CRYSTAL GATE

  -The Goddess of Light-

 

 

 第四夜 霧の団 4

 

 

 

――――ホテル内・とある一室

 

「こちらがお部屋でございます」

 

豪華な廊下を通って案内された一室は、今までに見たことないぐらいキラキラした部屋だった

天蓋付きのベッドに、高価そうなベルベッドのソファにペルシャ絨毯

なにかもが、初めて見るものばかりだった

 

アラジンとモルジアナが部屋を見た瞬間、歓喜の思わず声を上げる

 

「わ~~~いい部屋だね~~~~~」

 

アラジンが、天蓋付きのベッドに走りよると、そのままダイブした

すると、ベッドがまるで羽根の様にふかふかで、アラジンが嬉しそうに大の字になった

 

モルジアナもあまり表情には出ていないが、そわそわしてベッドを覗き込んでいた

 

「何か分からない事があれば、なんでも仰ってくださいね」

 

そう言って、案内してくれたベルスタッフの女性が部屋から下がろうとした時だった

 

「あ、そうだ!!」

 

アラジンが、何かを思い出したように慌てて起き上がった

 

「おねえさん、“暗黒大陸”に行く船って何処から乗れるのかな?」

 

アラジンの言葉に、モルジアナがはっとする

ドアを閉めかけたベルスタッフの女性が一瞬、首を傾げた

 

「暗黒・・・・・・? ・・・・・・ああ、南への船でございますね。 でしたら、今は難しいかと・・・・・・」

 

「え・・・・・・?」

 

予想外の言葉に、アラジンとモルジアナが顔を見合わせる

すると、ベルスタッフの女性は少し困った様に

 

「・・・・実は・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

   ****    ****

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――バルバッド王宮・客間

 

シンドバッドとエリスティア達が通された客間には、あいも変わらず悪趣味な黄金の像やら、壺などが飾られている、煌びやかな部屋だった

先王・ラシッド・サルージャ王の代にはなかったものだ

 

現王・アブマド・サリュージャの代になって次から次へと増えた装飾品だった

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

部屋を一望して、エリスティアは小さく息を吐いた

とても、理解しがたい

これの「何が」彼らの目に留まって、一体その「代金」は何処から徴収し、支払われたものか・・・・・・

 

シンドリアでは、まずありえない・・・・・事だった

さっさと、用件を済ませてここから出たものだ

 

その時だった

 

ドアをノックする音と同時に、外に立っている護衛騎士の1人が扉を開けた

部屋に入ってきたのは、金にまみれた装いを見に纏い、王杖を持った1人の背の低く小太りの男と、その陰に隠れる様に後ろを突いてくる、痩せた男だった

 

現王・アブマド・サリュージャと、その弟 副王・サブマド・サリュージャである

 

アブマドは、シンドバッドは座る椅子の前に机を挟んで座ると、半分苦笑いを浮かべて

 

「シ、シンドバッドおじさん、それにエリスティアおねえさん、お、お久しぶりで――「挨拶など不要だ。 俺の要件は一つだけ。 シンドリアとの船舶貿易を再開しろ」

 

アブマドが言い切る前に、シンドバッドが本題を切り出した

ぎくっとアブマドとサブマドが青ざめる

 

それぐらい、シンドバッドの声は冷たかった

いや、それだけではない

 

シンドバッドの後ろには、エリスティア他にジャーファルとマスルールも控えていた

誰も、笑っていない

特に、エリスティアは今までも見たこともないぐらい、冷めた目でアブマド達を見ていた

 

流石の、アブマドとサブマドもその空気は読めたらしく

半分、縮こまっている

 

「俺と、お前らの親父さんの時から培ってきた両国の関係をぶち壊す気か?」

 

シンドバッドが冷淡にそう切り返した

その表情に、笑顔などなかった

 

尋問―――――

 

そう思われても、仕方のないぐらい

シンドバッド周辺の空気は冷たかった

 

「・・・・・・・・・・・・でし」

 

震えつつも、なんとかアブマドがそう返す

が、声が小さすぎて聴こえない

 

シンドンバッドの表情が更に険しくなく

それを見たアブマドが、慌てて叫んだ

 

 

 

「わ、悪いけど、交易再開は無理でし!!! 今、バルバッドは国内の大問題で手一杯なんでしよ!!!」

 

 

 

「あぁ?」

 

「国内の問題・・・・・・?」

 

ふと、エリスティアの脳裏に先ほど通った水路の文字が浮かぶ

“王政打破”

血文字でそう書かれていた

 

それは、つまり内紛が起きている、もしくは起きる前兆を意味する

 

「“霧の団”――――やつらは、そう名乗ってるでし」

 

「“霧の団”?」

 

初めて聞く名だった

 

「バルバッド内紛の元凶でしよ」

 

ふんっと、アブマドが鼻を鳴らしてもっともらしく言うが――――――

エリスティアやシンドバッドは、遅かれ早かれそうなると“予測・・”はしていた為、さほど驚きはしなかった

いや、むしろ今まで大事にならなかった事の方が驚きだ

 

だが、そんなエリスティア達にアブマドが気づく筈もなく―――――

 

「国にたてつくテロリスト集団・・・・・・とはいえ、奴らは元は40人程度のスラムのコソドロ共だったんでし・・・・・・それが・・・」

 

ぎりっと、何かを思い出したかのようにアブマドが唇を噛みしめた

 

「コソドロのくせに、2年前に城の宝物庫を破って、軍資金を得てどんどん膨れ上がって――――しかも、不思議な魔術までをも身に付けて・・・・・・もう、国軍でも手に負えない、一大反政府軍になってしまったんでしよ」

 

「不思議な魔術・・・・・・?」

 

エリスティアが俄かにそのアクアマリンの瞳を細めた

 

魔術―――魔法はそうそう直ぐに使えるシロモノではない

となると、考えられるのは―――――・・・・・・

 

「おまけに、奴らは奪った金品を民衆に分け与えるから・・・・・・国民からは英雄視されているしまつでし!」

 

「・・・・・・それは、“義賊”という事かしら?」

 

エリスティアがそう尋ねると、アブマドはやれやれという風に首を横に振り

 

「な~にが“義賊”でし! 国庫を傷付ければ税金が増えるだけなのに、国民は馬鹿でしね~」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

なんというか・・・・・・

 

「・・・・・・お前ら、評判悪いぞ」

 

エリスティアが思っていた本音を、シンドバッドがいともあっさり口にした

きっぱり はっきりと

 

それに反発したのは、やはりアブマドだった

 

「し、しかたないんでし!!! こっちは大変なんでし!!!」

 

まがりにも一国の“王”が、口にするにはいささか分別がない言葉だった

だが、アブマドは何かを思い出したのか、ぶるぶると怒りで手を震わせた

 

「近頃、厄介な奴が“霧の団”のトップになるし!! 何が“怪傑”だ!!!」

 

「“怪傑”?」

 

「そうでし!!! まったく、なんで今頃あいつがしゃしゃり出てくるでしか!!? あいつが、出しゃばりでもしたら僕たちは――――「あ、兄上!! その話はっ・・・・・・」

 

アブマドが何かを言おうとした時、副王である弟のサブマドが慌ててアブマドの口を手で塞いだ

それで、はっとしたのか・・・・・・

アブマドも慌てて口を押える

 

「・・・・・・・・・・・・?」

 

なにかしら・・・・・・?

 

二人の様子がおかしかった

そう・・・・・・まるで、“知られては困る事”がある様に―――――

 

そんな事をこちらが考えているとは露とも思わず、アブマドはごほんっと咳払いをし

 

「と、とにかく、“霧の団”のせいで、交易再開はムリでし! 外から口ばっか出さずに、再開してほしけりゃ、おじさんが自分でなんとかするでしなぁ!」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

瞬間、シンドバッドの瞳が一層冷たくなる

 

「ほ~~~お、なんとか・・・・していいんだな?」

 

底冷えする様な声音に、アブマドとサブマドがびくりっと身体を強張らせた

だが、シンドバッドはゆっくりとした動作で、立ち上がると、腰に持っていなナイフをすらっと抜き――――――・・・・・・

 

 

「!!?」

 

 

そのまま一気に、振り下ろすと目の前の机に突き立てた

 

 

 

 

 

 

「――――俺が、その“霧の団”とやらを退治してやるよ。 軍隊も使わず。俺達だけでな!」

 

 

 

 

 

 

「「・・・・・・・・・・・・!!!?」」

 

アブマドとサブマドがシンドバッドの言葉に青ざめる

 

「ム、ムリでし!! いくらシンドバッドおじさんでも!!」

 

アブマドが慌ててそう言うが、最早シンドバッドにはどうでもよかった

シンドバッドは、一度だけ、アブマドとサブマドを一瞥すると、そのままその部屋を後にしたのだった

 

「・・・・・・・・・・ど、どうしよう、兄上・・・・・・」

 

4人が去った後に、最初に口を開いたのは弟のサブマドだった

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

アブマドは、シンドバッドが突き立てたままにしていったナイフを見ながら

 

「まぁいいでし・・・・・・シンドリアとの交易はどのみち不可能・・・・・・・だけど・・・・・・。 “霧の団”を倒してくれるなら、それはそれで もうけものでし・・・・・・」

 

そう言いながら、アブマドがとある書類を見る

何かの“調印”を示す書類だった

 

そして、その書類に記されたサインには―――――――・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ****    ****

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの・・・・・・、先ほどの話は。 “怪傑アリババ”って・・・・・・」

 

先ほどのベルスタッフが話していた

 

今、南への船が出せない理由

それは、バルバッド内での紛争が原因だった

 

国軍と対立している紛争勢力が“霧の団”

そして、そのトップが――――――・・・・・・

 

『―――その人が現れて以来、ますます騒乱が激しくなっているのです。 名前は“アリババ”。“怪傑アリババ”と呼ばれています』

 

彼女はそう言っていた

まさか・・・・・・とは思う

だが、確信はない

 

もし、本当に自分たちの知る“アリババ”が、“怪傑アリババ”と呼ばれる人だとしたら―――――・・・・・・

 

モルジアナは小さく首を横に振った

 

そんなことない

あの人は・・・・・・そんなことする人じゃない

 

分かっている

分かっているのに頭の整理が付かない

 

すると、アラジンはけろっとしたまま

 

「盗賊か――――でも、アリババくんはそんな事しないと思うし、きっと別の人だよ」

 

「そう、ですね・・・・・・」

 

アラジンの言葉に、モルジアナが少しホッとする

そうだ

そんなはずない

あの人が、国を騒がせている盗賊団のトップだなんて―――――・・・・・・

 

「あ~あ、でも、本物のアリババくんをどうやって捜そうかな? こんなに広い国だし・・・・・・」

 

そう言って、窓際に手を置いて、大きな街中を眺めた

 

「モルさんも、困ったね」

 

「ハイ・・・・・・」

 

暗黒大陸へとつながる南への船は出せない

アリババの行方も分からない

 

正直、せっかくここまできたのに八方塞がりだった

 

「・・・・・・早く、アリババくんに会いたいなぁ~」

 

そう言って、窓の外を見るアラジンの姿は少し寂しそうだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――夜・バルバッド ホテル最上階の一室

 

 

 

「ふぅ・・・・・・」

 

シンドバッドは、どさりとベッドに腰をかけた

 

「お疲れ様、シン」

 

そう言って、エリスティアはシンドバッドが羽織っていた衣をハンガーにかけた

が―――瞬間、ぴたりとその手が止まる

 

「・・・・・・・・・・・・? どうした、エリス

 

いつもと様子の違うエリスティアにシンドバッドが首を傾げる

すると、何かを躊躇うかの様にエリスティアがシンドバッドを見て

 

「私・・・・・・シンに言わなければいけない事があるの」

 

そう言って、そのアクアマリンの瞳を俯かせた

 

きっと、違う

でも・・・・・・

 

「さっきの、話・・・・・・」

 

「さっき?」

 

エリスティアが小さく頷く

 

「さっき、あの兄弟が言っていたでしょう? “霧の団”のトップは“怪傑”と呼ばれている――――と」

 

「・・・・・・それがどうかしたのか?」

 

「・・・・・・部屋に戻ってくるときに ホテルのスタッフさんが話しているのを聴いてしまったの」

 

エリス?」

 

聴き間違いだと思った

私の思い違いと思いたい

 

でも・・・・・・

 

「この国を騒がしている“霧の団”のトップの名前は“アリババ”・・・・・・“怪傑アリババ”。 そして――――――私やアラジンが一緒に迷宮ダンジョンに入った人の名前も・・・・・“アリババ”なの・・・・・・」

 

そう告白するエリスティアの瞳には涙が浮かんでいた

 

「これって、偶然なのかな・・・・・・? それと、も、本当に・・・・・・」

 

 

 

    アリババくん なの・・・・・・?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 続

 

 

ここのシーン

アニメではアラジンとシン様の交互に描写されて話が進むんですが・・・・・・

文にするにはちと難しいというか、ころころ変わるとややこしいので却下www

んでだ、まだシン様サイドは霧の団のトップの名は伏せられているんですよね~ここでは

なので、ちょい今後の為に暴露大会www に入りますアハハ((⊂(∇`*)⊃))パタパタ

 

 

 

2021.07.13