切な甘い10のお題
◆ 09:貴方の夢を見ました。
(マギ:『CRYSTAL GATE』より:シンドバッド)
「はっ……」
エリスティアは、突発的に目を覚ました
どくどくと酷く心臓が早鐘の様に鳴り響いている
「ゆ、め……?」
寝台から起きると、ふと自分が泣いていた事に気付いた
涙を拭うと鏡を見る
酷い顔だ
こんな時実感する
シンドバッドの傍を離れて数ヶ月
ずっとこんなに長く逢えなかったことなど一度としてなかった
もう、エリスティアの中ではシンドバッドが傍にいるのが当たり前で……
離れる事などないと思っていた
でも、現実は違った
こうして、エリスティアは一人旅に出たし
シンドバッドとも逢えていない
こんな思いをするのならば、離れなければ良かったのか……
そう思うも、でも、今後の為を思えばこうしない訳にはいかなかった
全ては、シンドリアの――――ひいては、シンドバッドの為
こうするしか選択肢はなかった
夢を――――みた
哀しい夢だった
シンドバッドがいなくなってしまう夢
二度と逢えなくなる夢―――――
何度
何度、この夢を見ただろうか……
エリスティアは零れてくる涙を拭うと、寝台から降りた
桶いっぱいに張られた水で顔を洗う
「……………シン…」
逢いたい
逢って触れたい
いつもの様に「エリス」と名を呼んで欲しい……
叶わないと分かっているほど、願ってしまう
ばしゃんっと、もう一度水を顔に掛けた
ぽた…ぽた…と、水が滴り落ちる
まるでエリスティアの今の想いを表わすかのように、ぽたり…ぽたり…と、落ちて行った
後、どのくらいすればシンドバッドに逢えるのだろうか……
逢えない程、想いは募る一方だった
その時だった
トントンと、扉を叩く音が聴こえた
「エリスー? 朝餉の用意出来てるよー。 起きてる?」
蘭朱だ
「……………」
反応のない、エリスティアに蘭朱がもう一度扉を叩いた
「エリス? まだ、寝てるの?」
「……起きているわ…」
ようやくその言葉を絞り出すと、蘭朱が扉を開けてきた
「エリス、朝餉の用意が――――って、どうしたの!?」
水浸しのエリスティアの様子に、蘭朱が駆け込んでくる
慌てて手巾を取ると、エリスティアの頭からかけた
そして、ごしごしと拭きはじめる
「もぅ…! 風邪でも引いたらどうするのよ!!」
「……ごめんなさい…」
その様子に、蘭朱がその手を止める
「何か―――あったの?」
「………………」
答えたくないのか、エリスティアは黙りこくってしまった
エリスティアのその反応に、蘭朱は小さく息を吐くと、また拭きはじめる
「まぁ、話したくないなら聞かないけど――――もし、一人で無理だと思ったらちゃんと言うんだよ?」
蘭朱の優しさが身に染みて、エリスティアはまた泣きたくなった
「うん…ありが、とう……」
そう言うのが精一杯だったのだった
煌帝国に飛ばされている時の一コマです
シンドバッドの夢を見て…という話
2015/08/05