㭭ノ題 言葉の題
◆ 17:穹(そら)の下 / 天を仰ぐ
(アルゴナ:『猫と私と”あなた”』より:旭那由多)
猫と私と”あなた”6
懐かしい夢を見た
あの子猫と、遥と、そして――――・・・・・・
『結局、あんたも俺を捨てるんだ・・・・・・・夕夏姉・・・・』
違う!!!
違うのだと、言いたかった
でも、実際京都に1人残していく遥に「違う」とは言えなかった・・・・・・
「・・・・・・・・・・・い」
だって、私は
涙が零れた
あの子と遥を残して、東京に進学したのだから――――・・・・・・
何度も、言おうとした
したけれど・・・・・・遥の顔を見ると、言えなかった
「・・・・・・・・・・・・っろ・・・・・・」
誰かの声がする・・・・・・気がした
ふと、風が頬を撫でるかのように、優しく涙を拭われた気がした
だ、れ・・・・・・?
確認したくとも、昨夜徹夜で仕上げたレポートのせいで、目が開けられない
そよそよと風が吹く
「・・・・・・・・・・・・まで、・・・・・・は」
声が聴こえる
誰かの替えが
だが、それは不快な感じがなかった
むしろ、心地よかった
そのまま、夕夏は昏々と眠りの淵へ落ちていった―――――・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「―――――あ・・・・れ・・・・・・?」
何処くらいそうしていたのだろうか
はっと、目を開けると、もう夕日が傾き、空が朱く染まっていた
「・・・・・・え・・・・?」
一瞬、自分に何が起きたのか分からず、夕夏がその大きな灰青の瞳を瞬かせる
頭を押さえ、今、なぜここに自分がいるのか考える
そうだ、教授の所に行こうと思った時に、里塚という人とぶつかって―――――・・・・・・
それから、猫探しを・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・」
そこまで考えて、夕夏の顔色がさ――と蒼くなった
そうよ!
里塚と、ガラの悪そうな銀髪の人に、その猫の世話を頼まれたのだった
「にゃんこたろう!!!」
夕夏が、がばっと起き上がり、辺りを見渡す
やってしまった――――――!!!!!!
うっかり、ついうとうとと寝入ってしまっていた
あれから、どのくらい時間が経った!!?
慌ててスマホを取り出し時間をみる
それを見て、夕夏は更に蒼くなった
優に2時間は過ぎていたからだ
2時間もあんな子猫を1人放置したまま、寝入っていたなんて―――――・・・・・・
大失態である
夕夏は慌てて辺りを見渡した
「にゃんこたろう? お願い、いるなら返事して――――!!?」
夕夏がそう叫んだ時だった
木を挟んだ反対側から「にゃぁ・・・・」という声が聴こえてきた
間違いない、にゃんこたろうの声だった
夕夏が慌てて反対の木の元へ駆ける
「あ・・・・・・」
そこで見たものは
あの銀髪の青年が木に寄り掛かり、優しそうな目でにゃんこたろうを撫でていた姿だった
さぁ・・・・・・・・・・
風が吹く
ふと、青年がこちらに気付き、顔をあげた
瞬間、さっきまでとはうって変った様な鋭い目つきでこちらを見た
「・・・・・・・・・・・・っ」
ぎくっと、夕夏の表情が硬くなる
そう思った瞬間、夕夏は頭を下げて叫んでいた
「す、すみませんでした!!!!!」
「・・・・・・あ?」
突然、謝ってきた夕夏に、青年がいぶかし気にその紅い瞳を細める
それから、さもどうでも良さそうに「はぁ・・・・・・」と、溜息をこぼした
う・・・・・っ
その溜息が、微妙に怒気が混じっている様に聴こえ、夕夏が畏縮する
どうしよう?
どうしたらいい・・・・・・?
頭の中が混乱して、考えが上手くまとまらない
「あ、あの、お詫びになんでもしますので、だから―――――・・・・・・」
夕夏のその言葉に、青年がぴくっと反応した
「なんでも?」
「は、はい・・・・・・」
何を言われるのか、心臓がバクバク言っている
でも、自分で蒔いた種だ
たとえ、袋叩きにされても仕方ない
「―――――おい」
瞬間、不意に彼の手が伸びてきたかと思うと、あっという間に腕を掴まれて引き寄せられた
驚いたのは、他ならぬ夕夏だ
だが、「なんでも」と言った手前、抵抗は出来ない
処刑台に立たされた気分で、夕夏がぎゅっと目を瞑る
神様―――――――
「・・・・・・こいつ」
そう言って、突然青年が1枚の紙を夕夏の前に片手で持って見せてきた
「・・・・・・え?」
予想に反する青年の行動に、夕夏が一瞬、ぽかーんとする
すると、青年はバツが悪そうに視線を逸らして、その紙を夕夏に押し付けた
「あ、あの・・・・・・?」
ますます、事態が飲み込めない夕夏が、その灰青の瞳を瞬かせる
すると、青年が片手でにゃんこたろうを撫でながら
「・・・・・・・・・・・・だよ」
「はい・・・・・・?」
良く聞き取れなくて、夕夏が首を傾げる
すると、青年はますます顔を顰めて
「―――――だから! ・・・・・・・・・・・・だよ・・・・」
「あ、あの・・・・・・?」
夕夏が、おずおずとそう尋ねると、青年はそっぽを向く
「・・・・・・・・・・・・???」
夕夏はどうしたものかと、考えあぐねつつ、押し付けられた紙を見た
それは、今日の講義の時刻表だった
そして、一か所に赤丸がしてあった
うん・・・・・・?
思わず、スマホの時間を見る
その講義はもうとっくに終わっている時間だ
これが、どうしたのだろうか?
そこまで考えて、夕夏が「あ・・・・・・」と、声を洩らした
確か、里塚が彼を連れて講義に行くと言っていた気がした
だが、里塚は経営学部三年と言っていたが、丸が付いている講義はどう見ても、夕夏と同じ法学部一年のものだった
間違いない
この講義は夕夏が先週受けたものだ
もしかしてこの人・・・・・・
「あの・・・・この講義受けたのですか?」
そう尋ねると、青年が「あ?」と不機嫌そうにこちらを見た
う・・・・・・っ、怖い・・・・・・・・・
「・・・・・・た・・・」
「え?」
「―――――っつ、だから! 受けられなかったんだよ!! 何度も言わせんな!」
何度もって・・・・・・
一度しか言っていませんが?
と、思わず言い返しそうになるのをぐっとこらえる
「で、でも、さっき里塚さんと行かれました・・・・・・よね?」
夕夏の記憶が間違えていなければ、里塚は彼を連れ立って(しかも、にゃんこたろうをこっちに預けて)行ったはずだ
なのに、受けられなかった・・・・・・・・????
ますますもって意味が分からない
すると、青年はイラっとした様に
「だから・・・・・・っ、知らねぇんだよ!!」
「・・・・・・知らない?」
何を? とは思うが・・・・・・
まさか・・・・・・
「あの・・・・・・、もしかして、教室の場所が分からない・・・・と、か・・・・」
ぎろっと、青年の紅い目が鋭くこちらを見た
それを見て、夕夏は慌てて手を振り
「あ、流石にそれはないですよね、失礼致し―――――」
「――――知らねぇんだよ!!!!!」
「・・・・・・・・・・・・」
え・・・・・・?
まさか、本当に・・・・・・???
夕夏の唖然とするその反応に青年はバツが悪そうに、ふいっと横を向いた
え・・・・・・えええええええええええ!!!!?
那由多、迷子の回
この間のゲーム内で発覚しましたが・・・・・・
彼は、教室の位置をしりません🤣🤣
そして、また名乗れなかった~~~~😂
※元々、ぷらいべったーに掲載していたものです
べったー掲載:2021.10.13
本館掲載:2022.12.14