櫻歌日記-koiuta

 

 第1話 桜通り 2 

 

 

薄桜学園は

メインとなる本棟の1階に3年、2階に2年、3階に1年のクラスがある

4階は生徒会室などがあり、一般の生徒はめったに立ち入らない

噂では、4階は生徒会が牛耳っているという話だ

渡り廊下を挟んだ別棟に職員室や図書室、各特別教室などがある

後は、体育館や講堂、各道場、それから、学食や購買部のある、F棟がある

これに、各部活の部室があるクラブ棟が存在する

部活に関しては、この学園は特に力を入れているらしく、とても充実した施設が整っている

グラウンドも広く、テニスコートやバスケットコートもある様だ

 

 

 

 

 

さくらは、斎藤と約束した通り、真っ直ぐ教室に向かった

“2-1“というクラス表示プレートを確認してから、教室に入った

黒板を見て、席を確認すると机に向かう

 

どうやら、今回は当たりの様だ

窓際の席を確保したさくらは、椅子に座ると鞄を置いた

 

斎藤は同じクラスの筈だが、どうやら席は離れているらしい

とりあえず、鞄を横の金具に掛けて、一息付いた時だった

 

「ねぇ? 君、八雲さくらちゃんでしょ?」

 

「え?」

 

いきなり呼ばれて顔を上げると、前の席の男子生徒が椅子の背に腕を置いてにこにこと笑いながらこちらを向いていた

柔らかそうな銀煤竹色の髪の男子生徒には、話した事はないが見覚えがあった

 

あれ…? この人…

いつも、土方先生に悪戯をして追い掛けられている人……?

 

彼は、にこっと笑うと

 

「君と直接話すのは初めてだよね?」

 

「……私の記憶が間違っていなければ、そうだと思いますけれど…」

 

「あ、僕? 僕はね沖田総司って言うんだ。 好きなのは学園長で、嫌いなのはどっかの古文教師。 あの人ウザったいよねー。 趣味は、その古文教師に悪戯する事かな? あの人、面白いぐらい引っかかるから見てて飽きないんだ」

 

と、聞きもしないのにべらべらと楽しそうに名乗りだした

 

「え、えっと…その……」

 

さくらが困った様に言葉を濁すと、沖田はいきなりピッと指さした

 

「で、君は八雲さくらちゃん。 成績はいつも学年首席。 先生方の覚えもよく、特に、英語と数学に強くて、古文が苦手。 部活には入っていないけど、色々習い事をしている。 実は、テニスなんかはお手の物。 マンションに一人暮らしで、料理もそこそこ得意。 あ、ちなみに一君とは隣同士で、よく夕食を一緒に食べてる。 あの生徒会長の許嫁で、一君が護衛しているどこかのお嬢様」

 

「……………」

 

ど…どうして、そんな事まで知っているの……? この人……

 

なんだか、微妙に怖いものを感じ、さくらは心なしか後ろへ下がった

 

「あ、あの…沖田さん…」

 

さくらが、そう言うと、沖田はチッチッチと人差し指を左右に振った

 

「違うでしょ。 僕の事は“総司”って呼んでよ。ね? さくらちゃん」

 

「え……」

 

いきなり、そう言われても、困る

 

「沖田さん、あの…それは………」

 

「だから、総司」

 

「いえ、ですから……」

 

さくらが渋ると、沖田がぶーぶーと唇を尖がらせた

 

「ええー、一君の事は、“一”って呼んでるじゃん」

 

「それは………」

 

斎藤は、身近な人間の一人だし、そう呼ぶことは自然だと思うのだが……

間違いなく、この沖田とはほぼ初対面の無関係な人に近い

 

確かに、向こうに居た時は名前で呼び合うのが普通だし、抵抗がある訳ではないのだが…

日本は違うだろう

 

基本的には、年上には敬称を付けるのが当たり前だし、同級生でも親しい仲ではない者を名前で呼び捨てには普通しない

 

「さくら、呼ぶ事は無い」

 

さくらが困っていると後ろから声を掛けられた

振り返ると、あの子を送って来たであろう斎藤が教室に入って来ていた

 

「あ、一君!一君も同じクラスなんだ?」

 

沖田が、斎藤を見てひらひらと手を振った

斎藤は、自分の机に鞄を置くと、こちらにやってきた

 

「総司、さくらに無理を言うな」

 

斎藤のその言葉に、沖田が頬を膨らませる

 

「ええーなんで?僕、別に無理なんて言ってないし。ねぇ?」

 

と、同意を求められたが…

頷いていいのか悩む

 

「えっと……二人は知り合いなの?」

 

とりあえず、無難な選択肢を選ぶ

 

すると、沖田がキラキラした眼差しで

 

「うん。僕と一君は部活が一緒で、ライバルなんだ!」

 

「……という事は、剣道部?」

 

斎藤は剣道部のエースだ

一緒という事は、沖田も剣道部なのだろう

 

すると、斎藤が小さく息を吐いた

 

「ライバルかは知らぬが、確かに総司の腕はいい」

 

「そうなのね…」

 

斎藤自身が褒めた事に、少し驚いた

という事は、この沖田も相当の腕の持ち主なのだろう

なら、どうして大会で名前が上がらないのだろうか?

 

さくらが、首を捻っていると

それに答える様に、斎藤が口を開いた

 

「総司は、サボり癖が酷いからな。大会のメンバーからいつも外されるんだ」

 

「ああ……」

 

成程……

 

「だーって、近藤さんがいつも指導してくれる訳じゃないじゃないか」

 

「そういえば…お前は、学園長先生が指導に来る曜日しか来てないな…」

 

剣道部は学園長自ら顧問をしている様だが…

学園長も多忙な方

毎日指導に来れないらしく、学園長が来る日以外は別のコーチが指導しているらしい

そして、沖田はどうやら学園長自ら指導にくる曜日以外は、サボっている様だ

 

「僕は、近藤さん以外に教わりたくないの。だって、あのコーチ下手くそじゃないか。あんな人に教わるぐらいなら、自主練してた方がマシだって」

 

「総司、お前な……」

 

斎藤が呆れた様に、溜息を洩らした

 

どうやら、この沖田という青年

完全学園長至上主義の様だ

 

もしかして、土方先生に悪戯するのは、先生が学園長先生と仲良いから……?

 

そうだとしたら、とんだとばっちりだ

逆恨みもいい所である

 

「あーあ、やっぱ試衛館が一番いいよなぁ~」

 

と、沖田がぼやきだした

 

「試衛館?」

 

さくらが尋ねると、沖田が嬉々とした声で

 

「そう!試衛館!!近藤さんの実家でさ、剣道道場なんだ。 僕、小さい頃からそこに通ってたんだよねー。 あそこは、近藤さん自ら指導してくれるから凄くいいんだ!」

 

と、嬉しそうに言っていた沖田が、瞬間、顔を歪めた

 

「ま、どっかの古典教師も入り浸ってて、ウザかったけど。家が近所だからってさ、近藤さんとちゃっかり仲良くなっちゃって」

 

「……………」

 

どう考えても、土方の事だ

どうやら、これは相当の年季の入ったものらしい

 

どう対応するべきか悩んでいると、不意に斎藤が声を掛けてきた

 

「そうだ、さくら。すまない。今日は部活が休みで一緒に帰れるかと思ったのだが…不可能になった」

 

「……もしかして風紀委員?」

 

「ああ、どうやら入部希望者がいるらしい。新学期だというのに、喜ばしい事だ」

 

うんうんと、斎藤が関心する様に頷いていた

 

斎藤は剣道部の他に風紀委員にも所属していた

一般的な委員会と違い、風紀委員は希望者で構成されている

主に、朝の遅刻者チェックと、日々風紀の取締りを行っている

ちなみに、風紀委員の根城は生徒会の嫌がらせにより理科実験室で、常に謎のホルマリン漬けと骸骨標本と隣り合わせである

 

さくらは、にこっと微笑み

 

「ううん、私も今日は千と会おうと思っていたから、大丈夫よ」

 

そう答えると、斎藤が「そうか」と言いながら、ホッと息付いた

 

それをじーと見ていた沖田が一言

 

「なーんかさ、前から思ってたんだけど…一君とさくらちゃんって、付き合ってるみたいだよね?」

 

「え?」

 

「な……っ!?」

 

きょとんとしたまま、目を瞬かせただけのさくらとは裏腹に、斎藤が驚愕の声を上げた

 

「そ、総司! 何を言っている!!」

 

そう怒鳴った斎藤を見て、沖田がにやりと笑った

 

「あ、一君、顔真っ赤だよ?」

 

「…………っ!これは、違う!!」

 

「だってさ、一緒に帰る相談してたり、家は隣で、さくらちゃんお手製の夕食ご馳走になってるとか、学校もほとんど一緒に居るし。 ねぇ? 何が違うのかな?」

 

そう言って、にっこりと笑った

 

「……………っ!……………っ!……………っ!」

 

斎藤がわなわなと震えだす

これは最早、照れ…ではなく、怒りで顔が赤い…といった方が正しいだろう

 

「そうじ……っ、貴様……っ!」

 

あ、これはよくないかもしれない……

 

今にも、飛び掛かりそうな斎藤を、さくらは慌てて止めた

 

「お、落ち着いて、一!沖田さんは、一をからかって遊んでいるだけよ」

 

その言葉に、沖田がにやにやと笑い出した

 

「えーどうかなぁ…? 本音かもしれないよー?」

 

「この、侮辱…!許すまじ……っ!!」

 

「お願い、思い留まって!沖田さんも、これ以上煽らないで下さい!!」

 

一触即発

そう思われた時だった

ガラッと教室の扉が開き、教師が入ってきた

 

「おら!お前ら、チャイムは鳴ったぞ!さっさと席に着け」

 

そう言って、ワイシャツ姿の男の教師が入ってくる

 

「ほら、一。先生来たから、ね?」

 

さくらが、席に戻る様に促すと、斎藤は仕方ないという感じに息を吐いた

が…

「総司、命拾いしたな」

 

と、捨て台詞を吐いて行った

 

さくらが、ほっと息を付くと

突然、バンッと教台を叩く音が聞こえた

 

「静かにしろ!」

 

思わず、生徒達が口を紡ぐ

教室内が静かになったのを認してから、その教師は黒板に大きく文字を書いた

 

”原田左之助”と

 

チョークを置いてくるっと向き直ると、バンッと、教台に両手を置いた

 

「原田だ。知ってるやつもいるかもしれねぇが、担当教科は保健体育だ。今日から1年間、お前らの担任を務める、宜しくな」

 

そう言って、原田はニッと笑った

瞬間、女生徒から黄色い声が聞こえてくる

 

原田左之助

薄桜学園の保健体育教師

女性に優しく、かっこいい為、生徒・教師問わず、女性から絶大な人気を誇り、「女泣かせ」の異名を持つ

だが、決して軽い訳ではなく、誠実なのも売りの一つだ

彼に告白し、泣いた生徒・教師は数知れず

女性を名前で呼ぶのは、デフォ

ちなみに、同じ教員の永倉とは、大学の同期らしく、仲が良い?筈…

なのだが、よく永倉に金をせびられているのを見かける

 

さくらは、直接授業を受けた事は無い(※保健体育は男女別授業の為)が、何かと声を掛けてくれるので、知っていた

原田先生が、担任なのね……

 

見知った先生で、ちょっとほっとする

 

すると、女子の一人が手を挙げた

 

「先生―質問いいですか?」

 

「おーなんでもいいぜ」

 

「今、彼女いないって、本当ですかー?」

 

「ん?ああ、今はいねぇよ」

 

原田がそう答えると、女子がキャーと叫んだ

 

ある意味、凄い光景である

聞く方も凄いと思うが、それをサラッと答えてしまう原田も凄い

 

その後、もう2・3質問が飛び交った後、自己紹介タイムになった

まぁ、その辺りは簡略し…

 

とりあえず、印象に残ったのが沖田の自己紹介

彼は満面の笑みで

 

「沖田総司です。土方先生に罠をし掛ける事が趣味です。これからも、どんどんグレードアップしていくつもりです」

 

とか言っていた…

土方が不憫過ぎる……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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―――放課後

 

今日はHLぐらいしか授業が無いので、昼には学校は終わった

教室を出て昇降口へ行く途中、廊下で土方とすれ違った

 

「土方先生、さようなら」

 

さくらがそう言うと、土方は「おう、また明日な」と返してくれた

ただ、挨拶をしただけなのに、それが酷く嬉しい

 

今日は、朝と帰りと会えて良かった…

 

そのまま、さくらは軽い足取りで学校を後にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

行きつけのカフェに着き、辺りを見回す

待ち合わせの人物は、メールでもう着いていると連絡があったので、ここに居る筈だ

 

すると、後ろの方から声が聞こえた

 

「あ、さくらちゃーん!こっちこっちー」

 

声のした方を見ると、待ち合わせをした相手・鈴鹿千が手を振っていた

 

鈴鹿千

薄桜学園に隣接する、お嬢様学校・島原女学院2年生

有名な茶道の家元・鈴鹿家の令嬢で、さくらの昔からの友人である

ちなみに、さくらに茶道を教えたのは、千の母だ

 

千は、オープンテラスになったテラス席に座って携帯を触っていた

さくらがテーブルに行くと、千は携帯を仕舞った

 

「ごめんなさい。待たせてしまったかしら?」

 

「ううん、全然」

 

そう言って、注文していたグレープフルーツジュースを飲む

さくらも注文をすると、程なくしてレモンティーが運ばれてきた

 

「で?どうだった?新しいクラス」

 

「んーそうね……色々と、曲者…?」

 

「何それ?」

 

さくらは、カラカラとストローで氷を回しながら

 

「何というか…何か、変な人居たのよね……」

 

「変な人?」

 

「……先生に悪戯するのが趣味な人。…存在は、少し知っていたのだけれど、実際に話したのは初めてでね、何って言うのかな?学園長命みたいな。正直、あそこまで徹底しているのは、ある意味尊敬に値すると思うの」

 

「いやいや、尊敬しちゃ駄目でしょ」

 

「後は…あ、原田先生が担任だった」

 

その言葉を聞いた瞬間、千がガタッと身を乗り出した

 

「ええ!?本当に!?いいなぁ~」

 

「……千って、原田先生のファンだった?」

 

さくらが首を傾げると、千はケロッとした顔で

 

「ううん? 別に、ファンって訳じゃないけどーうちの学校でも人気だからねぇ~あの先生。 優しくて、かっこよくて、誠実で!てね」

 

「……まぁ、確かにそれはそうなのだけれど……」

 

確かに、原田は優しいし、かっこいいと思う

だが………

 

ふと、視線を感じてそちらを見ると、千がにやにやしていた

 

「……何かしら?」

 

「ううん~べっつにぃ~?ただ、さくらちゃんには原田先生よりも、もっと気になる人がいるのよね~って思って」

 

「……………っ!けほっ、けほっ」

 

千の言葉に、思わずむせた

 

「ちょっ…せ、千!」

 

「別に、知らない仲じゃないんだから、いいじゃないの。で?久々に会ってどうだった?土方先生と」

 

「……………っ」

 

その名を上げられて、さくらの頬がかぁ…と赤く染まった

言い辛そうに、目の前にあるグラスに挿してあるストローを回す

 

「……別に…、少しだけお話ししただけよ」

 

「………それだけ?」

 

千の問いに、さくらが小さく頷いた

瞬間、ガクーと千がうな垂れた

 

「千?」

 

「い………」

 

「い?」

 

「一体、何してるのよ―――! さくらちゃん!?もう1年経つんだよ!? 1年だよ!? 折角、休み明けで久しぶりに会えたのに、話しただけ!? もっと、無いの!? もっと!!」

 

千の剣幕に少したじろぎながら、さくらは口を開いた

 

「む、無茶言わないでよ。 今日は授業もないし、そもそも先生は教頭だからクラスは受け持たないし、接点無いのよ? 話せただけでも、凄い事だわ」

 

さくらの言葉に、千がふーと溜息を洩らしながら首を振った

 

「いやいや、さくらちゃん? よ~く考えて! 貴女が、プレップスクール卒業してるにも関わらず、おじ様に無理言って、条件まで付けられて、それでもわざわざあの学園に入ったのは何故!? 全部、土方先生に会う為でしょ!!?」

 

「そ、それは……」

 

さくらが、居辛そうに視線を落とす

 

「なのに、“お話しできた、良かった”じゃ、駄目に決まってるでしょ―――!!!!」

 

事実なだけに、言い返せない

 

「………あ、あのね、誤解の無い様に言っておくけれど、別にそれだけが理由って訳じゃないのよ? そ、そりゃぁ、一番の理由はそうかもしれないけれど…、ほら、私飛び級スキップしてるから、学生生活をきちんと送ってみたいっていうのもあったし、日本の勉強もしたかったし、それに、こうしていなかったら、こうやって千と学校帰りにお茶したりとか出来なかったのよ?」

 

その言葉に、千がうっと詰まる

 

「ま、まぁ…それは、分かるけど―――」

 

そこまで言い掛けて、はーと盛大な溜息を付いた

 

「でも、ね――。だって、プレップって言ったら進学校だよ? いい大学に行くのを前提に勉強する学校だよ? そこを飛び級スキップで卒業してるのに…。 普通、そのまま大学コースだよ? 高校じゃなくて! よく、おじ様許可だしたよね?」

 

「それは……まぁ、色々条件付けられて、渋々って感じだったけれど…。 それに、一応大学にも席はあるから」

 

「あ、そっか。さくらちゃんは高校生だけど、大学生でもあるんだっけ? それもおじ様の条件なんでしょ?」

 

「うん……」

 

「どこだっけ?ハーバード?」

 

「そう」

 

父であるブラッドが出した条件の一つに、大学はハーバードへ進む事

そして、最低でも日本へ行く前に1年次の単位はすべて取得しろ

だった

 

「単位は…ギリギリ3月いっぱいまで掛かったわ。正直、間に合わなかったらどうしようかと思ったもの」

 

「いや…それでも、9月入学なんだから、約半年だよ?早いって。でも、単位保持って大丈夫なの?」

 

「それは…本当は駄目なんだろうけど特例で。その代り、年に2度程試験と論文提出しないと駄目なんだけれどね」

 

「あー成程…」

 

ふむふむという感じに、千は頷いた

そして、グレープフルーツジュースを一口飲み

 

「や、それでも、普通その大学を休学してまで、高校生やり直す人はいないよー? そこまでしても、土方先生に会いたかったんでしょ? もっと、がっつり行かないと!!」

 

「がっつり……」

 

そこまで考えて、さくらは首を振った

 

「無理…絶対、無理」

 

「何が、無理なのよ!!ここまで無茶して会いに来てるんだから、出来ない事は無い!!大体、後、残り2年しか期間は無いんだよ!?」

 

「それは……」

 

「……卒業したら、絶対戻らなきゃいけないんでしょ?大学」

 

さくらは、千をじっと見て、そして小さく頷いた

 

そう―――

ブラッドの出した絶対条件

それが、卒業後は直ぐに帰国して大学に戻り卒業する事だった

 

他が覆っても、これだけは絶対に守る様に厳命されている

 

もう、1年過ぎてしまった

猶予は、残り2年しか無いのだ

 

「このままでいいの? 後悔するんじゃない? ただ見てるだけいいなら、高校に入る必要なんて無かったでしょ!?」

 

千の言う事は正しい

ただ、見ているだけならこんな無茶をして高校に入る必要などない

 

でも、それでも―――

 

あの桜の下で、逢いたかった

逢いたかったのだ

 

2年前再会した時、その想いは益々強くなった

きっと、土方は覚えていないだろう

あの時が、“初めて”だと思っている

 

「好きなんでしょう?傍にいたかったんでしょ?」

 

最初はただ、綺麗な人だと思った

優しくて、それでいて凄く真面目な人

 

2度目は、惹かれて

名前を知る事が出来て、凄く嬉しかった

 

3度目は、逢いたくて 傍にいたくて

唯一の手がかりのあの学園の門を叩いた

 

学園に通う内に、話をする度に、廊下ですれ違う度に気付かされる

 

 

 

―――ああ、私はこの人が好きなのだと

 

 

 

そう、自覚するのに1年も掛かってしまった

 

千曰はく、「遅すぎる!!」と怒られた

 

でも―――

 

「私、生徒としてじゃ駄目だったのかな……?」

 

生徒ではなく、同僚として来るべきだったのか…

 

だって、あの人は真面目だから

きっと、生徒は“そういう対象”には見てくれない

あくまでも、“生徒”としてしか見てもらえない

どう足掻いても、“特別”にはなれないのだ

 

「なーに言ってるのよ!!」

 

瞬間、すぱーんと千に頭を叩かれた

 

「そんな事言ってたら、大学卒業するまで早くても2年、遅くて4年は逢えなかったわよ!? そんなぼやぼやしてたら、直ぐに誰かに取られちゃうに決まってるでしょ!! 第一、さくらちゃんの専攻は教育学じゃないでしょうが!」

 

「そ、それはそうなんだけど……」

 

「……さくらちゃん」

 

いきなり、千がずいっと顔を近づけてきた

 

「危機感無いようだから言っておくけど、土方先生モテるんだよ!? 原田先生と双璧って言われてるんだよ!? 土方先生を狙ってるのは、山の様にいるの! 学内学外いたる所に! そこ、分かってる!?」

 

「……分かってるわ」

 

土方が人気があるのは知っている

それは、この1年で嫌という程分かった

 

それはそうだろう

あの外見で、厳しいけど本当は優しくて、真面目で

モテない筈がない

 

2月にバレンタインのチョコを渡しに来た人達を沢山見た

……受け取ってはいない様だったが…

さくらは、準備をしたものの、渡す事など出来る筈がなかったし、そんな勇気もなかった

 

校門前で、出待ちをしている人を見た事もある

土方に似合いの綺麗な大人の女性だった

土方の隣に並ぶのは、ああいう人なのかと思った

 

子供―――なのだ

 

大人の土方にとって、高校生など“子供”

恋愛対象にすらならない

 

「……私、もっと早くに産まれたかった…」

 

そうすれば……もっと、勇気も出たかもしれない

 

 

でも、それでも――——

 

 

 

  逢いたかった

 

        逢いたかったのだ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

総司の土方さんへの所業が酷いな…(-_-;)

まぁ、アレはオフィシャルですからねー仕方ない

そして、学園長への偏愛っぷりが半端ないですw

 

つか、一は夕食をゴチになってるらしーですよ?

部屋もお隣なんですって!

あらあら

一瞬、弁当も……と思ったのですが……

良く考えたら、学食があるんでしたw

何?こいつら、デキてんの??(笑)

いえいえ、デキてませんよーほほほ

 

左之が男前デスv

 

そして、千姫こと、鈴鹿千様登場

何だろう……すごい、デジャヴww←直前に本編四章17~18書いてました

ちなみに、こちらは本編と違い自覚済みからのスタートです

うん、悶々とするのは本編だけでいーよ

頑張って、動きましょうねv

 

※大学の休学可能期間とか単位保持うんぬんの話は、現実とは違いますので!

調べましたが、アメリカの大学は分からなかった為、完全捏造です

つか、普通に考えて単位が三年も保持されるか…どうですかねー無理なんじゃね?

 

2011/05/04