㭭ノ題 言葉の題

 

◆ 33:震える肩 / 小さな強がり

 (エリオスR:『スノーホワイト』より:ブラッド・ビームス)

 

 

  スノーホワイト1

 

 

 

 

今から、約50年前―――――

 

宇宙から飛来した高エネルギー体「サブスタンス」がミリオン州に墜落した

 

それは、資源が枯渇した地球に大きな影響を与えた

――――しかし、それと同時に厄災を振りまく存在となり、人々を苦しめた

 

被害を受けたミリオン州に設立された

 

 

対策機構 『HELIOSエリオス

 

 

彼らは、「サブスタンス」から発見された能力型結晶石を精鋭に託し――――

 

特殊能力を持つ、「ヒーロー」を誕生させたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

【Chapter1-1】

 

 

その日は、晴天だった

カーテンの隙間からそよそよと、風が吹いている

 

朝日が、徹夜明けの目に染みる

 

ブラッドは少し目を抑えながら、息を吐いた

 

数ヶ月前にルーキー達がこの『HELIOSエリオス』入所してきた

各セクターことにメンターを2人、ルーキーをそれぞれ2〜3人に振り分けた

最初こそ、衝突やチームが全くの皆無だったが、彼らも成長しているのだろう

最近は、少しはまともになってきていた

 

そんな、メンターの統括―――セクターのメンターでありつつ、メンターリーダーとしての仕事と掛け持ちでやる業務は決して簡単ではなかった

 

毎日毎日、会議の連続

その上、謎のイプリクスという敵との交戦

 

問題は山積みだった

 

だが、そんな中 殉職したと思われていた「仲間」が生きていた

 

彼の名は、ディノ・アルバーニ

 

メジャーヒーローであるブラッドと

同期であり、同じメジャーヒーローのキース

 

彼は二人の共通の「友人」であり同じ10期生の「仲間」だった

 

アカデミー時代からの繋がりで、気がつけば、よくディノの言葉に乗せられて3人で行動していた

 

生きていてくれたことは、素直に嬉しい

しかし、ディノは「洗脳」されていた――――イプリクスの連中に

 

ずっと、昔から

それは赤子の頃から仕込まれたものだった

 

あの時――――

ディノと対峙した時、彼は涙を流し自分を「―――殺してくれ」と言った

あの時の、ディノの洗脳の中から、絞りだされた言葉が、今でも耳に残っている

 

ブラッドは、また小さく息を吐いた

微かに手が震える

 

もし、あの時――――

この手にディノを掛けていたかと思うと・・・・・・

 

考えただけで、ゾッとした

 

「・・・・・・情けないな」

 

ぽつりと、小さな声でブラッドが呟いた

まさか、自分が「怖い」なとど思うとは――――

 

滑稽で笑いすら出てくる

もう――――そんな感情 捨てたかと思っていたのに

 

その時だった

コツン・・・と、サイドテーブルに何かが置かれる音が聞こえた

 

ふと、音のした方を見ると

そこには、一人の若い女性が立っていた

 

「あ・・・・・・」

 

女性がブラッドの視線に気づき、少し申し訳なさそうに頭を垂れると、そのまま部屋を出ていこうとした

 

「・・・・・・っ、待て!」

 

咄嗟に、思わず手が出た

まさか、手を掴まれるとは思わなかったらしく、その女性が驚いたように、そのライトグリーンの瞳を瞬かせた

 

「あ、あの、手を・・・・・・」

 

「離して」という言葉は声にならなかった

彼女のキャラメルブロンドの柔らかい髪にブラッドの手が伸びる

 

一瞬、彼女がビクッと肩を震わせた

 

「悪い・・・・・・驚かせて済まない、アリス」

 

アリスと呼ばれたその女性は、少しだけ頬を染め、小さくかぶりを振った

 

「いえ・・・・・・大丈夫です。 それよりも――――」

 

ちらりと、アリスと呼ばれた女性がサイドテーブルの方を見る

 

「冷めないうちに、召し上がって下さい」

 

言われてそちらの方を見ると、コーヒーと一緒に、軽食が置かれていた

 

それだけ言って、アリスが立ち去ろうとする

が――――

 

ブラッドがその手を離さなかった

 

ブラッドの行動が理解出来ず、アリスが困惑した様にそのライトグリーンの瞳を瞬かせた

 

「えっと、あの・・・・・・ブラッドさん?」

 

ブラッドのルビーの瞳と目が合った

 

「あ・・・・・・」

 

不意に、ゆっくりとブラッドの顔が近づいてくる

思わず、アリスがぎゅっと、目を瞑った時だった

 

「あ―――! 腹減った―――!! ウィル、なんか、食い物あったっけ?」

 

突然、部屋の中にどやどやと、騒がしい声が聞こえてきた

 

ハッとして、慌ててアリスが声のした方を見る

そこには、今期のルーキーの鳳アキラと、ウィル・スプラウトの姿があった

 

そういえば、ここはレッドサウスセクターの部屋だった

 

一番最初に口を開いたのは・・・・案の定アキラだった

 

 

 

「ああああ――――――!!!」

 

 

 

アリスとブラッドを指さした叫んだ

 

「ブラッドが、女連れ込んで・・・・・・もが! ももがもが」

 

すかさず、ウィルがアキラの口を抑える

 

「す、すみません、ブラッドさん! 俺たちすぐ出ていきますので――――」

 

と、ずるずると、抗議するアキラを連れて部屋を出ていこうとする

 

「あ、あの、ちが―――――」

 

何か、誤解されている!!

アリスが慌ててウィルを止めようとした時だった

 

「ブラッド――――! いるか――?」

 

「二日酔いに響くから、叫ぶなよ・・・」

 

不意に入口が開き、ディノがキースを引き連れて現れた

 

瞬間―――――

 

 

 

 

「「あ・・・・・・」」

 

 

 

 

ディノとキースの声が被った

 

だが、それはほんの一瞬で、ディノがアリスを見て、ぱぁ!っと、顔を綻ばせた

 

「アリス!! アリスもいたのか!! ・・・・・・って、あれ? もしかして、俺らお邪魔・・・・しちゃった??」

 

ディノが苦笑いを浮かべてそう言うと

バシッと、キースがディノの頭を叩いた

 

「・・・・・・どう見たって、お邪魔だろうか。 おら、帰るぞ」

 

そう言って、面倒くさそうにディノの首根っこを捕まえてズルズルと引きずり始める

 

「え!? わ、わっ! 待ってくれよキース!!」

 

「ほら、アキラも!」

 

そう言って、ウィルがアキラを連れ出そうとする

 

慌てたのは、ブラッドでもなく、出ていこうとしたメンツでもなく、当のアリスだった

 

アリスが慌てて、ばっとブラッドから離れると

 

「ち、ちち違うんです!!  私はっ!! その・・・・・・ブラッドさんがまた徹夜されていたので、その軽食とコーヒーをお持ちしただけで・・・・・・その・・・」

 

言葉の最後の方は、声になってなかった

 

 

 

 

「し、失礼します!!!」

 

 

 

 

そう叫ぶと、アリスはばたばたと部屋を飛び出していった

 

その顔が耳まで真っ赤だったことを、知るものは誰も居なかったのだった―――・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらは、べったーにて掲載していたエリオスR夢です

 

エリオスのキャラって・・・・・・

騒がしい子、多いよなwww

最近まじめにやってなかったからな~そろそろ、真面目にやろうかなww(おい)

 

※元々、ぷらいべったーに掲載していたものです

 

 

べったー掲載:2021.02.21

本館掲載:2022.12.14