捌ノ題 言葉の題
◆ 26:気まぐれな微笑 / 女心と秋の空
(アルゴナ:『猫と私と‟あなた”』より:里塚賢汰)
猫と私と”あなた” 1
「バトル・ロワイヤル・フェス」
それは――――次世代のトップアーティストを見つける為、アマチュアバンドの頂点を決める祭典である
優勝すれば、ダックリバー社より「世界」への切符を手に入れることが出来る
しかし―――――・・・・・・
敗退したバントは「二度と」世界への切符を手にすることは出来ない―――・・・・・・
全国より選ばれた5つのバンドが、ここ「東京」に集結する――――――
「Argonavis」――――函館の大学生バントでポップ系バンド
「Fantôme Iris」――――メンバーが全員社会人で構成されて名古屋のヴィジュアル系バンド
「風神RIZING!」――――長崎の大学生で構成されているスカバンド
「εpsilonΦ」――――京都のテクノポップバンドで、メンバーは中高生で編成されている
そして……
天才ボーカリスト・旭那由多を中心とした、札幌の大学生バンドで、優勝最有力候補――――「GYROAXIA」だ
これは、そんな彼らと偶然出会った 一人の少女の物語である
―――― 東京・鴨川大学構内
「――――夕夏! 夕夏ったら!!」
不意に、背後から呼び止められて一人の少女が振り返る
さらりと、長く揺れる艶やかな黒髪
神秘的な、灰青の瞳―――
彼女の、小さく形のよいピンク色の唇が微かに動いた
「・・・・・・? どうかしたの?」
夕夏と呼ばれたその美しい少女は、かるく小首を傾げながら、自分を呼んだであろう友人を見た
するとの友人は、目をきらきらさせながら
「なんか!! 法学部とか、ううん他の学部にもすっっっごいイケメンがきたんだって―――!!」
と、なかば興奮が収まらないという風に友人は語り出した
「なんかねーみんなバントやってるらしくってさー! それでね―――!!」
「すとっぷ」
永遠と続きそうなバンド語りに、夕夏と呼ばれた少女が手でストップを入れる
「バンドなんて、私は興味ないから――――」
そう言って、くるっと方向を変えてその場を立ち去ろうとする―――が
友人がそれを許す、筈もなく・・・・・・
がしいいい!!!
と、思いっきり、手を掴まれた
「ちょっ、ちょっと――――」
流石に、夕夏が抗議しようとした瞬間
友人はにーこりと、笑って
「今年のミス・白百合だった、棗 夕夏様が同行してくれれば――――」
にやりと、友人が笑い
「イケメンとお近づきになれるかもしれないじゃ―――ん!! 協力してよー!! 友達の頼みなのに!!!」
そこまでして、その新しく編入してきた人達とお近づきになりたいのか
夕夏には全くもって理解不能だった
「―――とにかく!」
ばっ! と、夕夏は友人の手を振りほどくと
「私は、今から椿教授の所に用があるから――――」
夕夏その言葉に、友人が「ええ――――!!!」と、不満の声を漏らす
が、夕夏はそのまま友人をその場に残して、すたすたと歩いていってしまった
「も――!!! 夕夏のいけず―――!!」
という、叫び声が聞こえるが、無視である
そもそも、バンドをやっている人が編入してきたからと言って、その方々が=かっこいい になるのが、理解できない
それでは、世のバンドマンは全て彼女的には「イケメン」になってしまう
そんな、都合のいい話などあるはずが無い
それに――――・・・・・・
一瞬、脳裏に浮かぶ明るめの髪色をした双子の兄弟
「・・・・男なんて―――・・・・・・」
ぽつりとそう呟くが、夕夏はかぶりを降って
考えるのは止めよう
もう、二度と会うことはないのだから――――
そう思いながら、廊下の角を曲がった時だった
「―――っと」
「きゃっ・・・・・・!」
突然、なにかにぶつかった
その拍子に、持っていた参考書が、ばさばさばさっと、床に落ちる
「あ・・・」
小さく息を吐き、それを拾おうとした時だった
不意に伸びてきな大きな手が、夕夏の落とした参考書をその手に取った
え・・・・・・?
「これは・・・・・・」
その人は夕夏の落とした本を拾うと興味深そうに
「心理学に、法定学? ・・・・後は―――」
「・・・・・・あの・・・」
返して欲しいのだけれど・・・・・・
そう思い、夕夏が声を発しようとした時だった
不意に、その相手と目が合った
赤銅色の髪に知的な黒い眼鏡を掛けた、整った顔立ちの青年だった
誰・・・・・・?
初めてみる顔だった
と言っても、大学中の生徒や教論の顔全てを知っている訳では無いが――――
夕夏が、困惑したようにしていると、青年は「ああ・・・・・」と、声を洩らし
「すまない。 探しながら歩いていたから、前を見ていなくて、君にぶつかったようだ。 怪我はないだろうか?」
丁寧にそう問われると、返す言葉に困る
「あ、ええ・・・・大丈夫です。 こちらこそ、すみません。 よく前を見ておらずに―――」
そう言って、青年から落とした参考書を受け取る
「拾って頂いて、ありがとうございます」
そう言って、丁寧にお辞儀する
すると、青年は少し驚いたような顔をした後、ふっと微かに笑みを浮かべて
「そう、かしこまらなくても構わないよ。 ・・・・・・なかなか、興味深い本を読むんだな。 法学部?」
「・・・・・・? そう、ですが・・・・」
それが、どうしたと言うのだろうか?
「そうか・・・・・・那由多と同じ学部か・・・・」
と、小さくつぶやくと、ふと顔を上げ
「俺は、先日札幌の大学から経営学部三年に編入してきた、里塚 賢汰と言うんだ。 もし、良かったら君の名前を教えて貰えるかな?」
「・・・・・・? 法学部一年の、棗 夕夏と申します。 あの・・・・・それが、どうかしましたか?」
里塚と名乗った青年は、夕夏の反応を見て
「悪いが・・・・・・君の俺への対応や、言葉から判断させてもらった。 その感じだと、真面目で誠実そうだと感じ取れた」
「・・・・・・・・・・?」
この人は、何が言いたいのだろうが??
そんな事を考えていると・・・・・・
里塚から、とんでもない「お願い」をされた
「・・・・・・えっと、・・・ね、猫・・・・・・ですか?」
「ああ、白くてふわふわした感じの猫だ。 誤って大学まで付いてきてしまったらしい・・・・・・」
里塚の話をまとめるとこうだ
今、同居している人物の飼い猫らしく、誤ってその飼い主に付いてきてしまったらしい
それで、里塚が探すように頼まれたらしいが、急ぎ提出しないといけないレポートなどなり、手が離せない
誰かに頼もうかと思ったが、知り合いも見当たらない、そこで見つけたのが夕夏という訳である
「・・・・・・・・・・・」
同居人さんの、飼い猫?
彼女さんかな? と、思いつつも、そこまで踏み入って聞いては失礼に当たると思い それは、黙っておくことにした
「駄目だろうか?」
里塚が、もう一度そう尋ねてくる
「・・・・・・・・・・・」
別段、これと言って急ぎの用がある訳でもない
教授の所へ行くのは、別段後でも問題はない
それに、この人も、かなり困っているようだし・・・・・・
少なくとも、ここでまた友人に捕まって、例のバンドマンを見に連行されるよりかは、遥かにマシだと思えた
いいわ、よね・・・・・・?
そう自分に言い聞かせると
「・・・・・・分かりました。 白い猫さん探せばいいのですね?」
夕夏のその言葉に、里塚が少しだけ笑った
「ああ、初対面の君には申し訳ないが、よろしく頼む」
そう言って、一枚の写真を渡された
そこには、愛らしい白猫が写っていた
「名前は――――」
この時は、まさかあんな事になるなんて思いもよらなかった
そう―――この時は――――・・・・・・
これを始めた頃は、まだAAがGAMEとして配信されてた頃なんですよね~
ぶっちゃけ、来年配信されるという新しいアプリ待ちなんですが・・・・・・
こっちはどうしたものかとwww(設定がな)
※元々、ぷらいべったーに掲載していたものです
べったー掲載:2021.02.20
本館掲載:2022.12.14