を変えて唇を貪られる内に、頭がぼんやりとしてきて、次第に何も考えられなくなってきた。
どうして、こんな事をされているのか。
どうして、伏黒とこんな事になっているのか。
考えなければいけない事は、山のようにあるのに、頭が朦朧として、意識が保てない。
そして、やがてゆっくりと離れていく唇。2人間に紡がれた銀色の糸が引いているのを見て取れて、凛花は恥ずかしくなって視線を逸らした。すると、伏黒が今度は首筋にその舌を這わせてきたのだ。
「凛花さん……」と、優しく名前を呼ばれれば、それだけで胸の奥がきゅん……と締め付けられてしまう。
伏黒の指先が、凛花のブラウスのボタンを一つ一つ丁寧に外していく。その間もキスは続いており、その所為か、凛花の身体は完全に力が抜けてしまっていた。
するりと肩からブラウスが零れ落ちると、伏黒の手がブラジャー越しに胸の膨らみを包み込んできた。ゆっくりと揉みしだかれていく感覚に、凛花は思わず声が漏れそうになるが何とか堪えようと、必死に自分に口元を抑える。
しかし、そんな抵抗も虚しく、再び唇を奪われると、彼の手が凛花のブラジャーのフロントホックをぷちんと、外す音が耳から聞こえてきた。
「恵く……っ、ンン……ぁ……は、ぁん……っ」
凛花の制止の言葉も聞かずに、伏黒は彼女の胸を優しく愛撫し始めた。時折先端部分を摘まれれば、その刺激に身体がびくびくと反応してしまう。
「……ぁっ、ゃ……だ、めよ……っ、めぐ――ぁ、ん……っ」
「恵君」と名を呼ぼうとするが、突然伏黒が凛花の胸の先端をその口に含んだかと思うと、強く吸い付かれる。瞬間、凛花の身体に甘い痺れが走り、びくっと背中を大きく仰け反らせてしまった。
「凛花さんのここ、凄く甘いです」
伏黒は一旦口を離すと、今度は反対側の乳首へと吸い付くように口付けた。そして、そのまま舌先で転がすように刺激を与え続ける。
「あ……っ、ンン……は、ぁ、ン……っ」
その間もずっと反対の胸への愛撫は続いていて、凛花はただ喘ぐ事しか出来なかった。
「凛花さん、凄く可愛い」
「や、ぁ……っ」
と、囁かれた言葉にすら反応してしまいそうになる。
「恵君、おね……い……もう……っ、ぁ、あん……っ」
と、凛花は涙声で訴えたが、彼は聞き入れてくれる様子は無かった。それどころか更に激しく攻め立てられてしまい、その快感に頭が真っ白になっていくようだった。
伏黒が凛花の片方の胸にしゃぶりつくと、そのまま器用に舌で尖端を転がし、甘噛みしてくる。それと同時に、もう片方の手で空いている胸に指を沈ませて揉んでくるのだ。
左右両方から違う刺激を与えられて、凛花はもう、我慢の限界だった。
気がおかしくなりそうで、でも、快楽の方が勝っていて――やがて限界を迎えたのか、びくびくっと凛花は身体を震わせながら、胸を愛撫されただけで絶頂を迎えてまったのだ。
「あ……っ、ンン……っ!」
はぁはぁと肩で息をする凛花を見て、伏黒は満足げに微笑む。そして、そっと彼女の髪に手を添えると、指を絡めながら頬を撫でてきた。その仕草があまりにも優し過ぎて、絆されそうになってしまう。
「凛花さん――」
甘く名を呼ばれれば、それだけで身体に電流が走ったかのように感じ、口付けをされれば、それだけで意識を失いそうになる程、頭が真っ白になって、何も考えられなくなってしまう。
それでも凛花は必死に抵抗をしようと試みた。しかしそれも虚しく、伏黒は、今度は凛花のスカートの中へと手を差し入れてきたのだ。
「ん……っ、ぁ……」
そして太腿の内側を撫で上げるような手つきでゆっくりと上へ上へと進んでいく。やがてその手がある一点に辿り着くと、下着の上から割れ目に沿って指を動かし始めたのだ。
布越しだというのにはっきりとわかるくらいそこは濡れてしまっていて、くちゅくちゅという淫らな水音が聞こえてくる程だ。
「ゃ……ぁ、ん……っ、は、ぁ……ンん……っ」
恥ずかしい……っ。その音に羞恥心を煽られてしまい、凛花の頬は真っ赤に染まってしまっていた。だが、それは伏黒も同じなのか、ほのかに頬を朱にそめたまま、凛花に口付けしてくる。
そして、そのまま指を何度か往復させた後、彼の指が下着のクロッチ部分をずらし、凛花の中にゆっくりと指を挿入してきたのだ。
「ぁあ、ん……っ」
その瞬間、全身が粟立つような快感に襲われて、びくんっと、凛花が一際大きく背を仰け反らせる。だが、伏黒は構う事なく凛花の中にその長い指を1本、2本と増やしていった。
中を広げるようにしてバラバラに動かされたかと思えば、ぐっと曲げられた指の先が凛花の一番良いところに当たる。そしてそのまま引っ掻くように刺激を与えられれば、もう駄目だった。
「ああ……っ、ゃあ……っ、は、ぁん……だ、めぇ……っ、めぐ……み、く……っ」
きゅうっと、下腹部が切なくなるような感覚に襲われ、伏黒の指を締め上げた。凛花のその反応に、伏黒が呼吸を荒くしながら、
「凛花さん……、絞めすぎです……っ」
「そ、んな事……っ、言われ、て、も……ぁあ、あ……っ」
凛花はもう、何も考えられなくなってしまっていた。ただただ、与えられる快楽に身を委ねる事しか出来なかったのだ。
やがて、中に入っている指の動きがどんどん激しくなり、同時に親指で陰核を押し潰すように刺激を与えられれば、もう限界だった。
「ああ……っ!」
一際高い声を上げて、凛花は絶頂を迎えたのだった。
壁際でぐったりとした様子で、肩で息をする凛花の瞼に口付けを落とすと、伏黒はゆっくりと指を引き抜いた。そして、愛液で濡れてしまった自身の手をじっと見つめたかと思うと、そのままぺろりと舐め取ったのだ。その淫靡な光景に、凛花の顔が、かぁっと一気に赤くなる。
そんな凛花の様子を見ながら伏黒はくすりと笑うと、
「凛花さん、俺……もっと凛花さんに触れたいです」
そう言ったかと思うと、今度は凛花の脚の間に自身の足をねじ込ませてきたのだ。そして、そのままぐいっと押し上げられる。
「……っ、ぁ……」
瞬間、凛花は小さく声を上げた。
伏黒の膝頭が、ぐりっと凛花の秘所を刺激したのだ。その刺激に、また甘い痺れが走り、思わず腰を引いてしまう。しかしそれを許さないとばかりに、今度は太腿を掴まれて固定されてしまうと、そのまま前後に動かされたのだ。
「……は、ぁ……ん……っ、や、め……ぁ、あ……っ」
びくびくと、凛花の身体が震える。まるでマッサージでもしているかのような動きだったが、それでも凛花は感じてしまっていたのだ。
そして次第にその動きは激しくなり始めると、くちゅくちゅという水音が大きくなっていくにつれ、凛花の息も上がっていった。我慢が出来なくなり、声がでそうになった瞬間、唇を奪われる。
そのまま、舌を絡め取られ、強く吸い上げられれば、また頭が真っ白になってしまいそうになる。
駄目だと分かっているのに、耐えられない。何度も唇を貪られれば、意識が朦朧としてきて、自分の脚で立っているのも困難になってきていた。
「めぐ……っ、ぁ……は、ンン……っ」
やがて、伏黒は凛花の脚から手を離すと、口付けをしたまま、今度は両手で彼女の胸を掴み上げてきた。そのまま乱暴に揉みしだかれる度に、痛みと共に快感を覚えてしまい、また甘い声が口から漏れ出てしまう。
そして、その先端部分を指先で摘まれれば、びくんと身体が大きく跳ね上がった。
その反応を面白がるかのように何度もそこばかりを攻め立てられれば、もう凛花は我慢など出来るはずもなかったのだ。
「凛花さん、俺に感じてくれてるんですね……嬉しいです」
そう言われてしまえば、もう何も言い返せなかった。
凛花は最早、自身の力で立っている事も出来ず、ただただ伏黒の首に腕を回してぎゅっと抱きつく事しか出来なかったのだ。
すると、彼はそんな凛花の耳元で低く囁くように、
「……可愛いです」
と囁いてきたのである。その声だけでぞくりとした感覚に襲われたかと思うと、次の瞬間には耳たぶに軽く歯を立てられた後、ねっとりと舐め上げられていた。
そしてそのまま舌先を尖らせて穴の中まで侵入されると、くちゅくちゅという音が直接脳へと響いてくるようで、恥ずかしくて堪らなかった。同時に反対側の耳も同様に責められれば、もう限界だった。
伏黒の肩口に顔を埋めながら必死に声を押し殺すが、それでも抑えきれそうにない程激しい快感に襲われてしまう。
その間にも彼の指先は休む事無く動き続けており、凛花は何度も絶頂を迎えてしまっていたのだった。
もう何度達してしまったのか分からない程に乱れてしまっているというのに、それでもまだ足りないとばかりに愛撫され続けるものだから堪らない。
やがて、ようやく満足してくれたのか、彼はゆっくりと凛花の身体から離れると、今度は凛花の足元にしゃがみ込んだのだ。
一瞬、凛花が「え……」と思うが、それはほんの瞬き程で、伏黒は、凛花のスカートをたくし上げると、そのまま彼女の太腿に両手を添えてきたではないか。
「めぐ……っ、ぁ、ああん……っ」
何をされるのか察した凛花は、慌てて制止の声を上げたが、時既に遅く――伏黒は下着の上から舌を這わせてきたのである。
布越しだというのにはっきりと分かるくらいそこは濡れていて、彼はそれを丁寧に舐め取っていくように舌を動かすのだ。その度にぴちゃりと水音が響き渡り、それが余計に凛花の羞恥心を煽っていく。
「や、ぁ……っ、だめぇ……っ、そんな、ところ……舐めちゃ……ぁあん……っ!」
凛花は必死に身を捩って逃れようとするが、伏黒はそれを許さなかった。両手で太腿を固定すると、そのまま下着越しに何度も舌を這わせてくるのだ。
そして時折強く吸い上げられてしまえば、もうそれだけで頭が真っ白になってしまう程、凛花は感じてしまっていた。
「は、ぁん……あ、あ……っ」
やがて満足したのか、ようやく彼が顔を上げた時にはすっかり凛花の顔は蕩けきっていた。そんな彼女を見て、伏黒はくすりと笑うと、今度は彼女の下着に手をかけてきたのだ。そしてゆっくりと脱がされると、今度は直接そこに口付けてきたのである。
「ぁあ、あ……ン……っ!」
その刺激に凛花はびくんと背をしならせてしまったが、それでも構わず彼は舌を這わせてくる。舌先を尖らせて陰核を刺激してやれば、凛花の口から甘い声が上がった。そのまま何度もそこばかりを攻め立てられれば、もう限界だった。
しかしそれでもなお執拗に攻め続けられ、ついに凛花は達してしまったのである。だが、それでもまだ満足出来ないのか、今度は中に指まで入れてきたのだ。
既に充分過ぎる程に潤っているそこはすんなりと彼の指を飲み込んでいき、くちゅくちゅという水音を教室内に響かせる。そのまま抜き差しを繰り返されれば、もうそれだけで凛花はまた絶頂を迎えそうになっていたのだが、そこで突然動きを止められてしまったのだ。
思わず伏黒を見ると、彼は熱っぽい瞳でこちらを見つめ返してきた後――そっと唇を重ねてきたのだった。そしてそのまま舌を絡め取られてしまう。
「ん……っ、ぁ……ふ、ぁ……っ」
先程までとはまた違った快感に凛花は身体を震わせた。その間も彼の指の動きは止まる事はなく、むしろ激しさを増したように思えたが、それでも決定的な刺激を与えてもらえない為か、もどかしい気持ちばかりが募っていく。
やがてゆっくりと唇が離れていき、銀糸を引いた唾液がぷつりと切れたかと思うと、伏黒は再び彼女の耳元に顔を寄せてきたのである。そして低く掠れた声で、
「凛花さん……そんなに俺を煽らないで下さい。俺も男ですから――」
その先の言葉は、言の葉に乗らなかった。そのまま凛花の唇を奪い、同時に彼女の中に埋めている指を再び動かし始めたのである。
突然再開された行為に、凛花はびくんと身体を大きく震わせた。先程よりもずっと強い快感に襲われて頭が真っ白になりかけたが、それでも何とか耐えようと試みるも、それが逆効果だったようだ。
すると今度は親指の腹で陰核を押し潰されてしまい、堪らず声を上げてしまった。しかもそれだけではなく、そのままぐりぐりと弄られてしまえばもう駄目だった。
次の瞬間には呆気なく達してしまい、全身から力が抜けて行く。
「ぁ……」
ぐったりした凛花を、伏黒はそっと抱きとめると、そのまま教室の机の上に押し倒した。瞬間、ぎくりと凛花が顔を強張らせた。だが、伏黒はそんな彼女の様子を見て小さく笑うと、そのまま覆い被さるようにして唇を重ねてきたのだ。
歯列を割ってぬるりと侵入してきた舌が、口内までも犯されて行く感覚に背筋がぞくぞくするような感覚に襲われるが、同時に下肢にも熱い塊を押し当てられている事に気付いてしまい、凛花はぎゅっと目を瞑った。
これから何をされるのか、なんて考えずとも分かってしまったからだ。だが、それでも抵抗する事は出来なかったのである。
「凛花さん、挿れますよ……」
耳元で囁かれる言葉に、凛花は顔を赤くすると、小さく身体を震わせた。そして次の瞬間には熱い楔が打ち込まれてきたのだった。
「ぁ……っ、あ……っ」
ゆっくりと中を押し広げて入ってくる感覚に、凛花は堪らず声を上げた。指とは比べ物にならない程の質量に息が詰まりそうになる。それでも、何とか受け入れようと必死になっていると、やがて全て収まったのか動きが止まった。
「……っ、凛花さんの中、凄く、熱い……っ」
「ゃ、あ……言わな、で……っ」
羞恥心を煽るような言葉に、思わず泣き言が漏れてしまった。だがそれでも彼は容赦せず、そのまま激しく突き上げ始めたのである。最初はゆっくりだった抽挿は次第に激しさを増していき、それに比例して水音も大きくなっていった。
「……ぁあ……っ、は、ゃぁん……だ、めぇぇえ……うごか、な……っ、ああ、あ、あ……っ」
ぱんっぱんっという肌を打つ音と共に響く粘着質な音が聴覚までも犯していくようで、凛花は思わず耳を塞ぎたくなったのだが――両手は頭上に纏め上げられてしまっている為叶わなかった。
そんな凛花の仕草に気が付いたのだろう。伏黒は小さく笑うと、片手で彼女の両手を押さえつけたまま、もう片手で彼女の両脚を抱え上げると、そのまま大きく開脚させた。
「――っ、めぐ……あああ……っ!」
更に深くまで突き入れられて、凛花が堪らず悲鳴を上げてしまう。が、それでも彼は止まらなかった。それどころかより一層強く打ち付けてきたのだ。
その衝撃に一瞬意識を飛ばしかけた凛花だったが、すぐに引き戻されてしまう。その後も何度も何度も最奥を突かれ続ければ、次第に何も考えられなくなる程の快楽に支配されていったのだった。
「あ……っ、あぁん……っ、やぁ、ぁあ……っ」
最早まともな言葉を発する事も出来ずに、ただ喘ぐ事しか出来ない凛花だったが、そんな彼女の姿に興奮したのか、更に伏黒の動きが激しくなっていく。
そして遂にその時が訪れたのである。
「……っ、凛花さん……っ」
切羽詰まった様な声と共に、最奥を一際強く突かれた瞬間、熱い飛沫が注ぎ込まれたのが分かった。それと同時に目の前が真っ白になり、凛花はそのまま意識を手放したのだった。
元々、今日は五条が長期出張の為、夜蛾に頼まれて1年の授業講師をして欲しいと言われた来たのだった。だが、たまたま虎杖と釘崎が任務で留守にしていて、伏黒しかいなかった。
伏黒が任務で留守はあっても、逆に居残り組になるのは珍しいのだが、今回の呪霊が伏黒の式神と相性が悪いとかで、留守番になったらしい。
困った凛花が伏黒に、何の話が聞きたいか尋ねたところ、凛花の術式に付いて聞きたいと言ってきた。“神域”に関しては、何度か見せているし、“紅玉眼”に付いてもだが、両方とも神妻家――つまり、凛花の家系でないと意味がない。
ただ、それでも、知っているのと知らないとでは、やはり、いざ一緒に戦う時に差が出てしまうだろう。
そう思って、言える範囲の事を教えた。
そんな風に、真面目に授業をしていたのだが、凛花が窓際にいた時、不意に風が吹いて、目にゴミが入ってしまったのだ。
自分で取ろうとして、目をこすり掛けたが、伏黒に何故か止められてしまった。そして「自分が取ります」と言って凛花の顔に自身の顔を近付けてきたのだ。
きっと、それは善意からのもので、下心などなかっただろう。けれど、凛花には刺激が強かった。だから、思わず顔を背けてしまったのだが、それがいけなかった。
気が付けば、そのままキスされてしまった上に、押し倒されて、服の中に手を入れられてしまったのである。流石にこれ以上は駄目だと思い、抵抗しようとしたのだが、その前に唇を塞がれてしまい、結局最後までされてしまったのだった。
伏黒が、自分を異性として好いていてくれているのは、何となく昔から分かっていた。でも、凛花は気付かない振りをしていた。
応えられないなら、その方がいい――そう思っていたから。
けれど、それでも伏黒は純粋に凛花を慕ってくれた。それが余りにも、真っ直ぐで、可愛くて――気が付けば凛花もすっかり絆されてしまっていたのだ。
だから、伏黒が自分を押し倒してきた時、驚きこそしたが、嫌だとは思えなかった。
だが、それでもやはり関係上、一線を越えるのは躊躇われた。だからせめてキスだけに留めようとしたのだが、それも結局出来なかったのである。
そして今に至る訳だが――、
どうしよう……。
凛花は内心頭を抱えていた。まさかこんな事になるとは思ってなかったのだ。確かに、恋人同士ならキスはするし、それ以上もするだろう。だがしかし、自分達は違う筈だ。
だからきっとこの行為は過ちでしかない。これ以上続ける事は出来ないのだ。
そう思って凛花が口を開こうとした時だ。不意に耳元で囁かれた言葉に凛花は驚いた。
「――ずっと、好きでした。たとえ、凛花さんが五条先生を選んでたとしても……俺は――貴女が、好きなんです」
それは、甘く蕩けてしまいそうな程甘い声で、それでいて切羽詰まったような響きがあった。
「めぐ……」
「恵君」と言う言葉は音にはならなかった。突然、伏黒が噛み付くようにキスをしてきたからだ。そして、そのまま激しく貪られてしまったのである。
凛花は、抵抗しようとしたが、身体に力が入らない為、それもままならない状態だった。
せめてもの意思表示として、僅かに身を捩るものの、やはり意味はなかったようで……。やがて唇が離れる頃にはすっかり息が上がってしまっていた。
そんな凛花の様子を見て満足したのか、伏黒は妖艶な笑みを浮かべていた。その表情を見た瞬間、ぞくりと背筋が粟立った気がしたが、きっと気のせいではないだろう。
何故なら、今の彼はまるで別人のような雰囲気を漂わせていたからだ。
だがしかし、それでもまだ完全に理性を失っていないようではあった。その証拠に、その瞳の奥には確かに情欲の色が見え隠れしていたのだから。
だが、それも時間の問題だろう。現に彼の表情は先程よりも明らかに艶っぽくなってきているし、呼吸も荒くなっているように感じる。
このままではいけない――そう思った凛花は何とか抵抗を試みようとしたものの、その前に再び唇を塞がれてしまった為叶わなかった。しかも今度はそれだけではなく、舌を絡め取られてしまい、歯列や上顎などあらゆる場所を蹂躙される始末だ。
まるで捕食されているかのような感覚に恐怖を覚えつつも、同時に快感を覚えている自分に、愕然とした。
「凛花さん……愛してます」
囁かれた、愛の言葉に胸が締め付けられる。
あぁ……駄目だ。もう逃げられない――そう悟ってしまった凛花は、ゆっくりと目を閉じたのだった。
2025.03.11