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◆ 小竜景光 「紫月の花」
(刀剣乱舞夢 「華ノ嘔戀 外界ノ章 藍姫譚」 より)
どうして、このような状態になってしまっているのだろうか……。
先程までは、普通に……至極普通に会話していただけだった。それなのに、気がつけば審神者は何故か小竜景光に押し倒されていた。しかも、審神者の部屋の奥にある、執務室とは違う、私室の寝台の上で。
小竜も、この状態に驚いているのか……その綺麗な紫水晶の瞳を瞬かせて、唖然としている。
早く、この状態下から脱出しなければいけない気がするのに、言葉が上手く出ない。審神者の意思とは無関係に、次第に心臓の鼓動が速くなるのを感じた。
「あ、ああ、あの……っ」
やっとの思いで声を発するが、上手く言の葉に乗らない。何を言ったらいいのか分からないのだ。ただ一つ、分かっている事は――このままではいけないという事だ。
仮にも、相手は刀の付喪神とはいえ、男。かたや自分は“審神者”であり、女。男女がこの様な状態下なのを、万が一にも誰かに見られでもしたら一大事だし、そもそも、これではまるで小竜と審神者が何かあったかの様に勘繰られてしまう。
正直、それはそれで嫌というよりも、恥ずかしい。なので、早く、この状況下をどうにかしなければならないのに、小竜が審神者の上から退く気配はなかった。
かといって、審神者の口から何と申し上げたらいいのか分からない――というのが現状であった。その時だった、小竜の手がすっと動いた。そして、その手がそっと審神者の頬に触れる。突然のその行為に、審神者の心臓がどきっと跳ねた。次第に顔が熱を帯びていくのが自分でも分かる。
恥ずかしい……っ。
そう思うのに、時間は掛からなかった。審神者は慌てて小竜の手から逃れようと、口を開いた。
「あ、あの……っ、小竜さ――」
「小竜様」と呼ぼうとした瞬間、それは突然だった。小竜の手が審神者の頬から唇へと動いたのは。すっと、ゆっくりと撫でられるように唇に彼の指が触れてくる。
その感触に、審神者は発する言葉を失ってしまった。すると、小竜はくすっと淡く微笑み、
「抵抗――しないんだ?」
「え……?」
一瞬、何を問われたのか理解出来なかった。“抵抗”とは、何の事だろうか……。などと、自分でも馬鹿な事を頭に浮かべてしまった。すると、小竜の綺麗な顔がそっと審神者の方に近づいてきた。さらりと流れる金糸の髪。
自然と合う、目と目。互いの姿が、それぞれの瞳に映っているのがはっきりと分かるぐらい、小竜が距離を縮めてきた。
あ……。
小竜の美しい紫水晶の瞳に真っ赤な顔をした自分の姿が映っていた。
「……っ」
なんだがそれが恥ずかしくて、思わず視線を逸らしてしまう。すると、小竜がくすっと微かにその口元に笑みを浮かべて、するりと審神者の首筋に口付けを落とした。
「……ぁ……」
突然の行為に、審神者の身体がぴくんっと反応するのが自分でも分かった。恥ずかしい……っ。そう思うのは何度目だろうか……。
「あ、あの、小竜さ、ま……っ、何をなさって――」
なんとかそう言葉を発すると、小竜はさも当然の様に、
「うん、キミに触れたいなって、思ってさ」
「え……?」
今、彼は何と言っただろうか? 審神者はこの時、半分混乱していたのかもしれない。彼の言う意図がわからなかった。すると、小竜は優しげに審神者の髪を撫でると、
「キミのその柔らかそうな唇に触れたいって、思ってるんだけど、駄目かな?」
「え? あ、あの、それ、は――」
瞬間、審神者の答えを待たずに、小竜の形の良い唇が審神者の唇に触れてきた。
審神者は今、何が起きているのか……本気で理解出来なかった。だが、小竜からの口付けは一度だけでは終わらなかった。二度三度と重ねるうちに、どんどん熱を帯びてくる。
「……んっ、ぁ……、こ、りゅ、さ……」
審神者が溜まらず声を洩らすと、小竜が小さな声で「もっと、口開けて」と呟いた。それが意図する意味が分からず、審神者が言われるままに口を開けると、彼の舌が入り込んできた。その感触に、審神者は思わず息を呑んでしまう。
「ンン……っ、ぁ……ふ、ぁ……ん……っ、あ……っ」
突然の激しい口付けに、審神者の思考は付いていけていなかった。彼が審神者の舌を甘噛みし、吸い、絡めてくる度に、審神者の頭の中がくらくらしてくる。気づけば、自分から積極的に彼を求めていた。いつの間にか、寝台に押し倒されている事すら忘れるぐらいに――。
どれくらい時間が経ったのだろうか。暫くして、小竜がゆっくりと唇を離すと、名残惜しそうに銀色の糸が尾を引いた。小竜は、少しだけ乱れた呼吸を整えると、優しく審神者の頭を撫でながら、まるで子供に言い聞かせるように、
「よくできました」
それは、いつもの小竜からは想像出来ない程、優しい声色だった。その声音に胸がきゅんっと苦しくなる。彼は、審神者に何を求め、何を欲しているのだろか――。
そんな風に考えていると、小竜が審神者の顔を見て、くすりと笑った。そして、こつんっと額をくっ付けて、
「物足りない? もっとして欲しそうな顔してるけど」
「え……」
最初、何を言われたのか分からなかった。だが――次の瞬間、審神者の顔が真っ赤になるのは必然だった。
「そ、その様な事は――」
そう慌てて言い繕う様に言うと、小竜が面白そうに笑った。その屈託のない笑顔に、また審神者の胸が締め付けられる。すると、小竜はすっと審神者の耳に唇を寄せて、
「だったら、キミの望み通りの事、してあげようか?」
そう言って、はむっと審神者の耳を甘噛みしてきた。
「んっ……」
不意打ちの様なその行為に、審神者の口から甘い吐息が漏れた。小竜はそのまま、ちゅっと首筋や鎖骨辺りに何度も口付けを落としていく。その度に、審神者の身体が小さく跳ねた。
「あ、んん……っ。こ、こりゅ、様、待っ……」
何とかそう言葉を発するが、小竜はくすっとやっぱり笑みを浮かべ、
「待たないよ」
そう言ってそのまま彼の長い指が、審神者の腰紐の結び目に触れた。ぎょっとしたのは審神者の方だった。慌てて小竜の手を止めようと手を伸ばすが、小竜の方が一歩早かった。あっという間に袴を止めていた結び目が解かれて、胸元の合わせが緩む。
これ以上は駄目……!
そう思って、審神者が慌てて胸元を手で押さえようとするが、小竜の方がやはり早くて――彼は審神者の胸元に顔を埋めて、そっと審神者の胸に手を添えた。瞬間――びくっと審神者の身体が震える。
「あ……んん……っ」
予想外に甘く漏れた自分の声に驚く。慌てて口を塞ごうと手で自身の口元を押さえようとした。だが、小竜の手が伸びてきて、その手を掴んだ。まるで、駄目だというように――。
「こ、小竜様……っ」
焦って堪らず審神者が叫ぶと、小竜はくすっと小さく笑みを零した。その表情に思わず、どきりとしてしまう。こんな時に不謹慎だが、小竜のその笑みはとても綺麗だった。
彼の紫水晶の瞳が、審神者を見ている。たったそれだけなのに、鼓動が止まない。すると、小竜は審神者の頬を撫でながら、
「――ねえ、主。キミは今どんな顔をしていると思う?」
などと、意味深な言葉を言ってきた。
審神者が今、どういう状況下なのか、彼は分かっていて言っているのだ。だが、審神者には彼が何故そんな事を聞くのか意図が分からず、ただ困惑していた。すると、小竜はふわりとした微笑を向けて、
「俺はね、今すごく幸せだよ」
そう言って、審神者の首筋に唇を落とした。それは、先程の触れるだけのものではなく、強く吸われ痕が残るものだった。ちくりとする痛みに、審神者の口から小さな悲鳴が上がる。
――ああ、このままキミを俺のものに出来たなら……。
そんな事を小竜が呟いた気がした。しかし審神者はその時、小竜の言葉を聞き返す余裕などなかった。彼は、審神者の首筋に唇を落とすと、今度はそこに舌を這わせてきた。ぞくりとした感覚に、審神者はぎゅっと目を瞑る。
恥ずかしい……っ。
そう思うが、小竜は止めてはくれなかった。彼は暫くして、漸く唇を離すと、審神者を見て満足げに笑った。そこには、くっきりと紅い印がついていた。小竜はそれを指先でなぞり、愛おし気に審神者を見ると、小さな声で、
「好きだよ。ずっと前から好きだったんだ」
そんな風に聞こえたのは気のせいだろうか……。その言葉の意味を理解する前に、小竜は再び審神者の唇に自身のそれを重ねてきた。その時、もう審神者の思考回路は限界に達していた。
小竜様が私に求めているのは何?
どうして、この様な事になってしまっているの?
ぐるぐる回る思考の中、小竜がそっと審神者の耳元に唇を寄せると、熱を帯びた声で囁いた。
「キミの全てを俺にくれるかな?」
それが、始まりの合図だった。
小竜が審神者の唇を塞ぐように口付けてくる。そして、そのまま彼の舌が審神者の中に入ってきた。互いの唾液が絡み合い、混ざり合う。彼の熱い舌が、審神者の口内を犯す様に蹂躙していく。小竜は、何度も角度を変えながら、審神者に深い口付けを施していった。時折、審神者の様子を窺う様にこちらを見る彼の瞳は、とても優しかった。けれども、どこか不安げに揺れている様にも見えた。
どうして? どうして貴方がそんな顔をするの……。
そう思いながらも審神者は抵抗しなかった。否、出来なかった。と言う方が正しいかもしれない。頭では抵抗しなくてはと思っているのに、心のどこかでは、彼に触れられるのは嫌ではないと思ってしまう自分が居た。寧ろもっと触れて欲しいと思ってしまうぐらいに――。
どれくらい時間が経ったのか分からない。漸く長い口付けが終わると、小竜は名残惜しそうに審神者の唇を舐めてから離れた。そして、そのまま審神者の胸元へと視線を移すと、くすりと笑みを浮かべる。
その笑みの理由が分からずに審神者が小首を傾げると、小竜がくすっと笑いながら、
「可愛い」
そう言って、彼は審神者の胸元にそっと手を添えたのだ。
「あ、ん……っ」
瞬間、審神者の口から甘い吐息が漏れる。自分の声ではない様なその声音に、かぁっと、自身の頬が熱を帯びるのが分かった。小竜は、審神者の胸元をそっと揉むと、そのままゆっくりと円を描くように動かし始めた。最初は、何とも言えない違和感があったのだが、小竜が審神者の胸の先端を口に含んで吸い上げた瞬間――、
「あ、ぁ……んんっ」
審神者の口から一際大きな声が上がった。その声を聴いて、小竜が嬉しそうに笑う。そんな彼を見ていると、なんだか余計に恥ずかしくなってきた。
すると、小竜は片方の手で、もう片方の胸を弄りながら、執拗に胸を攻め始めた。
彼の口の中で、審神者の胸の突起が転がされ、甘噛みされる度に、審神者の口から甘い声が漏れた。その度に、小竜が嬉しそうにしているのが分かる。
どうしようもなく恥ずかしくて、でも気持ち良くて、どうにかなりそうだった。
小竜は審神者が反応を示す度に、それを見逃さない。いつの間にか、審神者の胸元は小竜の唾液で濡れていて、彼の片手は、審神者の下半身の方へと動いて行く。
小竜は、審神者の袴の中に手を入れると、そのまま下着越しに割れ目に触れてきた。
「んっ……ぁ、は、んん……」
自分でもよく分からない感触に、思わず身体を震わせると、小竜は審神者の耳元に唇を寄せて、
「大丈夫だから」
と、優しい声で囁いた。
その声音に安心したのと同時に、小竜が審神者の秘部に触れて擦り上げると、今まで感じたことのない快感が押し寄せてきた。
「ぁ……やっ、そ、だ、だめぇ……っ」
駄目……! これ以上されたら……!
必死に小竜に訴えようとするが、小竜は止めるどころか、更に強くそこを刺激してきた。
次第に、水音が聞こえてきて、小竜が何をしようとしているのか理解した審神者は、慌てて小竜を止めようとした。しかし、小竜はまた審神者の口を塞ぐと、自分の指を審神者の口に突っ込んできた。
「んん……っ」
突然の事に、驚いて小竜の顔を見つめるが、彼は相変わらず優しく微笑んでいるだけで、審神者の口を塞いだままだ。
小竜は、指で舌を撫でたり、歯列をなぞったりしながら、空いた手で審神者の胸を弄り続けている。その間も、小竜の指は止まる気配はない。そればかりか段々と激しさを増していく。
「ぁ……、ンンっ……は、あぁ、んっ」
口では小竜の指を噛まないようにするので精一杯で、抗議の声を上げる事すら出来ない。それでも何とか首を振って意思表示するが、小竜は全く意に介していない様で、逆に、もっと深く審神者の中に侵入しようとしてきた。
瞬間、小竜の指が審神者の上顎に触れた。
「――っ!!」
すると、途端に審神者の身体が大きく跳ねて、それと同時に、審神者の頭は真っ白になった。
小竜は、審神者の口の中からそっと指を引き抜くと、そのまま審神者の頬を伝う涙を拭ってくれる。そこで漸く審神者は解放されたのだと気づいた。だが、小竜はそのまま審神者の胸に顔を埋めると、今度は舌先で乳首を刺激する。
「ンンっ、ぁ、ああ……っ、は、ぁ……んっ」
同時に反対の乳房を揉まれて、再び審神者の口から甘い声が上がる。両方の胸から違う刺激が襲ってきて、気がおかしくなりそうだった。
「やっ……ああん! ……こ、りゅ、さ……っ、ああ!」
もう止めて欲しいと思っているはずなのに、審神者は無意識のうちに小竜の名前を呼んでいた。否、呼ばずにはいられなかった。
小竜は、そんな審神者に応える様に、口と手の動きをどんどん速めていく。やがて、小竜が一際大きく吸い上げた瞬間、審神者は二度目の絶頂を迎えた。
小竜がゆっくりと顔を上げて審神者を見る。審神者も、ぼんやりとした意識の中、小竜の事を見ていた。彼は審神者の胸元に付いた唾液を舐めると、そのまま唇を重ねてきた。
『好きだよ。ずっと前から好きだったんだ』
先程言われた言葉が、脳裏を過る。
どうして……どうして貴方がそんな事を言うの……。
彼は審神者の疑問には答えてくれなかった。ただ、審神者の名前を呼ぶと、もう一度口付けてくる。何度も繰り返される口付けの合間に、小竜が審神者の耳元に唇を寄せて、またあの言葉を囁く。
「キミの全てを俺にくれるかな?」
それがどういう意味なのか、この時の審神者はまだ気付いていなかった。
小竜は、審神者の身体を抱きしめると、そのままそっと白衣の前を開く。小竜の視線を感じて、羞恥心が増していく。知らず、頬が朱に染まるのに時間は掛からなかった。小竜が、審神者の身体をじっと見つめてくる。彼の視線を感じる度に、身体の奥底から熱くなっていくような感覚に陥る。
きっと、今、審神者の顔はとても赤くなっているに違いない。すると、小竜が審神者の胸に手を伸ばしてきた。その手が触れる瞬間、びくりと身体が震えてしまう。小竜は、そんな審神者の反応を楽しむかのように、ゆっくりと手を這わせながら、胸を揉み始めた。先ほどの行為で少し触れられただけでも、敏感に反応してしまう。その度に、審神者の口から甘い声が零れた。そして、小竜の掌が先端に触れた瞬間――、
「――ああっ!!」
自分の口から漏れた声の大きさに驚き、咄嵯に手で口を覆う。小竜は、そんな審神者の反応を見てくすりと笑うと、指先でそこを押し潰したり、摘まんで擦り上げたりしてきた。
「ンン……っ、ぁ……、はぁ……ああ、んっ」
その度に、審神者の口からは抑えきれない喘ぎ声が漏れた。
恥ずかしくて仕方ないのに、小竜は執拗にそこを攻め続ける。暫くして、今度は、審神者の胸の先端を口に含むと、舌で転がし始めた。
「あ、ぁ……っ、やっ……、だ、めぇっ」
片方は指で弄られ、もう片方は舌で攻められて、頭がどうにかなってしまいそうだった。小竜は、そんな審神者の反応を見ながら、緩急をつけて刺激を与え続けてきた。そのせいか、審神者の身体はどんどん敏感になっていった。
次第に身体が火照り、彼が触れたところ全てが性感帯になったように感じてしまう。
「――ぁっ!」
不意に、小竜の手が下腹部へと伸びたかと思うと、そのまま下着の中に滑り込んできた。そして、小竜の長い指が審神者の秘部に触れて、割れ目をなぞるように動いた。
「や、ぁ……っ! ああ……っ」
今までに感じたことの無い感触に、思わず腰を引く。だが、小竜はそれを許してはくれなかった。審神者の脚を掴んで引き寄せると、秘部に指を当てたまま動かし始めたのだ。小竜の指先が動く度、そこからくちゃくちゃと水音が聞こえてくる。
――っ、恥ずかしい……っ。
そう思うも、止める事は出来なかった。それどころか、いつの間にか小竜の指の動きに合わせて、知らず自然と脚を開いていた。
やがて、小竜は動きを止めると、指を一本、審神者の中へ押し込んだ。突然の行為に、下腹部がきゅんっと閉められる感覚に捕らわれる。審神者が思わず、ぎゅっと目を瞑ると、小竜は慎重に指を動かしながら、少しずつ奥の方まで入れてきた。やがて指の付け根まで入ったところで、小竜はまた同じ動作を繰り返す。それを何度か繰り返した後、今度は二本目の指を入れてきた。
最初は少し苦しかったものの、すぐに慣れて、気が付けば小竜の指を受け入れていた。やがて、三本目が入ってきて、それぞれバラバラに動かされる。
「ああ――っ、は、ぁあ……や、ああんっ!」
小竜が三本目を入れて激しく動かすものだから、審神者は堪らず大きな声で鳴いてしまった。
小竜は審神者の声を聞くと、指を動かしたまま顔を近づけてきて、口付けてくる。その間も、小竜が与える刺激は止まらない。彼の舌が口内に侵入して、審神者の舌と絡み合う。同時に、膣内の一番感じるところを集中的に責められた審神者は、呆気なく達してしまった。
絶頂を迎え、全身から力が抜けていく。小竜は、そんな審神者を抱き締めると、頭を撫でてくれた。
そのまま暫く抱き合っているうちに、段々と落ち着いてきた審神者は、恐る恐る彼を見上げた。すると、小竜は優しく微笑み、審神者の額に軽く口付けてから、再び審神者の胸を揉み始めたのだ。審神者が驚いていると、彼は審神者の乳首を口に含んだ。同時に、再び下半身に違和感を覚え、ぴくんっと審神者の身体が反応する。
「……ぁ、あンン……っ、は、ぁ……や、んんっ」
小竜は、胸への愛撫を続けながら、空いた方の手で、審神者の中に挿入れたままだった指を再び動かし始めたのだ。突然の事に驚くも、小竜は全く意に介していない様で、胸を刺激しながらゆっくりと抜き差しを繰り返している。
時折指を曲げたりしながら掻き回されると、先程とは違った快感が襲ってくる。小竜の指の動きは次第に速くなり、審神者の身体は再び熱を帯び始めていった。
「あぁ、だ、だめぇ……っ、こりゅ、さ、まぁ……っ」
頭では駄目だと分かっているのに、身体が言うことを聞かない。小竜は、そんな審神者を見て、くすっと笑った後、耳元に唇を寄せて囁く。
「――もっと、声、聞かせて」
「……ぁ、そ、んな事、……ああっ!」
否定の言葉を言い切る前に、小竜が激しく指を抜き挿ししてきた為、途中で喘ぎ声へと変わってしまった。それでも、小竜はまだ満足出来ないようで、何度も出し入れを繰り返した。その度に審神者の口から甘い吐息が漏れる。気が付くと、小竜の手首を両手で掴んでいた。
「こ、こりゅ、さ、ま……も、もう……っ」
――これ以上されたらおかしくなってしまう。
そう思った瞬間、小竜は手を止めて指を引き抜いた。どうして? という疑問と同時に、何故か寂しさのようなものを感じてしまう。そんな事を考えていると、いつの間にか小竜が上着を脱いでいた。
「あ……」
そこには、細身なのにしっかりと筋肉のついた、小竜がいた。
「……っ」
なんだか、急に恥ずかしくなり思わず目を背けてしまう。そんな審神者に気付いたのか、彼は優しく審神者の頭を撫でると、額に口付けを落とした。それから、そのままぐっと審神者の両脚を広げさせると、その間に自分の身体を挟み込んできたのだ。
何をされるか察した審神者は、慌てて小竜の腕を掴むが、小竜は審神者の目を見ると、ゆっくりと首を横に振ってもう一度言った。
「キミの全てを俺にくれるかな?」――と。
それは、先程彼が言った言葉だった。
その意味を理解するまでに、少し時間が掛かった。けれど……理解してからは早かった。
小竜は審神者の返事を待つことなく、自身を審神者の中へと押し進めたのだ。
「あ――っ!!」
下腹部に感じる違和感。――熱い!!
初めて経験するその感覚に、身体が震えた。ずくずくと下腹部が痛む。圧迫感が強くて苦しい。
けれど、不思議と嫌ではなかった。むしろ、彼に求められているという喜びの方が勝っていたのかもしれない。小竜はというと、ゆっくりと腰を進めながら何かに耐えているようだったが、やがて全て収まったところで動きを止めた。
「キミの中は、熱い、な」
微かに、笑みを零しながら小竜がそう言うと、彼の腰が再び動き始めた。最初はゆっくり動いていたが、次第にその動きは激しさを増していく。
「……ぁあんん! ……っ、は、……あぁ……っ」
堪らず声が漏れた。小竜の動きに合わせて寝台が軋み、肌のぶつかり合う音と、結合部からの水音が部屋中に響き渡る。
――恥ずかしい……っ。
だが、そんな思いとは裏腹に、審神者は与えられる快楽に今にも溺れそうになっていた。やがて、小竜の表情にも余裕が無くなってきた頃、審神者は無意識のうちに彼の首に腕を回し、自ら口付けを求めていた。
小竜もそれに応えるように、審神者の背中に手を回すと、更に激しく腰を打ちつけてくる。そして、小竜の動きが一層速くなったかと思うと、次の瞬間、お腹の奥に温かいものを感じたのだった。
審神者は、ぼんやりとした意識の中で、自分の中にある小竜自身がまだ硬度を保っていることに気が付き、思わず顔を赤らめた。
「……っ」
それが、何を意味するのか――その事に気付くのには時間は掛からなかった。小竜は、審神者の顔を見つめた後、再び抽送を開始したのだ。
それからどのくらい経っただろう。小竜は、何度も審神者を求めてきた。審神者は、求められるまま彼を受け入れていた。
小竜が与えてくれる快楽は今まで感じたことのないもので、彼の愛撫によって審神者の身体はすっかり蕩けてしまっていたのだ。審神者は、小竜にしがみつきながら、ひたすら甘い声で鳴き続けるしか出来なかった。
そんな審神者の姿を見た小竜は、時折優しい笑みを浮かべると頭を撫でてくれた。それが嬉しくて、審神者はもっともっとと小竜を求めてしまった。そして、小竜はそれに応える様に、何度も何度も身体を重ねたのだった――。
行為が終わった後、小竜は審神者の身体を抱き締めると、優しく頭を撫でてくれた。そんな小竜の手の温もりを感じながら、審神者は心地よい微睡みの中へ落ちていったのだった。
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「……ん」
微睡の中、目を覚ますと、そこは小竜の腕の中だった。どうやら、いつの間にか寝てしまったらしい。そっと小竜の方を見ると、彼も穏やかな寝息を立てて眠っていた。
審神者は、そっと小竜の綺麗な髪に触れてみた。金糸の様な髪はさらさらと審神者の手の中から、零れ落ちていく。
「綺麗……」
ぽつりと、そう呟いた時だった。ふと、眠っていると思っていた小竜がくすっと笑った。「え?」と顔を上げると、彼は面白いものを見たかのように、くつくつと笑いながら、
「キミの方がずっと綺麗だよ。すごく、綺麗だった」
「……っ」
彼のその言葉に、審神者の頬が熱くなる。それから、彼が何に対してそう言っているのか気付き、審神者の顔がどんどん赤くなるのに時間は掛からなかった。
「も、もう、小竜様……っ。じょ、冗談は……」
「ん? 冗談じゃないさ。さっきのキミはとっても魅力的で、目が離せなかった。まるで天から降ってきた天女の様だったよ」
小竜の言葉に、審神者の顔がますます赤くなる。余りの恥ずかしさに、顔を両の手で押さえながら、
「な、なにを仰って――」
「俺は事実を言っただけだよ。まぁ、キミが天女だとしても、もう天には返してあげられないけどね」
そう言って、小竜がにっこりと微笑む。そんな笑顔を見せられたら、もう何も言えなくなってしまう。
「もう……、小竜様ったら……」
思わず、小竜の背に手を回しぎゅっと抱きつく。そして――、
「私が天女だとしても、貴方様の傍を離れる事はありませんよ」
そう言って微笑むと、小竜が嬉しそうに笑いながら、
「そうか……。うん、ありがとう」
そう言葉を洩らすと、優しく審神者の額に口付けを落としたのだった。
始まりは些細な事故だった。重いものを持っていた審神者が足を滑らせてこけそうになったのを、小竜が助けようとして、そのまま寝台に二人して倒れてしまっただけだった。
でも、それがなかったら今のこの関係はなかったのかもしれないし、彼の本音を聞くことも出来なかったかもしれない。そう思うと、これで良かったのかと問われると悩むが、良かったのかもしれない。
少なくとも、今、自分は彼の傍にいれて幸せだから――。
2024.12.19

