スノーホワイト

   ~Imperial force~

 

◆ Thoughts hidden in my heart

 

 

 

―――これは、「スノーホワイト」本編 Chapter1の3話目

「もしかしたらあったかもしれない記憶」である。  ※本編とは関係ありません

 

 

 

   ****    ****

 

 

 

―――エリオスタワー内・談話室

 

 

それは、アリスが書類を持って談話室を通り掛かった時だった。

 

「アレアレ~? そこにいるのって、アリスパイセンじゃない?」

 

「え?」

 

不意に名前を呼ばれ振り返ると、ジェイがメンターをしている、イースト・セクターのルーキーであり情報屋の、ビリー・ワイズがいた。基本、「ヒーロー」が兼業してはいけないというルールはない。ビリーの情報屋もそうだが、フェイスもそうだ。まぁ、フェイスの場合は趣味なのか本職なのかは不明だが、クラブで「DJ」をしている。

 

ちなみに、ビリーはニュー・ミリオン屈指の情報屋であり、彼の情報は信用度が高い。……その分、支払い報酬も法外だが……。

ビリーはにやにやしながら、アリスに近寄って来ると、ニッと笑った。

 

何だか、嫌な予感がしてアリスは一歩、後退る。すると、ビリーはチッチッチと舌を鳴らして、

 

「実はさー俺っち、アリスパイセンに色々聞きたい事があるんだよねぇ~」

 

「き、聞きたい事、って……?」

 

アリスが恐る恐るそう尋ねると、ビリーは人差指を振りながら、

 

「ノンノン! そんなに難しい事じゃないヨ。ただ、ちょ~っと、前々から多方面からよく同じ質問ばっかされて、ボクちんちょっと、疲れちゃってるんだよネ」

 

「え? 同じ質問……?」

 

ビリーが何を言っているのか、理解出来ずアリスが首を傾げる。すると、ビリーはふふんっと機嫌良さそうに鼻息を鳴らして、

 

「じゃぁ、ボクちん聞いちゃうネ! ずばり!! アリスパイセンと、ブラッドパイセンって、どういう関係なの?」

 

「……え?」

 

唐突に謎の質問を聞かれて、アリスがそのライトグリーンの瞳を瞬かせる。ただブラッドの関係と言われても、13期生のメンター統括と、メンター補佐という立場だと思うが……。それは周知の事実ではないだろうか?

何故そんな事を聞くのか、はっきり言って謎である。

 

アリスが首を傾げていると、ビリーが「ノンノン」っと、首を振った。

 

「オイラが聞きたいのは、そういう関係じゃないヨ! もっと深い関係の話」

 

「ふ、深い関係……?」

 

ビリーの言う意味が解らない。アリスがますます首を傾げると、ビリーはじれったそうに、

 

「じゃあ、単刀直入に聞いちゃうネ。ブラッドパイセンとはどこまで進んでるの? 付き合ってるんでショ」

 

「つ、付き……っ!!?」

 

その言葉を聞いた瞬間、アリスがかぁっと顔を真っ赤にさせた。動揺の余り、ばさばさっと、持っていた書類が手の中から落ちる。それを見たビリーが、

 

「アレアレ~大丈夫? アリスパイセン。手伝おっか?」

 

「え……ぁ……う、ううん。大丈――」

 

震える手で、慌てて落ちた書類を拾おうと手を伸ばした時だった。不意に、目の前に影が落ちたかと思うと、誰かの手が伸びてきた。一瞬、「え?」と思ってアリスが顔を上げると――そこには、いつの間に来たのかブラッドがいた。

 

「ブ、ブラッドさ……っ」

 

まさかのブラッドの登場に、バクバクとアリスの心臓が破裂しそうなほど震えた。知らず、顔が真っ赤に染まり、ブラッドを直視出来ない。

そんなアリスに気付いていないのか、ブラッドは落ちた書類を拾いながら、

 

「どうした、アリス。お前がこんなに注意力散漫なのも珍しい―――ビリー?」

 

ふと、ブラッドがビリーの存在に気付き、少しだけ首を傾げる。だが、当のビリーはというと、目をきらきらさせて、

 

「あのブラッドパイセンが、他人が落とした書類を拾うなんて……っ! これは、大スクープの匂い!!」

 

「……?」

 

ブラッドは、意味が解らないという風に、顔を訝しげに顰めた。しかし、アリスはそれ所ではなかった。先程のビリーの言葉が脳裏を過ぎる。

 

『ブラッドパイセンとはどこまで進んでるの? 付き合ってるんでショ』

 

まさか、あのセリフを聞かれたりしていないだろうか? そう考えただけで、この場から逃げ出したいほどだ。だが、ビリーがそんなアリスの思いなど、露とも知らないという風に、「フンフン」と、アリスとブラッドをまじまじと見て、

 

「丁度いいや~もう、ブラッドパイセンにも聞いちゃおう!」

 

「え!?」

 

ビリーの言葉に反応したのは、ブラッドではなくアリスだった。まさか、先程の件をブラッドの直接聞くというのだろうか!? そんなの……っ、耐えられる筈がないっ!!

しかし、ブラッドは意味が解らないという風に、やはり顔を顰め、

 

「何の話だ?」

 

「フッフッフ~この『HELIOSエリオス』、ううん、ニュー・ミリオンの人なら皆気になってる事だヨ。俺っち自身も気になって夜も眠れな~い。だから、ブラッドパイセンに、教えてもらいたいんだ」

 

そう言って、すちゃっとビリーのハニー(スマホ)を取り出す。

 

「ずばり! ブラッドパイセンって、アリスパイセンと何処までいってるの?」

 

「……」

 

それを聞いた瞬間、ブラッドの表情が俄かに険しくなる。その後ろで、アリスが今までにない位顔を真っ赤にさせていた。

 

「ビ、ビリー君。その話はお願いだから、もう止め――」

 

アリスがそこまで言いかけた時だった。「はぁ……」とブラッドの盛大な溜息が聞こえた。アリスの落とした書類を全部拾い上げると、アリスには渡さず、自分で持ったまま、

 

「……下らんな。そんな話をする暇があるなら、トレーニングのひとつでもしたらどうだ」

 

それだけ言うと、ぐいっとアリスの肩を抱き寄せ、その場を去ろうとした。アリスが、真っ赤な顔で困ったかのように、ブラッドとビリーを見る。

すると、ビリーはにやりと笑って、

 

「あっれ~ブラッドパイセン。都合悪くなったら敵前逃亡しちゃうタイプだったんダ」

 

「……なに?」

 

ぴくりと、ブラッドが反応する。いつものブラッドなら無視するであろうことなのに、何故か今日のブラッドは、ビリーに対して、高圧的に反応した。そんなブラッドに、ビリーがにやにやして、

 

「ブラッドパイセン。今世間で騒がれてる噂って、知ってる? オイラの所にもその事実確認して欲しいって依頼が殺到してて困ってるだよネ。営業妨害もいいところだよ」

 

「……」

 

「気にならない? 皆、何の噂してるか。気になるよネ! ずばり、皆が言ってるのは、アリスパイセンとブラッドパイセンの関係についてだヨ。でも、どんだけ探っても何も出てこないんだよね。ああ、守秘義務があるから、誰から依頼されてるとかは言えないけど――」

 

そう言って、ビリーがハニーをささっと動かす。

 

「オイラが、知りたいことは、ふたつだけ。ブラッドパイセンとアリスパイセンは付き合っているのか否か。そして付き合っているならどこまでの関係なのか。だけだよ」

 

「……」

 

「んんーオイラの予想としては、ブラッドパイセンが、アリスパイセン大事にしてるのは分かるよ? 後、アリスパイセンの反応見る限り、ブラッドパイセンに好意持ってるって事も――」

 

ビリーのその言葉にぎょっとしたのはアリスだ。今までにない位顔を真っ赤に染め上げ、

 

「ちょ、ちょっと、ビリー君……っ!!」

 

そう、抗議の声を上げた時だった。アリスの頭上から「はぁ~~~~」と、重い溜息が聞こえてきた。

あ……。

ブラッドのそれに、アリスがびくりと反応する。もしかしたら、呆れられたかもしれない。ううん、嫌われたかも……。そう思うと、今にも泣きたくなった。

 

「あ、あの……ブラッドさん……、わ、私は、その……」

 

何を言ったらいいのか分からない。アリスが落ち込んだ様に、そのライトグリーンの瞳を伏せた時だった。不意に、ブラッドの手が伸びてきたかと思うと、そのまま上を向かされた。

一瞬「え……?」と、思うが、ブラッドのルビーの瞳と目が合い、知らず顔が紅潮していくのが分かった。

 

「あ、の……」

 

アリスは何か言わなければと思うのに、何も言葉が出てこない。するとブラッドは、ふっと笑って、そのままアリスの肩を抱いていた手を彼女の腰に回して抱き寄せた。そして――そのまま自身の唇を、アリスの唇に重ねたのだ。

 

え……。

 

驚いたのはアリスだ。まさかのブラッドからの口付けに頭が真っ白になる。しかも、それは一度では終わらなかった。何度も、角度を変えながら、ブラッドはアリスの唇を貪る様に口付けてきたのだ。

 

「……ぁ……、ブ、ブラッド、さ……っ」

 

堪らず、アリスがブラッドの制服を掴むと、それに気分を良くしたのか、ブラッドからの口付けが更に深くなった。

 

「アリス、口を開けるんだ」

 

「……え……?」

 

ブラッドの言う意味が分からず、アリスが少しだけ唇を開いた時だった。その隙をついて、ブラッドの舌が滑り込んできたのだ。

 

「ぁ……っ、ふ、ぁ……ん……っ、ぁ、んん……っ」

 

ぬるり……っ、と口腔内を舐め上げられ、ぞわりと肌が粟立った。だがブラッドはそんな事も気にせずに、更に深く舌を差し入れてくる。そして、そのまま舌を絡め取られ、強く吸われた。

ちゅく……っと濡れた音が耳を打ち、それがまたアリスの羞恥を煽っていく。思わずぎゅっと目を瞑ると、それに気付いたブラッドがくすりと笑った気配がした。

 

「アリス、目を開けておけ」

 

「……?」

 

ブラッドの手が、優しくアリスのキャラメルブロンドの髪を撫ぜる。促される様に目を開けると、そこにはルビーの瞳があった。すると……そのルビーの瞳の奥に情欲の色を見つけてしまい、思わず胸がどきりと高鳴った。

 

「あ……」

 

知らず声が漏れる。しかしその瞬間だった。突然後頭部を押さえられ、ぐっと引き寄せられたかと思うとそのまま唇を奪われたのだ。今度は先程とは違い、軽く触れるような口付けではなく、舌を絡め取られ貪り尽くされる様な激しいものだった。

 

ブラッドの舌が、歯列をなぞり口腔内を蹂躙する様に動くと、それだけで頭がくらくらしていく。腰に回されていた手で、ぐっと強く引き寄せられる。そしてそのまま口内を貪られ続けていると、次第に身体から力が抜けていくのが分かった。

 

気が付けばブラッドの右手はアリスの後頭部を押さえたまま、左手は腰へと回されている。その腕でしっかりと腰を抱かれ、更に密着度が増した気がした。

ちゅく……っという濡れた音が、やけに大きく響く気がする。

 

「……っぁ……は、ぁ……んん……っ」

 

ブラッドの舌が、アリスの舌に絡みつき、吸い上げられる。そしてそのまま上顎や歯列をなぞられるとぞくりとしたものが背中を這い上がってきた。思わずぎゅっと目を瞑ると、それを咎める様にブラッドの手が耳に触れてくるではないか。

その途端、ぴくんと身体が震える。それに気をよくしたのかブラッドは更に深く口付けてきた。

 

ちゅく……っと濡れた音が耳に届く度に羞恥心でどうにかなりそうだった。だが、それ以上に頭がぼうっとして何も考えられなくなる。

 

「ん……ふ、ぁ……」

 

「アリス……」

 

ブラッドの熱を帯びた声音に、思わずどきりと胸が高鳴った。そのまま更に深く口付けられる。

 

そして、どれ程そうしていただろう。不意に唇が離されたかと思うと、今度は首筋に口付けられた。

 

「……ぁ」

 

その感触に小さく声を上げると、ブラッドがくすりと笑みを零したのが分かった。そのまま首筋を強く吸われると、ぞくりとしたものが背筋を這い上がる。それが快感だと気付く前に、また強く吸い上げられた。

気付けば、そこにはブラッドに付けられた所有印の様な赤い痕がくっきりと残っているではないか。

 

すると、ブラッドは顔を上げてビリーの方を見た。アリスを抱きしめた手はそのままで、口を開く。

 

「これで、満足か? ビリー」

 

目の前で、アリスと、あのブラッドの濃厚なキスシーンを見せられて、ビリーは一瞬ぽかーんとしていたが、次の瞬間、にやりと笑って。

 

「HAHAHA~!! 予想以上の答え貰えて、俺っち大満足! ブラッドパイセンが、どれだけアリスパイセン好きなのかよく分かったヨ! つまり2人は恋人なんだねぇ~それも、相当深い仲♪」

 

「……あんまり風評するなよ」

 

「Gotcha! じゃ、俺っちは行くね~! 情報提供Thank you very much!!」

 

そう言うと、ビリーは満足そうに談話室を去っていった。残されたアリスはというと……余りの展開について行けず、しかもブラッドからの激しい口付けで足に力が入らなかった。

 

「ブ、ブラッドさん……どう、して……」

 

ブラッドの事は好きだ。でも、アリスとブラッドは恋人同士という訳ではない。なのに――。そう思っていると、ふと、ブラッドがアリスの美しいキャラメルブロンドの髪を撫でた。

 

「虫よけだと思え。それよりも、立てるか?」

 

「……っ、た、立てま――」

 

そこまで言いかけたが、ぐらりとアリスがバランスを崩しブラッドにもたれ掛かってしまう。足に力が入らないのだ。

 

「す、すみませ……」

 

申し訳なくて、謝罪の言葉を述べると、ブラッドはふっと微かに笑みを浮かべると、そのままアリスを横に抱き上げた。ぎょっとしたのはアリスだ。だが、ブラッドは気にする様子もなく、そのまま歩き出したのだった。

 

 

 

*** ***

 

 

 

―――アリスの部屋

 

 

 

何故か、自室に運ばれた。といっても、アリスはメンディーを受け持っていない為1人部屋なので、サウス・ルームに運ばれるよりかはマシなのだが……。

そのまま、そっとソファに降ろされる。

 

「あ、ありがとう、ございます……」

 

なんとかお礼を言うが、未だ顔の火照りが収まらない。いや、顔だけではない、全身から火が出るんじゃないかと思うくらい熱い。

ブラッドはというと、いつもと変わらない様子でアリスの隣に座ったかと思うと、そのままじっとアリスを見つめてくるではないか。そのルビーの瞳が、やけに熱っぽい気がして……思わず視線を逸らす。するとブラッドが口を開いた。

 

「アリス」

 

「は、はい……」

 

「……誰にでもああいう事をする訳ではないからな」

 

そう言われ、驚いたように思わずブラッドを見た。だが、ブラッドは相変わらずじっとアリスを見返してくる。「それは、どういう意味ですか?」そう問いたいのに、言葉が出ない。するとブラッドは突然アリスの唇に指で触れたかと思うと、そのまま唇をなぞってきた。

 

「……っ」

 

その感触にぞくりとしたものを感じ、思わず口を噤んでしまう。それを了承と捉えたのか、ブラッドがそっと唇を重ねてきた。最初は触れるだけの口付けだったが、徐々に深いものに変わっていく。何度も角度を変えながら口付けられ、舌を絡め取られていく内に頭がぼんやりとしてきた。

 

どう、し、て――?

 

そう思うのに、言葉を発する事すら出来ない。ブラッドの熱い舌が、口腔内に入ってくる。

 

「……んっ……ぁ、は……っ」

 

そのまま歯列をなぞられ上顎を舐められると、ぞくりとした快感が背中を這い上がった。思わず身を捩ると、それに気付いたのかブラッドの手が腰に回され強く引き寄せられる。そして更に口付けが深くなった。

 

「ん、ふ……ぁ……」

 

ちゅく……っという音が耳に届き羞恥心を煽る。そのまま何度も角度を変えながら口付けられていく内に頭がぼうっとしてくるのが分かった。ブラッドの舌がアリスの舌に絡みつき強く吸い上げられる。もう、アリスには何も考えられなくなってしまっていた。

 

「は、あ……っ」

 

ようやく唇が離されると、銀糸がつぅと伸びプツンと切れる。それをぼんやりと見つめていると、今度は首筋に口付けられたかと思うと強く吸われたのだ。

 

「あっ……!」

 

ちくりとした痛みを感じると同時に、また強く吸い上げられる。何度も何度も繰り返し口付けられて、次第に頭が朦朧としてきた。

ブラッドの唇が首筋から鎖骨へと下りていき、そこにも強く口付けられる。そしてそのまま胸元へと下りていくと、シャツのボタンをひとつひとつ口で外されていくと、露にあったアリスのふくよかな胸が、ぷるんと姿を現した。

 

「ぁ……」

 

羞恥の余り、アリスがかぁっと、頬を朱で染める。すると、ブラッドはふっと笑って、ちゅっと音を立てて突起を口に含んだのだ。

その瞬間、びくんっ!と身体が跳ね上がる。そんなアリスの反応を楽しむかのように、ブラッドはそのまま舌先で転がすように舐め上げてきたかと思うと甘噛みされ強く吸われた。

 

「あ……っ、は、ぁん……っ、ブ、ブラッドさ……っ」

 

ちゅうっとわざと音を立てて吸われた後は舌で優しく舐められる。それがとても気持ちよくて、自然と口から甘い吐息が漏れた。

 

ブラッドはそんなアリスの反応を楽しむように、執拗にそこばかりを攻める。片方を舌で転がされ、もう片方を指で摘ままれ弾かれたりと様々な刺激を与えられ続けたせいか、そこはぷっくりと赤く腫れ上がりまるで果実のように熟れていた。

ブラッドはそれを満足げに見つめると、今度は反対側の胸にも同じように愛撫を施し始めた。

 

「ん……っ、ぁあ、ん……、ゃ……は、ぁ……ふぁ、ん……」

 

両方の胸を交互に違う刺激で攻め立てられると、アリスはもう何も考えられなくなっていた。

 

「アリス……、力を抜け」

 

「そ、んな、こ……と……」

 

言われても困まる。ブラッドがようやく胸から離れる頃にはすっかり蕩けた表情を浮かべていた。ブラッドはそんなアリスの額に優しく口付けると、そのまま頬や瞼にも口付けられる。それがくすぐったくてアリスが身を捩った時だった。

不意にブラッドの手が、アリスの太腿に触れた。瞬間、アリスがびくりっと身体を震わす。

 

「ブ、ブラッドさ……ぁ……っ」

 

その手はゆっくりと撫でる様にアリスの太腿を動くと、そのままスカートの中へと侵入してきのだ。そして下着越しに秘所に触れられる。

 

「ぁ、んん……っ」

 

その途端、アリスがびくんっと身体を震わせた。そこはもうすっかり濡れそぼってしまっている様で、ブラッドの指が動く度にくちゅ……っという水音が聞こえてくる。羞恥の余り、アリスの顔がどんどん紅潮していくが、それと同時にぞくぞくとしたものが背中を這い上がるのを感じた。

 

ブラッドはそんなアリスを見て、優しく口付けると、指を上下に動かし始めたのだ。時折花芯を掠めるようにして触れてきたかと思うとまた離れていってしまう。それが何度も繰り返されていく内に、アリスの中で熱い何かが沸き上がって来ていた。

 

な、に……。からだ、が……。

 

だが、ブラッドはその手を止める事はなく、それどころか段々と強く擦り上げていった。その度に甘い痺れが身体中を走り抜けた。それと同時に、頭が真っ白になっていくような感覚に襲われる。

 

やだ……っ、何か、来ちゃ……う……っ!!

 

 しかし、アリスの思いとは裏腹にブラッドは更に追い詰める様に花芯を強く押し潰してきたかと思うと一気に扱き上げてきたのだ。その瞬間だった。今まで感じた事の無い程の強い快感に襲われたと思った時にはもう遅かった。

目の前がちかちかとして頭の中が真っ白になると、アリスの中で何かが弾けたような衝撃に襲われた。――絶頂してしまったのである。

 

「ぁ……」

 

一気に身体から力が抜ける。アリスが、「はぁ……はぁ……」と荒い呼吸をしていると、ブラッドは羽織っていたジャケットを脱いで、アリスをそのままそっとソファに押し倒した。

そして、片手で器用に自身のネクタイを緩めると、

 

「アリス……、いいか?」

 

そう尋ねてくる。だがアリスはぼんやりとした頭では何も考えられなくて、小さくこくりと頷いただけだった。するとブラッドはふっと笑って、そのまま顔を近付けてきたかと思うと、口付けてきた。

最初は触れるだけのキスだったが、それは次第に深くなっていく。そして舌を差し込まれると絡め取られた後きつく吸い上げられた。

 

「ん……ふ、ぁ……」

 

何度も角度を変えながら口付けられる度にくちゅくちゅという音が耳に届き羞恥を煽るが、それ以上に与えられる快感の方が強かった。やがて唇が離れる頃には、すっかり息が上がってしまっていた。

 

ブラッドはそんなアリスの様子を見て小さく笑うと、シャツのボタンを全て外していき肌蹴させる。そして露になった胸元にちゅっと音を立てて吸い付いたかと思うと今度は強く歯を立てて噛み付いてきたのだ。

 

「ぁ……ん……っ」

 

その瞬間、ピリッとした痛みが走りアリスが小さく声を上げると、ブラッドはそのまま首筋や鎖骨へと唇を落としていった後、また胸の先端を口に含み舌で転がし始めたのだ。同時にもう片方の胸も手で愛撫され始める。

そのまま暫くの間、胸を攻められ続けたが、やがてブラッドの手と唇はゆっくりと下へと下りていく。

 

そこはもうすっかり蕩けていて、ブラッドの指が少し触れた途端ぬるりとした感触があった。すると、ブラッドがくすっと笑みを浮かべ、その指を自身の舌で舐め取った。

 

「……っ」

 

その姿が、余りにも妖艶で……アリスの顔が一気に紅潮していく。しかし、その事に羞恥を感じる暇もなくブラッドはアリスの脚に触れてきたかと思うと、そのまま自身の身体を割り込ませてきた。

 

「ぁ、待っ……」

 

何か起こるのか察したアリスが慌てて脚を閉じようとするが、それは叶わなかった。ブラッドはアリスの太腿を掴むと大きく広げさせ、そこに顔を埋めてきたのだ。そして――。

 

「ぁあ、ん……っ、ゃ……ああ……っ」

 

そのまま秘所に口付けると、ぴちゃっと音を立てて舐め上げてきたのだ。舌先を中に差し入れてきて、内壁を刺激する様に動かし始めたのである。

 

「ブラッ……っ、ぁああ……!」

 

今まで味わった事の無いような感覚に、堪らず身を捩るが、ブラッドはそれを許してくれなかった。それどころか更に強く吸い上げられてしまい、身体がびくんと震える。

そのまま執拗に攻め立てられ続けていく内にやがて限界が訪れたのか、再びあの感覚が襲ってきたのだ。

 

「やぁっ、ブラッドさ……、それ……だ、めで、すっ……! またきちゃ……!」

 

「身体を俺に委ねろ」

 

そう言うが、アリスはどうしてよいのか分からなかった。

しかも、ブラッドは止めず更に強く吸い上げて来る。同時に花芯を摘み上げられ擦られてしまえばもう我慢など出来なかった。

 

「あ、ぁあ……っ!!」

 

再び頭が真っ白になる程の快感に襲われたアリスは、身体を弓なりに反らせるとそのまま達してしまったのだった。

 

だがブラッドはまだ満足していない様だった。今度は指を差し挿れてきてゆっくりと動かし始める。最初は1本だけだったが徐々に本数を増やしていき、2本から3本になったところでバラバラに動かし始めた。そしてある一点を掠めた時だった。突然、今まで感じた事の無い様な強い快感に襲ってきたのである。

 

「……っ、ぁ、ああ……ゃ、だめぇ……っ、そこ、は……っ、ああ、ん……っ!」

 

びくっびくっと、アリスの身体が震える。それを見たブラッドはふっと笑みを浮かべると、

 

「ここが、いいのか?」

 

そう言うなり、ブラッドはそこを集中的に攻め立て始めたのだ。瞬間、びくんっ!と激しくアリスの身体が跳ね上がる。

ブラッドの手で何度も繰り返し与えられる快感に、もう何も考えられなくなっていた。

 

やがてブラッドが指を引き抜く頃にはアリスのそこはすっかり解れてひくついていたのだった。

 

「アリス……」

 

ブラッドが熱っぽい声で名前を呼んでくる。その表情は酷く扇情的だった。

そして、そのままゆっくりと自身を押し当ててきたかと思うと、一気に貫かれた。

 

「ああ……っ!!」

 

堪らず、アリスが悲鳴を上げる。その質量に、息が詰まりそうな感覚になるものの痛みは無くむしろ快感の方が勝っていた。

 

「……っ、アリス……締めすぎだ……っ」

 

「そ、そんな、こ、と……言われて……ぁあ……っ」

 

そんなアリスの様子を見たのかブラッドはふっと笑うと、更に腰を進めてきたのだ。

やがて全て入りきったのか動きが止まると、今度はゆるゆると抜き挿しを始めたのだった。最初はゆっくりだったが徐々に速さを増していき、それに合わせてアリスの口からも甘い吐息が漏れ始める。

 

やがてブラッドのものが最奥まで届くと、そのままぐりっと押し付けられたのだ。

 

「――っ、ぁ……」

 

その瞬間、全身に電流が流れたかの様な衝撃に襲われた。あまりの快感に目の前がチカチカとする程である。だがそれでもブラッドの動きが止まる事は無かった。それどころか激しさを増していき、ぱんっ!という音と共に肌がぶつかり合う音が部屋の中に響き渡る。

 

「あ……、ぁあ……んっ、ブラッドさ……動かな……は……ああ……っ!」

 

その動きは徐々に早くなり、何度も何度も子宮口まで抑え込まれて、アリスは最早喘ぐ事しか出来なくなっていた。

 

「あ、ん……っ、ぁ、あぁ……っ」

 

「アリス……っ」

 

ブラッドは更に激しく打ち付けながら耳元で囁く様にアリスの名前を呼んだ。それだけでも感じてしまったのか中がきゅうっと収縮する。それを感じ取ったのかブラッドは小さく笑うと言った。

 

「……っ、そんなに締め付けるな」

 

「そ、んな……こと……っ」

 

そんなやり取りをしている間も、ブラッドの動きが止まる事はなく寧ろどんどん激しさを増していったのだ。そして遂に限界が訪れたのか一際強く子宮の奥まで突き上げられたかと思うと熱い飛沫が放たれたのである。それと同時にアリスもまた達してしまったのだった。

 

アリスがぐったりしていると、ブラッドは、今度はアリスを自身の膝の上に乗せた。そして、そのまま下から突き上げるように動かしてきたのである。

 

「ぁあ――! は、ぁ……っ、ゃ……だめぇえ……っ、ブラッ……ああ……っ!」

 

先程とは違う場所に当たる為か、新たな快感が生まれアリスの口からひっきりなしに甘い声が上がる。堪らず、アリスがブラッドにしがみ付くと、ブラッドは嬉しそうに微笑み、そっと、彼女の唇に口付けた。

 

「……ん……っ、は、ぁ……んん……っ」

 

そのまま舌を入れられ、口内を蹂躙される。歯列をなぞられ、上顎を舐められ、そのまま舌を絡め取られれば、もうそれだけで頭が真っ白になってしまう程だ。

 

しかし、それだけで事は収まらなかった。未だ繋がったブラッドのそれは。、更に何度も腰を打ち付けてきたのだ。その度に結合部からは白濁が流れ落ちソファを汚していくがそんな事を気にする余裕は無かった。

ただただ与えられる快楽に溺れていくしか無かったのだった。

 

 

 

それからどれくらい時間が経っただろうか。気が付くと外はすっかり日が落ちかけていた。だが未だに行為は続いており、今もブラッドのものが挿入されたままなのである。しかも彼が動く度に結合部からはぐちゅりという水音が聞こえて来ていて、それがまた羞恥心を煽るのだ。

 

基本、ブラッドは忙しい。こうしている間にも仕事が溜まっているのでないかと心配になる。でも、それと同時に、このままもっと一緒にいたいという気持ちもあった。だがそれ以上にアリスの頭の中を支配しているのは快楽だけだった。

もう何度絶頂に達したか分からない。それでもブラッドの動きが止まる事は無く、それどころか激しさを増していったのである。

 

そしてついに限界を迎えたのか、ブラッドは一際強く突き上げてきたかと思うと、またそのまま中に放ってきたのだった。その熱さにすら感じてしまいアリスは小さく身体を震わせる。しかしこれで終わりではないとばかりに再び抽挿が開始されたのだ。

 

「ブラッドさ……わ、わた、し……も、う……ああ……っ!」

 

もう無理だと訴える様にアリスが首を振るも、ブラッドの動きが止まる事は無く、むしろ更に激しくなったのである。そして何度目かの射精の後、ようやく解放された時にはもう意識は朦朧としていたのだった。だが休む暇など与えられず今度はベッドへと連れて行かれると押し倒されたのだ。

 

そのまま覆い被さってきたかと思うと再び激しい口付けが始まった。

 

「ん……っ、ふ、ぁ……んん……ブラッド、さ……ん……っ」

 

舌を絡ませられ強く吸われる度に頭が真っ白になっていくような感覚に陥る。その間にもブラッドの手は胸から下腹にかけてを優しく撫でていて、その刺激にも反応してしまう自分がいた。やがて唇が離れる頃にはすっかり蕩けきった表情になってしまっていた。

 

「アリス……愛らしいな」

 

そんなアリスの様子を満足そうに見下ろしていたブラッドは、今度は耳朶を食むように口に含むと舌先でねっとりとした愛撫を施し始めたのだ。

 

「んん……ぁん……っ、ゃ、あ……」

 

まるで脳まで犯されているような気分になり、ぞくぞくとしたものが背筋を這い上がると同時に身体の奥底が熱くなるような感覚に襲われたのである。

そしてそれと同時に彼の手が再び下腹部へと伸びていき、優しく撫で回されたかと思うとゆっくりと下へと移動していき秘所に触れた瞬間だった。

 

「あ、ん……っ」

 

びくんっ!という衝撃と共に再び甘い声を上げてしまう。

ブラッドはそんなアリスの反応を楽しむかのように何度も同じ場所を責め立ててきたのだ。その度にアリスの身体はびくびくと跳ね上がり、口からは自分のものとは思えない程の甘ったるい声が上がっていったのだった。

 

 

もう既に何度達してしまったか分からない程だというのに、まだ足りないとばかりに身体は正直に反応してしまう。そして遂に限界を迎えたのか再び絶頂に達してしまったのだった。

だがそれで終わるはずもなく、ブラッドは再び動き始めたのだ。今度は先程よりも深く挿入された状態でゆっくりと動かされ始めるとその刺激だけでまた達してしまいそうになる。

 

「あ……っ、んん……は……ぁ……」

 

しかしそれでもブラッドの動きが止まる事は無く、それどころか徐々に早くなっていき、遂には再び中に熱いものが放たれた。その熱を感じながらアリスもまた達してしまいそうになるが、今度は寸前の所で止められてしまったのだ。

 

「……?」

 

何故だろうと思っているとブラッドは耳元で囁いた。

 

「……まだだ」

 

そしてそのまま耳を舐め上げられてしまいぞくりとした感覚が襲ってくると同時に子宮の奥の方がきゅんとなるような感覚を覚えたのだ。それはまるで期待をしているかのようで、アリスは羞恥心から顔を赤くさせた。

だが、ブラッドの動きが止まる事は無かった。それどころか更に激しい動きで攻め立てられてしまうと、あっという間に上り詰めてしまったのである。

 

そしてそれと同時にブラッドもまた欲望を解き放ったようだった。

 

 

 

それから暫くの間ベッドの中で抱き合っていた二人だったが、やがてブラッドがゆっくりと身体を起こすと言った。

 

「アリス、身体は平気か?」

 

そんなブラッドの優しさに、また胸の奥が熱くなるのを感じる。

ふと、視界に姿見が視界に入った。そこにはあられもない姿になっている自分が映っていたのだ。しかも秘所は未だに繋がったままであり、そこから溢れ出る白濁液がシーツを汚している。その光景に思わず目を背けたくなった。

しかし、それよりも早くブラッドの手が伸びてきて顎を掴まれてしまった為叶わなかったのだ。

 

そのまま強制的に視線を合わせられる形になると、ブラッドの熱を帯びたルビーの瞳と目が合う。それだけでもどきどきしてしまい、鼓動が激しくなるのが分かった。アリスは、それを悟られないよう必死に取り繕いながら、慌てて口を開いた。

 

「あ、あの……ブラッドさん。その……お仕事が……」

 

すると彼はふっと笑みを浮かべると、

 

「まあ、この程度のしわ寄せは直ぐに挽回できるから安心しろ。今はむしろ――アリス。お前が欲しくてたまらない」

 

そう言ったかと思うと、ゆっくりとその唇を塞がれた。優しく啄ばむような口付けを何度も繰り返された後、舌先で歯列をなぞるように舐められると自然と口を開いてしまう。それを待っていたかのように彼の舌が差し込まれたかと思うと、そのまま口内を犯し始めたのだった。

 

「ん……ふ、ぁ……っ、は……」

 

上顎や内頬など敏感な場所を重点的に攻め立てられる度に、甘い痺れにも似た感覚に襲われて、何も考えられなくなる程 夢中になってしまう自分がいる事に驚くと同時に、戸惑いを覚えたアリスは、思わずブラッドの背中に腕を回していた。

するとそれに応えるようにして、ブラッドの手がアリスの後頭部に添えられると、より深く口付けられると同時に、いつの間にか硬さを取り戻していた彼のそれがアリスの一番敏感な部分を突き上げてきたのである。

 

「あ、んん……っ」

 

突然の事に驚きつつも無意識のうちに腰を動かしてしまうと、それに応えるようにして、ブラッドの動きが激しくなる。

そして再び絶頂を迎えてしまいそうになった瞬間、ずるりと引き抜かれてしまい喪失感に襲われるが、それも束の間の事だった。

次の瞬間には一気に奥まで貫かれたのだ。

 

「あ……っ!!」

 

その衝撃に一瞬意識を飛ばしそうになるものの、何とか持ち堪える事ができたのだが、今度は先程よりも激しい抽挿が始まったのである。ぱんっ!という音と共に肌がぶつかり合う音が、部屋の中に響き渡る。

 

「あっ! ああぁ……っ! ブラッド、さ……、わた、わたし……もう……っ!」

 

「ああ、俺もそろそろ限界だ……っ」

 

そう言いながら更に動きを早めていけば、それに比例するようにアリスの口から漏れる声も大きくなっていった。やがて一際強く突き上げられた瞬間、熱い飛沫が流れ込んできた感覚を最後にアリスは意識を手放したのだった。

 

 

 

*** ***

 

 

 

横で眠るアリスを見ながら、ブラッドはそっと彼女のキャラメルブロンド髪を愛おしそうに撫でた。その髪を己の指に絡めて口付ける。

 

「お前は、俺のものだ……アリス。誰にも渡さん」

 

ビリーのあの言葉……。それは、アリスに好意を持つ者達からだろう。要は、探りを入れてきているのだ。

だが、ブラッドはアリスを渡す気など毛頭なかった。こうして自分の手の中に閉じ込め、目の届く範囲に常に置いておきたい。それがエゴだという事は重々承知している。だが――。

 

そうだとしても、自分にだけ笑い掛けて欲しい。傍にいて欲しい。

 

「は……まさかこの俺が、こうも誰かに執着するとはな」

 

きっと、昔なら考えられなかっただろう。これを「愛」と呼ぶのかはまだ分からない。けれど――。

そっと、眠るアリスに口付ける。

 

「お前さえ傍にいてくれれば、俺は――」

 

そう呟きながら、ブラッドはそっと彼女の身体を抱き締めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2025.01.21