色彩の題

 

 20:白銀の鳥籠 / 秘密を閉じ込めて 

(CZ:『End of the World』より:神賀 旭)

 

 

End of the World

      -Endless Snow-

 

 

 

【-Episode 3-】

 

 

空中庭園―――――

 

梓は、ひとり庭園の中で花を摘んでいた

本当は、旭から”ひとりで行動しては駄目だ”と釘をさされてはいたが…

 

梓だって、一人の人間だ

四六時中誰かと一緒に居たら、息が詰まってしまう

 

幸い、この空中庭園には”許された者”しか入る事は出来ない

ここならば、流石の旭も怒ったりはしないだろう

 

それに、ここには梓の好きな”自然”が感じられる唯一の場所だった

 

今は世界に”自然”を感じられる場所は無い

木々が枯れ、水は濁り、建物は瓦礫の山となり

 

世界は――――荒廃していた

朱い空が不気味なほど、眩しい

 

「………………」

 

分かっている

全ての原因となった”あの事件”

あの時を境に、世界は崩壊した

 

もう――――戻す術は無い

一度壊れてしまった世界は、元には戻れない

 

でも、”遅らす術”は ある

 

そう――――――この世で”唯一”の方法

 

それは―――――………

 

 

「梓」

 

 

不意に呼ばれて、梓は持っていた花束を一瞬落としそうになった

慌てて、花束を支えると 声のした方を見た

そこには、キング――――神賀 旭と もう1人

長めの藍色の髪に、藍色の衣を纏った青年が立っていた

 

誰………?

 

梓が、思わず首を傾げる

 

旭が、そもそもビショップやルーク以外と一緒に居るのをあまり見た事が無いので

その光景が余計に、不思議に思えた

 

梓は立ち上がると、そのまま旭の傍に近づいた

 

「どうかしたの? 旭」

 

そう尋ねると、旭はにっこりと微笑み

 

「紹介するよ。 彼はナイトの一人なんだけど、今日から梓の専属護衛になったから」

 

そう言って、とんっ…と紹介した青年の背を叩いた

 

「……………っ」

 

押されて、思わず青年が前のめりになる

だが、言われた本人はきょとんとしたまま旭を見た

 

「専属……の、ご…えい?」

 

聞き覚えのない単語に、梓が益々首を傾げる

すると、旭はやはりにっこりと微笑み

 

「そうだよ。 今、世界は昔とは違って危険な場所だからね。 もしも、君に何かあったら俺は正常でいられる自信はないよ」

 

旭の言葉に、梓は困った様な笑みを浮かべて

 

「大げさよ…”外”には出ないわ…それなら安心、でしょう? だから、護衛は――――……」

 

要らない

そう言おうとした瞬間、その唇を旭の人差し指で塞がれた

 

梓が思わず押し黙る

旭はそれだけでは納得しないのか、小さくかぶりを振ると

 

「駄目だよ、梓。 君は曲りにも”プラチナ”なんだ。 君の命を狙う輩が侵入しないとも限らないだろう」

 

「…………………」

 

そう言って、一瞬 旭が藍色の青年を見た

 

そうやら、何を言っても旭は引いてくれそうになかった

梓は小さく溜息を洩らすと、そっと旭の手に触れて

 

「……わかったわ。 旭がそれで安心するなら――――………」

 

梓が観念した様にそう言うと、旭は嬉しそうに微笑んだ

そして、優しく梓の頭をなでると、そのプラチナブロンドの髪に口付けを落とした

 

ぎょっとしたのは、梓だ

一応、ここは室内ではなく庭園の中で、しかも目の前には専用の護衛として連れてきているナイトがいるというのに……

 

「ま、待って…あき、ら……ん」

 

そう言って、止めようとするが……

止める間もなく、あっという間にその唇を塞がれた

 

「んん……っ、あ……」

 

突然の口付けに、梓が戸惑いの色を示す

人が―――――

 

「待っ………かれ、が…み、て―――――……ん、あ……」

 

ナイトの人が見ているのに――――――

そう思うと、羞恥のあまり知らず頬がどんどん赤く染まって行った

 

だが、旭の口付けはますます激しくなっていき、息をするのも辛くなってくる

 

「あ、きら………っ、や、め………あ…」

 

すると、旭はくすっと笑みを浮かべ

 

「いいんだよ。 ”彼”に見せてるんだから」

 

そう言って、更に梓の腰をぐいっと引き寄せた

 

「あ―――――………」

 

バサバサバサ…と、梓の持っていた白い花が地に落ちる

だが、旭はそんな事お構いなしに口付けを更に深くした

 

見せつける……?

なんの、た、め――――――……

 

旭のいう意味が理解出来ず、梓が困惑の色を示す

だがそれ以前に、口付けが激し過ぎて思考が付いて来ない

頭が真っ白になる

 

時間にして数十分

旭は、梓を離してはくれなかった

 

解放された瞬間、梓はぐったりした様に傍のベンチに倒れ込んだ

それを見た旭は満足気に笑うと、優しく梓のプラチナブロンドの髪を撫でた

そして――――……

 

「彼女は俺のだから…くれぐれも手を出そうなんて思わない方がいいよ…?」

 

そう言って、唖然として見てた青年の方を見る

その笑顔に、優しさはなく――――氷の様に冷たかった

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

旭が去った後―――――……

梓と 2人取り残された青年は、少し困った様に溜息を洩らした

脳裏に先程の旭の言葉が蘇る

 

牽制―――――………

 

そうとしか取れないあの行動に、青年はやはり小さく溜息をついた

 

オレが彼女に手を出すのを懸念している――――…という事か

 

それはつまり、彼にとって最大の弱点であり攻め所――――

と言っても他ならなかった

 

だが、自ら弱点を晒してでも牽制しなければならなかった

それはつまり―――――……

 

あいつはオレの正体に気付いているのか……?

 

まさかと思う反面、そうとしか思えない節もあった

いちナイトに過ぎなかった自分を、あえて”プラチナ”の専属護衛にする理由

それでいて、”手を出すな”と牽制してくる理由――――……

 

そう考えるだけで、全てが合致してくる

だが………

 

知られる訳にはいかない

自分の”目的”を―――――………

 

ちらりと、まだぐったりしている梓を見た

 

こいつも災難だな……

 

そう思いながら、小さく溜息を洩らすとそっと梓の方に手を伸ばした

 

「おい、あんた…大丈夫――――か?」

 

そう声を掛けると、梓がよろよろとしながら起き上がった

落ちてきた髪を避けると、ゆっくりと青年の方をみた

 

一瞬、青年がどきり…とする

 

流れる様な美しいプラチナブロンドの髪

透き通るようなライラック色の瞳

 

やはり、オレはこいつを何処かで―――――……

 

”既視感” とも呼べる”何か”が青年の中を過ぎった

が、それが何なのかはやはり分からなかった

 

微妙な顔をしている青年をみて、梓は少し苦笑いを浮かべ

 

「ごめんなさい、変な所をお見せしてしまって……」

 

そう言って、さらりと髪を避ける

 

「えっと……先日、リボンを拾って下さったナイトさん…よね?」

 

そう問われて、青年は一瞬驚いた

まさか、そんな些細な事を覚えているとは思わなかったからだ

 

驚いた表情をしている青年を見て、梓はくすりと笑った

 

「そんなに驚く事なの? 勿論、憶えているわ……私がこうしていられるのは”今”だけだから……、どんなことでも覚えていたいの――――……」

 

そう言って、梓は遠くの方を見る様に言った

 

「……………?」

 

梓の言う意味が理解出来ず、青年が首を傾げる

すると、梓はくすっと笑みを浮かべ

 

「私は、梓というの。 お名前――――聞いてもいいかしら?」

 

『初めまして。 私は――――というの。お名前―――――聞いてもいいかしら?』

 

一瞬、記憶の中の”誰か”と被った

だが、それが”誰”なのかは分からなかった

 

 

「オレは――――…………」

 

 

バサバサバサ……

白い鳥が一斉に羽ばたいた

 

『オレの名は――――加納 理一郎…』

 

 

 

 

        「―――”蒼”……」

 

 

 

 

ザァ………

 

風が吹いた

流れる様な梓のプラチナブロンドの髪が風に揺れる

ライラックの瞳が少し驚いた様に「蒼」と名乗った青年――理一郎を見ていた

 

だが、次の瞬間にっこりと微笑み

 

「蒼さん、ね? 宜しくお願いします」

 

そう言って笑ったのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さてさて、やっと理一郎まともに出てきましたが…

まさかの、お前も偽名かよ!!

とか突っ込まないでくださいねwww

 

まぁ、キングの名前はあれとして

放浪者の名前はねー理一郎と名乗らすわけにもいかない(一応、立場的にアレだから)

しかし、放浪者ですってのもおかしい話でしょ?

だから、偽名

 

政府側は役職名があるから楽ね~~~(笑)

 

最早、オリジナル道まっしぐらwwww

いいんだよ! 元からその予定なんで(´▽`*)アハハ

 

2017/03/07