色彩の題
◆ 07:白薔薇の誓願 / 心を真白に
(薄桜鬼SSL:『櫻歌日記』設定より、風間千景)
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――――やめて
―――――――痛い・・・・・・っ
頭の中で聴きなれた男の罵声が響く
来い――――と、腕を痣が出来るぐらい強く引っ張られる
何度 拒んでも、何度 拒絶しても、言っても駄目だった
好きだった
ずっとずっと“彼”が好きだった
最初はとても優しかった
それ、な、のに――――――・・・・・・
いつから・・・・・・
私は、いつ、道を間違えたのだろうか・・・・・・
いつ、彼は変わってしまったのだろうか・・・・・・
それすらも、もう―――――・・・・・・
わからない
かちかちかち・・・・・・
自分以外、誰もいない教室の中で時計の音だけが聴こえてくる
窓の外を見れば、部活動を終えた運動部が帰り支度をしていた
「・・・・・・・・・・・・」
真城 弥奈は、ぼんやりと席に座ったまま夕日で染まるグランウドを見ていた
いつも、彼が、走っていたグラウンド
でも、今は――――・・・・・・
その時だった、がらっと教室の扉が開いたかと思うと、真っ白な学ランに身を包んだ猫柳色の髪に赤い瞳の男が入ってきた
「なんだ、またここにいたのかお前は」
そう言って、彼が弥奈に近づいてくる
弥奈は、ただじっと彼を見ていた
風間千景
この薄桜学園の3年生で生徒会長でもある
そして今は―――――・・・・・・
「どうした? また何かされたのか?」
風間のその言葉に、弥奈は軽く苦笑いを浮かべた
「いえ、何も・・・・・・・無いですよ。 ただ、日が沈むなぁ~って思って・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・? 何を当たり前のことを言っている。 今の時間を考えれば日が沈むのは当たり前だろう」
教室の時計の計は、18時を過ぎた所だった
「なんだ、まだあれに未練でもあるのか?」
そう尋ねてくる風間に、弥奈はやはり苦笑いを浮かべて
「未練なんて―――――それよりも、本当にいいんですか? 風間先輩、その・・・・・・私の・・・・・」
彼氏――――とは言えなかった
風間千景に婚約者はいるのは、この学園では有名な話だった
弥奈と同じ2年生の八雲さくら
彼女の事は知っていた
話したことはないが、見かけたら男女問わず 思わず足を止めてしまう―――――・・・・・・
彼女にはそんな魅力があった
そんな人が婚約者としているのに――――
今の彼は――――私の彼氏だ
・・・・・・といっても、きっとあれを見たから、見兼ねて助け舟を出してくれたのだろうが――――・・・・・・
彼からしたら、きっと同情――――・・・・・・
なんだかそれが居たたまれなくて、気落ちしてしまう
弥奈が自己嫌悪に落ちて、俯いていると
不意に、伸びてきた手が弥奈の頭にぽすんっと置かれた
まさかの予想外の風間の行動に、弥奈がっびっくりした様に顔を上げる
すると、それを見た風間がふんっと鼻で笑いながら
「俺といる時は、顔ぐらい上げて置け。 お前が見えぬだろうが」
「・・・・・・・・・・・・」
弥奈が呆気にとられたように、ぽかん・・・・とする
が、次の瞬間、笑ってしまった
それを見た、風間が微かに笑う
うわ・・・・・・っ
まさかの風間の笑顔に、弥奈の頬が一気に赤くなる
「では、俺は鞄を取ってくるから、ここで待っていろ」
そう言って、風間が教室を出ていく
だが、弥奈はそれどころではなかった
顔が熱い・・・・・・
きっと、今の自分の顔を鏡で見たら真っ赤だろう
「不意打ち過ぎるよ・・・・・・」
こんなことでは、心臓がもたない
思わず、弥奈が机に突っ伏した時だった
不意に、がらっと教室の扉の開く音が聴こえた
「あ、風間せんぱ――――――っ!?」
風間が戻ってきたのだと思って顔を上げた瞬間――――
視界に入ってきたのは、あの彼だった
「なん、で・・・・・・」
確かに、彼はもう帰ったはずだ
先ほど、校門の方に行くのを見た
それなのに、どうしてここにいるのか
すると、彼はちらっと、廊下の向こうを見た後
問答無用で教室にずかずかと入ってきた
ぎょっとしたのは弥奈だ
慌てて立ち上がると、鞄を持って逃げようとする
が――――その手は、あっという間に彼に捕まってしまった
「は、離し――――――」
「つれない事言うなよ、弥奈。 俺とお前の仲じゃねぇか」
「アンタとはもう別れたじゃない!!」
そう言い返すと彼の目が一瞬にして冷やかなものに変わった
「・・・・・・なに言ってんだお前。 勝手にお前がそう言っただけだろうが」
底冷えする様な声が耳に付く
「・・・・・・・・・・・・っ、私は、もう嫌なの・・・・・・っ」
声が震える
今までの様に、大人しく従っていればよかったのか
いつか、元の優しい彼に戻ってくれたのか・・・・・・
で、も・・・・・・・・・っ
弥奈はぐっと、唇を噛みしめると
「もう我慢の限界なのよ!!! いつもいつもいつも、勝手に人の携帯見たり、出掛けるたびに逐一報告入れるのも、何をするのにもアンタの許可得るのも――――、・・・・・・疲れたの・・・・、もう、嫌なの・・・・・・」
初めは些細な事だった
気付いたのはいつからだろう
気が付くと、いつも彼から自分の携帯を渡されていた
友達と出かけると、決まって彼から電話が来て「どこにいるのか」とか「だれといるのか」とか聞かれた
そして―――――・・・・・・
『だって、しかたねーじゃん? お前、俺なしじゃ生きられねー可哀想な奴なんだから』
眩暈がした
この人は、私を“私”とは見てくれてはいなかった
あくまでも、“私は彼の所有物のひとつ”に過ぎなかったのだ
そう認識させられるまで、さほど時間は掛からなかった
だから、あの日逃げ出した
でも、捕まって――――
無理やり連れ戻そうとされていた所を風間に助けられた
きっと、風間にとってはと“通りすがりにたまたま目に入っただけ”だったに過ぎない
何故なら、彼が婚約者にいるのはこの学園では周知の事実だったから
でも――――
弥奈はとっさに、風間に手を伸ばし
『――――――助け――・・・・・・』
そう言い掛けた瞬間、弥奈の手を掴んでいた彼が吹っ飛ばされた
風間の横にいた、大柄な男に
弥奈が呆気に取られていると、さも当然の様に大柄な男が一歩前に出て
『―——後は、お任せください』
そう言って、風間の方を一度だけ見た
それを見た風間はふっと微かに笑みを浮かべ
『ほどほどにしておけ、天霧。 お前は、来い』
そう言って、手を引いてくれた
だから、私は―――――・・・・・・・・・・
その時だった
瞬間、何かが彼の頭めがけて投げられた
投げたのは―――――
「風間っ、てめぇ!!!!」
戻ってきた風間千景その人だった
彼は かっとなると弥奈を掴んでいた手を乱暴に離し、風間の胸ぐらを容赦なく掴んだ
「ああ!!? 良いとこの坊ちゃんが何してくれてんだ!! お前なんて、あのデカブツ居なきゃ、なんにも出来ねえくせによぉ!!!!」
そう叫ぶな否や、彼が風間に向かって拳を振り上げた
「―――――!! 風間先輩!!」
思わず、弥奈が叫ぶ
が―――――・・・・・・
「なっ・・・・・・」
その拳が風間に当たる事はなかった
いや、それ以前に殴りかかったはずの彼の方が、咳き込みながら床に倒れ込んだ
何が起きたのか・・・・・・
腹を抑えた彼は、顔を顰めながら
「てめぇ・・・・、なに、しや、がっ・・・・・・」
と―――言い終わる前に、風間の足が容赦なく彼の背を蹴った
「ふん、たかだか人間風情が。 貴様如きが俺に勝てるとでも? 勘違いも甚だしいものだな」
そう言って彼を一瞥すると、風間が弥奈を見た
一瞬、弥奈がびくっとする
すると、すっと伸びてきた手が弥奈の頭に置かれた
あ・・・・・
先ほどの、彼の様に強引ではなく
その手はとても優しかった
「帰るぞ」
そう言って、伸びてきた手が手を引いてくれた
その手がやっぱり優しくて、弥奈はまた泣きそうになってしまった
いつか―――――
風間が本当の意味で自分を見てくれる日を
―――――その胸に祈りながら・・・・・・
たいっっっっっへん、遅くなりました!!
申し訳ございませんm(_ _”m)
※こちらは、リクの為いつもと若干異なりますこと、ご了承ください
2022.03.05